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令和3年度政府経済見通しについて

内閣府政策統括官(経済財政運営担当)付参事官(経済見通し担当)補佐 明田 侑歩

2021年1月18日に「令和3年度の経済見通しと経済財政運営の基本的態度」(以下「令和3年度見通し」という。)が閣議決定された。2020年度の我が国経済ついては、緊急事態宣言下にあった20年4-6月期の経済の落込みが大きかったことや、最近の感染拡大が経済の先行きに及ぼす影響を踏まえて、実質GDP成長率がマイナス5.2%となることを見込んでいる。他方で、2021年度は、「国民の命と暮らしを守る安心と希望のための総合経済対策」(令和2年12月8日閣議決定、以下「総合経済対策」という。)の円滑かつ着実な実施により、公的支出を通じた経済の下支えを図りつつ、設備投資をはじめとする民間需要を呼び込みながら、生産性を高め、賃金の継続的な上昇を促し、民需の自律的な回復も相まって、我が国経済は民需主導の成長軌道を回復していくことにより、実質GDP成長率は4.0%となると見込む。具体的には、「令和3年度予算編成の基本方針」(令和2年12月8日閣議決定)同様に、デジタル社会の実現や、新しい社会を支える「人」・イノベーションへの投資の強化等に取組むこととしている。結果として、我が国のGDPは名目・実質ともにコロナ前の水準に回帰し、上回っていくと見込まれる。本稿では、とりわけ、経済見通しに関する部分について、令和3年度見通しのポイントを紹介するとともに、背景や考え方、作成上の留意点等を補足して解説することとする*1。

1.経済見通しの位置づけ

過年度も本紙において紹介されているように、政府経済見通しは、(1)翌年度の経済財政運営に当たって、政府がどのような基本的な態度をとるのか、(2)そのような基本的態度に基づいて経済財政運営を行うことによって、経済はどのような姿になるのか、という2点について、政府の公式見解を閣議決定により表明するものである。したがって、政府経済見通しの策定に当たっては、足もとの経済情勢を適切に踏まえて翌年度の経済を予測するのはもちろんのこと、我が国政府が経済財政運営の基本的態度に基づき実行する各種の施策による効果を織込んでおり*2、そのような意味において単なる経済予測ではなく、いわば、今後政策的に実現を目指していく経済の姿を示しているということができる。

2.2020年度の日本経済(実績見込み)

令和3年度見通しにおいては、2020年度の我が国経済について、「新型コロナウイルス感染症の影響により、依然として厳しい状況にあるが、「新型コロナウイルス感染症緊急経済対策」、令和2年度第1次・第2次補正予算の効果も相まって、持ち直しの動きがみられる。他方、経済の水準はコロナ前を下回った状態にとどまり、経済の回復は道半ばである。」としている。最新の四半期別GDP速報(内閣府、2020年b.)では、2020年7-9月期の我が国GDPの水準は実質で527.1兆円、名目で539.0兆円と、いずれも感染症流行以前の水準(2019年10-12月期実質:548.7兆円、名目557.4兆円)を下回る水準となっている。4月から5月にかけて発出された緊急事態宣言の解除後は、年末まで継続して経済の持ち直しの動きがみられる*3ものの、対面サービスをはじめとして個人消費を中心に感染症の影響が継続しているといえよう。

今後については、「感染拡大の防止策を講じるなかで、総合経済対策の着実な執行等による各種政策の効果や海外経済の改善もあって、持ち直しの動きが続くことが期待される。ただし、感染拡大による社会経済活動への影響が内外経済を下振れさせるリスクに十分注意する必要がある。また、金融資本市場の変動等の影響を注視する必要がある。」としている。昨年末に閣議決定された総合経済対策による効果の一部が年度中にも生じるものと見込まれる*4ものの、足もとの国内外での感染拡大が、外需環境の悪化や外出自粛を通じて、我が国経済に更なる下振れ圧力を生じさせる可能性には十分な注意が必要である。

これらにより、2020年度の日本経済の実質GDP成長率の実績見込みをマイナス5.2%とした。これは、内閣府が経済財政諮問会議において昨夏公表した「令和2年度内閣府年央試算」(内閣府、2020年a.)で示された同年度の経済成長率の見通しと比べて、0.7%ポイントの下方修正である。感染拡大の第一波が生じた2020年4-6月期のマイナスが大きかったことや、年末からの国内外における感染拡大の影響により今冬の経済回復が緩やかとなることが見込まれること等を踏まえた結果、下方修正となった。なお、資料により確認可能な1955年度以降で実質経済成長率がマイナス5.2%となったことはなく*5、令和3年度経済見通しにおいて示した実績見込みが実現すれば、過去最低の成長率となる。

3.2021年度の日本経済(見通し)

2021年度の我が国経済については、「「2.令和3年度の経済財政運営の基本的態度」に基づき、「総合経済対策」を円滑かつ着実に実施すること等により、令和3年度の実質GDP成長率は4.0%程度、名目GDP成長率は4.4%程度と見込まれ、年度中には経済の水準がコロナ前の水準に回帰することが見込まれる。」としている。「2.経済財政運営の基本的態度」においては、「経済財政運営に当たっては、国民の命と暮らしを守るため、感染拡大防止と社会経済活動の両立を図る。」こととされおり、総合経済対策の円滑かつ着実な実施により、当面は公的支出による経済の下支えを行いつつ、設備投資をはじめとする民間需要を呼び込みながら、生産性を高め、賃金の継続的な上昇を促すこととしている。これらに加えて、感染拡大が防止される下では、民需の自律的な回復も期待されることから、民需主導の成長軌道に戻していくことが見込まれている。具体的には、デジタル社会の実現を目指すとともに、新しい社会を支える「人」・イノベーションへの投資を強化するほか、カーボンニュートラルを目指したグリーン社会の実現、活力ある地方を創るための施策、全ての世代の方々が安心できる社会保障制度の構築等*6に取組むこととしている。

続いて、需要項目ごとに2021年度の見通しを概観する。民間最終消費については、感染拡大防止と社会経済活動の両立が実現し、雇用・所得環境の改善が進む中で、前年度比で3.9%程度の増加を見込んでいる。民間最終消費は、対面サービス消費を中心に感染拡大に伴う行動制約の影響を直接的に受けることから、2020年度の水準は大きく落ち込んでおり、いわば底からの反動増が現れることとなる。

次に、民間企業設備投資については、足もとの落込みからの持ち直しに加えて、総合経済対策の効果もあって、デジタル化・グリーン化関連の投資が進むことにより、前年度比2.9%程度の増加を見込んでいる。民間住宅投資についても、感染症の影響による落込みからの持ち直しに伴い、前年度比1.8%の増加が見込まれる。これら民間需要全体でGDP全体の4分の3程度を占めることから、我が国経済全体に与える影響も大きく、民需寄与度は2.4%程度と見込んでいる。

また、政府支出(政府最終消費及び公的固定資本形成)については、総合経済対策の執行に伴う政府支出の増加や、社会保障関係費の増加等により、前年度比3.3%程度の増加を見込む。公的需要全体では、実質GDPへの寄与度が0.9%程度となる。

最後に、財貨・サービスの純輸出は、海外経済が世界的な感染拡大による大きな落込みから回復していく*7ことに伴い、増加することを見込んでおり、実質GDPへの外需寄与度は0.7%程度となる。その他、需要項目以外の項目については、(表1 主要経済指標)を参照されたい。

なお、政府経済見通しは各年度の経済の姿を示すものではあるが、足もとの経済の状況を踏まえれば、令和3年度見通しの見通し期間においては、感染症の影響により生じた落込みから経済が段階的に回復していく姿が想定され、当該見通しが実現する場合には、「2021年度末までにGDPは名目・実質ともにコロナ前の水準に回帰し、上回っていくと見込」(西村康稔a.)まれている(図1.GDPの水準(イメージ)参照)。

4.まとめ

前項で見た通り、2021年度の各項目の成長率や実質GDP成長率への寄与度を見ると、民間需要が同年度の経済成長を主導する見通しとなっている。ただし、2020年度の実績見込みも併せ見れば、民間需要各項目や輸出は、感染症による影響が次第に緩和することに伴い、感染症流行前の水準を取り戻していくことによる反動増が成長率を高めているのに対して、政府支出は累次の補正予算等により両年度を通じて実質GDP成長率に1%弱のプラスの寄与をもたらす見通しとなっていることにも留意すべきである(図2.実質成長率と寄与度参照)。

これは公的支出による経済の下支えの効果を見込んでいることに他ならないが、令和3年度見通しに示された経済成長が達成できるかどうかは、まずは、足もとの感染拡大を早期に抑制し、その後は感染拡大防止と社会経済活動の両立を実現することにより、民間経済活動の自律的回復を促すことができるかどうかにかかっているといえよう。政府には、なんとしても早期に感染拡大を抑制し、経済が更に下振れすることのないよう、経済財政運営に万全を尽くすことが期待される。

*1)本稿では、令和3年度経済見通しの理解に役立てるため、必要に応じて付属情報を補足するよう努めることとしたが、仮に意見に類する部分があればそれは筆者の個人的見解に属する。

*2)第201回国会・衆・総務委(2020年2月20日)における長尾秀樹委員に対する政府参考人答弁「この経済見通しの策定におきましては、制度改革を含む各種政策の効果についても考慮しておりまして、先般の経済対策の裏づけとなる令和元年度補正予算や令和二年度当初予算に盛り込まれた措置による効果を始め、政府として取り組む生産性向上、就労促進に係るさまざまな施策が各需要項目に与える影響を織り込んでおるところでございます。」

*3)月例経済報告(令和2年12月)においては、「景気は、新型コロナウイルス感染症の影響により、依然として厳しい状況にあるが、持ち直しの動きがみられる。」としている。

*4)総合経済対策による実質GDPへの下支え・押し上げ効果は3.6%程度。このうち0.5%程度が2020年度に、2.5%程度が2021年度に発現する見込み。(内閣府、2020年d.)

*5)内閣府(2019年)によれば、1955年度以降で実質経済成長率が最低となったのは2008年度。ただし、国民経済計算の2015年基準改定により計数に異同が生ずることに注意。

*6)令和3年度見通しでは、その他、自然災害からの復興や国土強靭化、国際連携の強化、多角的自由貿易体制の維持強化に取組むこととしている。

*7)世界GDP成長率(日本を除く、実質。)は、2020年度マイナス3.5%に対して、2021年度は5.9%となることを前提としている。

〈参考資料〉

内閣府(2019年)“長期経済統計 国民経済計算”、「令和2年度年次経済財政報告」https://www5.cao.go.jp/j-j/wp/wp-je20/index_pdf.html(2020年12月閲覧)

内閣府(2020年)a.「令和2(2020)年度 内閣府年央試算」(2020年7月30日)https://www5.cao.go.jp/keizai1/mitoshi/mitoshi.html(2020年12月閲覧)

内閣府(2020年)b.「四半期GDP速報 2020年7-9月期・2次速報(2020年12月8日公表)」https://www.esri.cao.go.jp/jp/sna/sokuhou/sokuhou_top.html(2020年12月閲覧)

内閣府(2020年)c.「国民の命と暮らしを守る安心と希望のための総合経済対策(令和2年12月8日閣議決定)」https://www5.cao.go.jp/keizai1/keizaitaisaku/keizaitaisaku.html(2020年12月閲覧)

内閣府(2020年)d.「国民の命と暮らしを守る安心と希望のための総合経済対策の経済効果試算」(令和2年12月8月公表)https://www5.cao.go.jp/keizai1/keizaitaisaku/keizaitaisaku.html(2020年12月閲覧)

内閣府(2020年)e.月例経済報告(令和2年12月)https://www5.cao.go.jp/keizai3/getsurei/getsurei-index.html(2020年12月閲覧)

内閣府(2020年)f.「令和3年度予算編成の基本方針(令和2年12月8日閣議決定)」https://www5.cao.go.jp/keizai1/yokihoushin/yokihoushin.html(2020年12月閲覧)

内閣府(2021年)「令和3年度経済見通し(令和3年1月18日閣議決定)」https://www5.cao.go.jp/keizai1/mitoshi/mitoshi.html(2021年1月閲覧)

西村康稔(西村やすとし)a.“本日、「令和3年度の経済見通しと経済財政運営の基本的態度」を閣議了解しました。来年度の経済成長率については、実質成長率は4.0%程度、名目成長率は4.4%程度となり、2021年度末までにGDPは名目・実質ともにコロナ前の水準に回帰し、上回っていくと見込んでいます。”2020年12月19日午前0:31 Tweet

西村康稔(西村やすとし)b.“感染拡大防止に全力を挙げつつ、先般閣議決定した経済対策、第3次補正予算を着実に実行することにより、こうした経済の姿を実現します。本対策は実質GDPを全体で3.6%、来年度2.5%押し上げます。早期に民需主導の持続的な成長軌道に乗せていくことを目指し、経済財政運営に万全を期していきます。”2020年12月19日午後2:11 Tweet