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令和3年度補正予算及び令和4年度予算について

主計局総務課主計官 渡邉 和紀

1.令和3年度補正予算及び令和4年度予算編成の背景
日本経済については、新型コロナウイルス感染症による厳しい状況から徐々に回復しつつあるが、オミクロン株の感染拡大に直面し、国民生活や経済への影響は依然として続いている。また、先行きについては、各種政策の効果や海外経済の改善もあって、景気が持ち直していくことが期待されるが、下振れリスクにも十分注意する必要がある。

(参考)
令和3年度の実質GDP成長率は2.6%程度、名目GDP成長率は1.7%程度と見込まれており、令和4年度はそれぞれ3.2%程度、3.6%程度と見込まれている。
一方、財政状況に目を転じれば、日本の財政は、少子高齢化が進む中、社会保障の受益と負担のアンバランスという構造的課題に直面している。
財政は国の信頼の礎であり、財政健全化の旗を降ろすことなく、「経済財政運営と改革の基本方針2021」(令和3年6月18日閣議決定)等における2025年度のプライマリーバランスの黒字化目標等の達成に向けて、歳出・歳入両面の改革をしっかり進めていく。

2.令和3年度補正予算の概要

(1)令和3年度補正予算のポイント
昨年11月19日に、「コロナ克服・新時代開拓のための経済対策」が閣議決定された。
この経済対策は、
・新型コロナウイルス感染症の拡大防止、
・「ウィズコロナ」下での社会経済活動の再開と次なる危機への備え、
・未来社会を切り拓く「新しい資本主義」の起動、
・防災・減災、国土強靱化の推進など安全・安心の確保、
を柱としており、令和3年度補正予算はこれを実行するためのものである(昨年12月20日成立)。

(2)令和3年度補正予算のフレーム
令和3年度補正予算の歳出においては、経済対策の実行に係る経費として31兆5,627億円を計上している。このほか、国債整理基金特別会計への繰入れ、地方交付税交付金の増額等を行うとともに、既定経費を減額している。
一方、歳入においては、租税等の収入について、最近までの収入実績や企業収益の動向等を勘案して6兆4,320億円の増収を見込んでいる。また、税外収入について、1兆3,516億円の増収を見込むほか、前年度剰余金6兆1,479億円を計上している。
以上によってなお不足する歳入について、公債を22兆580億円発行することとしている。
この結果、令和3年度一般会計補正後予算の総額は、一般会計当初予算に対して歳入歳出ともに35兆9,895億円増加し、142兆5,992億円となる。
また、令和3年度の公債発行額は65兆6,550億円となる。

3.令和4年度予算の概要

1 令和4年度予算のポイント
令和4年度予算は、いわゆる「16か月予算」の考え方のもと、令和3年度補正予算と一体として編成し、新型コロナウイルス感染症対策に万全を期しつつ、「成長と分配の好循環」による「新しい資本主義」の実現を図るための予算としている。
本予算は、前述の経済財政状況等を踏まえ、「令和4年度予算編成の基本方針」(令和3年12月3日閣議決定)に沿って編成が進められたものであり、具体的なポイントは以下の通りである。

(1)感染拡大防止
令和3年度補正予算による、医療提供体制の確保、ワクチン接種体制の整備、治療薬の確保等に加え、予期せぬ状況変化への備えとして、引き続き5兆円の新型コロナウイルス感染症対策予備費を措置する。

(2)「新しい資本主義」の実現

【成長戦略】
「科学技術立国」の観点から、過去最高の科学技術振興費を確保し、デジタル、グリーン、量子、AI、宇宙、次世代半導体等の研究開発を推進、博士課程学生への支援を充実させる。
また、「デジタル田園都市国家構想」の実現に向け、デジタル庁について、情報システム関係予算の一括計上等を推進する。地方向け交付金により、自治体の創意によるデジタル技術の実装等を幅広く支援する。デジタル推進委員を全国に展開する。
更に、「経済安全保障」について、量子暗号通信の研究開発の推進や、重要技術の管理体制等を強化する。

【分配戦略】
新型コロナ医療対応等を行う医療機関の看護職の方、介護、保育、幼児教育などの現場で働く方について、診療報酬等による対応を通じて、給与を3%引上げる。
更に、デジタルなど成長分野を支える人材育成や非正規労働者のステップアップ、円滑な労働移動を支援するなど、人への投資を推進する。
また、「下請けいじめゼロ」等を実現するため、下請Gメンを倍増し、全国の下請中小企業へのヒアリング等、監督体制を強化する。

(3)メリハリの効いた予算
歳出全般にわたり見直しを行い、一般歳出等について、「経済財政運営と改革の基本方針2021」の目安を達成するなど、歳出改革の取組を継続している。
・社会保障関係費+4,400億円程度
(高齢化による増(年金スライド分は除く))
・非社会保障関係費+330億円
(これまでの取組の継続)
また、予算の単年度主義の弊害是正に取り組むなど、予算の質も向上させている。
結果として、前年度予算と比較して、新規国債発行額を減額する(令和3年度(当初)43.6兆円⇒令和4年度36.9兆円)など、メリハリの効いた予算となるよう編成している。

2 令和4年度予算のフレーム
令和4年度予算の一般歳出については、67兆3,746億円であり、これに地方交付税交付金等15兆8,825億円及び国債費24兆3,393億円を加えた一般会計総額は、107兆5,964億円となっている。
歳入については、租税等の収入は65兆2,350億円、その他収入は5兆4,354億円を見込み、公債金は36兆9,260億円となっている。

3 主要な経費の概要
社会保障関係費については、看護、介護、保育等の現場で働く方々の処遇改善に必要な経費を確保しつつ、診療報酬のメリハリある改定や市場価格を反映した薬価改定など、様々な改革努力を積み重ねた結果、実質的な伸びを「高齢化による増加分におさめる」という方針に沿ったものとなっている。これらの結果、36兆2,735億円を計上している。
文教及び科学振興費については、小学校高学年における教科担任制の推進等のため、必要な教職員定数の措置及び合理化等を行うほか、「科学技術立国」の観点から、デジタル、グリーン等の研究開発を推進するとともに、博士課程学生の処遇向上に向けた支援を充実することとしている。これらの結果、5兆3,901億円を計上している。
地方財政については、国税及び地方税の増収等を反映し、地方の臨時財政対策債の発行を大幅に縮減しつつ、地方の一般財源総額を適切に確保することとしている。これらの結果、地方交付税交付金等として15兆8,825億円を計上している。
防衛関係費については、緊迫化する国際情勢を踏まえ、中期防衛力整備計画に基づき、調達の効率化を図りつつ、宇宙やサイバーといった新領域を含め、防衛力を着実に強化することとしている。これらの結果、5兆3,687億円を計上している。
公共事業関係費については、ソフト対策の強化と新技術の活用による効率化といった観点を踏まえつつ、防災・減災、国土強靱化の取組への重点化を図るほか、国庫債務負担行為の積極的な活用により、施工時期の平準化や計画的な整備の円滑化に取り組むこととしている。これらの結果、6兆575億円を計上している。
経済協力費については、新型コロナウイルス感染症の国際的な収束に向けた継続的支援や、気候変動対策等の途上国支援に重点化し、ODAは予算・事業量ともに必要な額を確保することとしている。これらの結果、5,105億円を計上している。
中小企業対策費については、下請取引対策及び事業承継支援を充実するほか、生産性向上に向けた支援など、現下の中小企業を取り巻く経営課題に対応することとしている。これらの結果、1,713億円を計上している。
エネルギー対策費については、再生可能エネルギーの主力電源化やカーボンリサイクルの推進など、イノベーションの創出による脱炭素化を進めるほか、災害等に強いエネルギー供給網の整備に取り組むこととしている。これらの結果、8,756億円を計上している。
農林水産関係予算については、農林水産物・食品の輸出拡大や、農業経営の生産性向上と環境負荷軽減の両立を推進するほか、林業・水産業の持続的成長に向けた資源管理等に取り組むこととしている。これらの結果、2兆2,777億円を計上している。
東日本大震災からの復興については、第2期復興・創生期間において、復興のステージに応じたきめ細やかな取組を実施するとともに、「創造的復興」を実現していくため、令和4年度東日本大震災復興特別会計の総額を8,413億円としている。
今後の新型コロナウイルス感染症の状況等を踏まえ、必要な対策を講じるため、5兆円の新型コロナウイルス感染症対策予備費を計上している。

4.結び
前述の通り、令和4年度予算は、既に成立した令和3年度補正予算と一体として、新型コロナウイルス感染症対策に万全を期しつつ、「成長と分配の好循環」による「新しい資本主義」の実現を図るための予算としており、関連法案と合わせて、国会での御審議を経て速やかに成立することが期待されている。
次の世代に未来をつなぐためにも、まずは今回の危機を乗り越え、経済をしっかりと立て直し、財政健全化に向けて取り組んでまいりたい。
(以上)


図表.令和3年度補正予算(第1号)の概要
図表.令和3年度一般会計補正予算(第1号)フレーム
図表.令和3年度補正後予算フレーム
図表.令和4年度予算フレーム(概要)
図表.主要経費別内訳
図表.一般会計税収、歳出総額及び公債発行額の推移