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金利指標改革入門―店頭(OTC)市場とLIBOR不正操作問題について―

東京大学 公共政策大学院 服部  孝洋*1

1.はじめに
本稿はLIBOR不正操作問題以降の金利指標改革について解説することを目的としています。ロンドン銀行間取引金利(London Interbank Offered Rate, LIBOR)とはロンドン市場における銀行による短期資金の融通に紐づいた指標金利であり、長い間金融市場において最も重要な変数の一つでした。LIBORは貸出の際に用いられるだけでなく、金利スワップなどデリバティブでも広く用いられています。事実、数千兆円規模の取引*2がLIBORと関連しており、そのLIBORが消滅するのですから、これがいかに金融市場によって激震が走る事実であるかご理解いただけると思います。
本稿では数回に渡り、LIBORの性質や成り立ちから始め、なぜLIBORの不正操作問題が起きたか、さらにこれに代わる代替金利としてどのようなものが望ましいかについて議論していきます。LIBORの不正操作問題が起きた原因やLIBORに代わる金利指標は市場参加者から見ても複雑なものですが、筆者の意見では、店頭(Over-The-Counter, OTC)市場の難しさに起因しています。その仕組みを理解することはLIBOR算出方法やその改善方法、さらには代替金利を考えるうえで必須といえます。そのため、少し遠回りになりますが、本稿ではOTC市場そのものの説明やそこで形成されるプライシングについても具体例を用いて説明します。
本稿の構成は次の通りです。まずOTC市場を説明した後、LIBORの算出方法や歴史的経緯などについて説明します。そのうえで、LIBOR不正操作の内容やLIBOR改革について説明を行います。LIBORの代替的な金利指標や国際的な動向については次回以降の論文で説明することを予定しています。

2.相対(店頭、OTC)市場
2.1 相対(店頭、OTC)取引と市場(取引所)取引
冒頭で記載した通り、LIBORの不正操作や一連の金利指標改革の流れを把握するうえで、OTC市場の仕組みを理解することが重要です。そこで本稿ではまずはOTC市場の仕組みやその中でなされる価格形成について議論していきます。
まず一般的に金融市場における取引には店頭取引(相対取引、OTC取引)と取引所取引(市場取引)が存在します。店頭取引は図1(店頭取引と取引所取引)の左図にあるように、AとBが相対で取引する市場です。一方、取引所取引とは、図1(店頭取引と取引所取引)の右図にあるとおり、AとBが取引を行う際、主に取引所が媒介に入って取引を行う仕組みを指します。
債券市場は主にOTC市場で取引されていますが、典型的には証券会社に所属するトレーダー(ディーラー)*3が債券を在庫で保有することで市場を作っています*4。トレーダーは顧客から買い注文があった場合、在庫で保有している債券を吐き出すことで顧客の注文に対応する一方、売り注文の場合、その債券を顧客から取得して在庫として保有します。こうしてみると、OTC市場で投資家が自由に売買できる背景には、トレーダーが常に売り注文と買い注文の間にたち、それぞれの価格を提示しているからということになります。この意味で、証券会社はまさに債券を売買可能にする市場を作っており、証券会社のトレーダーは債券市場におけるマーケット・メイカーといえます(トレーダーが常時プライスを提示することで相対取引を基本に売買を成立させることをマーケット・メイクといいます)。
読者がまず頭に入れるべきことは、ほとんどのビジネスは相対取引である点です。我々がコンビニで何かモノを購入するときでも、コンビニが有する在庫を吐き出すことで売買を成立させています。コンビニと(OTC市場である)債券市場の大きな違いは、在庫として抱えているものが国債の場合、その市場規模が巨大であり、その価格が刻々と変化することから、リスク管理の重要性がより一層大きい点です。
一方、取引所取引は店頭取引に比べ、特殊な取引といえます。通常のビジネスは誰かが在庫を有することで取引がなされるのですが、取引所に多くの人が買い注文と売り注文を持ち寄って、そこで取引所が買い注文と売り注文を上手くマッチングすることで売買が成立します。この取引が特殊であることは株式市場の事例を考えるだけで明らかです。通常、株式会社設立に伴い他者から出資を受ける場合、その取引は相対でなされます。その後、企業が大きくなり、その株式が取引所で取引されることを上場といいますが、上場にあたっては、主に取引所から求められる厳しい基準及び審査が求められます。株式が取引所で取引されることとは、このようなプロセスの結果であることを考えると、取引所取引は特殊な取引であることがわかります。
上述のように一定の条件を満たさなければ成立しない取引所取引ですが、その一方で透明性や流動性が高い点が特徴です。例えば大阪取引所に上場している国債先物は、上場させるため「標準物」と呼ばれる架空の証券が取引されています(現物へは一定のルールに基づき満期のタイミングで国債と受け渡すことができる仕組みになっています)。現物国債の場合、数百を超える銘柄があるところ、1つの架空証券に取引を集中させることで流動性が劇的に向上します。事実、日本国債先物は一日だけで数兆円を超える売買がなされており、売買に立脚したプライシングを可能にします(国債先物の仕組みは筆者と日本取引所グループ(JPX)で記載した「国債先物入門」*5を参照ください)。
2.2 債券におけるOTC市場のイメージ
OTC市場における実際の取引はどのようなものでしょうか。例えば、ある銀行が満期まで年限10年の日本国債を100億円購入したいと思った場合、銀行が証券会社に電話をかけてプライスを聞きます*6。この場合、典型的には、当該銀行を担当している証券会社のセールスが注文を受けます。注文を受けたセールスは、10年国債を担当するトレーダーに10年国債の現在のプライスを聞きます。トレーダーは入札などで購入して在庫として保有していた国債をいくらで売るかの意思決定をします。セールスはトレーダーが提示したプライスを投資家に伝え*7、投資家がそのプライスに合意すれば*8、取引は成立することになります。この場合、トレーダーが在庫として保有する10年国債を吐き出して、投資家がそれを購入します。
ここでは10年国債を例にしましたが、異なる年限の国債や、社債や金利スワップなど異なる商品でも基本的な構図は同じです。また、OTC市場においてどのような金融機関がマーケット・メイクを担うかは金融商品ごとに異なります。例えば、国債など債券市場に係るOTC市場は主に証券会社(投資銀行)が市場を形成しています。一方、為替もOTC市場で取引されていますが、銀行を中心にマーケット・メイクがなされています*9。なお、マーケット・メイクに際し、上述の説明を受けると、読者からみるとセールスは単なる仲介役に感じられるかもしれません。しかし、トレーダーと投資家は基本的に利害が対立するため*10、両者が折り合える価格を探すなど、実際の取引において重要な役割を担っています(詳細はBOX1をご覧ください)。
2.3 OTC市場における市場の流動性と公正な価格
上記を前提に、ここからある日のフェア(公正)なプライスを考えていきます。前述のとおり、日本国債先物は1日だけで数兆円の売買がなされる市場ですが、「標準物」と呼ばれる架空の証券を上場させることで、一つの証券に取引を集中し流動性を高めています。そのため、取引所取引でプライシングがなされる国債先物は市場の制度的な工夫により、売買に立脚した公正な価格を観測しやすいという側面を有します。
さらに、国債先物では、「板寄せ」を行うことで、市場が開く時間と閉まる時間の公正な価格を観測するための工夫もとられています。具体的には、11時時点から2分間かけて、その時点の板にある注文をベースに、投資家から買い注文と売り注文を募り、一定のルールに基づき、投資家の売買に基づいた11時2分時点における先物価格のプライシングを行います*11。これは11時2分時点における実際の売買に立脚したプライスという意味で、いわば公正な価格ということができます。15時から15時2分においても同様に板寄せを行うことで公正な価格を定めますが、これらの価格は市場が開いている終わりの値段であるため、実務では通常、「終値」といいます。
一方、OTC市場の場合はどうでしょうか。そもそもOTC市場の場合、無数にある債券をトレーダーが在庫として保有してマーケット・メイクをしていますから、その時点時点での公正な価格を見ること自体そもそも困難です。国債市場の場合、業者間での取引に相対的に厚みがあり、例えば日本相互証券が提供する板情報により国債の買い気配値・売り気配値(オファー・ビット)が観測しやすくなっています*12。しかし、例えば、15時時点における公正(フェア)な価格を決めようと思っても、15時時点でそもそも投資家が売買する保証は一切ありませんし、原理的に24時間空いているOTC市場には板寄せのような仕組みはありません。仮に15時に取引があったとしても、その取引は市場の規模から見て非常に小さい可能性もあり、(市場参加者の多くの意見が反映されていない、ごく一部の参加者の間の取引であるがゆえ)市場実勢から乖離したところで偶然取引が成立するかもしれません。特に日銀が量的・質的緩和を実施して以降、日銀が国債を市場から大量に吸い上げてしまいますから、流動性が相対的に高い日本国債ですら売買が減っているという指摘がなされています*13(特に日本の公社債市場には、10,000以上の銘柄*14があるので、1日中1度も取引されない銘柄がほとんどです)。
上述のような事情がありますから、15時時点における、ある債券(たとえば10年国債)のプライスを決める現実的な方法は、証券会社のトレーダーから15時時点で自分が考える「公正な価格」に関し、いわば投票を行うことで公正な価格を決めるというものです。すなわち、数十社の業者からある商品について公正と思われるプライスを提示してもらい、その異常値(典型的には上下数パーセント)をカットし、中央値や平均値を計算することで公正な価格を求めるわけです(このような平均の計算方法をトリム平均などといいます)。
このような考え方はOTC市場において様々な場面で用いられています。例えば、日本証券業協会は15時時点の各種債券の価格を算出していますが、現在、業者から提示されたプライスを用いトリム平均を計算することで算出してます(例えば、財務省が公表する国債の金利もこの値に基づいています)。国債の場合、このような算出方法により15時時点に決まった価格を「引け値」といいます*15。重要な点は、OTC市場において特定のタイミングにおけるフェアなプライスを得ることは、国債のように発行規模が大きい市場においてすら必ずしも容易でないという点です。この事実はLIBORの考え方や代替金利を考えるうえで最も重要な点の一つと筆者は考えています。


BOX 1:OTC市場においてセールスの役割
本稿を読まれた読者の中には、OTC市場においてセールスが不要に感じる読者も少なくないかもしれません。事実、筆者自身昔から感じてきた疑問であるし、また、多くの実務家が一度は感じたことがある疑問です。本稿では、セールスの役割として「トレーダーと投資家は基本的に利害が対立するため、両者が折り合える価格を探す」という説明をしました。これ以外にも、例えば、マーケットの状況を投資家に適切に説明したり、投資家のニーズをトレーダーに伝えることで適切な在庫管理を可能するなど、重要な役割を果たしています。
その一方で、実際、米国市場などでセールスを通さない電子的な取引が増えていると報道もあります。株式市場に目を移すと、1990年代にオンライン証券が勃興し、個人投資家の株式の売買はセールスを介した対面の取引からオンラインにシフトしていったことは周知の事実です。もっとも、この論点は10年以上前から指摘されながらも、少なくとも円債市場では運用規模が数兆円を超えるプロの投資家でさえ、セールスを介した取引が今でもなされています。本稿では、セールスの役割について積極的な説明をしましたが、セールスの役割は技術進歩などとともに常に見直されていくものだと筆者は感じています。


3.LIBOR(London Interbank Offered Rate)とは
3.1 LIBORとは
前節では、相対取引の市場ではある特定のタイミングにおける公正(フェア)なプライスを決めることは本質的に難しいという話をしてきました。このことは例えば午前11時の短期金利を定める際にも例外ではありません。そこで、LIBORについてもやはり前述のような投票の仕組みをとります。具体的には、LIBORではインターコンチネンタル取引所(Intercontinental Exchange, ICE)と呼ばれる組織がレファレンス・バンク(パネル行)と呼ばれる大手銀行に、ロンドン時間11時時点に銀行へ無担保で貸し出しをする金利(オファー・レート)を提示してもらいます*16。そのうえで、各行が提示したレートの上下25%を除いた残りの50%の平均値を計算することで「ロンドン時間の午前11時時点の金利」を計算します(図2.LIBOR算出方法のイメージ)。前述のとおり、11時点のプライスといっても11時時点において実際の取引に基づくデータを得ることは困難ですから、パネル行に11時時点で各行がフェアと考える貸出金利を提示してもらい、そのトリム平均を計算することで金利を算出しているわけです。
LIBORは、米ドル、ユーロ、ポンド、スイスフラン、円という5つの通貨について上述のメカニズムで算出がなされています。各通貨によってパネル行が異なるのも特徴です(各通貨のパネル行は図3.LIBORリファレンス・バンク(パネル行)一覧を参照してください)。また、満期までの期間については、「翌日、1週間、1か月、2か月、3か月、6か月、12か月」という7期間の金利が算出されています。6か月などの期間を持った金利を「ターム物金利」といいますが、米ドルの場合、3か月物、円金利の場合、6か月物が実務ではよく用いられます。
LIBORの最大の特徴は、LIBORとは大手銀行が提示した「オファー・レート」に基づく、いわば指標金利である点です。「オファー・レート」は実際に取引に基づいた金利ではなく、各銀行が貸出をする場合、金融機関が「提示した金利」であって、その水準で投資家や借り手が取引を行うかはまた別の話です。相対取引における特定の時点の価格取得の難しさを考えれば、投票のような形でLIBORを定めることは自然にも思われますが、その一方で、実際の売買に立脚しないがゆえ操作されうる余地を生んだわけです(不正操作については後述します)。
ちなみに、円金利のLIBORを「ユーロ円」LIBORという言い方をすることがあります。実は、金融において「ユーロ」とは欧州の通貨という意味だけでなく、「自国外(オフショア)」という意味も持っています。円LIBORの場合、上述のプロセスを考えるとロンドン(つまり日本国外)で定められる円の金利であるため、円に関するLIBORは「ユーロ円」LIBORになるわけです。
3.2 LIBORの歴史
そもそも、LIBORの歴史は冷戦時代までさかのぼります*17。米国外(ユーロ)で取引される米ドル、いわゆるユーロ・ドル市場の発展は、冷戦構造と密接な関係を有していました。当時冷戦状況であったソ連政府やその関連する民間企業からすれば、米ドルの決済を米国で行った場合、例えば米国に口座を凍結されるなどのリスクを有します。そのため、米国以外で米ドルを決済する需要があり、その市場が欧州で発展していくことになります。これが米国外(ユーロ)で米ドルが取引されるユーロ・ドル市場の起源といわれています。
LIBORの起源は1960年代のユーロ・ドル市場において組成されたシンジケート・ローンが発端とされています。イランの皇帝向けに巨大な融資を行う案件を請け負ったマニハニと呼ばれる銀行(今のJPモルガン・チェース)は自行だけでその融資が不可能であったことから、ロスチャイルドなどの協力を経て、協調融資(シンジケート・ローン)を実施します。当時はインフレの懸念が高く、金利リスクをヘッジするためその利払方式として変動金利が用いられたのですが*18、その変動金利を決定するため、主幹事行がシンジケート・ローンの参加行から調達金利を聞き取り、それを平均化するという形で6か月ごとの金利を設定するという仕組みを作ったわけです。これは今のLIBORの原型ともいえるものです。
その後、ユーロ・ドル市場は拡大していきます。例えば、オイルショックにより、アラブ諸国のドル資金が中東戦争などを背景に、米国への資金流入を忌避し、欧州にドル資金が流入しました。また、サッチャーによる金融改革などロンドン・シティが金融センターとしての地位を確立していきます。LIBORの金利指標の拡大にはフィナンシャル・タイムズの役割も看過できません。1980年6月から、フィナンシャル・タイムズが主要行の資金調達金利を聞き取り、その平均値を算出し掲載するようになりました。これはLIBORという金利指標の透明性の向上に寄与しました。
その後、1980年代には金利スワップなどデリバティブ取引が拡大していきます。服部(2020b)で解説した金利スワップの取引が始まったのも1980年代からです。そこで、1986年に英国銀行協会(British Bankers Associations, BBA)がイングランド銀行との協力により、LIBORの公表を行うようになります。上記の流れに鑑みると、LIBORという金利指標は、そもそもニーズがあるものが業界や中央銀行の後押しにより権威付けされ、重要なインフラとなったわけです。
3.3 「先決めターム物金利」であるLIBOR
ここからLIBORの特徴について考えていきます。まず、LIBORが有する非常に重要な特徴は「先決めターム物金利」である点です(この点がLIBORの代替金利を考えるうえで決定的に重要な特徴になります)。例えば、読者がある金融機関から5年間お金を借りたとして、その金利が「6か月円LIBOR+2%」という変動金利で決まっていたとします。現在、6か月円LIBORの金利が前述の投票メカニズムで1%に定まり、読者が支払う金利が3%(=1%+2%)になったとします(このように変動金利が定まることを「フィクシング」といいます)。この場合、読者が今から6か月後に支払う金利は、(3%が年率表記であることに注意すれば)その半分である「1.5%×元本(残高)」になります。この場合、読者は6か月後に「事前に定められた金利」を支払います。半年後、また金利がリセットされて上述の投票メカニズムで6か月の金利が設定され、さらにその半年後に事前に決められた金利を支払います。このようなプロセスを満期まで繰り返していくことになります。この取引は、(1)6か月後に支払う金利が事前に決まっていること、また、(2)支払う金利が(1営業日ではなく)半年という期間を有するという特徴を持っていますが、専門用語を用いれば、前者が「先決め金利」であり、後者が「ターム物金利」と呼ばれます。LIBORはこの二つの特徴を有していることから、「先決めターム物金利」と整理されます。
このようなLIBORの性質は読者にとって当たり前に感じられるかもしれません。事実、我々が普段直面する金利はこのような性質を持っています。しかし、LIBORが「先決めターム物金利」を簡単に構築できる最大の理由は、前述のような投票の形でLIBORが決められているからです。LIBORでは、パネル行の投票で決まりますから、具体的には、パネル行に対して、「3か月間や6か月間、金融機関に貸出をする場合の(先決めの)オファー・レートを提示ください」と聞き、トリム平均をとることで、先決めターム物金利を計算することができます。
もっとも、実は、このような投票によらず、実際の取引に立脚した先決めターム物金利のプライスを得ることは簡単ではありません。なぜなら、円市場における銀行間のコール市場において6か月間の貸借は取引がほとんどなされておらず、公正な価格が容易に観察できないためです。上述のように、先決めターム物金利は使いやすいなどの特徴がありますが、一方で銀行間のコール市場では実取引が少ないためにフェアな価格かがわかりにくいという問題点を有しているわけです。近年の低金利政策等によりインターバンク市場の流動性が低下傾向にあることから、この問題は構造的な問題といえます(実はインターバンクの流動性低下もLIBOR停止の重要な要因なのですが、詳細は別の論文で記載します)。したがって、LIBORの代替金利を考えるうえで、実際の資金取引に立脚するという観点でいえば、「先決めターム物金利」という特徴を有する金利指標は実取引が少ない点がネックになるわけです。いずれにせよ、LIBORが「先決めターム物金利」という特徴を持っており、この利便性が高いということを認識しておくことは重要です。
3.4 ターム物金利としてみたLIBORの構成要素
ところで、LIBORはしばしば「リスク・フリー・レート」として取り扱われます。実際、LIBORに代わる代替的な金利指標は、リスク・フリー・レートを模索する作業とされます。しかし、LIBORをリスク・フリー・レートとして取り扱うことに違和感を持つかもしれません。というのも、LIBORは銀行間の資金融通にかかる指標金利であるため、完全にリスク・フリーではなく、銀行の信用リスクを反映していると解釈することが自然であるからです。たしかに、金融危機以前は、大手金融機関がデフォルトする可能性が考えられなかったため、ファイナンスのテキストではLIBORをリスク・フリー・レートとして取り扱われてきました*19。もっとも、リーマン・ブラザーズの破綻を発端とした金融危機以降、上述の想定は成立しないといえましょう。そのため、LIBORの代替金利を考えるうえで、LIBORを純粋にリスク・フリーの部分とその他の部分を分けて考える必要が出てきます。
図4(ターム物金利という観点でみたLIBORの構成要素のイメージ)は日銀の資料などでよく用いられるLIBORの構成要素のイメージを示したものです。同図において、(1)として「リスク・フリー・レート(TONA)」とあります。無担保コール翌日物金利(Tokyo OverNight Average rate, TONA)とは、無担保コール市場で形成される1営業日の金利になります。ただ、LIBORは前述のとおりターム物金利であるため、(2)TONAを用いた複利計算することでターム物金利と利子計算の期間を合わせる必要があります(TONAやその複利の計算については次回の論文で詳細に説明します)。さらに、前述のとおり、LIBORは金融機関のクレジット・リスクなどのリスク・プレミアムが追加されるため、これにさらに(3)金融機関のクレジット・プレミアム等*20が追加されます(TIBORもLIBORと同様、(2)と(3)も含みますが、TIBORについては今後の論文で詳細に説明します)。


4.LIBOR不正操作事件およびLIBOR改革
4.1 なぜLIBORの不正操作が起こったか
ここからLIBOR不正操作問題について説明をしていきますが、ここまで読んでくださった読者はLIBORがそもそも不正操作されうる余地があったことはすでに想像がついているかと思います。繰り返しになりますが、LIBORの重要な点は実際の取引に基づいた金利ではなく、あくまで各銀行によるオファー・レート、すなわち、銀行が提示する金利により構築される指標金利でした。このオファー・レートで実際に投資家が取引するとは限りませんし、そもそも取引されないと分かっているオファー・レートを銀行が提示しているわけですから、実態と乖離しうるリスクを有していました。その意味で、LIBORには本質的に脆弱性があったわけで、いずれ表面化する問題を有していた指標とみることもできます。
それではなぜ2008年ごろにこの問題が表面化したのでしょうか。良く指摘される点は、金融危機においてLIBOR提示行の投票行動にゆがみが生じていたという点です。当時、大手行はデフォルトする可能性を有していたわけですが、銀行のデフォルトの可能性が上がることは銀行の調達金利の上昇を意味しますから、銀行の調達金利が上昇した場合、自行の信用力が落ちているというシグナルを市場に発することになります。銀行の調達金利を表すLIBORは前述の通り投票のメカニズムで決まっていましたから、パネル行は、信用力が低下していることを隠すため、自らの金利を低く設定し、LIBORが低くなるように誘導するインセンティブを有していました。
また、金融危機以降は、バーゼル規制により銀行のバランス・シートを大きくすることに対して数々の規制がとられたわけですが、金融危機期以前は金融機関が巨大なポジションを作ることが可能であった期間とも言えます。LIBORそのものは銀行のオファー・レートに基づく指標金利になりますが、金利スワップなどLIBORに連動する金融商品により金融機関のトレーダーは巨大なポジションをとることが可能でした。そのため、2000年代はデリバティブの技術などが発展する中で、パネル行はLIBORに紐づく巨大なポジションを有しており、少数のパネル行で指標金利を決定していましたから、パネル行で共謀するインセンティブが発生しやすい環境があったといえます*21。実際、一部のトレーダーが自分のポジションに有利に誘導するため、関係者を巻き込み金利を操作していた点も大きな問題になりました。
 LIBORの不正操作は発覚後すぐに巨大なスキャンダルになりました。2008年にウォール・ストリート・ジャーナルが報道したことが発端とされていますが、その後、大手行が当局に対して巨額な制裁金を支払うという事態になりました。また、LIBORの不正に関与したとされるトレーダーの中には逮捕者も出ました。政府としては巨大な取引のベースとなるLIBORについて改革をする必要性に迫られたわけです*22。
4.2 LIBOR改革
繰り返しになりますが、LIBORが操作された最大の要因は、そもそも実際の取引に基づかず、単なるオファー・レートの投票にすぎないという点です。最終的にはLIBOR公表の停止は決定され、実際の取引に基づいた指標が導入されることになりましたが、そのような決定がなされるまでに、LIBORを構築するうえで出来るだけ実態の取引に合わせるなどしてLIBORを維持させながら改善する取り組みがなされていました。特に、英国の金融サービス機構の市場監督部門の責任者であったマーティン・ウィートリー氏による2012年のLIBOR改革案では、LIBORそのものの廃止というトーンより、LIBORの枠組みを維持する一方で、ガバナンスや監督の強化などを通じて質と信頼性の向上させる改革案が示されました*23。この改革案をしばしばウィートリー・レビューといい、これがLIBORを算出していたロンドンでなされた最初の重要な動きといえます。
このような問題意識は国際機関でも展開されます。例えば、証券監督当局や証券取引所等から構成されている国際機関であるIOSCO(証券監督者国際機構)は、LIBORの不正が発覚したタイミングから議論を開始し、2013年7月に「IOSCO金融指針に関する原則の最終報告書」を発表し、LIBORの頑健性向上と維持をベースに、(1)ガバナンス、(2)指標の品質、(3)算出方法の品質、(4)説明責任、の4分野における合計19の原則を提示しました*24。また、各国の財務省や基準作成主体、IMFなどにより構成される金融安定理事会(Financial Stability Board, FSB)は、2014年7月に「主要な金利指標の改革に関する報告書」を発表し、「金利指標は可能な限り実際の取引に基づくべき」との考え方を示したうえで、LIBORなどの指標金利が、できる限り取引実績に立脚するなど,操作の余地が少ない指標として構築されることを提言しました*25。FSBは銀行の信用リスクをほとんど含まないリスク・フリー・レートを構築し、目的に応じてLIBOR等と使い分けることも提言しており*26、LIBORの代替指標改革を大きく前進させました。国際的な指標改革の動きについては別の論文で議論しますが、ここで強調したいことは、LIBOR 不正操作事件を発端として、LIBORの代替金利を模索するという動きだけでなく、LIBORそのものを実態の取引に反映させる形で改革する流れが生まれたわけです。
4.3 ウォーター・フォール・アプローチ(構造)の導入
上記をうけて、LIBORの質と信頼性の向上させる施策が次々と採られます。例えば、LIBORを算出する際、当初、BBAがその役割を担っていたのですが、BBAは英国で活動する銀行の業界団体であるため、BBAがパネル行からオファー・レートを収集してLIBORを算出すること自体一定の利益相反があるとみることができます。そのため、ICEが2014年2月より、英国の規制当局である英国金融行為規制機構(Financial Conduct Authority, FCA)*27から権限を付与される形でLIBORの算出及び運営を始めました。
LIBORの算出方法そのものの改革もなされます。特に重要な改革がいわゆるウォーター・フォール・アプローチ(構造)の導入です。ウォーター・フォール・アプローチのイメージは図5 ウォーター・フォール・アプローチになりますが、同アプローチでは、水が落ちていくようなイメージで、実際の取引に近いものから順番に採用する形をとります。実取引ベースのデータが得られない場合は、実際の取引に近い値を採用し、最後は専門家による判断がなされます。前述のとおり、LIBORの操作が可能になった背景には、実際の取引を伴わないオファー・レートに基づいていたためです。そのため、まずは実態に近い取引を採用し、それが得られないのであれば実態に近いものを順番に採用していくことで、LIBORの値を実態に近づけていくことが可能になります*28。
このアプローチにおいて最も望ましい値は実取引ベースですが、そこではVWAP(Volume Weighted Average Price, ブイワップ)という計算方法が採用されています。VWAPとは単純に売買に基づく値だけでなく取引の金額に応じて加重平均するというアイデアであり、金融の実務で広く活用されています。この場合、取引量が多いものにウェイトを置きながら加重平均をするため、仮に一部で取引があったとしても金額が少ないものについてはアンダーウェイトされますから、操作が困難な指標といえます(前述したTONAはVWAPに基づいた金利指標ですが、その算出方法は次回の論文で丁寧に説明します)。
LIBORの指標改革では内部体制に関する改革も進められています。特に、LIBOR不正操作では一部のトレーダーがBBAに提出する金利に働きかけたという問題がありました。そのため、トレーダーとLIBORを算出するレートを提示する人間の接触を遮断するほか、明確な罰則規定を課すなど、共謀を防ぐための措置が採られています。例えば、同業他社のトレーダーとのチャットやメールでの連絡を禁止とする会社があったり、ブルームバーグのチャット・メールのモニタリング機能が拡充されるなどガバナンスが強化されています。このような工夫により、前述の専門家による判断の際、バイアスを持った値が生まれる余地をなくすことや、LIBOR不正操作の時に起きたような共謀を防ぐ措置がとられているわけです。


5.終わりに
本稿はOTC市場の概要を説明した後、LIBORの基本的な仕組みや、それに伴うLIBORスキャンダル、その後のLIBOR改革について触れました。重要な点は、OTC市場において必ずしも公正な価格を見つけることが簡単ではないことがLIBOR不正操作問題の背後にある点です。たしかにLIBOR公表の停止は決定されましたが、この本質的な問題は今後も残り続ける問題です。そのため、LIBORが有する問題を防ぐために作られた工夫は金融の実務において様々な場面で活用されていきます。
次回は我が国におけるLIBORに代わる代替指標に焦点を当てて説明を行います。具体的にはTONAやTORF、TIBORなどといったLIBORの代替指標について説明する予定です。


参考文献
雨宮正佳(2020)「わが国の金利指標改革」時事通信社『金融懇話会』における講演
井上武(2012)「LIBOR改革に乗り出す英国」『野村資本市場クォータリー』2012 Autumn
太田康夫(2019)「誰も知らない金融危機 LIBOR消滅」日本経済新聞出版
小立敬(2012)「英国の新たな金融監督体制―マクロプルーデンスに重点を置いた体制づくり」『月刊資本市場』No. 323.
服部孝洋(2019)「イールドカーブ(金利の期間構造)の決定要因について―日本国債を中心とした学術論文のサーベイ―」『ファイナンス』10月号、41-52.
服部孝洋(2020a)「日本国債先物入門―ファイナン日本国債との裁定(ベーシス取引)とレポ市場について―」『ファイナンス』1月号、70-80.
服部孝洋(2020b)「金利スワップ入門―基礎編―」『ファイナンス』8月号、56-65.
服部孝洋(2020c)「金利リスク入門―デュレーション・DV01(デルタ、BPV)を中心に―」『ファイナンス』10月号、54-65.
デイヴィッド・エンリッチ(2020)「スパイダー・ネットワーク 金融史に残る詐欺事件―LIBORスキャンダルの全内幕」ハーパーコリンズ・ジャパン
ジョン・ハル(2016)「フィナンシャルエンジニアリング〔第9版〕―デリバティブ取引とリスク管理の総体系」きんざい
Snider, A., Youle, T.(2010)“Does the LIBOR Reflect Banks’ Borrowing Costs?” Working Paper.


*1)本稿の作成にあたって、市川達夫氏、川名志郎氏(金融庁)、後藤勇人氏、富安弘毅氏等、様々な方に有益な助言や示唆をいただきました。本稿の意見に係る部分は筆者の個人的見解であり、筆者の所属する組織の見解を表すものではありません。本稿の記述における誤りは全て筆者によるものです。また本稿は、本稿で紹介する論文の正確性について何ら保証するものではありません。本稿につき、コメントをくださった多くの方々に感謝申し上げます。
*2)金融庁資料では、「2014年3月時点におけるLIBORを参照している金融商品・取引の契約金額は、推計で約220兆ドル。円LIBORの契約金額は約3,140兆円」(金融庁「LIBOR公表停止の課題と対応について」より抜粋)としています。
*3)筆者の経験上、実務家はマーケット・メイカーを指すうえで、トレーダーとディーラーという2つの表現を用います。もっとも、トレーダーをマーケット・メイカーではなく、単なる仲介者のような形で使うことがあるなど、厳密な定義が残念ながら存在しないため、文脈に応じて、使い手がマーケット・メイカー以外を指している可能性がある点に注意が必要です。
*4)トレーダーはたとえ国債を保有していなかったとしても、注文があった国債を借りてきて販売することもできます。この場合、トレーダーはショートのポジションになります。国債についてはレポ市場と呼ばれる現物の貸借を行う市場があります。レポ市場について服部(2020a)を参照してください。
*5)https://www.jpx.co.jp/derivatives/products/jgb/jgb-futures/index.htmlを参照してください。
*6)電子取引を行うこともできますが、筆者の理解では現時点でも電話による取引が主流です。
*7)日本国債について投資家が業者にプライスを聞いた場合、10年国債の単利が提示されます。もっとも、日本国債以外は(金利でなく)価格が提示されることがある点に注意が必要です。
*8)市場参加者はこの際「決める」あるいは「Done」と表現します。
*9)細かな点をいえば、我が国の場合、銀行がプライマリー・ディーラーになっていたり、証券会社も為替のマーケット・メイクをしているなどありますが、ここでは全体的なイメージを記載している点に注意してください。
*10)例えば、トレーダーが在庫を有する中、国債の価格を安く売った場合、トレーダーにとってはマイナスになりますが、買い手にとってはプラスになります。一方、国債の価格を高く売った場合はトレーダーにとってはプラスになりますが、買い手にとってはマイナスになります。
*11)板寄せは非常にテクニカルであるため、詳細な説明は避けますが、詳細を知りたい読者は日本取引所グループのウェブサイトなどをご参照ください。
*12)日本相互証券はしばしばBroker’s Broker(BB)と呼ばれます。BBとは、証券会社等のトレーダー間で売買する業者間取引の専門仲介業者になります。Broker’s Brokerは日本相互証券以外にもありますが、日本相互会社は我が国での最初のBroker’s Brokerであるなど、BBといった場合、日本相互証券を指すことが少なくありません。
   日本相互証券は各証券会社等向けに、日本国債の銘柄ごとの板を提示しています。その板にはその時点での各銘柄の気配値や当日の出来高、直近売買がなされた価格(利回り)が刻まれています。なお、日本相互証券を通じた売買は前場(午前8時40分から午前11時5分)、後場(午後0時25分から午後3時20分)、イブニング・セッション(午後3時30分から午後6時5分)で構成されています。詳細は下記を参照ください。https://www.bb.jbts.co.jp/ja/deal/rule.html
*13)実際、業者間の取引において、10年国債でさえ1日一度も売買がなされなかったという日も存在します。例えば、日本経済新聞(2021/6/2)「国債売買、21年ぶり低水準 10年債の5月 金利動かず海外勢離れ 1日は11カ月ぶり不成立」をご参照ください。
*14)発行体が同じでも満期や利率が異なれば違う銘柄になる点に注意が必要です。
*15)日本相互証券は独自に当日午後3時時点の国債価格の引け値を出しています。実務家は「BBの引け値」という表現を使います。日本相互証券は2019年に引け値の算出方法を変更しており、現在は投票のような形でない仕組みがとられています。詳細は下記をご覧ください。https://www.bb.jbts.co.jp/ja/marketinfo/bb_hikene.html
*16)後述する通り、LIBORの算出については、BBAからICEに移管されましたが、実施の算出・公表は、ICEの子会社であるICE Benchmark Administration(IBA)が担っています。
*17)ここでの記述は主に、金融庁資料や太田(2019)などに基づいています。詳細はそちらをご覧ください。
*18)金利リスクとは例えば貸出をする際、受取金利を長期にわたり固定するため発生します。そのため、金利リスクを軽減する一つの方法は金利を変動金利にすることです。金利リスクの詳細は服部(2020c)を参照してください。
*19)ハル(2016)では、「本書の大部分で“無リスク金利”という場合、実際にどの金利を参照するかは明確に定義していない。これは、デリバティブの実務家は無リスク金利の代替として多くの異なる金利を使っているためである。AA格の金融機関が短期間の借入れでデフォルトすることもわずかながらありうるので、LIBORは無リスク金利ではないが、金融機関は伝統的にLIBORレートを無リスク金利として使ってきた。しかし、これは変わりつつある」(p.125)と説明しています。
*20)クレジット・リスク以外にターム・リスクなども含まれます。本文で記載したとおり、市場で用いられる典型的なLIBORは、6か月円LIBORや3か月ドルLIBORなどである中、ここではTONAを複利計算することでターム物金利と同じ期間の金利(図における(1)+(2))を算出することを想定しています。そのため、TONAに基づく複利金利(図における(1)+(2))にはターム・プレミアムが含まれていないと考えられます。ターム・プレミアムについては服部(2019)を参照してください。
*21)エンリッチ(2020)では、Snider and Youle(2010)を引用し、「根本的な理由、たとえば各銀行のポートフォリオがLIBORの影響を受けやすいことなどが誘因となり、彼らが自分たちのポジションに応じてLIBORを動かしている」(p.251)と指摘しています。
*22)LIBOR不正問題の詳細は、エンリッチ(2020)を参照してください。
*23)ウィートリーによる改革案の詳細については井上(2012)を参照してください。
*24)IOSCOによる原則については金融庁による抄訳(IOSCO(証券監督者国際機構)金融指標に関する原則の最終報告書)を参照してください。ここでの整理は金融庁「LIBOR公表停止に金融機関はどう対応すべきか」の整理を参照しました。https://www.fsa.go.jp/inter/ios/20130718-1/131225_kariyaku.pdf
*25)本節における「主要な金利指標の改革に関する報告書」の内容については雨宮(2020)による整理を参考にしています。
*26)この方針は、複数の金利指標の適切な使い分けを旨とすることから、「マルチプル・レート・アプローチ」と呼ばれています。
*27)英国では2012年に金融サービス法が制定されることで、金融サービス機構(Financial Services Authority, FSA)が解体され、金融監督委員会(Financial Policy Committee, FPC)、健全性規制機構(Prudential Regulation Authority, PRA)、金融行為規制機構(Financial Conduct Authority, FCA)が設置されました。FCAでは消費者保護や市場規制を主に担うとされています。詳細は小立(2012)を参照してください。
*28)フォーター・フォール構造はLIBORそのものの指標改革だけでなく、LIBOR指標問題以降、様々な場面で用いられており、金利指標改革を考えるうえで必須な考え方といえます。例えば、TIBORや東京ターム物リスク・フリー・レート(Tokyo Term Risk Free Rate, TORF)でもこのアプローチは採用されていますが、具体的な算出のイメージは次回の論文で説明します。