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巻頭言:スポーツと地域のリレーション、未来を見据えて前向きに

株式会社鹿島アントラーズ・エフ・シー C.R.O 中田 浩二
私の現在の役職である「C.R.O」、何の略称かわかりますか?答えは「クラブ・リレーションズ・オフィサー」。おそらく答えられた方は少ないと思います。2015年にプロサッカー選手としてのキャリアを終えた私は、選手として所属していた鹿島アントラーズ・エフ・シーでC.R.Oに就任しました。Jリーグ全体でもまだ少ないこの役職は、クラブと関係するステーク・ホルダーやパートナー、地域、メディア、そしてファン・サポーターと関係(relation)を作り、維持していく役割です。
クラブとして何をするにおいても、フロントからの要望と選手側の実態という両側面がありますが、元選手でもある、両方の気持ちがわかる私がフロントに入ることで、その橋渡しをできる存在になってきていると感じます。
スポーツ選手のセカンドキャリアには様々なものがありますが、私は経営という道を選びました。今後、鹿島アントラーズの経営、もっと大きく言うとJリーグのチェアマンを目指したいとも考えています。セカンドキャリアを現場ではなくフロントにしたことで、これまでも色々なものが見えてきました。私のような元選手が経営に加わることでのメリットは、クラブやリーグをアスリートファーストなものにしていけるという面があると思います。ただ、それだけでいいわけではなく、選手面・経営面両方をバランスよくやっていく必要がありますが、両面がわかる人が増えることで日本サッカーも変わっていくのではないかと思っています。
C.R.Oの役割の一つとして、地域との関係作りがあります。Jリーグには元々「地域密着」という理念がありますが、これからはさらにどう地域を発展させていくかにクラブももっと深く関わっていく必要があると思っています。クラブもホームタウンの鹿嶋市や行方市と地方創生事業に関する包括連携協定を締結し、移住政策の推進やまちづくり等に参画していますし、私もいかに地域と共に歩いていくかということは常に意識をしています。
私はスイスのバーゼルFC等にも在籍していましたが、ヨーロッパのクラブは100年位の歴史がある中で、親子何代で地元のチームを愛している事が感じ取れます。またスタジアムにはショッピングセンターがあったり、老人施設があったり、そこを中心に街が形成されたりしています。カシマスタジアムでもクラブが指定管理者となることでスタジアムコンコースで火を使った美味しいグルメを提供できるようにしたり、スポーツジムやミュージアム、敷地内にチームドクターが診察するクリニックも開設しています。こういった活動で、地域の皆さんにとってスタジアムがより身近なものになり、地域の一つのシンボルのような、そんな存在になっていけたらと思っています。
現在のコロナ禍には、サッカー界も例にもれずその影響を強く受けています。アントラーズとしても難しい状況下にはありますが、その中でもできることはあると思っています。私のC.R.Oとしての活動も現在はオンラインが中心になっていますので、その前提で皆さんに喜んでいただけるにはどうすればいいのか、日々考えています。行動に移すことが大事だと思いますし、一度立ち止まって周りを見てみる、そのことで「こういうこともできるんだ」と認識する、そういう時間にもなっています。アントラーズとしても、コロナ禍が終わった後にどうやっていくかという部分も含めて考えていますし、辛い時期だからこそ前向きにやっていくことが大切なんだろうなと思っています。