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令和3年度 社会保障関係予算のポイント

主計局主計官(厚生労働第一担当) 一松 旬
主計局主計官(厚生労働第二担当) 坂口 和家男

1.令和3年度社会保障関係費の全体像

令和3年度の社会保障関係費は、いわゆる自然増(※)が4,800億円程度と見込まれる中、2.の毎年薬価改定の実現等の様々な改革努力を積み重ねることにより、令和2年度の社会保障関係費(新型コロナウイルス感染症の影響を受けた医療費動向を踏まえ医療費にかかる国庫負担分を▲2,000億円程度減少させたベース)と比較し、+3,500億円程度となり、社会保障関係費の実質的な伸びを「高齢化による増加分におさめる」という方針を着実に達成。

※医療費動向を踏まえた前年度の土台からの伸び。また、令和3年度の年金額改定率(物価上昇率の推計を基にした予算積算上の値)を±0%と見込んでおり、予算上、消費税率引上げによる物価影響分+0.2%(+200億円程度)を、別途、消費税増収分(公経済負担)で対応するため、上記自然増には、これを控除した物価影響分▲0.2%(▲200億円程度)が反映されている。

2.毎年薬価改定の実現

毎年薬価改定の初年度である令和3年度薬価改定について、令和2年薬価調査に基づき、以下のとおり実施する。

改定の対象範囲については、国民負担軽減の観点からできる限り広くすることが適当である状況のもと、平均乖離率8%の0.5倍~0.75倍の中間である0.625倍(乖離率5%)を超える、価格乖離の大きな品目を対象とする。

また、「経済財政運営と改革の基本方針2020」(令和2年7月17日閣議決定)に基づき、新型コロナウイルス感染症による影響を勘案し、令和2年薬価調査の平均乖離率が、同じく改定半年後に実施した平成30年薬価調査の平均乖離率を0.8%上回ったことを考慮し、これを「新型コロナウイルス感染症による影響」と見なした上で、「新型コロナウイルス感染症特例」として薬価の削減幅を0.8%分緩和する。

これらにより、薬剤費の削減▲4,315億円(国費▲1,001億円)を実現する。

3.令和3年度介護報酬改定、障害福祉サービス等報酬改定

(介護報酬改定)

令和3年度介護報酬改定については、介護職員の人材確保・処遇改善にも配慮しつつ、物価動向による物件費への影響など介護事業者の経営を巡る状況等を踏まえ、改定率は全体で+0.70%(国費196億円)とする。この中で、給付の適正化を行う一方で、感染症等への対応力強化やICT化の促進を行うなどメリハリのある対応を行う。

※上記+0.70%のうち、新型コロナウイルス感染症に対応するための特例的な評価+0.05%(令和3年9月末まで)

(障害福祉サービス等報酬改定)

令和3年度障害福祉サービス等報酬改定については、福祉・介護職員の人材確保・処遇改善にも配慮しつつ、感染症等への対応力強化等を踏まえ、改定率は全体で+0.56%(国費86億円)とする。

※上記+0.56%のうち、新型コロナウイルス感染症に対応するための特例的な評価+0.05%(令和3年9月末まで)

4.新型コロナウイルス感染症への対応

「国民の命と暮らしを守る安心と希望のための総合経済対策」(令和2年12月8日閣議決定)に基づき、いわゆる「15か月予算」との考え方で、令和2年度第3次補正予算と一体として、新型コロナウイルス感染症の拡大防止策等に万全の対策を講じる。

(1)感染症危機管理体制・保健所体制の整備

ア.保健所の体制強化 5.6億円(新規)

-都道府県を超えた緊急時の対応を可能とするため、自治体間の応援や関係学会・団体からの感染症の専門家の応援派遣を行うとともに、応援派遣を効果的に実施するため、都道府県において潜在保健師等の人材バンクを創設するなど、健康危機管理体制を強化。

イ.国立感染症研究所の体制強化 9.9億円(新規)

-国立感染症研究所における疫学情報等の集約や実地疫学専門家等の人材育成等を進めるとともに、有事においても検査・疫学調査等を迅速・確実に実施できる体制を平時から構築。

※体制強化のため、361名を増員(定員2年度362名→3年度716名(合理化減を含む))。

ウ.国立国際医療研究センターの体制強化 12.7億円(2年度:6.3億円)

-国立国際医療研究センターにおいて、国立感染症研究所と互いに連携・補完しつつ、新興・再興感染症に関する臨床研究を推進し、診断薬、治療薬、ワクチンの開発に迅速に取り組むとともに、総合的対策を遂行する体制を構築。

(2)感染症対策のための診療報酬等の臨時的措置

ア.小児の外来診療等に係る診療報酬上の特例措置 216億円(新規)

-新型コロナウイルス感染症に対応するため、小児(6歳未満の乳幼児)の外来診療等について、初診料及び再診料等に一定の点数を加算する特例的な評価を一時的に実施(令和3年10月以降縮減し、年度末まで)。

イ.一般診療等に係る診療報酬上の特例措置 218億円(新規)

-新型コロナウイルス感染症に対応するため、一般診療等について、初診料及び再診料等に一定の点数を加算する特例的な評価を一時的に実施(令和3年9月末まで)。

ウ.介護報酬改定における特例的な評価 15億円(再掲)

エ.障害福祉サービス等報酬改定における特例的な評価 8億円(再掲)

(3)その他

ア.介護事業所等におけるサービス提供体制の継続支援及び感染防止対策 824億円の内数(公費)

【地域医療介護総合確保基金(介護分)】

-感染者等が発生した介護事業所等において、必要なサービスを継続して提供できるよう、通常のサービス提供時には想定されない費用等への支援や、感染防止対策のための介護施設の多床室の個室化、簡易陰圧装置の設置等について支援。

イ.障害福祉サービス事業所等におけるサービス提供体制の継続支援 12億円(新規)

-感染者等が発生した障害福祉サービス事業所等において、必要なサービスを継続して提供できるよう、通常のサービス提供時には想定されない費用等について支援。

ウ.新型コロナウイルス感染症に対応する水際対策等の推進 207億円(2年度:119億円)

-新型コロナウイルス感染症に対し、国内への感染者の流入を防ぎつつ、人の往来を可能とする仕組みを構築するため、検疫における検査体制の確保を行うなど、水際対策を強化(強化分:91億円)。

5.社会保障の充実

「新しい経済政策パッケージ」(平成29年12月8日閣議決定)及び「経済財政運営と改革の基本方針2019」(令和元年6月21日閣議決定)等を踏まえ、令和元年10月の消費税率の引上げによる増収分を活用し、社会保障の充実を実施。

(1)令和3年度における「社会保障の充実」

ア.「新子育て安心プラン」に基づく保育の運営費等 223億円(公費)(新規)

-「新子育て安心プラン」に基づく保育の運営費等(3歳~5歳児相当分)について、令和3年度に限り、令和4年度から医療・介護分野において不妊治療の保険適用の財源として充当する予定の消費税増収分を1年間限りで一時的に活用。令和4年度以降については、児童手当(特例給付)の見直し等により、別途、安定的な財源を確保。(7.社会保障制度改革の着実な実行(1)全世代型社会保障改革の推進 参照)

イ.小児の外来診療等に係る診療報酬上の特例措置 190億円(公費)(再掲)※令和3年9月末までの措置分

ウ.地域医療介護総合確保基金 医療:1,179億円(2年度:1,194億円、公費) 介護:824億円(2年度:824億円、公費)

-医療では、地域医療構想の実現を図る観点から、病床削減や病院の統合に取り組む際の財政支援を行う病床機能再編支援制度について、法改正を行ったうえで基金事業として措置(195億円)。既存の基金事業に対しては、予算執行調査の結果、必要性が乏しいと疑われる事業などが確認されたことや繰越しが発生していることを反映。

-介護では、介護人材の参入促進等を図るための多様な取組を支援し、新たに介護分野に就職するための支援金の貸付の創設や介護ロボット・ICT等の導入支援を行うほか、地域密着型サービス施設等の整備を推進。

エ.年金生活者支援給付金の支給 5,220億円(2年度:4,908億円)

-高齢者・障害者等のうち、年金を含めても所得が低く、経済的な援助を必要としている者に対し、年金に上乗せして支給。令和2年の通常国会で成立した年金制度改正法による影響等を踏まえ、所要額を計上。

(2)令和3年度における「新しい経済政策パッケージ」

ア.幼児教育・保育の無償化 3,410億円(2年度:3,410億円)

-3歳から5歳までの全ての子どもたちの幼稚園、保育園、認定こども園等の費用、0歳から2歳までの住民税非課税世帯の子どもの保育所等の費用を無償化(令和元年10月~)。

イ.高等教育の無償化 4,804億円(2年度:4,882億円)

-少子化に対処するための施策として、消費税率引上げによる財源を活用し、真に支援が必要な低所得世帯の大学生等に対し、高等教育の無償化を実現するため、授業料等減免及び給付型奨学金の支給を合わせて措置。

6.その他各歳出分野における取組

各歳出分野において、メリハリ付けを行いつつ、必要な予算を措置。

(1)医療

ア.ドクターヘリ導入促進事業 75億円(2年度:67億円)

-2都県での新規導入や補助単価の見直しによる費用の増額分を措置するとともに、現在一律となっている基準額について、飛行時間に応じた設定を行い、制度の公平性を向上。

イ.特定健康診査・保健指導に必要な経費 222億円(2年度:226億円)

-行政改革推進会議からの、費用対効果及び医療費適正化の観点からの事業効果にかかる指摘に基づき、特定健康診査及び特定保健指導の医療費適正化効果がエビデンス上限定的であることを踏まえ、予算費目を医療費適正化推進費から、健康増進対策費に変更。

-会計検査院の指摘を踏まえ、補助単価を見直し。

(2)介護

ア.介護人材の確保施策の強化 206億円の内数(2年度:124億円の内数、公費)【地域医療介護総合確保基金(介護従事者確保分)】8億円(新規)【労働保険特別会計】

-地域医療介護総合確保基金(介護従事者確保分)における事業メニューとして以下のものを追加。

・公共職業訓練等の訓練修了者への返済免除付きの就職支援金貸付制度(貸付上限20万円、介護分野で2年間継続従事した場合に返済免除)

・福祉系高校入学者への返済免除付きの修学資金貸付制度(介護実習費年額3万円、就職準備金20万円等、介護分野で3年間継続従事した場合に返済免除)

・介護現場における多様な働き方導入モデル事業

-労働保険特別会計雇用勘定において実施する公共職業訓練や求職者支援訓練の中に介護の職場見学・職場体験を組み込むため、訓練委託費等を増額。

イ.認知症関連施策の推進 125億円(2年度:125億円)

-認知症の人への支援や認知症理解のための普及啓発、認知症医療拠点の整備、認知症研究の推進等を実施。また、新たに認知症の人とその家族に対する継続的な支援を行う伴走型の支援拠点の整備を支援。 

ウ.介護ロボットの開発・普及の加速化 5億円(2年度:5億円)

-労働力の制約が強まる中、介護現場の生産性向上を推進するため、相談窓口の設置、開発実証のアドバイス等を行うリビングラボの設置、介護現場における大規模実証フィールドを提供し、エビデンスデータを蓄積しながら、介護ロボットの開発・普及を加速化。

(3)年金

・年金国庫負担 121,784億円(2年度:120,324億円)

-基礎年金国庫負担(2分の1)等について措置。

-令和3年度の年金額改定率(物価上昇率の推計を基にした予算積算上の値)を±0%と見込んで計上。

(4)子ども・子育て

ア.総合的な子育て支援

-待機児童の解消に向けた「新子育て安心プラン」に基づき、保育の受け皿の整備を推進するとともに、保育士・保育現場の魅力向上等を通じた保育人材の確保、保育コンシェルジュの活用によるマッチングの促進等、地域の特性に応じた取組を支援。2,590億円(2年度:2,485億円)【一部年金特別会計】

-子ども・子育て支援に積極的な中小企業に対する支援策として、くるみん認定を活用して、育児休業等取得に積極的に取り組む中小企業に対する助成事業を創設。2億円(新規)【年金特別会計】

イ.児童虐待防止対策・社会的養育の推進 1,735億円(2年度:1,731億円)

-「児童虐待防止対策の抜本的強化について」(平成31年3月19日関係閣僚会議決定)及び「経済財政運営と改革の基本方針2020」(令和2年7月17日閣議決定)を踏まえ、児童虐待防止対策・社会的養育の迅速かつ強力な推進のための施策を実施。

・児童相談所等における専門人材の確保に関する取組を強化。

・障害児を養育する里親家庭の負担軽減など里親養育支援体制を強化。

・若年被害女性等への支援における医療機関との連携体制等を強化。

ウ.不妊症・不育症への総合的支援

-研究段階にある不育症検査のうち、保険外併用の仕組みで実施するものを対象に、検査に要する費用の助成事業を創設。12億円(新規)

-小児・AYA世代のがん患者等の妊孕性温存療法に係る費用負担の軽減を図りつつ、患者からの臨床情報等を収集し、妊孕性温存療法の研究を促進。11億円(新規)

-不妊治療への支援拡充と併せて、医療機関等における里親・特別養子縁組制度の普及啓発等を強化。8億円(2年度:2億円)

-不妊治療のための休暇制度等を利用しやすい環境を整備し、実際に利用させた中小企業事業主を支援する助成金を創設。5億円(新規)【労働保険特別会計】

(5)障害者支援等

ア.地域生活支援事業等 513億円(2年度:505億円)

-地方公共団体において、移動支援や意思疎通支援などの障害児・者の地域生活を支援する事業について、地域の特性や利用者の状況に応じて実施。

イ.医療的ケア児への支援 9億円(2年度:6億円)

-地域における医療的ケア児への支援体制を充実するため、医療的ケア児コーディネーターの配置を促進し、相談体制の整備等を図る。

※一部は上記の「地域生活支援事業等」及び「総合的な子育て支援」の内数。このほか、障害福祉サービス等報酬において医療的ケア児への支援を評価。

(6)労働・雇用環境の充実

ア.雇用調整助成金の特例措置 6,240億円(2年度:35億円)

-感染拡大防止と社会経済活動の両立を目指し、引き続き、雇用調整助成金の特例措置により雇用を維持・確保。

雇用調整助成金:6,117億円【労働保険特別会計】(うち一般会計繰入362億円)

雇用保険被保険者以外の短時間労働者に係る助成(緊急雇用安定助成金):124億円【一般会計】

イ.在籍型出向の活用による雇用維持への支援 537億円(新規)

-出向元及び出向先への助成を一体とした助成金を創設。【労働保険特別会計】

ウ.地域活性化雇用創造プロジェクト 103億円(2年度:47億円)

-業種・職種を越えた転換を伴う再就職等を促進する都道府県の取組を支援。【労働保険特別会計】

エ.感染症の影響による離職者を試行雇用する事業主への助成 30億円(新規)

-新型コロナウイルス感染症の影響による離職者であって、離職期間が3か月を超え、就労経験のない職業に就くことを希望する方の早期再就職支援を図るため、一定期間試行雇用する事業主に対する助成制度を創設。【労働保険特別会計】

オ.生産性向上、賃金引上げのための支援 12億円(2年度:11億円)

-最低賃金引上げに向けた生産性向上に取り組む中小企業・小規模事業者への助成金を拡充。

カ.男性の育児休業の取得促進 67億円(2年度:65億円)

-男性労働者が育児休業等を取得しやすい職場風土作りに取り組み、実際に育児休業等を取得させた事業主を助成。【労働保険特別会計】

(7)水道施設の耐災害性強化等の推進 395億円(2年度:395億円)

-災害時等においても安定的に安全な給水を確保するため水道施設の耐災害性強化を推進するとともに、水道事業体の運営基盤強化を図るため広域化への取組等を支援。

(8)東日本大震災からの復興

・医療保険制度等の保険料減免等に対する特別措置 50億円(2年度:60億円)

-東京電力福島第一原発の事故により設定された避難指示区域等に住所を有する被保険者等について、引き続き、保険料等の減免を実施。※介護保険制度、障害福祉制度を含む。

(9)その他

ア.B型肝炎給付金 1,173億円(2年度:1,187億円)

-特定B型肝炎ウイルス感染者給付金等の支給に関する特別措置法に基づき、B型肝炎ウイルスの感染被害を受けた方々への給付金等の支給に万全を期すため、社会保険診療報酬支払基金に設置した基金に、毎年度当初予算で措置してきた572億円に加え、給付金等の支給に必要な費用を積増し。

イ.重層的支援体制整備事業の実施 116億円(2年度:39億円)

-改正社会福祉法に基づき、令和3年度から市町村が、属性を問わない相談支援、多様な参加支援の推進、地域づくりに向けた支援を一体的に行う重層的支援体制整備事業を実施できることとなるため所要額を措置するほか、移行準備支援、都道府県による後方支援等を実施(2年度まではモデル事業を実施)。

ウ.生活困窮者等の自立支援の強化(住居確保給付金等) 554億円(2年度:489億円)

- 生活困窮者自立支援法に基づき、生活困窮者に対する包括的な相談支援や就労支援等を実施するとともに、不安定居住者に対する支援を強化。

- 離職等により経済的に困窮し、住居を失うおそれのある方等に対し住居確保給付金を支給し、住まいの確保と就労自立を支援。新型コロナウイルス感染症対応の特例として、令和2年度中の新規申請者に限り支給期間を最長9か月から12か月まで延長可能。

エ.自殺総合対策の推進 34億円(2年度:33億円)

- 地域の実情に応じた実践的な自殺対策の取組を支援するとともに、SNS等の相談体制を強化し、相談からの具体的支援につなげるため、地域のネットワークを活用した包括的な支援体制を構築。

7.社会保障制度改革の着実な実行

(1)全世代型社会保障改革の推進

(後期高齢者の自己負担割合の在り方)

○後期高齢者(75歳以上。現役並み所得者は除く)であっても課税所得が28万円以上(所得上位30%)かつ年収200万円以上(単身世帯の場合。複数世帯の場合は、後期高齢者の年収合計が320万円以上)の方に限って、その医療費の窓口負担割合を2割とする。

○施行時期は、施行に要する準備期間等も考慮し、令和4年度(2022年度)後半で、政令で定める。長期頻回受診患者への配慮措置として、外来患者について、施行後3年間、1月分の負担増を最大でも3,000円に収まるような措置を導入する。

○上記について、令和3年の通常国会に必要な法案を提出済み(令和3年2月)。

(大病院への患者集中を防ぎかかりつけ医機能の強化を図るための定額負担の拡大)

○特定機能病院及び一般病床200床以上の地域医療支援病院に紹介状なしで外来受診した場合に定額負担(初診5,000円)を求めている制度について、地域の実情に応じて明確化される「紹介患者への外来を基本とする医療機関」のうち一般病床200床以上の病院に対象範囲を拡大するとともに、より外来機能の分化の実効性が上がるよう、保険給付の範囲から一定額(例:初診の場合、2,000円程度)を控除し、それと同額以上の定額負担を追加的に求める。

(待機児童の解消)

○待機児童の解消を目指し、女性の就業率の上昇を踏まえた保育の受け皿整備、幼稚園やベビーシッターを含めた地域の子育て資源の活用を進めるため、「新子育て安心プラン」を取りまとめる。具体的には、令和3年度から令和6年度末までの4年間で約14万人分の保育の受け皿を整備する。

○「新子育て安心プラン」に基づき令和3年度から令和7年度に増加する保育の運営費等(1,440億円程度)については、公費に加えて、経済界に協力を求めることにより安定的な財源を確保する。

(事業主拠出金制度の拡充)

○「新子育て安心プラン」に基づき令和3年度から令和7年度に増加する保育の運営費(0歳~2歳児相当分)に充てるため、事業主拠出金制度を拡充し、拠出金の追加拠出の上限を1,000億円とする。拠出金率の引上げは段階的に実施することとし、令和3年度は、積立金を活用し、0.36%に据え置くこととする。また、0歳~2歳児に係る保育給付費総額に対する拠出金の充当割合の法定上限を6分の1から5分の1に引き上げる。

(児童手当の特例給付の見直し等)

○特例給付について、高所得の主たる生計維持者(年収1,200万円(注)以上の者)を対象外とする。施行時期については、施行に要する準備期間等も考慮し、令和4年10月支給となる令和4年6月分から実施する。これらのために、児童手当法を改正する所要の法律案を令和3年の通常国会に提出済み(令和3年2月)。

(注)子ども2人と年収103万円以下の配偶者の場合。

○「新子育て安心プラン」に基づき令和3年度から令和7年度に増加する保育の運営費等(3歳~5歳児相当分・公費440億円程度)については、児童手当の特例給付の見直しにより生じる財源を充てる(公費370億円程度)。これにより、「新子育て安心プラン」に必要な国費の安定財源を確保するとともに、地方負担の財源については、この見直し及び子ども・子育て支援法に規定する利用者支援事業の見直し(70億円程度)により生じる地方負担の減少により適切に確保する。なお、令和3年度に限り、消費税増収分を1年限りで一時的に活用する(5.社会保障の充実(1)令和3年度における「社会保障の充実」 参照)。

(更なる改革の推進)

○現役世代への給付が少なく、給付は高齢者中心、負担は現役世代中心というこれまでの社会保障の構造を見直し、切れ目なく全ての世代を対象とするとともに、全ての世代が公平に支え合う「全世代型社会保障」の考え方は、今後とも社会保障改革の基本である。今後も全世代型社会保障改革のフォローアップを行いつつ、持続可能な社会保障制度の確立を図るため、総合的な検討を進め、更なる改革を推進する。

(2)「改革工程表」等に沿った医療・介護制度改革の着実な実行

団塊の世代が後期高齢者となる令和4年度を見据え、以下の改革項目について早急に取組み、具体的かつ明確な成案を得ることをはじめ、「新経済・財政再生計画 改革工程表」等に基づき改革を着実に実行する。

(医療)

○国民健康保険制度における、法定外繰入等の解消及び保険料水準統一に関する事項の国保運営方針の記載事項への位置づけや、国保制度の財政均衡を図るための在り方等について、実効性のある更なる措置を検討する。

○第4期の医療費適正化計画に向けて、地域医療構想の実現(病床機能の分化及び連携の推進等)や医療の効率的な提供の推進のための目標(後発医薬品の使用割合等)など、適正な医療を地域に広げるための計画における取組内容を見直すととともに、毎年度のPDCA管理を強化するため、医療費の見込みの改定や保険料算定に用いる医療費との照合など、医療費適正化計画の実効性を高める方策について、見直しに向けた検討を行う。

○国保連合会及び支払基金における医療費適正化にも資する取組を着実に推進するための業務の在り方や位置づけについて検討する。

○後期高齢者医療制度における一人当たり医療費の地域差縮減に寄与する都道府県及び知事の役割強化や在り方を検討する。

○医療扶助における適正化について、頻回受診の該当要件の検討を行うとともに、医療費適正化計画の医療費に医療扶助も含まれることを踏まえ他制度における取組事例も参考に推進しつつ、ガバナンス強化に向けた中期的な検討を行うほか、マイナンバーカードを用いた医療扶助のオンライン資格確認の実施に向け所要の措置を講じる。

○後発医薬品の使用を更に促進するため以下の取組を着実に進める。

・バイオシミラーに係る新たな目標の在り方を検討し結論を得る。

・「2020年9月までに後発医薬品使用割合を80%以上」の目標達成後の新たな目標について、これまでに分かってきた課題も踏まえつつ、その内容について検討する。

・後発医薬品も含めた、医薬品の適正使用に資するフォーミュラリガイドラインを策定する。

・後発医薬品使用割合の見える化や公表を医療機関等の別に着目して拡大することを検討する。

(介護)

○地域支援事業の介護予防・日常生活支援総合事業の上限制度の運用の在り方について、速やかに必要な対応を検討する。

○2020年度の関係審議会における審議結果を踏まえ、要介護度に関係なく給付対象となっている廉価な品目について、貸与ではなく販売とするなど、福祉用具貸与の在り方について、速やかに必要な対応を検討する。


図表.一般歳出及び社会保障関係費の推移


図表.2021年度予算について


令和3年度社会保障関係費の全体像
○ 令和3年度の社会保障関係費(35.8兆円程度)は、介護報酬等のプラス改定を行いつつ、毎年薬価改定の実現等により、実質的な伸びについて「高齢化による増加分におさめる」という方針を達成。
(注)令和2年度の社会保障関係費(新型コロナウイルス感染症の影響を受けた医療費動向を踏まえ医療費に係る国庫負担分を減少させたベース、35.5兆円程度)と比較して、高齢化による増加分+3,500億円程度。(対前年度比では+1,500億円程度)


毎年薬価改定の実現
○ 医薬品の取引価格(市場実勢価格)が下落しているにもかかわらず、保険からの償還価格が一定程度据え置かれれば、患者負担、保険料負担、公費負担がいたずらに高止まりする。

○ このため、これまで2年に一度実施されてきた薬価改定について、令和3年度から毎年薬価改定を実施することとし、市場価格を適切に薬価に反映していく。

○ 令和3年度薬価改定については、毎年薬価改定の初年度であり、乖離率5%を超える品目を対象とする。

○ また、新型コロナウイルス感染症による影響を勘案し、令和2年薬価調査の平均乖離率8.0%が、同じく改定半年後に実施した平成30年薬価調査の平均乖離率を0.8%上回ったことを考慮し、「新型コロナウイルス感染症特例」として薬価の削減幅を0.8%分緩和する。

○ これらにより、薬剤費の削減▲4,315億円(国費▲1,001億円)【約7割の品目】を実現し、国民負担を軽減する。


図表.令和3年度介護報酬改定・障害福祉サービス等報酬改定について

新型コロナウイルス感染症に対応する医療提供体制等の強化(主なもの)
緊急包括支援交付金等 4.6兆円
○一次・二次補正:1.8兆円(病床確保支援、医療従事者への慰労金支給、医療機関等の感染拡大防止等支援 等)
○予備費[9月]:1.2兆円(病床確保支援拡充、インフルエンザ流行期に向けた発熱外来体制の構築 等)
○予備費[12月]:0.3兆円(病床確保のための緊急支援(医療従事者の処遇改善と人員確保等))
○三次補正:1.4兆円(病床確保支援、医療機関等の感染拡大防止等支援 等)

診療報酬による対応 0.1兆円(医療費ベース0.2兆円)
○予備費[4、5、9月]:400億円(新型コロナウイルス感染症の入院患者の特例的評価等)
○三次補正:100億円(小児外来診療・転院患者診療の特例的評価)

福祉医療機構等を通じた資金繰り支援 0.1兆円(貸付枠1.9兆円)
○補正(一次~三次):0.1兆円(福祉医療機構への出資金等) 累計の貸付枠1.9兆円(財政融資を活用)
・累次の制度拡充を実施(貸付限度額拡充、無利子枠・無担保枠の設定・拡充、償還期間の延長等)

ワクチン確保等 1.7兆円
○二次補正:0.1兆円(ワクチン生産体制等整備基金、接種体制確保等)
○予備費[9月]:0.8兆円(ワクチンの確保、接種体制整備、国際的共同購入枠組みへの参加等)
○三次補正:0.7兆円(ワクチン接種の実施、国内企業のワクチン実用化への支援等)
○治療薬の確保等:400億円(アビガン、レムデシビル購入費等)

PCR検査体制の拡充、検疫体制の強化等 0.3兆円
○PCR検査等:0.2兆円(PCR等の行政検査、一定の高齢者・妊産婦等への検査、検査試薬等の確保等)
○検疫体制強化:0.1兆円

新型コロナウイルス感染症対策に係る研究開発等 0.2兆円
○補正(一次~三次)、予備費:0.2兆円(ワクチン開発の支援、国際機関への拠出等)

医療用物資の確保その他システム整備等 0.8兆円
○補正(一次~三次)、予備費:0.8兆円(医療用マスク・人工呼吸器の購入、生産設備整備、システム整備等)
※令和2年度3次補正までの補正予算・予備費を一定の考え方のもと整理したものであり、今後変更がありうる(12月25日時点)。


図表.令和3年度における「社会保障の充実」(概要)


令和3年度における「新しい経済政策パッケージ」(概要)
新しい経済政策パッケージについて(平成29年12月8日閣議決定)(抜粋)
社会保障の充実と財政健全化のバランスを取りつつ、安定財源として、2019 年10 月に予定される消費税率10%への引上げによる財源を活用する。消費税率の2%の引上げにより5 兆円強の税収となるが、この増収分を教育負担の軽減・子育て層支援・介護人材の確保等と、財政再建とに、それぞれ概ね半分ずつ充当する。前者について、新たに生まれる1.7 兆円程度を、本経済政策パッケージの幼児教育の無償化、「子育て安心プラン」の前倒しによる待機児童の解消、保育士の処遇改善、高等教育の無償化、介護人材の処遇改善に充てる。これらの政策は、2019 年10 月に予定されている消費税率10%への引上げを前提として、実行することとする。


令和3年度の消費税増収分の使途について
〈令和3年度消費税増収分の内訳〉(公費ベース)《増収額計:13.4兆円》

○基礎年金国庫負担割合2分の1(平成24・25年度の基礎年金国庫負担割合2分の1の差額に係る費用を含む)3.4兆円

○社会保障の充実 3.89兆円

・幼児教育・保育の無償化

・高等教育の無償化

・子ども・子育て支援新制度の着実な実施

・医療・介護サービスの提供体制改革

・医療・介護保険制度の改革

・難病・小児慢性特定疾病への対応

・年金生活者支援給付金の支給 等

○消費税率引上げに伴う社会保障4経費の増 0.63兆円

・診療報酬、介護報酬、年金、子育て支援等についての物価上昇に伴う増

○後代への負担のつけ回しの軽減 5.1兆円

・高齢化等に伴う自然増を含む安定財源が確保できていない既存の社会保障費