ファイナンス 2017年5月号 Vol.53 No.2
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▶神田参事官: 本日は、練習でご多忙のところ、お時間を頂き、有難うございます。このNTC(ナショナルトレーニングセンター)は私も何度か訪れてきましたが、内村選手の大切な練習の合間になってしまい、恐縮です。今日は、試合からスポーツ普及、そして、決断されたばかりのプロ転向まで、幅広く読者にお考えを共有できれば幸いです。試合の現場の緊張感▶神田: まずは、読者が入りやすい感動のリオ体操個人決勝から。年末のテレビ番組で、内村さんは鉄棒演技の最中にぎっくり腰になって、激痛が走り、着地も極めて大変だったと明かされました。当時のテレビ中継を見ていてそんな大変なことになっていたとは全く気づきませんでしたし、解説者も全く違う説明をしていたくらいです。内村さんも優勝後インタビューでも、一切、故障には触れず、「疲れ切りました、出し切りました」とだけ仰っていました。こんなに長いキャリアで本当にこんなことは初めてだったのですか。▷内村選手:初めてですね。試合中に怪我をすること自体がまず今までなかったのです。だから、それだけ体を酷使してやっていたということもあるし、それだけオリンピックにかけるものがすごく大きかったのでしょう。そういうふうになっても最後までできたのは、やはりかける思いがそれだけあったからではないかと思います。▶神田: 怪我のまさにその瞬間、どんな思いが脳裏に走りましたか。▷内村: 演技中でしたし、種目も最後の最後の鉄棒だったので、演技が終わるまで何も思わなかったですね。演技していないときだったら何か思うものもあったと思うんですけど、逆に演技中だ内村 航平さん(写真左)1989年長崎県諫早市生まれ。オリンピック3大会(2008年北京、2012年ロンドン、2016年リオデジャネイロ)に出場し、個人総合2連覇を含む7つのメダル(金メダル3、銀メダル4)を獲得。また、世界体操競技選手権でも個人総合での世界最多の6連覇を含む19個のメダル(金メダル10、銀メダル5、銅メダル4)を獲得。国内大会ではNHK杯個人総合では8連覇中、全日本選手権個人総合では本年4月9日に10連覇達成。紫綬褒章受章のほか、今年も既に、日本ジュエリーベスドレッサー賞、日本スポーツ賞オリンピック特別賞等を受賞。本年、復興応援大使就任。神田 眞人 Kanda Masato 金融庁参事官東京大学法学部卒業、オックスフォード大学経済学修士(M.Phil)。世界銀行審議役、財務省主計局主査(運輸、郵政担当を歴任)、国際局為替市場課補佐、大臣官房秘書課企画官、世界銀行理事代理、主計局給与共済課長、主計官(文部科学、経済産業、環境、司法・警察、財務担当を歴任)、国際局開発政策課長、同総務課長等を経て現職。OECDコーポレートガバナンス委員会議長等を兼務。主著に「国際金融のフロンティア」、「超有識者達の洞察と視座」、「強い文教、強い科学技術に向けて」、「世界銀行超活用法序説」等。体操競技選手(オリンピック 金メダリスト)Uchimura Kohei38ファイナンス 2017.5超有識者 場外ヒアリングスポーツ編62連 載|超有識者場外ヒアリング

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