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令和4年1月 財務大臣年頭所感

財務大臣 鈴木  俊一

あけましておめでとうございます。令和4年の年頭に当たり、謹んで新春のお慶びを申し上げますとともに、我が国の経済財政運営等につきまして所感を述べさせていただきます。

一昨年来、日本社会は、新型コロナウイルス感染症により大きな影響を受けております。今回の感染症でお亡くなりになられた方々、そしてご家族の皆様方に心よりお悔やみを申し上げるとともに、厳しい闘病生活を送っておられる方々に心よりお見舞いを申し上げます。また、日本の医療、保健、介護の分野だけでなく全ての現場を支えて下さっている方々、感染対策に協力して下さっている事業者の方々、そして、国民の皆様に、深く感謝申し上げます。

依然として新型コロナウイルス感染症との闘いは続いており、新型コロナウイルス感染症による危機を乗り越え、未来を切り拓いていかなければなりません。

まずは、新型コロナウイルス感染症の拡大防止に努めるとともに、ウィズコロナの下で早期に社会経済活動の再開を図ってまいります。
そして、新型コロナウイルス感染症による危機を乗り越えた先に、経済社会の変革、すなわち「新しい資本主義」の実現に取り組んでいかなければなりません。
新型コロナウイルス感染症以前より、主要先進国をはじめ、世界中で、今までの経済社会・資本主義のあり方を見直す動きが芽吹き始めていたところ、新型コロナウイルス感染症の流行を契機に、その動きが加速しています。
このような世界の潮流の中において、日本では、「新しい資本主義」を掲げ、官民協働のもと、経済を成長させ、その果実を原資として、しっかり分配に取り組むことで、国民の所得を引き上げる、そして所得が上がることで消費が喚起され、次なる成長を生み出していくという「成長と分配の好循環」を実現してまいります。その結果、格差や貧困、気候変動問題といった社会課題を解決するだけでなく、力強い成長を実現し、分厚い中間層を取り戻し、国民が豊かに生活できる経済を作り上げることができると確信しております。
こうした日本が示す新しい経済社会ビジョンたる「新しい資本主義」は、経済社会の変革という数世代に一度の挑戦に向き合う中で、日本が世界をリードし、諸外国から評価され、模範とされる国となるための「国家戦略」です。そして同時に、日本が持つ潜在能力を存分に発揮し、全国民が力を合わせて、豊かで持続可能な社会を作り上げ、さらにそうした社会を次の世代につなぐための、未来を切り拓く「希望」です。何としても我々がこの「国家戦略」・「希望」を現実のものとしなければなりません。
こうした認識に立ち、新型コロナウイルス感染症の困難を乗り越え、ポストコロナの未来を切り拓くことで、国民の皆様に安心と希望を届けることを目的として、昨年11月19日に、「コロナ克服・新時代開拓のための経済対策」を閣議決定いたしました。
本経済対策により、新型コロナウイルス感染症の拡大防止、「ウィズコロナ」下での社会経済活動の再開と次なる危機への備え、未来社会を切り拓く「新しい資本主義」の起動、防災・減災、国土強靱化の推進など安全・安心の確保を進めてまいります。令和3年度補正予算は、政府として国民の皆様にできるだけ早く支援をお届けできるよう、昨年12月20日に成立しました。
あわせて、「16か月予算」の考え方の下、この補正予算と一体のものとして切れ目なく対応していくため、12月24日に令和4年度予算の概算を閣議決定いたしました。
この令和4年度予算案は、「成長と分配の好循環」と「コロナ後の新しい社会の開拓」をコンセプトとした「新しい資本主義」の実現を図るとともに、経済・財政一体改革を着実に推進することで、これまでの歳出改革の取組を継続し、新型コロナウイルス感染症の状況を踏まえつつ、メリハリの効いた予算としております。
具体的には、変異株による感染拡大等、予期せぬ状況変化への備えとして、予算案においても5兆円のコロナ予備費を措置することとしております。
また、先述のとおり、新型コロナウイルス感染症による危機を乗り越えた先に「新しい資本主義」の実現を目指します。そのために、まずは成長戦略として「科学技術立国」の観点から、デジタル、グリーン、量子、AI等の研究開発の推進、「デジタル田園都市国家構想」の実現に向けたデジタル庁への情報システム関係予算の一括計上等の推進、経済安全保障の推進に取り組んでまいります。次に分配戦略として、看護・介護・保育・幼児教育などの現場で働く方々の収入の引上げ、成長分野を支える人材の育成や非正規労働者のステップアップ、円滑な労働移動を支援するなど、人への投資を支援していくこととしております。
加えて、歳出改革の取組としては、骨太方針2021で定めた取組を継続するとともに、国庫債務負担行為や基金の活用により、予算の単年度主義の弊害是正などに取り組み、予算の質も向上させてまいります。
令和4年度財政投融資計画は、新型コロナウイルス感染症の影響を受けた事業者への支援に引き続き万全を期すとともに、ポストコロナを見据えた成長力強化に取り組むほか、科学技術立国の実現、「デジタル田園都市国家構想」や経済安全保障の推進、防災・減災、国土強靱化等に資するインフラ整備等の分野に重点的に投融資を行うため、約18.9兆円としております。

令和4年度税制改正の大綱においては、「成長と分配の好循環」の実現に向けて、多様なステークホルダーに配慮した経営と積極的な賃上げを促す観点から賃上げに係る税制措置を抜本的に強化するとともに、スタートアップと既存企業の協働によるオープンイノベーションを更に促進するための措置を講じることとしております。また、カーボンニュートラルの実現に向けた観点等を踏まえ、住宅ローン控除等を見直すこととしております。

令和4年度国債発行総額は、令和3年度補正後に比べて、借換債等が増加する一方、新規国債が大きく減少することに伴い、全体としては減少することとなっております。こうした中、定期的な入札による市中発行額については、短期債の発行減額に努めるとともに、市場ニーズを踏まえた国債発行を行いつつ、新型コロナウイルス感染症対応で短期化した平均償還年限を是正することとしております。

また、日本の財政について、足もとの新型コロナウイルス感染症対応により一層厳しさを増していることは事実でありますが、総理も御発言されているとおり、財政は国の信頼の礎であり、その旗は降ろしてはなりません。また、新型コロナウイルス感染症以前から、少子高齢化の進行を背景に、社会保障の受益と負担のアンバランスという構造的課題を抱えております。新型コロナウイルス感染症の危機を乗り越え、経済を立て直し、財政健全化に向けて取り組んでいくことにより、次の世代に未来をつないでいくことが我々の責任です。骨太方針2021における2025年度のプライマリーバランスの黒字化目標の達成のためには、社会保障を持続可能にするための改革など、歳出・歳入両面の改革をしっかり進めていく必要があります。
特に、歳出増が続く社会保障分野においては、診療報酬のメリハリある改定や実勢価格の動向を反映した薬価改定に加え、後期高齢者医療の患者負担割合の見直し、被用者保険の適用拡大等の制度改革を着実に実施し、社会保障関係費の伸びの抑制を図ってまいります。

そして、国際関係に目を向けると、新型コロナウイルス感染症による危機から世界経済の回復を図るとともに、ポストコロナを見据えて持続可能な経済成長を目指す取組が進展しています。昨年10月には、経済のグローバル化・デジタル化に対応するため、約140の国・地域が、100年来続いてきた国際課税原則の見直しに合意しました。日本はこの議論を当初から一貫して牽引してきました。12月には、低所得国支援で中心的な役割を担う世界銀行グループの国際開発協会(IDA)について、通常3年に一度の増資を日本が主導して史上初めて1年前倒し、史上最大の930億ドルの支援規模を達成しました。日本は増資交渉の最終会合を主催し、3,767億円の貢献を表明しました。また、地域的な包括的経済連携(RCEP)協定が本年1月1日に発効するなど、自由貿易を通じた持続可能な経済成長の取組も進展しています。
今後も関係各国や国際機関等と緊密に連携し、グローバルな課題の解決に積極的に取り組んでまいります。

最後に、財務省は、「国の信用を守り、希望ある社会を次世代に引き継ぐ」という組織理念を踏まえ、コンプライアンス・内部統制が実質的に機能し、時代にふさわしい働き方の中で、常に国民の視点に立って高い価値を社会に提供できる組織風土を創りあげることを目指し、引き続き組織改革に取り組んでまいります。
国民の皆様から期待され信頼される組織を築くため、地方支分部局を含めた財務省全体で、歩みを止めることなく着実に改革を進めてまいりたいと考えております。

本年は、新型コロナウイルス感染症による危機を乗り越え、「新しい資本主義」という数世代に一度の歴史的挑戦を始める一年にしていきたいと考えております。様々な政策課題に対応するため、本年も、副大臣・政務官とともに全力で取り組んでいくことをお誓い申し上げ、新年の挨拶とさせていただきます。