ファイナンス 2017年5月号 Vol.53 No.2
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(ⅱ)「コンパクト+ネットワーク」の支援策の重点化・施設の集約化を通じた「コンパクト+ネットワーク」の取組が行政コストの低減や生産性の向上に着実につながるようにするため、社会資本整備総合交付金の「都市再構築戦略事業」(立地適正化計画に基づき中心拠点区域における誘導施設等の整備を支援する事業)において以下の見直しを行う。▷誘導施設の規模の適正化を図るため、商業系の誘導施設は交付金の支援対象から除外する。▷公共施設の計画的な統廃合を効率的に推進するため、隣接市町村が共同で利用する誘導施設の整備を支援対象に追加する。▷誘導施設として医療・社会福祉施設を整備する場合には、医療計画や子ども・子育て支援事業計画等に基づく地域の医療・福祉政策との連携を要件化する。3.復旧・復興東日本大震災からの復旧・復興に関しては、その全額が東日本大震災復興特別会計に一括して計上されており、国土交通省関係については、5,318億円となっている。このうち、被災地の復旧については、公共土木施設等(河川、海岸、道路、港湾、下水道等)の災害復旧等事業費について、復旧の進度に応じ所要額を計上することとしており、1,317億円を計上している。また、被災地の復興については、復興道路・復興支援道路の整備や被災地の港湾整備など、被災地の復興に向けた各種事業を引き続き推進することとしており、4,001億円を計上している〈主な事業〉道路(復興道路・復興支援道路の整備等)2,400億円港湾(被災地の港湾整備)361億円治水(被災地の河川の津波対策等)69億円社会資本整備総合交付金(市街地整備に伴う道路整備等)1,090億円地域公共交通の確保14億円東北地方の観光復興対策46億円4.今後の社会資本整備のあり方平成29年度の公共事業関係費及び国土交通省関係予算について説明してきたが、最後に、今後の社会資本整備の方向性について触れておきたい。我が国の社会資本は、この半世紀の整備により、高速道路、新幹線、空港等の高速ネットワークの全国的な整備水準が飛躍的に向上した。一方で、建設国債残高だけ取り出しても、266兆円(平成27年度末)に達するなど、日本の財政状況は悪化し続けていることも事実である。こうした状況を踏まえれば、冒頭で述べた通り、公共事業について、選択と集中の下、より少ない費用で最大限の効果が発揮されているかという「質」の面での評価が重要であると考える。この観点から、これまで整備してきた社会資本ストックを最大限活用することに重点を置いていくべきであると考える。その中で、日本の潜在成長力を強化し、経済成長と財政再建を両立させていくことが求められている。社会資本整備の分野においても、潜在成長力の強化を図る観点から、資本効率・労働生産性・技術革新を刺激することが求められる。特に、社会資本の生産効率の低下が指摘されているところであり、民間投資誘発効果が高い事業への重点化、民間ノウハウの活用、B/Cの強化等を図っていくべきである。また、防災・減災のためのインフラの強化が課題となっているが、新たなインフラ整備を検討する場合には、費用便益分析の徹底を図るだけでなく、他の整備手法との比較検証を行うことなどにより、整備の重点化、コストの抑制、優先順位付けを客観的に行うとともに、既存ストックの更なる活用を図ることにより、効果的・効率的な整備を行うべきである。その際、豪雨・台風被害の頻発化・激甚化を踏まえると、従来のハード対策に加え、実効性のあるソフト対策等を組み合わせていかなければならない。平成29年度の公共事業関係費及び国土交通省関係予算については、こうした観点を取り込みつつ、予算編成を行ったものであるが、こうした取組みは、今後の社会資本整備においても、引き続き、着実に進めていく必要があると考えている。ファイナンス 2017.515平成29年度予算特集③平成29年度国土交通・公共事業関係予算について 特集

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