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令和2年度第3次補正予算及び令和3年度予算について

主計局総務課主計官 中島 朗洋

1.令和2年度第3次補正予算及び令和3年度予算編成の背景と考え方

日本経済については、新型コロナウイルス感染症の影響により、依然として厳しい状況にある。令和2年度第1次補正予算及び第2次補正予算の政策効果等もあり、持ち直しの動きがみられるものの、新型コロナウイルス感染症が内外経済を下振れさせるリスクに十分注意する必要がある。

(参考)
令和2年度の実質GDP成長率は▲5.2%程度、名目GDP成長率は▲4.2%程度と見込まれており、令和3年度はそれぞれ4.0%程度、4.4%程度と見込まれている。

このような状況の下、昨年12月8日に、「国民の命と暮らしを守る安心と希望のための総合経済対策」が閣議決定された。

この総合経済対策は、雇用と事業を支えながら、新型コロナウイルス感染症の拡大を防止するとともに、ポストコロナに向けた経済構造の転換・好循環の実現を図り、防災・減災、国土強靭化の推進など安全・安心の確保を進めるものである。これに基づき、いわゆる「15か月予算」の考え方で、令和3年度当初予算と一体として、令和2年度第3次補正予算を編成することとされた。

一方、財政状況に目を転じれば、日本の財政は、少子高齢化に伴う構造的な課題にも直面している。

「経済財政運営と改革の基本方針2020」(令和2年7月17日閣議決定)等を踏まえ、2025年度のプライマリーバランスの黒字化目標等の達成に向けて、引き続き、これまでの歳出改革の取組を継続し、経済再生と財政健全化の両立を図っていく必要がある。

2.令和2年度第3次補正予算の概要

令和2年度第3次補正予算は、前述の総合経済対策の実行等のために編成された。

歳出面においては、総合経済対策の実行に係る経費として19兆1,761億円を計上している。このほか、国税の減収に伴う地方交付税交付金原資の減額の補塡等を行うとともに、既定経費の減額を行うこととしている。

一方、歳入面においては、租税等の収入について、最近までの収入実績や企業収益の動向等を勘案して、8兆3,880億円の減収を見込んでいる。また、税外収入については、7,297億円の増収を見込むほか、前年度剰余金6,904億円を計上することとしている。

以上によってなお不足する歳入について、公債を22兆3,950億円発行することとしている。

この結果、令和2年度第3次補正後予算の総額は、一般会計第2次補正後予算に対して歳入歳出ともに15兆4,271億円増加し、175兆6,878億円となる。

また、令和2年度の公債発行額は112兆5,539億円となる。

図.令和2年度第3次補正予算の概要

<img style="vertical-align: text-top;" src="/common/images/no_01.gif" alt="ローマ数字1" height="13" width="13">.新型コロナウイルス感染症の拡大防止策 43,581億円
1.医療提供体制の確保と医療機関等への支援 16,447億円
○新型コロナウイルス感染症緊急包括支援交付金(病床や宿泊療養施設等の確保等)〔13,011億円〕
○診療・検査医療機関をはじめとした医療機関等における感染拡大防止等の支援〔1,071億円〕
○医療機関等の資金繰り支援〔1,037億円〕
○ 小児科等の医療機関等に対する診療報酬による支援〔71億円〕 等
2.検査体制の充実、ワクチン接種体制等の整備 8,204億円
○新型コロナウイルスワクチンの接種体制の整備・接種の実施〔5,736億円〕
○PCR検査・抗原検査の実施等〔672億円〕 等
3.知見に基づく感染防止対策の徹底 17,487億円
○新型コロナウイルス感染症対応地方創生臨時交付金〔15,000億円〕
○東京オリンピック・パラリンピック競技大会の延期に伴う感染症対策等事業〔959億円〕 等
4.感染症の収束に向けた国際協力 1,444億円
○アフリカ、中東、アジア・大洋州地域への国際機関等を通じた支援〔792億円〕 等

<img style="vertical-align: text-top;" src="/common/images/no_02.gif" alt="ローマ数字2" height="13" width="13">.ポストコロナに向けた経済構造の転換・好循環の実現 116,766億円
1.デジタル改革・グリーン社会の実現 28,256億円
○地方団体のデジタル基盤改革支援〔1,788億円〕
○マイナンバーカードの普及促進〔1,336億円〕
○ポスト5G・Beyond5G(6G)研究開発支援〔1,400億円〕
○カーボンニュートラルに向けた革新的な技術開発支援のための基金の創設〔20,000億円〕
○グリーン住宅ポイント制度の創設〔1,094億円〕 等
2.経済構造の転換・イノベーション等による生産性向上 23,959億円
○中堅・中小企業の経営転換支援(事業再構築補助金)〔11,485億円〕
○大学ファンド〔5,000億円〕
○持続化補助金等〔2,300億円〕
○国内外のサプライチェーン強靱化支援〔2,225億円〕
○地域公共交通の維持・活性化への重点的支援〔150億円〕 等
3.地域・社会・雇用における民需主導の好循環の実現 64,551億円
○中小・小規模事業者等への資金繰り支援〔32,049億円〕
○地方創生臨時交付金(再掲)
○Go To トラベル〔10,311億円〕、Go To イート〔515億円〕
○雇用調整助成金の特例措置〔5,430億円〕
○緊急小口資金等の特例措置〔4,199億円〕
○観光(インバウンド復活に向けた基盤整備)〔650億円〕
○不妊治療に係る助成措置の拡充〔370億円〕
○水田の畑地化・汎用化・大区画化等による高収益化の推進〔700億円〕
○新型コロナウイルス感染症セーフティネット強化交付金(生活困窮者支援・自殺対策等)〔140億円〕 等

<img style="vertical-align: text-top;" src="/common/images/no_03.gif" alt="ローマ数字3" height="13" width="13">.防災・減災、国土強靱化の推進など安全・安心の確保 31,414億円
1.防災・減災、国土強靱化の推進 20,936億円
○防災・減災、国土強靱化の推進(公共事業)〔16,532億円〕 等
(注)2.「自然災害からの復旧・復興の加速」等に整理している事業も含め、防災・減災、国土強靱化関係予算全体で22,604億円を確保。
2.自然災害からの復旧・復興の加速 6,337億円
○災害復旧等事業費〔6,057億円〕
○災害等廃棄物処理〔106億円〕 等
3.国民の安全・安心の確保 4,141億円
○自衛隊の安定的な運用態勢の確保〔3,017億円〕 等

補正予算の追加歳出計 191,761億円
(参考1)令和2年度第3次補正予算においては、上記「経済対策」の実行に係る国費に加え、国際分担金等の追加財政需要〔252億円〕等を計上。
(参考2)上記のほか、労働保険特別会計において9,320億円、エネルギー対策特別会計において169億円の歳出追加等を計上。

図.令和2年度第3次補正予算のフレーム
図.令和2年度3次補正後予算フレーム

3.令和3年度予算の概要

(1)令和3年度予算のポイント

令和3年度予算は、令和2年度第3次補正予算と合わせ、新型コロナウイルス感染症の影響を受けている国民の命と生活を守るため、感染拡大防止に万全を期すとともに、将来を切り拓くため、中長期的な課題を見据えて着実に対応を進めていく予算としている。

本予算は、前述の経済財政状況等をふまえ、「令和3年度予算編成の基本方針」(令和2年12月8日閣議決定)に沿って編成が進められたものであり、具体的なポイントは以下の通りである。

ア.感染拡大防止

令和2年度第3次補正予算により、病床・宿泊療養施設の確保、ワクチン接種の体制整備等を措置している。これに加え、感染症危機管理体制や保健所体制の整備、医療機器の国内生産能力の増強等によって感染拡大防止に万全を期すとともに、予期せぬ状況変化への備えとして、5兆円の新型コロナウイルス感染症対策予備費を措置する。

イ.デジタル社会・グリーン社会の実現

令和3年9月に、官民の高度専門人材を結集し、強力な総合調整機能を有するデジタル庁を設置する。情報システム予算の一括計上を進めて3,000億円規模の予算を措置することで、政府全体の情報システムの一元的な管理を行う。このほか、市町村の体制整備への支援を通じマイナンバーカードの取得を促進するとともに、運転免許証とマイナンバーカードの一体化を推進する。

また、グリーン社会の実現に向け、野心的な二酸化炭素の排出削減に取り組む企業に対する成果連動型の低利融資制度の創設(今後3年間で1兆円の融資規模)やESG投資の呼込み支援を実施するとともに、再エネ・省エネ等の研究開発・導入を支援する。

ウ.活力ある地方創り

地域活性化の自主的・先導的な取組を支援する「地方創生推進交付金(1,000億円)」における移住支援事業を拡充する。企業・自治体のマッチング支援を行う「地方創生テレワーク推進事業(1.2億円)」等により、地方へ人や仕事の流れを拡大する。

また、「インバウンド消費2030年15兆円目標」の達成に向け、国際観光旅客税収(300億円)の活用により、自然・文化を生かした高付加価値なコンテンツの創出や、ホテル・旅館のサービス向上を加速する。顔認証での決済の活用等の「観光DX」やワーケーションを推進する。

エ.少子化対策など全世代型社会保障制度の構築

新型コロナウイルス感染症への対応を引き続き推進するとともに、足下の医療費の動向も反映しつつ「経済財政運営と改革の基本方針2018」(平成30年6月15日閣議決定)で示された「新経済・財政再生計画」に基づき歳出改革を継続している。職員の処遇改善にも配慮した、介護報酬改定(+0.70%・+196億円)、障害福祉サービス等報酬改定(+0.56%・+86億円)の実施に必要な経費を確保しつつ、毎年薬価改定の実現により実勢価格の下落を反映して国民負担を軽減(▲1,001億円)している。

また、後期高齢者医療の自己負担割合の見直しなどの制度改革と併せて、子育て世代等の希望の実現に向けた少子化対策を推進する(「新子育て安心プラン」に基づく保育の受け皿の整備(602億円)、不育症の検査・がん治療に伴う不妊に係る支援(23億円)等)。

なお、令和2年度第3次補正予算においても、不妊治療費用の助成について大幅に拡充している。

オ.歳出改革の取組の継続

「新経済・財政計画」に沿って、社会保障関係費について実質的な伸びを高齢化による増加分におさめるとの方針を達成している。非社会保障関係費についても、同計画に沿って、全般的な見直しを行うことで、一般歳出についての「目安」を達成している。

・社会保障関係費+1,507億円(医療費動向を踏まえた前年度の土台からの実質的な伸びは+3,500億円程度)
・非社会保障関係費+330億円(これまでの取組の継続)

(2)令和3年度予算のフレーム

令和3年度予算の一般歳出は66兆9,020億円であり、これに地方交付税交付金等15兆9,489億円及び国債費23兆7,588億円を加えた一般会計総額は、106兆6,097億円となっている。

歳入については、租税等の収入は57兆4,480億円、その他収入は5兆5,647億円を見込み、公債金は43兆5,970億円となっている。

(3)主要な経費の概要

社会保障関係費については、職員の処遇改善にも配慮した介護報酬改定・障害福祉サービス等報酬改定の実施に必要な経費を確保しつつ、毎年薬価改定の実現等、様々な歳出抑制努力を積み重ねた結果、「新経済・財政再生計画」に沿って、実質的な伸びを「高齢化による増加分におさめる」という方針を達成している。これらの結果、35兆8,421億円を計上している。

文教及び科学振興費については、小学校35人以下学級の実施に向けて必要な教職員定数の措置及び合理化等を図るほか、大学改革、安全・安心な学校の施設整備等を推進するとともに、科学技術基盤を充実し、イノベーションを促進することとしている。これらの結果、5兆3,969億円を計上している。

地方財政については、国税及び地方税の税収の落ち込みに対し、地方の一般財源総額を適切に確保し、地方に最大限配慮することとしている。これらの結果、地方交付税交付金等について、15兆9,489億円を計上している。

防衛関係費については、安全保障環境の変化に対応するため、中期防衛力整備計画に基づき、調達の効率化を徹底しつつ、宇宙やサイバーといった新領域を含め防衛力を着実に強化することとしている。これらの結果、5兆3,235億円を計上している。

公共事業関係費については、ハード・ソフトが一体となった防災・減災対策と維持更新コストの増加抑制の観点を踏まえつつ、国土強靱化の取組への重点化を図るほか、生産性向上のためのインフラ整備等を推進することとしている。これらの結果、6兆695億円を計上している。

経済協力費については、新型コロナウイルス感染症の国際的な収束に向け、保健分野での途上国支援を強化しつつ、ODAは予算・事業量ともに必要な額を確保することとしている。これらの結果、5,108億円を計上している。

中小企業対策費については、生産性向上を促進するための設備投資や、事業再生・事業承継に対する支援を充実するほか、資金繰り対策にも万全を期すこととしている。これらの結果、1,745億円を計上している。

エネルギー対策費については、再生可能エネルギーの主力電源化やカーボンリサイクルの推進など、イノベーションによる脱炭素化を推進するほか、災害等に強いエネルギー供給網の整備に取り組むこととしている。これらの結果、8,891億円を計上している。

農林水産関係予算については、農林水産物・食品の輸出拡大、農業経営の生産性向上を進めるほか、グリーン社会実現に向けた森林資源管理や、改正漁業法を踏まえた適切な水産資源管理に取り組むこととしている。これらの結果、全体で2兆3,050億円を計上している。

東日本大震災からの復興については第2期復興・創生期間の初年度において復興のステージに応じたきめ細やかな取組を着実に実施するため、東日本大震災復興特別会計の総額を9,318億円としている。

今後の新型コロナウイルス感染症の状況等を踏まえ、必要な対策を講じるため、5兆円の新型コロナウイルス感染症対策予備費を計上している。

図.令和3年度予算のフレーム

4.結び

前述の通り、令和2年度第3次補正予算及び令和3年度予算は、感染拡大防止に万全を期すとともに、中長期的な課題を見据えて着実に対応を進めていく予算としており、関連法案とあわせて、国会での御審議を経て速やかに成立することが期待されている。

次の世代に未来をつないでいくため、今回の危機を乗り越えるとともに、構造的な課題に着実に取り組むことで、経済再生と財政健全化の両立を進めてまいりたい。

(以上)

図.令和3年度予算の主要経費別内訳
図.一般会計歳出総額、税収及び公債発行額の推移