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(補論)新型コロナ融資への財政投融資の対応

理財局計画官 小澤 研也

1.新型コロナ融資の制度概要と利用実績

令和2年2月以降、2度にわたる緊急対応策や補正予算等を通じて、新型コロナ感染症による経済的被害を受けている事業者の資金繰り支援のため、低利での設備資金及び運転資金の供給を目的とするいわゆる「新型コロナ融資制度」を導入・拡充してきた。例えば日本政策金融公庫(以下「日本公庫」と言う)においては、国民生活事業の場合は6千万円、中小企業事業の場合は3億円を上限に*2、当初3年間は基準利率から▲0.9%引き下げた利率*3とし、一定の条件を満たす場合には実質無利子化措置を講じている。更に、新規融資とあわせて既往債務の借換えも可能とし、借換え部分についても金利引き下げを行うこととしている。

財投では、この日本公庫、沖縄振興開発金融公庫(以下「沖縄公庫」という)や福祉医療機構における新型コロナ融資の財源として約29兆円の財政投融資を計上するとともに、日本政策投資銀行(以下「政投銀」と言う)や商工組合中央金庫(以下「商工中金」と言う)による中小・中堅・大企業向けのツーステップ・ローンや資本性劣後ローンの財源として21兆円の財政投融資を計上している。このように、2度にわたる補正や弾力追加を通じて総額約50兆円という空前の規模の計画補正を行ったのは、事業者の資金繰り支援の必要性もさることながら、非常時の備えとして事業者に安心感を持ってもらうことも目的としているからである。運用残(いわゆる使い残し)を発生させないよう必要最低限の金額ギリギリを査定して計上する、通常の財投計画とは異なる観点から計上が行われたのである(資料1.令和2年度から令和3年度にかけての財投計画計上額(新型コロナ融資等関連分))。

新型コロナ融資は昨年3月に貸付を開始したが、コロナ感染者数の拡大と緊急事態宣言の発令を受け、日本公庫等の窓口には過去の金融危機時や災害発生時を上回る水準の申し込みが殺到し、処理能力を危ぶむ報道もあった。しかし、他部門からの職員の応援やOB職員の臨時雇用による体制整備、提出書類の簡素化や審査手続きの合理化等により順次対応が図られてきた。また、民間金融機関においても、異例の試みとして、昨年5月より日本公庫等と同様の実質無利子・無担保融資が導入されており(52兆円程度)、事業者による当面の資金ニーズに対しては十分な制度的対応が図られているものと考えられる。

新型コロナ融資の実績については、まずストックで見ると、昨年12月末までの融資決定額は政府系*419兆円、民間*528兆円、合計約47兆円となっており、昨年6月以降は民間の融資額が政府系を上回る状態となっている(資料2.政策対応に基づくコロナ関連融資額の推移(ストック))。次にフローで見ると、政府系では緊急事態宣言が発令されていた4月から5月にかけて各金融機関でかなりの件数・金額の融資決定が行われたものの、足元では、福祉医療機構以外については減少傾向が顕著になっている。例えば、日本公庫では昨年12月の融資額は令和元年度の月平均融資額を上回っているものの、年末資金需要を考慮するとほぼ平年並みの水準に復している状況にある(資料3.新型コロナウイルス関連融資(実績))。

日本公庫における新型コロナ融資を平時の融資と比較すると、新規顧客の割合が高い、平均貸付金額が大きい、平均貸付期間が長いという特徴がみられる。また、感染予防のため外食や観光が控えられる傾向にあることを背景に、融資先業種割合は、飲食・宿泊業やサービス業の割合が平時よりも5%ポイント程度高くなっている(資料4.平時とコロナ下における日本公庫の融資比較)。これらの業種には規模が小さく経営基盤が脆弱な事業者が多く、今後の経済情勢次第では返済が困難になる場合も想定されることから、日本公庫等に対しては一般会計から十分な財務基盤強化が行われている*6。

また、第2次補正予算では、中長期的に持続可能であるものの、一時的な業績悪化により自己資本が減少して民間からの追加融資が困難となっている事業者を支援するため、政投銀や日本公庫等において資本性劣後ローンが導入されている(6兆円規模)。但し、新型コロナ融資の当初3年間の実質無利子化措置や新型コロナ特例リスケジュールによる支援*7等もあることから、資本性劣後ローンの12月までの貸付実績は2,900億円程度にとどまっている。

2.経済対策と令和3年度計画

上述のように、新型コロナ融資はほぼ平年の融資額に近い水準まで減少してきている。ただし、昨年12月における令和3年度計画の策定にあたっては、新型コロナ感染症の第3波・第4波の発生や再度の緊急事態宣言の発令も想定する必要があること、年末・年度末の資金需要が急増する可能性があること、民間金融機関による実質無利子化措置の終了による影響等を考慮して、日本公庫等に対して総額約27兆円という十分な金額の財政融資を計上している(資料1 令和2年度から令和3年度にかけての財投計画計上額(新型コロナ融資等関連分))。

昨年末以降、新型コロナ感染症の第3波が発生し緊急事態宣言が再度発令されているものの、足元では融資申込件数は特段増えていない。この状況が年度末まで続く場合、令和2年度計画については少なからぬ運用残が発生すると見込まれるが、この運用残は令和3年度の政府系金融機関における融資財源に充てることはできないことに留意されたい。

新型コロナ融資はリーマンショック時の融資制度と比較しても異例の措置であり、ゆくゆくは平常化させていかなければならないことは言を俟たない。このため、昨年末の経済対策において、民間を通じた実質無利子・無担保融資は本年3月まで、日本公庫等による同措置は、感染状況や資金繰りの状況を踏まえ、当面本年前半まで継続すること(以後の措置は未定)とされている。

但し、日本公庫等に対する財政融資については、本年前半までの所要金額ではなく、来年3月までの所要金額として上記の通り総額約27兆円を計上している。これは、金利負担の有無・水準にかかわらず、新型コロナ感染症や経済情勢によっては今年度を通じて事業者の資金繰り需要が再び急増する可能性があり、このような事態に即応できる体制を備えるためである。なお、日本公庫等における財務基盤強化については令和2年度補正予算において十分な措置が講じられており、財政融資における償還確実性は十分に担保されている。

ポスト・コロナの経済構造に転換するためには、収益性の高い事業構造や産業構造への改革も必要となってくる。このため、日本公庫においては、新事業やビジネスモデルの転換等の生産性向上に資する設備投資について適用金利を引き下げる融資制度を2年度第3次補正予算より措置*8しているが、財政融資はこの財源も手当てしている。

*1)本稿における意見に渡る部分は筆者個人の見解である。

*2)金利引き下げの上限額は、昨年3月の導入時は国民生活事業3千万円、中小企業事業1億円であったが、昨年7月にそれぞれ4千万円と2億円、本年1月に6千万円と3億円に引き上げられた。

*3)導入時の基準金利と引き下げ後の金利は、国民生活事業:1.36%→0.46%、中小企業事業:1.11%→0.21%。

*4)日本公庫・沖縄公庫、政投銀・商工中金(危機対応円滑化業務)及び福祉医療機構の合計。

*5)信用保証協会による保証(セーフティネット保証4号・5号及び危機関連保証)付融資。なお、民間金融機関による実質無利子融資は上記28兆円の内数であり、令和2年12月末時点で約17兆円。

*6)令和2年度の3次にわたる補正予算を通じ、政府系金融機関(日本公庫、沖縄公庫、政投銀、商工中金及び福祉医療機構)に対して、新型コロナ融資と資本性劣後ローンの利下げ財源も含めた財務基盤強化を目的として合計9兆円程度が一般会計に計上されている。

*7)新型コロナの影響を受けて資金繰りに悩む中小企業に対して、中小企業再生支援協議会が特例リスケジュール計画策定の支援を行い、主要債権者の支援姿勢を確認したうえで、既存の借入について最長1年間返済猶予を行うという措置。

*8)設備資金貸付利率特例制度。各貸付制度の基準金利から当初2年間▲0.5%引き下げ。