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第2回G20財務大臣・保健大臣合同会議について

国際局 開発政策課 課長 河邑 忠昭/同 開発政策調整室長 濱田 秀明
同 国際保健専門官 柳川 優人/同 環境調整第二係長 長谷川 健太

1.はじめに

本年9月17日(木)、サウジアラビア議長下においてG20 財務大臣・保健大臣合同会議がオンライン形式で開催され、日本からは、麻生財務大臣と田村厚生労働大臣が出席した。

国際保健は、日本が国際的に主導してきたアジェンダであり、当合同会議も日本がG20議長を務めた2019年に初めて開催したものである。今般の合同会議は、新型コロナウイルスの感染が世界的に拡大し、未曾有の保健危機が起こる中、G20の財務当局と保健当局の連携と取組を国際社会に示す極めて重要な会議であった。

本稿では、合同会議開催に至るまでの経緯も振り返りつつ、その議論と成果を紹介したい。

2.国際保健に関する日本の取組

国際保健は、新型コロナ感染症が流行する以前から、日本政府の国際開発における重点分野の一つである。特に、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)の達成、即ち、「全ての人々が、適切な予防、治療、リハビリ等の保健医療サービスを、支払可能な費用で受け取られる状態」を実現することに、日本政府は強くコミットしてきた。

日本政府がUHCを推進する契機としては、「国際保健のためのG7伊勢志摩ビジョン」が示された2016年5月のG7伊勢志摩サミットが挙げられる。続いて、2017年12月には、「UHCフォーラム2017」を東京で開催し、2018年4月には世界銀行・IMF春会合の主要イベントの一つとして日本政府、世界銀行、WHO共催の下、「UHC財務大臣会合」を開催した。こうした国際会議で、日本は、UHCの重要性や、資金面での取組を進めるために財務大臣と保健大臣が連携する必要性を提唱してきた。

以上の流れの中で、日本が議長国となった2019年のG20では、第1回財務大臣・保健大臣合同会議を大阪で初めて開催し、「途上国におけるUHCファイナンス強化の重要性に関するG20共通理解」へのコミットメントを確認した。当コミットメントでは、経済発展の早い段階でUHCに取り組むことが重要であり、そのためには、財務大臣と保健大臣の連携により、保健財政制度を設計する取組が重要であること等、これまで積み重ねてきた議論を基にUHCファイナンスの原則を確認した。

3.第2回合同会議開催に至る経緯

サウジアラビア議長下の2020年G20では、当初、国際保健に関するモメンタムは必ずしも高くなく、財務大臣・保健大臣合同会議の開催も見通せない状況であった。しかしながら、新型コロナウイルスの感染が徐々に拡大し、3月11日、WHOがパンデミックに該当すると発表するに至り、環境は一変した。3月26日には、G20議長国サウジアラビアの呼び掛けにより、各国内の経済状況や感染拡大防止策について議論を行うため、G20臨時首脳テレビ会議が急遽開催され、新型コロナ感染症によるパンデミックに対応するため、首脳からの要請として、第2回財務大臣・保健大臣合同会議を開催することとされたのである。

4.第2回合同会議での議論と成果

財務大臣・保健大臣合同会議が目指すべき成果については、大臣会議が開催される1か月以上前から、各国の事務方により、ビデオ会議やメール等を通じて集中的に議論がなされた。特に、新型コロナ感染症への対応を巡る国際協調のあり方については、各国間で意見の隔たりが大きく、一時は成果文書を発出できるか危ぶまれる状況にまで陥った。日本は、G20の前議長国、そして、第1回G20財務大臣・保健大臣会議の開催を含め、国際保健の議論を主導してきた立場から、議長国サウジアラビアを支え、水面下で各国と意見調整する等、共同声明の合意に向けて精力的に貢献した。ぎりぎりの調整が大臣会議当日の9月17日まで続けられた後、大臣会議がオンライン形式で開催された。

日本からは、麻生財務大臣と田村厚生労働大臣が出席し、前年のG20議長国として、各国に先駆けて議長から指名を受け、発言した。麻生大臣からは、(1)新型コロナ感染症の危機に際し、G20として力強いメッセージを世界に示す必要があること、(2)ワクチンと薬に、世界の誰もがアクセスするため、その開発のみならず、途上国における製造や普及を含めた包括的な取組が必要であり、特に特許利用の推進が重要であること、(3)感染症の抑制と経済回復の両立のためには、昨年の日本議長下で合意したUHCの推進が不可欠であること、について発言した。

田村厚生労働大臣からは、(1)経済活動の再開と新型コロナ感染症の制御を両立させるためには、医薬品、医療機器、人材、質の高い医療制度、持続可能な保健財政が必要であること、(2)これらの要素は、UHCを推進するために各国が追求しているものであり、今回のパンデミックは、UHCの重要性を再認識する機会となったこと、等を指摘した。

その後、各国の財務大臣と保健大臣のほか、世界銀行、IMF、WHO等の国際機関の長も発言し、現下のパンデミックへの対応や今後の備え等について活発な議論がなされた上で、最終的に共同声明を採択するに至った。共同声明では、新型コロナ対応に係るワクチン・薬について、開発・製造・普及に向けた包括的な取組の重要性を確認し、その一環として日本が提唱する特許プールへの支持が示された。また、UHCへの取組を通じた感染症への備えと対応の向上が持続的な経済成長に不可欠であり、UHCへの投資が成長戦略としても重要であるとの理解が広がり、昨年の第1回合同会議で確認した「途上国におけるUHCファイナンス強化の重要性に関するG20共通理解」へのコミットメントを再確認した。

5.終わりに

本会議の成果は、新型コロナウイルスによるパンデミックに対応するためのG20行動計画の一部として取りまとめられ、10月の財務大臣・中央銀行総裁会議で合意した後、11月のG20首脳会議に提出されることとなった。行動計画には、財務大臣と保健大臣が引き続き協働していくことも明記されており、日本議長下で初めて開催された財務大臣・保健大臣会議はG20の新たなスタンダードとして定着しつつある。2021年のイタリア議長下のG20を始め、今後も様々なチャネルを通じ、UHCに関する共通理解の実践を含め、更なる議論と取組が進展するよう貢献していきたい。

舞台裏

共同声明を作り上げる工程では、まず、G20議長国サウジアラビアがたたき台を作成し、それに対し各国からコメントを受け付ける。その上で、各国が合意可能な最大公約数を少しでも広げる努力をしつつ、議論の収斂を目指す「ドラフティング」という作業が行われる。大臣会合の直前に行われる代理級会合では、このドラフティングのプロセスにG20各国の財務当局と保健当局の代表の他、国際機関の代表も出席するため、総勢50名以上のコンセンサスを得る必要があり、その調整は一筋縄ではいかない。加えて、今回の会議は新型コロナ感染症の流行に伴いオンラインによるテレビ会議形式で行われたため、世界各国の関係者が時差を超えて作業にあたった。日本時間では深夜におよぶ非常にハードな交渉となったが、粘り強い折衝の結果、成果文書案がまとまった際の感動はひとしおであった。

(参考:G20財務大臣・保健大臣合同会議 共同声明仮訳 抜粋)

・パンデミックを克服し世界経済の回復を支援する鍵となる、全ての人々への公平かつ手頃なアクセスを支援する目的の下、新型コロナウイルスの診断法、治療薬及びワクチンの研究、開発、製造及び分配を加速させるため、「新型コロナウイルス対応ツールへのアクセス加速事業(ACT-A)」とその下のCOVAXファシリティー、また知的財産権に係る自主的なライセンス供与の取組を含め、世界的な対応を行う必要性と共同の行動を推進する重要性を強調する。

・「途上国におけるユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)ファイナンスの重要性に関するG20共通理解」に対する我々のコミットメントを改めて強調する。