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令和3年度税制改正(関税)について

関税局関税課 関税企画調整室長 三木 文平

令和3年度関税改正については、国税と同様に、与党における税制改正プロセスを経て、「令和3年度税制改正の大綱」(令和2年12月21日閣議決定)にその内容が盛り込まれた。

本稿においては、「令和3年度税制改正の大綱」のうち関税の主な項目について説明したい。

1.暫定税率等の適用期限の延長等

関税においては、政策上の必要性等から、とうもろこしや麦芽等416品目において、時限的に基本税率より低い関税率が暫定税率として定められている。国内の生産者及び消費者等に及ぼす影響、国際交渉との関係、産業政策上の必要性等を考慮し、416品目に係る暫定税率の適用期限を1年延長する。

ウルグアイ・ラウンド合意に基づいて関税化された米、麦、乳製品等については、輸入数量が一定の水準を超えた場合等に関税率を引き上げる特別緊急関税制度が暫定的特例として設けられている。引き続き国内産業を保護する必要があること等から、特別緊急関税制度の適用期限を1年延長する。

輸入される加糖調製品(砂糖と砂糖以外のココア粉やミルク等の混合物)については、国内産糖の支援のため、関税に加え、糖価調整制度における調整金が、関税と調整金の合計がWTO譲許水準となるように課されており、調整金収入を国内産糖への支援に充当している。輸入加糖調製品と国産砂糖に価格差があること等を踏まえ、国内産糖への支援に充当する調整金の拡大が可能となるよう、加糖調製品のうち6品目の暫定税率を引き下げる。

沖縄振興特別措置法に基づく各種税制上の特例措置の一環として、沖縄の国際物流拠点産業集積地域の保税工場等においては、外国貨物を原料として製造される製品について、原料課税か製品課税かを輸入者が選択できる選択課税制度が設けられている。この選択課税制度について、沖縄振興特別措置法の適用期限である令和3年度末まで1年延長する。

2.個別品目の関税率の見直し

ポリ塩化ビニル製使い捨て手袋については、主に医療・介護現場等において感染症対策等に使用されているが、新型コロナウイルスの影響により、世界的に需要が増え、価格の上昇が生じている。そのため、調達価格上昇に伴う負担を軽減し、医療・介護現場における安定供給を図る観点から、関税を無税化する。

なお、当該手袋については、国内企業の生産設備導入に際した補助を行うなど国産供給量を確保するための施策を行っていることから、令和4年度以降の関税率の設定に当たっては、新型コロナウイルス感染症の流行状況や当該手袋の国内生産の動向等を踏まえる必要がある。このため、暫定税率を新たに設定し、無税とする。

また、2,6-ナフタレンジカルボン酸ジメチル(データ記録用テープ素材、医薬品用容器及び給食用食器等に利用されるポリエチレンナフタレート樹脂の原料)及びメタ-フェニレンジアミン(消防用防火服、自動車エンジン向けギア用基材等に使用されるメタ系アラミド繊維の原料)については、全量を海外から輸入しているが、近年の価格上昇を踏まえ、我が国産業の競争力維持等の観点から、基本税率を無税化する。

写真:ポリ塩化ビニル製使い捨て手袋の例

3.特恵関税制度の適用期限の延長

関税においては、開発途上国の経済発展を支援するため、開発途上国からの輸入産品の関税率を無税あるいは低税率とする特恵関税制度が設けられている。特恵関税制度は、UNCTAD(国連貿易開発会議)での合意に基づき昭和46年に適用期限を10年として導入され、以来、同期限が4度延長されている。開発途上国の開発支援は引き続き重要であること、開発途上国へ投資等をする企業の予見可能性を確保する必要があることを踏まえ、適用期限を10年延長する。

4.HS品目表の2022年(令和4年)改正への対応

関税率表は、世界税関機構(WCO)において採択された、商品の名称及び分類についての統一システムに関する国際条約(International Convention on the Harmonized Commodity Description and Coding System)附属書の品目表(HS品目表)に基づいて作成されている。HS品目表は、技術革新による新規商品の登場等に対応するため、概ね5年ごとに改正されている。次期HS品目表が令和4年1月1日から適用されることとなっていることから、HS品目表の改正に応じて、関税率表を改正する。

5.災害等による納期限等の延長制度の拡充

関税においては、災害発生後、告示により地域を指定し、納期限等を延長できる制度(地域指定による期限延長)が設けられている。

一方、国税においては、同様の地域指定によるほか、納税者等の申請に基づき期限延長をすること(個別指定による期限延長)や、e-Taxの使用不能等により期限までに納付等をすることができない者の範囲を指定して期限延長をすること(対象者指定による期限延長)が可能とされている。

そのため、個別事情を勘案して期限を延長する等のきめ細やかな対応を可能とする観点から、国税と同様の個別指定による期限延長を可能とする。また、ほぼ全ての輸出入者が利用する輸出入・港湾関連情報処理システム(NACCS)がサイバー攻撃等により使用不能になる等の場合にも機動的に対応できるよう、国税と同様の対象者指定による期限延長を可能とする。

6.税関関係書類における押印義務の見直し

税関関係手続は、デジタル化が進んでおり、実態として多くの手続において押印が不要となっているが、一部の手続については押印が必要とされている。

そのため、行政のデジタル化、新型コロナウイルス感染症対策の観点から、改めて押印の必要性を精査し、原則として押印義務を廃止する。

7.通関時における関税等の納付手段の多様化

現在、我が国に入国する旅客等の携帯品等に係る関税等については、現金納付のみが認められている。

そのため、旅客等の利便性の向上、通関の更なる円滑化、非接触型の決済による新型コロナウイルス感染症の感染拡大防止等の観点から、スマートフォンやクレジットカードを利用した小口のキャッシュレス納付も可能とし、納付手段を多様化する。

8.電子帳簿等保存制度の見直し

輸出入の実務は大部分が電子的に行われている。関税関係帳簿書類を電子的に保存することも可能であるが、所定の要件を満たした上で承認を受ける必要があり、実態として民間において電子的に保存するケースは少なく、電子書類を紙で印刷して保存するといったことが行われている。

一方、令和3年度税制改正においては、内国税の電子帳簿等保存制度について、電子帳簿等保存制度に係る手続の簡素化、スキャナ保存制度の要件緩和及び不正行為に係る担保措置の創設、電子取引に係るデータ保存制度の要件の見直し等が行われることとなっている。

そのため、関税においても、関税関係帳簿書類の電子的保存に係る負担の削減を図るとともに、円滑な事後調査のための適切な保存を推進する観点から、内国税と同様の電子帳簿等保存制度の見直しを行う。