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令和3年度国債発行計画について

理財局国債企画課長 柴田 智樹

本稿では、昨年12月21日に公表した令和3年度国債発行計画の内容を中心として、国債発行を取り巻く最近の動きについて概要を説明したい。

1.令和2年度(補正予算)の国債増発と現下の国債市場の状況

令和2年は、1月下旬以降、新型コロナウイルス感染症の拡大が懸念される中で、世界経済の景気後退への警戒感が強まり、長期金利は低下し、マイナス圏で推移した。その一方で、3月には、欧州や米国における感染の深刻化により、金融市場が混乱する中で、ボラティリティの上昇による市場参加者のリスク許容度の低下や株価の大幅な下落に伴う現金化の動き等から、長期金利が急激に上昇する場面も見られた。その後、令和2年度の第2次補正予算を受けた幅広い年限での国債増発の決定を受け、5月から6月にかけて超長期ゾーンを中心にやや金利上昇したものの、7月以降は、増発後の入札が比較的順調な結果であったことや米金利の低下もあり、金利は総じて安定的に推移した。

年限別にみると、第1次・第2次補正予算において増発のなかった40年債においては、30年債とのスプレッドがタイト化した一方、第1次・第2次補正予算において大幅に増発した短期国債(1年以下)(注)については、徐々に金利上昇する傾向が見られた。

12月に経済対策の策定等に伴い編成された第3次補正予算においては、既に過去最大を大きく上回る規模となっていた国債の更なる市中増発を抑制し、市場への影響を緩和する観点から、財投機関等からの預託金の活用等による財投債の減額や年度間調整分(前倒債)の活用により、カレンダーベース市中発行額(定期的な入札による発行)の増額を回避した。

(注)市場の消化余力等を踏まえつつ、短期国債を第1次補正予算で+15.4兆円、第2次補正予算で+45.5兆円増額した。

図1.令和2年度における各年限の金利の推移

2.令和3年度国債発行計画の概要

令和3年度国債発行計画の策定に当たっては、以上のような市場環境を踏まえつつ、昨年11月に実施した「国の債務管理の在り方に関する懇談会」において、民間有識者から中長期的な国債管理政策について意見・助言をいただくとともに、同11月~12月に実施した「国債市場特別参加者会合」及び「国債投資家懇談会」において、市中発行の年限構成等について市場関係者(機関投資家、証券会社等)との対話をきめ細かく実施し、市場ニーズの把握に努めた。これらの会合においては、今後、短期国債から優先的に減額していくべきといった声や、40年債への強いニーズ等が聞かれたところであり、こうした民間有識者の指摘や市場関係者の声を踏まえつつ、令和3年度国債発行計画を策定したところである(表1.令和3年度国債発行計画の概要)。

(1)発行根拠法別発行額

令和3年度の国債発行総額は、前年度当初比+82.5兆円の236.0兆円と当初ベースでは過去に類を見ない規模となっている(参考:これまでは平成26年度当初の181.5兆円が最高)。

発行根拠法別(表1 令和3年度国債発行計画の概要 左)の内訳をみると、まず、一般会計予算の歳入となる新規国債(建設国債・特例国債)は、前年度当初比+11.0兆円の43.6兆円となっている。

復興債は、東日本大震災からの復興のための施策に要する費用の財源に充てるため、復興特別税等の収入が確保されるまでのつなぎとして発行されるものであり、令和3年度は、同▲0.7兆円の0.2兆円の発行を予定している。

財投債は、財政融資の新規貸付規模や財政融資資金全体の資金繰り等を勘案した結果、令和3年度は同+33.0兆円の45.0兆円となっている。

借換債は、過去に発行した国債の満期到来に伴う借換えのために発行するものであり、国債発行総額の大半を占めている。令和3年度の借換債発行額は、前年度(補正予算)で大幅に増発した短期国債が償還を迎えることもあり、同+39.2兆円の147.2兆円となっている。

(2)消化方式別発行額

国債の消化方式は、大別すると、「市中発行」、「個人向け販売」、「公的部門」の3方式に分けられる(表1.令和3年度国債発行計画の概要 中)。

大半を占める「市中発行」分のうち、カレンダーベース市中発行額については、前年度当初比+92.6兆円、補正後比+9.1兆円の221.4兆円となっているが、補正増発後の発行ロットを前提とした平年度化ベース(注)からは▲3.8兆円となっている(図2.令和3年度市中発行額の推移)。

「個人向け販売」分は、新型コロナの影響等を受けた足元の販売状況等を踏まえ、前年度当初比▲0.7兆円の4.1兆円としている。

また、「公的部門」(日銀乗換)は、日本銀行が保有する国債が満期を迎えた際に、その一部について国会の議決を経た金額の範囲内で借換債を引き受ける制度である。令和3年度は、国債発行総額や市場環境等を踏まえ、前年度と同額の2.2兆円としている。

(注)平年度化ベースとは、増発後(令和2年7月~)の発行ロット(入札1回当たりの発行額)を維持した場合の年間発行額のことである。

(3)年限別発行額

カレンダーベース市中発行額の年限別発行額については、上述のとおり補正増発後の平年度化ベースから▲3.8兆円となる中で、令和4年度の借換債の増加要因となる短期債(6ヵ月)を前年度3次補正後比で▲4.4兆円の41.2兆円とする一方、市場のニーズを踏まえ、40年債を同+0.6兆円の3.6兆円としている(表1.令和3年度国債発行計画の概要 右)。

長期債(10年債)、中期債(5・2年債)、短期債(1年債)については、前年度(増発後の平年度化ベース)から同額としている。

また、「流動性供給入札」は、前年度当初と同額の11.4兆円の規模で実施することとしている。

3.おわりに

令和3年度国債発行総額は、新型コロナへの対応等に伴い、当初ベースでは過去に類を見ない規模となっており、この結果、国債発行残高(財投債含む)は、令和3年度末に約1,129.9兆円に達すると見込まれている。

今後も借換債を含めた国債の大量発行を余儀なくされる中、これらの国債を確実かつ円滑に発行しつつ、中長期的な調達コストの抑制を図っていく観点から、国債管理政策は一層重要となっている。

国債発行当局としては、引き続き国債市場の動向を注視しつつ、市場関係者との緊密な対話を行い、中長期的な需要動向を見極め、安定的で透明性の高い国債発行に努めていく所存である。

図3.国債発行総額及び残高の推移