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コロナ危機下におけるフランスの制度改革の行方~医療提供体制改革編・下~


在フランス日本国大使館参事官 大来  志郎

 「医療提供体制改革編・上」においては、世間の注目を集めた看護師・パラメディカル等の報酬引上げの政治的決着までを見た。「下」においては、その他の論点を含めたセギュール医療全体会議の結論、今日に至るまでの経過や財政的影響を見る。専門的で地味な論点も多いが、改革が全体としてどのような歩みをたどっているかを見てみたい。

1.セギュール医療全体会議の結論
(セギュール報告書)
 セギュール医療全体会議は50日に及ぶ議論がなされ、90団体、約12万人の関係者が参画、100回の個別交渉、200回の地域での話合いが行われた。看護師・パラメディカル等の報酬引上げの決着から周回遅れとなる2020年7月21日に、合意事項を詳細な文書(synthèse)にした報告書がまとめられ*1、閉幕した。合意事項の詳細は表1(セギュール医療全体会議の結論(セギュール報告書)項目)に示すように、キックオフした際に提示された四つの柱それぞれにつき10項目程度ずつ、合計33項目からなる。
 看護師・パラメディカル等の報酬引上げ(項目1、2、3)以外では、以下の三点にまとめられる「大ダマ」が注目に値しよう。
(1)保健分野への投資(項目9、10、12、14、16、17)
 第一に保健分野への投資を充実強化することが謳われている。
 2018年に策定された「私の保健2022」は、地域における病院・診療所連携ネットワークの強化や治療の質向上に向けた診療報酬の改革に重きがおかれ、保健分野への投資に関しては 周縁的論点との位置づけだった。金額的にも病院投資には3年間で10億ユーロ程度を見積もる程度だった。
 これに対して、セギュール報告書では、イ)公立病院の累積債務の肩代わりとして130億ユーロ、ロ)保健分野への投資に5年間で60億ユーロが投じられるとされている*2。*3
イ)公立病院部門の累積債務については、全体では300億ユーロ規模に膨れ上がっているといわれており、これが病院組織の改革の足かせの一つになっていると指摘されていた。国がその約3分の1にあたる100億ユーロ及び利払い分30億ユーロを引き取ることとなった。
 また、ロ)保健分野への投資としての60億ユーロについては、21億ユーロがEHPAD(les établissements d’hébergement pour personnes âgées dépendantes)という介護施設等向け、25億ユーロが病院・診療所等の連携強化向け、14億ユーロが医療部門におけるデジタル化支援向けという内訳とされた。*4
(2)医療費支出に関連する改革(項目11、12、15)
 第二に、医療費支出に関連する諸改革も提言されている。
 まずは病院に関する診療報酬の改革である。従来はT2A(tarification à l'activité)と呼ばれる出来高払いの割合が多くを占めていた。例えば病院部門を全体でみると、2018年段階では、病院の診療報酬の63%がT2Aのような出来高払い部分となっていた。
 T2A*5に関しては、近年、過剰治療行為など「量への駆け込み」を誘発している、治療の質・予防効果を評価できていない、治療に携わる関係者間の協働を促す仕組みとなっていない、などの批判が強くなっていた*6。マクロン大統領(候補)は、2017年の大統領選挙キャンペーン中にT2Aによる支払いの割合を「50%を上限とする」と約束していた*7。
 既に2018年策定の「私の保健2022」の工程表の一環として、イ)T2Aなど出来高で評価される病院の診療報酬割合を2022年までに50%に引き下げること、ロ)残りの50%については慢性疾患のフォロー、治療の質と適切性、診療科の有機的再編成、医療関係者の連携・グループ診療といったファクターに基づいて評価すること、ハ)T2A部分ついても診療報酬に組み入れられる個々の診療項目の適切性・先進性等を不断に検証し逐次項目入替えをしていくこと、等を目指す取組みが進められていた*8。*9
 セギュール報告書では、救急科、精神科、リハビリ科、近接病院については2021年から、急性期医療、周産期医療、慢性期医療については2022年から報酬体系の改変が本格実施されることが盛り込まれている。「私の保健2022」の延長線上に立ちつつ、より具体化に努めている*10。
また、ONDAM(L’Objectif national de dépenses d’assurance maladie。疾病保険全国支出目標)改革についてもセギュール報告書には盛り込まれている。ONDAMは、フランスの公的医療費管理を特徴付ける仕組みとして日本でも広く知られているところである*11。2018年策定の「私の保健2022」段階ではアジェンダにのぼっていなかったが、医療政策の長期的問題に対応する必要、医療政策や治療技術進展に関する目標と医療財政の連関を強化する必要などが意識され、コロナ危機発生以前から政府部内では検討が進められていたところ*12、このタイミングでセギュール報告書に盛り込まれることとなった。
(3)医療ガバナンス改革(項目18~23、25、28、30)
 第三に、「私の保健2022」の懸案でもあった医療部門のガバナンス改革も盛り込まれている。
 病院内部のガバナンスに関して、2009年のHPST法*13(病院改革と患者、保健および地域に関する2009年法)により行政官に権限が集中しすぎたという、「行き過ぎ」の軌道修正を図ろうとしている。人事・予算・調達の権限が行政官ポストであり保健大臣の指名により就く公立病院長に集中し、医師等の医療職の関与が低下していた。意思決定への医療職の参画拡大や診療料への管理委任など、今般のセギュール報告書において「一定の巻き戻し」が提言されるに至った。
 また、地域医療のあり方に関連して、地域における病院と診療所の連携を強化することが謳われている。
 セギュール報告書を、それが公表された2020年7月の視点において、どのように評価すべきであろうか。
 報酬引上げや保健分野への投資など財政支出項目は報告書に書き込まれることで事実上即時に既得権となった一方で、治療の質の向上・過剰診療の抑制に向けた診療報酬の改革、医療ガバナンス改革などはこの時点では紙の上だけで方向性が示されただけである。実現度合いに非対称性が潜在していることは否めない。
 報酬引上げに関しては、ストライキが激しくなった2019年当時、年間800ユーロ程度のボーナス(prime)だけを政府側が提示していた相場観と比べると、「コロナ危機に押される形で政府は大盤振る舞いをした」と見ることも可能である。
 一方で、第一回ロックダウン解除直後の2か月間で多くの関係者を巻き込み、比較的短期間でこれらのパッケージをまとめ上げたことは一定の評価が与えられるべきものと考えられる。
イメージ1:「私の保健2022」の中における病院の診療報酬の評価要素の改変イメージ(T2Aの割合を50%に減らす方向性)

2.待遇改善に関する政策再調整
 このように2020年夏前に迅速に取りまとめられたセギュール報告書だったが、2020年秋以降、新型コロナウイルスの感染が再度拡大し、医療従事者の不満が充満しかねない状況を前に、フランス政府は目玉の報酬引上げに絡んで、以下に見るように小刻みに追加策を講じるなど、政策の再調整を迫られている。
(1)報酬引上げの前倒し実施
 報酬引上げ(例えば公立病院の看護師で月額183ユーロ規模)は二段階で実施することとされていた。このうち90ユーロ分については2020年9月から実施されていた。一方、第二弾、残りの93ユーロに相当する部分については、セギュール医療全体会議の合意上は、2021年3月からの実施とされていた。
 2020年10月中旬の憂慮すべき第二波を受け、セギュール報告書に署名しなかった労働組合であるCGT、SUDなどが「セギュール医療全体会議の合意内容は不十分」、「当初要求どおり月額300ユーロを要求」として新たなストライキを呼びかける動きを見せた*14。このタイミングで、カステックス首相は、残りの月93ユーロ部分についても年内前倒し実施を公表した*15。*16
(2)報酬本体以外の待遇改善策追加
 2020年10月21日には、医療従事者向けの3か月時限措置(10月~12月)として、以下の待遇改善策が公表された*17。
・超過勤務手当5割増(例えばEHPADで働く中堅の補助ソーシャルワーカーの場合、時間当たり手当が12.85ユーロから19,27ユーロに割増)
・取得しなかった休暇の買取措置(政府は「医療関係者によっては13か月目の給与を手にするのと同等だ」とプレゼンテーション)
・ARS(地域圏医療庁)を通じた1億ユーロ規模の各種支援(他の医療施設に応援要員として勤務する場合の移動費用・ホテルコスト、休日勤務の場合の子の監護費用、院内保育所の利用料などの助成)
(3)勤続年数に応じた俸給引上げの具体化
 2021年4月には、ヴェラン連帯保健大臣が医療従事者の勤続年数に応じた俸給表上の報酬引上げの具体的内容を公表した。いわゆる「月額183ユーロ」の報酬引上げを「一階部分」とするのであれば、この勤続年数に応じた俸給引上げは「二階部分」に相当するものである。項目としてはセギュール報告書の一部を成すが、実施に移すには、別途労働組合との合意が必要だった*18。
 実施は2021年10月から段階的になされ、50万人超の医療従事者が裨益する見通しとなっている。勤続年数に応じて累進的になっており、例えば一般的な治療行為に従事する看護師の例では、勤続1年の者で月額+107ユーロ、勤続5年で同+152ユーロ、勤続20年で同+278ユーロ、キャリアの最終局面では同+353ユーロなどとなっている*19。
(4)報酬引上げの対象拡大
 セギュール医療全体会議の合意に含まれる報酬引上げの対象は、2020年の年内は公私の病院やEHPADという介護施設に限定されていた。その他の福祉部門に関する報酬問題は先送りされ、「セギュール医療全体会議の忘れ物(les oubliés du Ségur de la santé)」と言われていた。しかしながら、カステックス首相はこの問題の検討をヌーヴェルアキテーヌ地域圏医療庁の元事務局長ミシェル・ラフォルキャドゥ(Michel Laforcade)氏をヘッドとするワーキンググループに諮問しており、その成果があらわれるかたちで、2021年に入ると月額183ユーロ相当の報酬引上げを福祉部門の大部分にも拡大する決定がなされた*20。
 9万人程度が裨益し、2020年のセギュール報告書とりまとめ段階に見込まれていた予算規模に対して5億ユーロほど所要額が増加する予定となっている。*21
写真1:ミシェル・ラフォルキャドゥ氏(ARS Nouvelle-Aquitaine)

3.一連の政策対応の財政的影響
 コロナ危機の前後を比較すると、もちろん社会保障財政は悪化しているが、これには、イ)新型コロナウイルス感染拡大に直接的に緊急対応するための支出拡大、ロ)コロナ危機に伴う経済減速を背景とする保険料等の収入の減少、ハ)セギュール報告書関連項目の実施、と主に三つの要因が存する。
ハ)セギュール報告書関連項目がどのような財政規模だったのかは表2(セギュール医療全体会議の報告書項目の財政的影響)、社会保障会計の収支がコロナ危機によってどのような要因で悪化したかは図1(コロナ危機前後での社会保障会計収支見通しの悪化幅とその要因)*22のとおりである。*23
イ)の緊急対応の支出やロ)保険料等の収入の減少に比べればハ)のセギュール報告書関連項目の財政的インパクトは短期的には最大の悪化要因ではない。
 ただし、セギュール報告書関連による収支悪化は恒久的なものであり、平時の医療費全体2000億ユーロ程度に対して4%~5%程度の規模となることを踏まえれば、決して無視できるものでもない。
 セギュール報告書関連項目を盛り込んだ2021年社会保障予算法案の議会審議において、右派共和党は「これらはすべて、我々の子供たちへの負債の付け回しに過ぎない」と批判し、左派社会党は「報酬引上げの水準は最低レベルのもので、及第点にはほど遠い」と批判をしている*24。

4.セギュール報告書の改革項目の進展とフォローアップ
 報酬引上げと両輪を成すはずの諸改革については、関係者による中期的な不断の努力を必要とするものも多く、フランス政府は、セギュール医療全体会議の議長を務めたニコル・ノタ氏を横滑りで委員長に据える形でセギュール医療全体会議に関する「政策追跡委員会(le comité de suivi)」を立ち上げた*25。この委員会*26は33項目の報告書事項の進捗を監督することとされ、四半期に一度開催されている(本稿執筆時までに四回開催)*27。
(1)一周年フォローアップ報告書(総論)
 2021年7月には、セギュール報告書を得てから一周年ということもあり、第四回政策追跡委員会開催に合わせて、連帯保健省は改革の進捗状況に関するフォローアップ報告書を作成・公表している*28。そのタイミングで、ヴェラン連帯保健大臣は、「提言項目の75%は実施済みか仕掛中」と述べている*29。フォローアップ報告書を見ると、やはり看護師・パラメディカル等の報酬引上げ、保健分野への投資のための枠組み、要望ベースによる病床の開設などの財政措置と直結する項目の進捗が速いことがわかる*30。
 一方で、フォローアップ報告書には一年を経ての到達点と今後の課題も虚心坦懐に記述されている。病院におけるグループ診療、病院ガバナンスの改善、近接病院の普及、遠隔診療などについては、「お役所的な各種文書の作成は進捗したが、実際に医療関係者の間でそれを実施するフェーズへと移っていかなければならない」と分析している。
 なお、フォローアップ報告書に明示的に記載はないものの、医師の負担軽減を図り、病院の対応能力を向上させるという観点から盛り込まれていた項目である「中間的医療職の創設」(項目7)については、医師会(l’Ordre des médicins)等の反対により頓挫するなど*31、この段階で既に不成就となっている項目もある。
(2)一周年フォローアップ報告書(各論)
フォローアップ報告書は一年前の提言を各論として網羅的に検証しているが、ここでは上記1において注目点とした点を主になぞる形で、サンプル的にフォローアップ内容を紹介したい。
(ア)保健分野への投資
a)対象施設ごとの配分の具体化
 2021年3月には10年間にわたり段階的に支出される190億ユーロの「投資部分」の配分の詳細が公表されている*32。65億ユーロは病院の債務の肩代わりに回され、90億ユーロ程度は医療施設への投資に充てられるとされている。EHPADなどの介護施設には、受入可能人数増や介護サービスの向上に向けて15億ユーロが振り向けられる。最後に20億ユーロ程度がIT投資に充てられる。190億ユーロという総額はセギュール報告書と同じだが、それから8カ月が経過して内訳(のプレゼンテーション)が変更されている。単なる債務肩代わりという後向きの割合を減らし、未来志向の投資部分を増額する形となっている。
b)地域ごとの配分の具体化
 また190億ユーロのうち145億ユーロについては、地域圏に対してARS(地域圏医療庁)を通じて配分することも同時に公表され、セギュール医療全体会議で示された地域医療重視の姿勢や分権化の方向性を具現化する形となっている。イメージ3 145億ユーロ規模の投資の地域圏ごとの配分
c)態勢整備
 a)、b)のような配分額の具体化と並行する形で、投資プロジェクトの集中を防止し、地域の実情に応じて医療の進歩に真に役に立つものとする観点から、医療投資全国会議(CNIS)、科学会議(CS)、保健投資実施委員会(COPIL)などのガバナンス組織を構築し、専門家による事前段階からの伴走を可能としている*33。
d)実施済みの投資案件
 投資案件として実際に動き出している部分はまだまだ金額的には限られている。6.5億ユーロ相当が、医療施設の日常的な設備整備向けとして、地域圏ごとに実際に支出されはじめている*34。このほか、「要望ベース」の病床開設(セギュール報告書とりまとめ時点では4000床の開設と謳っていた。項目12)に関しては、2021年度予算で5000万ユーロ規模が措置さ れ、一年後の段階では2,686床の開設に至っている。
 第四回政策追跡委員会において、保健投資部分の達成度は「8.5合目」と自己評価されている*35。

(イ)医療費支出に関連する改革
a)病院の診療報酬改革
 包括払いの割合や医療の質に対する報酬評価の割合を高める改革が、まずは嚆矢として救急科を対象に、2021年から実施されている。これに引き続き精神科、リハビリ科、近接病院についても、同様の観点に立って、T2A(出来高払い)の割合を縮小し、医療の質に対する評価割合を引き上げる改革が、2022年1月に実施される予定となっている。
 一年前のセギュール報告書に比べると、既に精神科、リハビリ科、近接病院にかかる実施時期が遅延してきていることに加えて、急性期医療、周産期医療、慢性期医療については記述が消えている。コロナ危機発生時に、病院等の受け取る診療報酬について2019年の水準を臨時的に保証する概算特例を入れた*36ことが改革にとってはブレーキとなったのかもしれないが、いずれにせよ、成果と後退がない交ぜとなっていることが透けるようなフォローアップ内容となっている。
 政策追跡委員会資料においても、病院の診療報酬にかかる改革の達成度は「5合目」と自己評価されている。
b)ONDAM改革
 複数年度にわたり戦略的に医療費を支出できるように、ONDAM(疾病保険全国支出目標)についても改革が進められている。改革の内容検討については疾病保険未来高等評議会(Haut conseil pour l’avenir de l’assurance maladie(HCAAM))に2020年9月に諮問されており、2021年春には、改革提言の答申がとりまとめられている*37。
 2021年秋には2022年社会保障予算法案が議会提出をされるが、その中では、HCAAM(疾病保険未来高等評議会)の提言が予算法案の形で具体化される予定となっている。
 政策追跡委員会の資料において、ONDAM改革の達成度は「7.5合目」と自己評価されている。

(ウ)医療ガバナンス改革
a)病院内の意思決定における医療職の関与の強化
 2021年3月には「地域の病院グループと病院の意思決定の医療化に関するオルドナンス」*38が発出され、診療科の長が互選する医療委員会議長(président de la commission médicale d’établissement)の院内意思決定への関与を強化することとされた。病院内部の組織改編や診療科の責任者の指名などにおいて、医療職である医療委員会議長が行政職の病院長と協働して意思決定をすることなどが想定されている。
b)病院ガバナンスへの多様な声の反映
 2021年4月には「信頼と簡素化による保健システム改善のための法律」*39が議員立法として成立し、病院における合議制の管理理事会に、パラメディカル、医学生、利用者などの代表者が加わることとなった*40。
c)病院向けのガバナンス指南書の刊行
 病院ガバナンスのテーマについては、リヨン市のホスピスで医療委員会議長を務めるオリヴィエ・クラリス(Olivier Claris)教授をヘッドとする研究グループが連帯保健省からの委託によって討議・検討・報告書編纂を行ってきたが、2021年7月にはその内容を、病院向けのガバナンス指南書「より良い治療のためのより良いマネージメント(Mieux manager pour mieux soigner)*41」として連帯保健省が刊行した。同指南書は、ヴェラン大臣によれば、今後、全国の病院に配布される予定となっている*42。
d)病院・診療所連携など地域医療機能強化
 この一年の間に、地域医療専門職コミュニティー(la communauté professionnelle territoriale de santé(CPTS))*43が全国で100増えて172拠点、多機能医療院(les maisons de santé pluri-professionnelles)は400増えて1,889拠点となった。2021年5月には制度面の整備も進み、CPTSなどの地域医療拠点が、治療へのアクセスの改善、様々な医療専門職間をつないだ治療経路の確立、治療の質と適切性の向上などの「サービス」を提供する場合、それに従事する医療関係者に対するサービス対価報酬を独立に決定できるようになった。
 ガバナンス改革についてはトップダウンの各種仕掛けは整ってきているが、現場での実施はまだまだこれからの感がある。
写真2:ヴェラン連帯保健大臣に報告書を提出するクラリス教授(右)(Ludovic Pereira / Ministère des Solidarités et de la Santé)

(エ)医療分野におけるデジタル化の推進
セギュール報告書の段階では柱は四つで、デジタル関係はそれぞれの柱に横断するテーマとして取り上げられていたが、フォローアップ報告書段階では、デジタル化の推進を第五の独立の柱として外だししている*44。
 利用者サイドで言えば、カルテ*45や処方箋等がデジタル化された保護情報を担当の医師・医療介護施設・薬局などと共有できる「医療わたくしサイト(Mon espace santé)」が2022年1月から全国民向けにスタートすることが目玉施策である。こうした利用者を中心に据えた医療情報のデジタル化のための取組みに、20億ユーロ程度(再掲)が確保されることとなっている*46。
イメージ2:2021年7月のフォローアップ報告書冒頭における成果プレゼンテーション

5.おわりに(医療提供体制改革編・小括)
 治療の質の改善、医療ガバナンス改革、病院・診療所連携等を通じた地域医療機能強化といった医療提供体制改革は、進捗を確認し、成果が発現するまでに数年の単位で時間がかかり得るものである。クリシェ(cliché)の類となってしまうが、コロナ危機をおして敢行された「セギュール医療全体会議」が、フランスの医療提供体制に最終的にどのような実際上の変革をもたらすのか、その結論と進展からどのような示唆と教訓が引き出せるのか、確定するまでには今しばらく待たなければならない。
 それでも、「おわりに」と称して、キーワードごとに一連の医療提供体制改革の取組み・動向を敢えて小括してみたい。
(1)コロナ危機という逆風の利用
 コロナ危機発生とセギュール医療全体会議を経過することで、いつの間にか医療従事者のストライキは解消し、政府側は看護師・パラメディカル等の報酬引上げというセギュール報告書の「給付増」部分でそれに応えている。また、2020年秋以降、政府は医療従事者の待遇改善策を折に触れて追加してきている。フランスでは、第一波から第三波にかけて蘇生病床占有率は高水準で推移し、医療従事者の疲弊・負担感などもときに報道されている。それでも足元ではフランス政府と看護師・パラメディカル等の労働組合との歩み寄りの構図は大きな意味では維持されている。
 また、セギュール医療全体会議のテーマや報告書は「給付増」部分に限定されず、2018年の「私の保健2022」以来の懸案である保健分野への投資・医療費支出の改革・医療ガバナンス改革等の「中期的構造改革」部分が盛り込まれた。
 「医療提供体制改革編・上」で見たように、マクロン大統領は、コロナ危機発生に際して、政治的には2018年策定の「私の保健2022」を表向き否定して見せた。一方で、セギュール医療全体会議の結論とその後の取組みは実務的には「私の保健2022」と連続的・整合的である。これまでの取組みの政治的な否定によって「給付増」部分を生み出し、実務的な肯定によって「中期的構造改革」部分の再定義・加速を図る、という多義的な形でフランス政府はコロナ危機発生という逆風を利用した。
(2)進捗のバラツキとフォローアップ態勢の整備
 「給付増」部分は短期で実施済み・既得権となる一方で、「中期的構造改革」部分は関係者の粘り強い作業・努力の継続を要する形となっている。医療提供体制改革は双方の部分を以って車の両輪と成すべきものであるので、それらの実施段階もタンデムとすることは理論的にはあり得たのであろうが、コロナ危機発生直後の緊急的な状況に即応する観点もあって給付増が先行し、時間軸の非対称が生み出された。
 実際に、治療の質等に着目した診療報酬改革やガバナンス改革等の分野においては、当初の報告書内容より実施が遅れつつある項目なども見られる。それぞれの項目の間でも、その進捗度合いはバラツキがある。フランス政府自身も、医療現場に近いところでの改革内容の実践はまだまだこれからであることを認めている。
 一方で、進捗度合いの定量的評価、政策追跡委員会の設置と四半期に一度の開催など、フォローアップを丁寧に行い、「中期的構造改革」のモメンタムが落ちないように努力していると感じられる*47。
(3)医療財政の持続可能性
 セギュール報告書を実施することに伴い、医療費全体の4%~5%程度に相当する医療財政の悪化がもたらされた。より直接的なコロナ対応のための支出増大や保険料収入の減少などとあいまって、医療財政の先行きは不透明感が増している。
 新型コロナの感染拡大に伴う外科治療等の減少により医療保険に対する請求が減っていることなどを根拠に、フランス政府は2020年度及び2021年度の2年間で合計15億ユーロの臨時的「財源拠出」*48を補足的医療保険*49の保険者(共済組合、民間保険会社等)に対して賦課するなど、財源確保の取組みも皆無ではないが、規模的に見てもその臨時性に照らしても医療財政の構造的な健全化に本格的に資するものではない*50。
 セギュール報告書の一部ともなっているT2AやONDAMの改革により医療の質・適切性・効率性を向上させるという医療的取組みの反射的効果に依って医療財政の持続可能性を確保していけるのか、あるいは(英国のように)医療財政に関するもう一段の枠組みが今後数年間のうちに必要となるのか、注目点である。

 来月号以降は失業保険改革編をお送りする。

※本稿の内容は筆者の個人的見解であり、所属組織の見解を示すものではない。

*1)https://solidarites-sante.gouv.fr/systeme-de-sante-et-medico-social/segur-de-la-sante-les-conclusions/
*2)なお、後述するようにこの金額の内訳や投資期間に関する説明はその後変遷していく。
*3)看護師・パラメディカル等の報酬引上げ(82億ユーロ)については一般的な社会保障財政法に反映されている。一方130億ユーロの公立病院債務肩代わりについては、コロナ対応に関連する総額1360億ユーロの債務の一環として、社会保障債務返済機構(caisse d’amortissement de la dette de la sécurité sociale)に移管されることとなった。60億ユーロの投資資金については、その後の2020年9月3日に公表された、総額1000億ユーロ規模の再興計画である「フランス再興(France Relance)」に盛り込まれ、その関連予算として計上されることとなった。
*4)このほか、投資関係では、一定の投資案件の審査・決定権限の地方への移管など地方や現場の権限を強化する方向性も打ち出された。医療投資を審査する中央機関(Conseil national de l’investissement en santé)については、地方議員の参画や審査対象の限定(公的な基金から支出される案件か1億ユーロ超の大型案件など)といったしばりをかけることが盛り込まれた。
*5)T2Aは、従来の総予算枠方式(dotation globale (DG))に代替して、公立私立間あるいは地域間の診療報酬の不整合という弊害を是正すべく、2004年以降導入された。https://solidarites-sante.gouv.fr/professionnels/gerer-un-etablissement-de-sante-medico-social/financement/financement-des-etablissements-de-sante-10795/article/financement-des-etablissements-de-sante
*6)https://www.lemonde.fr/sante/article/2018/02/13/qu-est-ce-que-la-t2a-qui-cristallise-les-tensions-a-l-hopital_5256264_1651302.html
*7)http://www.institutmontaigne.org/presidentielle-2017/propositions/emmanuel-macron-sante-et-protection-sociale-reformer-la-tarification-a-lactivite
*8)https://solidarites-sante.gouv.fr/systeme-de-sante-et-medico-social/masante2022/article/reformer-le-financement-pour-encourager-qualite-et-cooperation
   https://solidarites-sante.gouv.fr/IMG/pdf/dicom_rapport_final_vdef_2901.pdf
*9)このほか、治療の質や適切性、医療関係者間の連携の度合いなどを支払基準とする実証的な報酬体系が医療施設サイドからの任意の手上げ方式で試験的に運用開始されていた。https://solidarites-sante.gouv.fr/systeme-de-sante-et-medico-social/parcours-des-patients-et-des-usagers/article-51-lfss-2018-innovations-organisationnelles-pour-la-transformation-du/article/experimentation-d-un-paiement-en-equipe-de-professionnels-de-sante-en-ville
*10)https://solidarites-sante.gouv.fr/IMG/pdf/recommandations_mission_notat_-_segur_de_la_sante.pdf
*11)1996年からスタートし、疾病保険支出の大部分や労災保険支出、自立関係支出等をカバーする制度である。2019年段階では2000億ユーロ程度が対象支出となっている(疾病部門全体の医療費は2170億ユーロ程度)。支出管理はいくつかの施設種別ごとになされることとなっており、例えば診療所、病院等、高齢者施設、障害者施設等々の区別である。年度ごとに設定されたONDAMは、超過してはいけない支出目標と一般に認識されがちであるが、厳密な意味での医療費上限ではなく、保険償還の上限である。
*12)https://www.securite-sociale.fr/files/live/sites/SSFR/files/medias/HCAAM/2020/Avis%20sur%20travaux%20r%c3%a9gulation%20-%20HCAAM%2025%20juin%202020.pdf
*13)HPTS法は、サルコジ政権時代にバシュロ保健大臣の下で成立・施行された法律で、やはり総合的な医療制度改革を目指すものだった。HPTS法の主要改革項目としては、公立病院のガバナンス改革のほか、これまで分散していた地域医療行政主体を一元化したARS(les agences régionales de santé。地域圏医療庁)の創設と同庁への監督権限等の集中、予防や疾病教育の強化などがあげられる。
*14)https://www.lefigaro.fr/social/les-soignants-en-greve-contre-les-accords-du-segur-20201014
*15)10月21日の閣議において、カステックス首相が前週に予告した報酬引上げの第二弾の年内前倒し実施を正式に決定している。https://www.gouvernement.fr/conseil-des-ministres/2020-10-21#le-covid-19
*16)結局、報酬引上げの第二弾は2020年12月1日に前倒し実施された。その際、医師を対象とした「公的サービスへの排他的関与手当(IESPE)」の引上げの第二弾も2021年3月から2020年12月1日に前倒すことが決定された。https://www.service-public.fr/particuliers/actualites/A14416
*17)https://www.gouvernement.fr/conseil-des-ministres/2020-10-21#le-covid-19
*18)https://solidarites-sante.gouv.fr/actualites/presse/dossiers-de-presse/article/segur-de-la-sante-revalorisation-des-carrieres
*19)キャリアの最終盤の俸給額の引上げ幅が大きくなっており、これは「年金の計算が退職前6か月の報酬をベースに決定することに鑑みれば、長期の勤労意欲を確保していく上では重要なポイント」と説明されている。
*20)https://www.gouvernement.fr/partage/12305-accords-pour-une-revalorisation-salariale-des-professionnels-soignants-des-etablissements-et。具体的には、2021年2月に、既に報酬引上げの対象となっている病院等の施設に付属する障害者施設やその他の福祉施設の福祉従事者にも報酬引上げが拡大されることが政労使で合意され(政府、使用者たるフランス病院連盟(FHF)、労働組合(CGT、FO、CFDT、UNSA)間の合意)、2021年6月から適用されている。2021年5月には、独立系の福祉施設の福祉従事者も対象とすることが合意され(2月合意の当事者のうち、CGTのみ参加せず)、こちらは2021年10月から適用開始予定である。
*21)このほか、2021年9月末に公表された2022年社会保障予算法案のプレス向け資料において、俸給表カテゴリーCに属する医療福祉関係者や助産師等に対する報酬引上げ措置など、5.6億ユーロ規模の追加策が公表されている(表2参照)。
*22)https://www.securite-sociale.fr/files/live/sites/SSFR/files/medias/HCFIPS/2021/HCFIPS%20-%202021%20-%20Etat%20des%20lieux%20du%20financement%20de%20la%20protection%20sociale.pdf
    2021年2月にこの数字が公表された段階では2020年の財政収支が490億ユーロの赤字と見込まれていることに注意。その約1か月に、結局は同年の収支赤字は386億ユーロにとどまることが連帯保健省から公表される(https://solidarites-sante.gouv.fr/IMG/pdf/210315_-_cp_-_o.veran_-_o.dussopt_-_compte_de_la_securite_sociale_en_2020.pdf)。その意味でこの2月段階の社会保障財政高等評議会の分析は古いデータに基づくものであるが、要因分解としては最新であるためここに紹介する。
*23)https://solidarites-sante.gouv.fr/IMG/pdf/dp-plfss-2022-24-09-2021.pdf
*24)https://www.lefigaro.fr/economie/l-assemblee-se-prononce-sur-un-budget-de-la-secu-greve-d-incertitudes-face-au-covid-20201027
*25)https://solidarites-sante.gouv.fr/actualites/presse/communiques-de-presse/article/olivier-veran-installation-comite-de-suivi-segur-de-la-sante
*26)政策追跡委員会にセギュール報告書に署名をしなかったCGTが招かれないことに関して訴訟に発展した。国務院は11月25日、CGT勝訴としたパリ行政裁判所の判決を急速審理手続によって棄却している。(Conseil d'État, Juge des référés, 25/11/2020, 445986, Inédit au recueil Lebon)
*27)第二回(2020年12月)の資料はhttps://solidarites-sante.gouv.fr/actualites/presse/communiques-de-presse/article/olivier-veran-reunit-le-comite-de-suivi-du-segur-de-la-sante。第一回(2020年9月)の資料はhttps://syngof.fr/wp-content/uploads/2020/09/Comite%CC%81-de-suivi-Se%CC%81gur-23-09-2020.pdf、第四回(2021年7月)の資料はhttps://snohp.fr/wp-content/uploads/2021/07/COSUI_2021-07-20-version-diffusion.pdf。第一回、第四回の資料は、連帯保健省のクレジットが入っているPDFファイルではあるが、連帯保健省のホームページからは見つけることはできない。参照しているホームページは、それぞれ、産婦人科医労働組合、病院歯科全国労働組合のものであり、おそらくは政策追跡委員会に出席した関係者として、配布資料を転載したものと考えられる。
*28)https://solidarites-sante.gouv.fr/IMG/pdf/dp_-_premier_anniversaire_du_segur_de_la_sante.pdf
*29)https://www.lefigaro.fr/conjoncture/grace-au-segur-une-infirmiere-experimentee-gagne-3398-euros-nets-par-mois-20210720
*30)とはいえ、報酬引上げ関連でも、基礎となる看護師の昇進制度の構築、残業手当支給のための規制の例外設定、治療の質向上等のためのチーム医療体制構築(月100ユーロ相当の「チーム医療体制手当」とセットの項目)などについては、各地域の大学病院センターを中心とする医療圏ごとに労使交渉・合意が必要となる。例えば、公衆衛生危機に柔軟に対応しようとすると、手かせ足かせとなり得ることが強く意識された残業時間規制に関しては、あまり具体的な進展は報告されていない。フォローアップ報告書においても「次年度の優先課題」のところに抽象的に記載されているだけである。
*31)中間的医療職の創設については、脚注39にある「信頼と簡素化による保健システム改善のための法律」の当初案に盛り込まれていたが、医師会等の反対により議会審議過程で削除されている。審議過程・審議結果などを公表する政府のホームページにおいて「医師会と自由開業医労働組合の反対によりこの条項は削除された。」と明示的に記載されている点はフランス政治過程の一側面を表すものとして興味深い。
*32)https://solidarites-sante.gouv.fr/actualites/presse/dossiers-de-presse/article/segur-de-la-sante-relancer-les-investissements-en-sante
*33)このほかの態勢整備関連としては、4.5億ユーロ相当の福祉施設向けの投資部分に関連して、全国自立連帯金庫(CNSA)がガイドブックを刊行している。
*34)2021年7月のフォローアップ報告書に掲載されている事例集によれば、例えばオクシタニー地域圏では92件の投資プロジェクトが実施されており、新たなマンモグラフィーや遠隔操作可能なX線検査装置の調達、肥満児に対する食育実施態勢の確保、診断の改善のための遠隔会議システムの整備等が進められている。
*35)2021年7月の第四回政策追跡委員会の資料には、セギュール報告書の各提言について、一年後における進捗を定量的な割合で自己評価する図が掲載されている。
*36)https://www.legifrance.gouv.fr/jorf/id/JORFTEXT000041853566
*37)https://www.securite-sociale.fr/home/hcaam/zone-main-content/rapports-et-avis-1/avis-du-hcaam-sur-la-regulation.html。提言は19項目からなっており、主なものは以下のとおり。
   ●支出目標、医療活動、財源に関する例えば5年展望を、関係省庁間調整を経て策定する。
   ●5年展望には、その実現に必要となる医療人材の見通しを盛り込む。
   ●医療費の伸びの要因を分解・特定し、予算編成段階で医療債務の累積を回避するための直接的な効率化策と間接的な保健施策を特定する。
   ●技術的困難さは予想されるものの、ONDAMに基づく支出が、どのような複数年度にわたる医療政策を可能とし、どのように国民の保健衛生状態を改善するかを示すプレゼンテーション資料を添付する。
   ●ONDAM対象経費を、医療施設の性質などセクターごとに分解し、赤字セクターを明確にする。
   ●単年度ごとの支出目標の外枠として、例えば5年分の白紙の別枠を設けておく。いずれにせよ単年度の目標が超過した場合には関係省庁が集団的に対応策を講じる。これにより単年度目標が過度に硬直的となりすぎることを回避する一方で、複数年度にわたる財政コントロールは強化される。
   ●特定の診療領域(例えば慢性腎不全、腫瘍、精神保健、糖尿病など)においてサンプル的に複数年度計画の進捗や計画からの乖離要因などを追跡し、場合によっては意思決定の迅速化や問題解決方法を提供する職種横断的・公的な観察チームを編成する。
*38)https://www.legifrance.gouv.fr/jorf/id/JORFTEXT000043261453
*39)https://www.vie-publique.fr/loi/277465-loi-rist-26-avril-2021-ameliorer-le-systeme-de-sante-par-la-confiance
*40)また同法によって、労使間のリスク要因の除去、各種係争の回避、男女間の平等の確保などの観点から、病院の施設運営規約の中に参加型のガバナンス・マネジメント目標を盛り込むこととされている。
*41)https://snphare.fr/assets/media/guide.pdf
*42)https://www.lefigaro.fr/conjoncture/grace-au-segur-une-infirmiere-experimentee-gagne-3398-euros-nets-par-mois-20210720
*43)地域内の医師、看護師、薬剤師、介護士などが恒常的に連携するネットワーク体制を構築し、予約不要の診療、病院と診療所の連携、在宅医療の推進などに当たるための仕組み。参加する医療関係者が医療プロジェクトを立てた上で、当該医療関係者とARS(地域圏医療庁)が契約を締結することで拠点化される。「私の保健2022」においては、2022年までに全国1000拠点開設が目標とされている。https://www.ars.sante.fr/les-communautes-professionnelles-territoriales-de-sante
*44)さらにはこの分野の取組みを詳細に紹介した冊子を別途作成・公表している。https://esante.gouv.fr/sites/default/files/media_entity/documents/Segur_ChantierD_DocCommun_VF.pdf
*45)フランス政府が既に開発・運用している共有型電子カルテ(DMP)が「医療わたくしサイト」のアプリの一つとなる模様。DMPについては、2007年頃から本格始動し、これまで数十億ユーロの財政資源が投入されてきたが、関係者へのインタビューなどによると、普及率は一割前後で、アカウント保有者も往々にして中身は空っぽという問題の多いシステムにとどまっている。
*46)https://solidarites-sante.gouv.fr/actualites/presse/communiques-de-presse/article/lancement-operationnel-du-volet-numerique-du-segur-de-la-sante
*47)他方、フランス病院連盟(FHF)のフレデリック・ヴァルトゥー(Frédéric Valletoux)会長などは、2021年4月段階の新聞インタビューにおいて、(セギュール医療全体会議そのものではないがその前身である)「私の保健2022」の進捗について問われ、「当初のマクロン大統領の演説は力強く、保健システムの真の問題点に切り込んでいたが、法律になった段階で非常に弱々しいしいものとなってしまった」「保健サービスの地域展開、病院のガバナンスの明確化、3割に上ると言われる不要な治療行為の無駄削減、システムの脱官僚主義、行政手続の簡素化などは手付かずになっている」と批判するなど手厳しい。https://www.lefigaro.fr/social/les-ambitions-de-la-loi-ma-sante-2022-confortees-par-la-pandemie-20210412
*48)https://www.mutualite.fr/presse/plfss-2021-la-mutualite-francaise-regrette-le-choix-de-la-taxe-et-exprime-des-reserves/
*49)フランスの医療保険システムには、公的医療保険に対して上乗せ給付を行うためのものとして、補足的医療保険制度が存在する。
*50)報道によれば、一時期政府はこの臨時的「財源拠出」の上積みを検討したものの、補足的医療保険の保険者側が「保険料へ転嫁せざるを得なくなる」、などと反発したため、上積みは見送りの公算、と報道されている。https://www.lesechos.fr/economie-france/social/exclusif-complementaires-sante-la-taxe-covid-ne-va-finalement-pas-augmenter-1345258