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自転車通勤で「なろう」になろう!? (1)

―異世界に転生してチートで活躍ってご都合主義じゃないですか、でも本当にそんなこともあるんですよ!

証券取引等監視委員会事務局総務課長 若原 幸雄


(1)「千里の道も一歩から」というけれど、その一歩が難しいというなら、そこからお手つだいいたしましょう!


なろう系:web小説投稿サイト「小説家になろう」の文学賞を受賞してデビューした作家、またその作家の作品。さらに、それらと似た傾向を持つ作家や作品をさす。“平凡な主人公が突如放り込まれた異世界で活躍する”といった安易なストーリー展開が特徴で、そうしたストーリー展開じたいを揶揄して言うこともある。
コトバンク(デジタル大辞泉プラス)

南門の脇にある駐輪場、お気づきですか?新型コロナウィルス感染症対策の一環として臨時に設けられたものが8月には正式にオープンし、何十人もの職員が利用しています。財務省外に目を向けても、例えば有名自転車販売チェーン「サイクルベースあさひ」を運営する(株)あさひが、今年度上期決算で売上高・純利益ともに過去最高を記録した上、通期の業績予想も上方修正し過去最高の売上・利益を見込んでいるように、自転車で「3密」を避ける人が増えています。

自転車通勤を始めて10年弱のわたくしにとっては、同好の士が増えて嬉しい話ですが、心配なのは、不慣れなせいで要らぬ苦労する人がいるのではないかということ。こんなはずじゃなかった、というリタイヤを減らせるように、ぜいたくを言えば自転車通勤者がさらに増えて駐輪場に屋根をつけよう、なんて機運が生まれるように(自転車によく使われる素材はカーボン(=プラスチック)、スチール合金、アルミ合金ですが、カーボンは日光(紫外線)で、スチール合金は雨で傷むので、屋根はありがたいのです)、この連載(全4回予定)を始めさせていただきました。

子供のころには自転車をそれなりに使っていたけれど、最近はほとんど乗ってないな、という人は結構多いのではないでしょうか。そんな方々にとっては、自転車通勤は考えるまでもなく無理だと思われがち。しかし、例えばわたくしの小学生の子供でも、片道5kmは余裕で自転車行動圏内。「突如放り込まれた異世界で活躍するといった安易なストーリー展開」は、ちょっとした準備(「なろう系」でいう「チート」)があれば、突如始める自転車通勤で実現してしまいます。

初回の本稿では、数ある「チート」中、特に効果の高い5つを紹介いたします。これらがあれば、自転車通勤という異世界への転生も、恐るるに足りません。

《チートその1:車道左側通行》

自転車通勤は、どのぐらい遠くからできると思いますか?自宅から財務省まで、30分なら楽勝ですが、2時間かかるようでは日々の通勤には使えません。自宅と財務省との距離は決まっているので、できるかどうかはスピード次第です。わたくしなら平均15km/hが目安で、仮に通勤時間の上限を1時間とすれば、概ね環八~江戸川の内側が通勤圏内になります。

ただしその前提は、車道を走ること。上記の目安は信号待ちなどのタイムロスを含み、走行時のスピードに限れば平均20km/h強となりますが、これは車道でなければできません。車道は、クルマが概ね40km/h以上で走るように作られており、自転車にとっては安全に十分余裕があります。他方、歩道は徒歩=4~6km/h程度の移動しか前提にしておらず、見通しやカーブ半径などは、自転車にとっては危険過ぎます(ゆえに歩道をやむを得ず走行する場合は、徐行(概ね10km/h未満)が義務付けられています)。

なお、車道を走行する車両は左側通行が義務付けられており、自転車も軽車両なので、必ず左側を通行してください。右側通行=逆走は、車線合流時の出会い頭の事故の元ですし、左側通行している自転車にとっては迷惑極まりないので、ダメ、絶対。

《チートその2:ブレーキング》

「その1」のようにスピードを上げたときに忘れてはならないのは、その分だけ止まるのが難しくなっているということ。止まるのに必要な力や事故を起こしたときの衝撃はスピードの2乗に比例するので、事故を回避しつつ、不幸にも事故に至った場合でも可能な限り減速してダメージを抑えるには、きちんと止まるためのブレーキングスキルが必要です。

改めて基本を確認すると、右が前輪、左が後輪のブレーキで、効くのは右の前輪ブレーキです。20km/h程度でそれぞれをフルブレーキすれば、右ブレーキだと後輪が持ち上がって多くの場合転倒しますが、そこで止まります。左ブレーキだと後輪がロックし、止まらない上に車体のコントロールが極めて難しくなります。したがって、右手で主に制動力を発揮させつつ、左手でもブレーキを効かて転倒をできるだけ防ぐのが、ブレーキの正しいかけ方。とっさには難しいですが、重心をできるだけ後ろに持っていく(お尻をサドルの後方に突き出せばベスト)と転倒しづらくなりますので、スピードを上げたい方は練習を。

なお、急ブレーキが必要になりがちなのは、客を目当てに流しのタクシーが突っ込んでくるシチュエーション。タクシーを拾おうと手を挙げている歩行者を見かけたら、右後方からのタクシーに注意しましょう。

《チートその3:リアライト(テールライト)》

「その1」のとおり自転車は車道を走るべきなのですが、歩道を走る自転車を見ない日はまずありません。車道は怖いから、とはよく聞きますが、逆走も同様で、左側通行だと後方からクルマに抜かれる一方、右側なら来るのが見えるので怖くない、と。

車道を走る場合、自分がクルマ等を避けるのではなく、避けてもらうのが基本ですが、気づかれなければ避けてもらえません。帰りに夜間通行になる自転車通勤では、クルマ等から気づいてもらうために、ライトほど役立つものはありません。

フロントライトは道交法で装着が義務付けられており、自転車を買うときにはセットになっていますが、リアライトは反射板で代えられるので、大抵はオプション扱いです。自転車をこれから買うならセットで、既にある自転車になければ買い足して、リアライトをつけるようにしましょう。白光のフロントと赤光のリアを間違えないようご留意ください。

《チートその4:ヘルメット》

自転車に乗っていれば、事故の可能性からは免れません。いくら万全を期していても、人間である以上ミスはゼロにはなりませんし、運が悪ければ、自分には何の落ち度がなくても、ぶつけられてしまいます。街を行く自転車乗りの多くはヘルメットをつけておらず、そのほとんどは事故に会わないので結果論としてはヘルメットはいらないのでしょうけれど、万が一の際に備えて、ヘルメットは必ず被りましょう。

《チートその5:サドル高さ調整》

「その1」で通勤圏を片道15km圏内としましたが、もっと近くてもしんどいのに15kmなんて無理、という人もいらっしゃるでしょう。でもご安心を。試しに、一度サドルを上げてみてください。

というのも、街で見かける自転車乗りの過半は、サドルが低く、脚力をかなり無駄にしているからです。ペダルを押す力が推進力になるのは、時計で言えば1時から3時までの60度ほどにペダルがあるときだけ。また、曲げた膝を伸ばす力が最大になるのは、膝の角度をまっすぐ伸ばして0度、正座のように曲げて180度で表したときの45~90度の位置になり、両者を合わせ、1時で膝が直角になるのが理想です。

他方、これでは高すぎる可能性もあります。ペダルが一番下、6時の位置にあるときに膝が0度になっていると膝を傷めるおそれがあり、そうなっているなら下げましょう。ペダルを押す位置は親指付け根のいわゆる拇指球ですが、あえてかかとをペダルにつけて0度に伸ばすと、拇指球で押す際には若干膝が曲がってちょうどいいと言われるので、目安にしてください。

このサドル位置だと、座ったままでは足が地面に着かないでしょう。停止するときは、サドルの前方に腰を外して左足を着地させることになります(左側通行ならクルマは車体の右側を通るので、身体は反対の左側に置きましょう)。足が着かないと最初はちょっと怖いかもしれませんが、すぐに慣れますよ!