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IMF・世界銀行グループ年次総会およびG20財務大臣・中央銀行総裁会議等の概要

(2020年10月13~16日、テレビ会議形式)
国際局国際機構課長 今村 英章/国際局国際機構課 齋藤 浩暉
国際局開発機関課長 田部 真史/国際局開発機関課 山本 麻莉乃

本年のIMF・世界銀行グループの年次総会は新型コロナウイルス感染症の影響のため、テレビ会議形式で開催された。例年この期間中に行われるG7財務大臣・中央銀行総裁会議(G7)、G20財務大臣・中央銀行総裁会議(G20)、国際通貨金融委員会(IMFC)、世界銀行・国際通貨基金(IMF)合同開発委員会(DC)も、同様にテレビ会議形式での開催となった。

以下、各会議の議論の概要を紹介したい。

1.G7財務大臣・中央銀行総裁会議(2020年10月13日)

G7においては、新型コロナウイルス感染症拡大を受け、本年3月以降、各国の感染や経済の状況、政策対応について頻繁に意見交換を行ってきている。今回のG7においても、麻生財務大臣から、日本は、感染対策を講じつつ経済活動の再開に取り組んでいる旨を説明した。

また、今回のG7では、グローバル・ステーブルコイン(GSCs)、中央銀行デジタル通貨(CBDCs)といったデジタル・ペイメントについても議論し、声明をとりまとめた。具体的には、

・GSCsについては、いかなるプロジェクトも、法律・規制・監督上の要件に十分に対応するまではサービスを開始すべきではないとのG7の立場を再確認した。

・公的部門は、法定通貨の供給、独立した金融政策の実施、規制・監督上の役割を通じ、決済システムの安全性・効率性、金融の安定性、マクロ経済目標の達成を確保する上で必要不可欠な役割を果たしており、こうした文脈においてG7当局の多くが、CBDCsに関連する機会とリスクを探求しているとの認識を示した。また、国内決済システム・国際通貨システムの安定のためには、公的部門による透明性、法の支配、健全な経済ガバナンスへのコミットメントが重要であることを確認した。

・ランサムウェア(コンピュータウィルスによる身代金要求)については、パンデミックの中で脅威が増大しているとして、G7としてこの脅威と戦う決意を確認した。

日本は、GSCなどのデジタル・ペイメントについて、日本議長下のG20で昨年10月にプレスリリースをとりまとめるなど、国際的な議論を主導してきている。新型コロナウイルス感染症拡大に伴う危機により、決済手段のデジタル化が加速している中、今般、デジタル・ペイメントをめぐる現下の課題についてG7の共通理解を世界に発信できたことは、大きな意義があると考えている。

2.G20財務大臣・中央銀行総裁会議(2020年10月14日)

G20については、本年2月にサウジアラビア議長下で最初の会議が開催された(本誌2020年4月号参照)後、新型コロナウイルス感染症拡大を受けて、3月に2回の財務大臣・中央銀行総裁特別会合が開催された。その後4月、7月の会合を経て、今回は本年6回目の開催となった。今回の会議では、世界経済、G20行動計画の更新、途上国の債務問題、国際租税、金融セクター等について議論が行われた。

まず世界経済について、経済が徐々に再開し、政策の効果が顕在化し始める中で回復の兆しがあるものの、回復にはばらつきがあり不確実性が高いこと、G20として引き続き全ての利用可能な政策手段を用いることを確認した。

次に、G20各国が協調してパンデミックに対応する上でのコミットメントを示すG20行動計画については、4月の承認以降の新たな動向を踏まえ、更新を行った。同更新には、9月17日のG20財務大臣・保健大臣合同会議の共同声明を踏まえ、特許プールを含めた、新型コロナウイルスに係るワクチン・薬の開発・製造・普及のための包括的取組や、2019年に日本議長下のG20で取りまとめた「途上国におけるユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)ファイナンスの重要性に関するG20共通理解」へのコミットメントの再確認など、これまで日本が主導してきた取組が反映された。

途上国の債務問題については、本年4月、G20及びパリクラブにおいて、最貧国の有する公的債務の支払を2020年末まで猶予することに合意した(債務支払猶予イニシアティブ(DSSI))。今回のG20では、DSSIの延長とともに、今後、ケースバイケースでDSSIを超える債務措置が必要となり得ることを踏まえ、その基本方針について議論が行われた。議論の結果、DSSIについては6カ月の延長が合意され、「DSSI後の債務措置に係る共通枠組」についても原則的に合意された。なお、この「共通枠組」は、11月13日に開催されたG20財務大臣・中央銀行総裁特別会合において最終合意され、公表されている。

国際租税については、日本議長下の福岡G20において、経済のデジタル化に伴う課税上の課題への対応についての「作業計画」が承認されている。同計画では、2つの柱(注)からなる解決策について検討し、2020年末までに最終報告書を取りまとめることとされており、約140の国・地域からなる「税源浸食・利益移転(BEPS)に関する包摂的枠組み」において検討が進められて来た。今回のG20では、解決策の合意に向けた強固な土台となる「青写真」が提出され、これを歓迎するとともに、2021年半ばという新たな合意期限を設定した。

(注)第1の柱:物理的拠点の有無にかかわらず、市場国に新たな課税権を配分するための国際課税原則の見直し。第2の柱:軽課税国への利益移転に対し、最低税率による法人課税(ミニマム課税)を確保するルールの導入。

最後に、金融セクターについては、クロスボーダー決済の改善に向けたG20ロードマップを承認するとともに、所謂GSCsやデジタル通貨等に関する金融安定理事会(FSB)、金融活動作業部会(FATF)、IMFの報告を歓迎し、更なる取組への期待を表明した。

3.国際通貨金融委員会(IMFC)(2020年10月15日)

国際通貨金融委員会(注)においては、世界経済の動向、新型コロナウイルスへのIMFの対応等について議論が行われた。特に世界経済については、コミュニケにおいて、回復にばらつきがあり、大きな不確実性が伴うという現状認識とともに、今回の危機が、生産性の伸びの鈍化、債務負担の増大、貧困や不平等の拡大など、世界経済に「長きにわたる傷跡」を残すおそれがあるとの懸念が示された。

(注)国際通貨・金融システムに関する問題についてIMFに助言および報告することを目的として1999年に設立。以降、春・秋の年2回開催。今回は第42回目。

麻生大臣からは、新型コロナウイルスに対するIMFの対応が極めて重要な役割を果たしてきたことを高く評価しつつ、今後も支援ツールを積極的に見直していくこと、十分な資金動員を行っていくことの必要性等について述べた。資金動員については、麻生大臣から、必要に応じて機動的に新規借入取極(NAB)を発動させることを支持するとともに、こうした貸付資金をIMFの資金基盤においてより積極的に位置づけ、IMFのガバナンスの在り方にも組み込まれるべきと指摘した。また、日本はこれまでもIMFによる途上国の能力開発支援に積極的に貢献してきているところ、麻生大臣から、途上国が債務状況の悪化に見舞われていることを踏まえ、債務管理を中心に途上国の能力強化を支援するため、IMFに新たな拠出を行うことを表明した。

4.世界銀行・IMF合同開発委員会(DC)

今回のDC(注)においては、新型コロナウイルスによる危機を受けて国際社会が直面している開発上の課題等について議論が行われた。

(注)開発をめぐる諸問題について世界銀行・IMFに勧告及び報告を行うことを目的として1974年に設立。以降、春・秋の年2回開催。今回は第102回目。

麻生大臣から、新型コロナウイルスの感染が全世界に拡大する中で、世銀グループによる緊急支援が迅速に行われていることを評価した上で、日本がかねてから重視してきた、国際保健、債務の透明性と持続可能性、質の高いインフラ投資、防災といった課題への取組みを加速することが、途上国が新型コロナウイルスの危機から立ち直り、持続可能な成長を遂げる上で、より一層重要になっていることを強調した。

このうち、国際保健については、国際金融公社(IFC)による途上国の保健・医療物資の製造・供給に係る民間投資への支援を後押しするための新たな拠出を行うことを表明するとともに、日本が世銀グループと連携して立ち上げた「保健危機への備えと対応に係るマルチドナー資金(HEPRTF)」等を活用し、途上国における感染症の備え・対応のための能力強化やUHCの推進等を支援していくことを表明した。

また、債務に関しては、麻生大臣から、DSSI及び「共通枠組」について、全ての公的な二国間債権者による完全な実施と、民間債権者による、少なくとも途上国にとって同程度に有利な条件での参加が必要だと述べた。さらに、世銀グループ及びIMFには、債務透明性の強化と債務データの正確性を確保する取組みの継続を期待するとともに、全ての公的な二国間債権者が世銀グループ及びIMFの債務データ突合に協力することを求めた。公表されたDCコミュニケにおいても、全ての公的な二国間債権者が、完全に、かつ、透明性高く、DSSIを実施するべきとした上で、世銀グループ及びIMFに対し、債務データの質と整合性を強化し、債務の開示を改善するための作業の継続を求めることとされた。

最後に、特に脆弱な低所得国を支援する国際開発協会(IDA)について、麻生大臣から、今後、資金が不足することが見込まれるため、必要な資金の確保に向け、早急に議論を開始し、国際社会が一体となって取り組むことの重要性を強調した。DCコミュニケにおいても、世銀グループが求められる役割を果たすために十分な資本を維持していることを確保するため、2021財政年度より先の世銀グループの資金規模に関する議論を慫慂することとされた。