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令和4年度税制改正(関税)について

関税局関税課 関税企画調整室長 恵﨑 恵

令和4年度関税改正については、国税と同様に、与党における税制改正プロセスを経て、「令和4年度税制改正の大綱」(令和3年12月24日閣議決定)にその内容が盛り込まれた。
本稿においては、「令和4年度税制改正の大綱」のうち関税の主な項目について説明したい。

1.暫定税率等の適用期限の延長等
関税においては、政策上の必要性等から、とうもろこしや麦芽等417品目において、時限的に基本税率より低い関税率が暫定税率として定められている。国内の生産者及び消費者等に及ぼす影響、国際交渉との関係、産業政策上の必要性等を考慮し、412品目に係る暫定税率の適用期限を1年延長する。
ウルグアイ・ラウンド合意に基づいて関税化された米、麦、乳製品等については、輸入数量が一定の水準を超えた場合等に関税率を引き上げる特別緊急関税制度が暫定的特例として設けられている。引き続き国内産業を保護する必要があること等から、特別緊急関税制度の適用期限を1年延長する。
加糖調製品(砂糖と砂糖以外のココア粉やミルク等の混合物)については、国内産糖の支援のため、関税に加え、糖価調整制度における調整金が、関税と調整金の合計がWTO譲許水準となるように課されており、調整金収入を国内産糖への支援に充当している。輸入加糖調製品と国産砂糖に価格差があること等を踏まえ、国内産糖への支援に充当する調整金の拡大が可能となるよう、加糖調製品のうち6品目の暫定税率を引き下げる。
たまねぎ(2品目)については、輸入の大半を占める中国との間でRCEP協定上現行の税率を維持することになったことから、現行の暫定税率を基本税率として規定し、暫定税率を廃止する。
合成洗剤の原料であるノルマルパラフィン(3品目)については、国内における供給が過剰となっていることから、暫定無税としておく必要がなくなったため、暫定税率を廃止する。
沖縄振興特別措置法に基づく各種税制上の特例措置の一環として、特定免税店制度及び選択課税制度等が設けられている。特定免税店制度については、沖縄振興特別措置法に係る来年度以降の法的措置を前提に、適用期限を令和6年3月31日まで2年延長するとともに、旅客ターミナル施設等(空港等)で購入物品の引渡しを行うとの現行制度を維持した上で、インターネットでの免税品の事前購入を可能とする。選択課税制度等については、沖縄振興特別措置法に係る来年度以降の法的措置を前提に、適用期限を令和7年3月31日まで3年延長するとともに、国際物流拠点産業集積地域の一部(うるま・沖縄地区)が拡大される場合、当該拡大された地域においても当該制度の適用を認める。

(参考1)特定免税店制度
沖縄振興特別措置法に基づき、沖縄から沖縄以外の国内へ出域する旅客が特定販売施設等で購入する物品(合計額が20万円まで)について、関税を免除する制度。

(参考2)選択課税制度
沖縄振興特別措置法に基づき、国際物流拠点産業集積地域の保税工場等において製造される製品について、原料課税(原則)か製品課税かを選択できる制度。

2.個別品目の関税率の見直し
繊維製品(女子用のブラウス等(綿製))については、国内産品と輸入品との差別化が進んでいること等から国内産業への影響は限定的であることを考慮した上で、輸入者の貿易手続上の事務負担軽減の観点から、女子用のブラウス等(綿製)に係る「ししゆうしたもの等」と「その他のもの」の税細分を統合・簡素化し、関税率(基本税率)を統合前の各細分における税率のうち低い水準に統一する。

図表.税細分統合のイメージ

3.海外の事業者を仕出人とする模倣品の水際取締りの強化
越境電子商取引の進展に伴い、海外事業者と日本国内の個人との間の直接取引による模倣品(特に商標権関連)の輸入が増加しているところ、(海外の輸出者が事業者であっても)事業性のない者により輸入される模倣品(いわゆる個人使用目的で輸入される模倣品)は、税関での取締対象となっていない。近年、税関の認定手続(侵害物品か否かを認定するための手続)において、輸入者から、事業性のない者であること等を理由として争う旨の申出が提出される件数が増加している。
こうした状況に対応するため、令和3年5月に成立・公布された特許法等の一部を改正する法律による改正商標法及び意匠法において、海外事業者が模倣品を郵送等により日本国内に持ち込む行為が、権利侵害行為となることが明確化された。
これを踏まえ、改正商標法及び意匠法の施行に合わせ、海外事業者から国内の事業性のない者に宛てて郵送等で持ち込まれた模倣品(商標権等侵害物品)を関税法の「輸入してはならない貨物」として規定するとともに、事業性のない輸入者は関税法上の罰則の対象としないこととする。
また、税関の認定手続一般において、疑義貨物を輸入しようとする者が、当該貨物が侵害物品に該当しない旨を主張する場合に、税関長が当該者に対して、その旨を証する書類の提出を求めることができるよう規定を整備する。

図表.改正商標法及び意匠法の概要

4.通い容器に係る免税手続の簡素化の対象の拡大
本邦から輸出された通い容器(貨物運送用の反復使用される容器)であって再輸入されるもの及び本邦に輸入される通い容器でその輸入の許可の日から原則として1年以内に再輸出されるものは、輸入の際に関税及び消費税を免除することとされている。また、輸出入双方のAEOの承認を受けている同一の者(AEO輸出入者)が扱う特例申告を利用した貨物については、一部提出書類を不要とする等、簡素な免税手続(簡素化)が可能となっている。
これについて、AEO輸入者及びAEO輸出者は、貨物のセキュリティ管理と法令順守の体制が整備された者として予め税関長の承認を受けた者であることから、通い容器の取引において輸入者と輸出者が異なる場合でも、それぞれがAEO輸入者及びAEO輸出者の承認を受けていれば簡素化の対象とする。また、AEO輸入者は通常の輸入申告においても適正な申告が期待できることから、通常の輸入申告貨物についても簡素化の対象とする。
なお、簡素化の対象を輸入者と輸出者が異なる場合に拡大するにあたっては、現在はAEO輸出入者に委ねられている通い容器の輸出入状況についての自主管理を、免税の恩恵を受け、用途外使用等があった場合の納付義務を負うAEO輸入者に委ねる。