ファイナンス 2017年5月号 Vol.53 No.2
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手も今春プロ化予定です。以前、「ロンドン五輪で金メダル獲得後に最初に考え、その後、世界選手権等で金をとり続けて決断した」と仰いました。また、正月の読売新聞のインタビューでは、「ロンドン五輪で金をとっても 体操が世の中にひろまった手応えがなかった」とも話しています。なぜ、金をリオまで連続して取ることがプロへの決意に繋がったのですか。▷内村: まず一番は本当に、誰もやったことがないところに踏み込みたかったということです。金を連続して取ることは自分しかできないんじゃないかなっていうふうに思ったのと、その上で、もっと体操界を上のステージに上げるために、自分がリーダーとなってプロとしてやっていけば、その価値をもっと上げられるんじゃないか、そのためにプロとして体操の普及をしていきたいというふうに思ったからです。▶神田: プロになると雇用主の制約がなく競技環境や行動の自由度が高まるし、スポンサー契約で活動資金を確保するメリットもある一方、体操は、ゴルフやテニスと違い、賞金や出場料を試合で稼げるわけではないし、試合も多くないので、リスクも高いとの指摘があります。プロを選んだ最大の理由は何ですか。▷内村: 今までは「コナミの社員」として体操をやって、何のイベントに出るにしても「コナミの内村航平」というふうに言われ、一体操選手として見られていないような感じがありました。より体操というものをもっと色んなところに広めていくためには、やはり所属という枠を飛び越えてやったほうがいいんじゃないかなというのは、思いましたね。▶神田: もう一つのプロになる問題はずっと一緒だった仲間やコーチ、スタッフから離れ、一人で競技力を維持しなければならないことです。コーチも確か朝日生命時代の後輩の佐藤寛朗さんがなさっているそうですが、必ずしも教える人でなくなります。どんな環境で競技力を維持していますか。▷内村: 基本的には体操に向き合う姿勢は変わらないですし、環境は変わりましたけど、体操に対する思いは変わっていません。東京オリンピックを目指すというというところが最大の目標としてあるので、特に体操に対する思いが変わらなければ、練習環境が変わっても競技力の維持はできるし、自分に負けなければ、問題はないかなと僕は思います。▶神田: 11月27日コナミスポーツ本店での体操教室で正式発表されたことが象徴的でしたが、体操教室を通じての体操の普及がプロでの大切な目標と思われるところ、具体的にはどういう活動をする予定ですか。▷内村: 体操教室はもちろんなんですけど、テレビなどに出演するときに、見ている人によりわかりやすく伝えられないと体操は広まっていかないと思うので、体操教室をやったり活動をやったりするその前に、まず、自分がもっと体操のことを理解しておかないといけないなっていうところに思い至りました。今はとりあえずもっと、体操をやっていない人にも本当にわかりやすく体操を伝えられるように、体操を知ろうとしているという段階ですね。体操競技の真実▶神田: 内村さんは、度々、体操の美しさに言及しています。富田洋之さんも、以前、「美しくなければ体操ではなく、ただ派手な技をやるだけならサーカスと変わらない」と言っていました。『栄光のその先へ』で、内村さんは、「体操を専門としているプロに褒められるより、体操をしらない一般の人にキレイな演技と言われる方が嬉しい、点数が高くても観客が沸かなかったらそれはいい演技じゃないなと思う」と記していて、それ自体、素晴らしい考えなのですが、体操プロの世界で美しいとはどういうものをいうのでしょうファイナンス 2017.541超有識者場外ヒアリング62連 載|超有識者場外ヒアリング

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