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アジアにおける地域金融協力の促進(ASEAN+3、日中韓)

国際局地域協力課長 森 和也/地域協力調整室長 村口 和人/企画係長 澤田 駿

第53回ADB年次総会に併せて、アジアにおける地域金融協力関連の会議として、第20回日中韓財務大臣・中央銀行総裁会議、第23回ASEAN+3財務大臣・中央銀行総裁会議がビデオ形式で開催された。今年は、新型コロナウイルス感染症により地域経済が大きな影響を受ける中、各国の対応が議論されるとともに、域内で金融協力を進める重要性が改めて共有された。以下、本稿では、これらの会議における議論の概要を紹介したい。

1.第20回日中韓財務大臣・中央銀行総裁会議

9月18日(金)に韓国の議長の下、第20回日中韓財務大臣・中央銀行総裁会議が開催され、日本からは麻生副総理兼財務大臣の代理として岡村財務官、黒田日本銀行総裁が出席した。地域・各国の経済・金融情勢及びASEAN+3における地域金融協力について意見交換を行った。

2.第23回ASEAN+3(日中韓)財務大臣・中央銀行総裁会議

9月18日(金)に日本とベトナムの共同議長の下、第23回ASEAN+3(日中韓)財務大臣・中央銀行総裁会議(以下、本会合)が開催された。日本からは、麻生副総理兼財務大臣と黒田日本銀行総裁が出席した。本会合では、(1)世界・域内経済の見通し及び新型コロナウイルスのパンデミックがもたらすリスクや課題への政策対応についての意見交換、(2)地域金融協力の強化について議論したが、以下、その概要を紹介する。

(1)世界・域内経済の見通し、及び新型コロナウイルスがもたらすリスクや課題への政策対応

AMRO、ADB、IMFから世界・地域経済の情勢等について説明があった後、新型コロナウイルスの感染拡大によって大きな打撃を受けた域内の経済情勢について大臣・総裁間で意見交換を行い、各当局が感染拡大の影響を緩和するため迅速に対処し、様々な政策対応を行ったことで、徐々に経済活動の制限を解除することを可能にしたことが確認された。また、本年の経済成長は急激な落込みが見込まれるが、今後回復すると期待していること、今後も下方リスクの兆しを注視し続ける必要があること、また、域内経済の持続的な回復を支えるため、すべての利用可能な政策手段を引き続き用いて対応していくことを確認した。

(2)地域金融協力について

1.チェンマイ・イニシアティブ(CMIM)

1997年に発生したアジア通貨危機を教訓に、ASEAN+3では、急激な資本流出による危機が生じた国を支援し、危機の連鎖と拡大を防ぐ枠組みとして、2000年に二国間通貨スワップ取極めから構成されるチェンマイ・イニシアティブ(CMI)が立ち上げられた。その後、2010年には、これらの通貨スワップ発動の際の当局間の意志決定の手続きを共通化し、支援の迅速化・円滑化を図るため、CMIのマルチ化契約(CMIM)が締結され、その後も随時、機能強化が図られてきた。

マルチ化から10年という節目の年に行われた本会合では、(1)IMFデリンク割合(IMFプログラムなしでも発動できる割合)の30%から40%への引き上げに最終合意するとともに、(2)CMIMの円滑な実施を可能にするCMIMコンディショナリティ・フレームワークの明確化などの歴史的な成果が歓迎された。こうした支援を実施する際のルールの整備等を通じ、域内国に対し今後支援が必要となった場合に、CMIMによる、より円滑・機動的な発動が可能になる。また、本会合では要請国・供与国双方の自発性及び需要に応じた(voluntary and demand driven)CMIMに対する現地通貨による支援の制度化についても合意されている。

これらの成果が盛り込まれた改訂CMIM契約書は、本会合で承認され、今後、各国による署名手続きが行われることとなった。

(写真:ASEAN+3会合の様子。一番上の左から麻生大臣、黒田総裁、共同議長のベトナム。)

2.ASEAN+3 マクロ経済リサーチ・オフィス(AMRO)

CMIMの実施に向けて、ASEAN+3 域内経済のリスクを早期に発見し、改善措置の速やかな実施を求めることが必要不可欠である。このプロセスに貢献するためのサーベイランス機関として、AMROが2011年4月に設立された(2016年2月に国際機関化)。本会合では、AMROについて、ASEAN+3メンバーを支援する「信頼のおける家庭医(trusted family doctor)」として、域内のサーベイランス、CMIMの実施支援、及びメンバーの能力構築のための技術支援が継続的に実施されていることを評価するとともに、更なる組織強化への期待が表明された。

3.アジア債券市場育成イニシアティブ(ABMI)

アジア通貨危機の一因となった、ASEAN諸国における通貨と期間のミスマッチ(ドル等の外貨を海外から短期で借入れ、自国通貨建で国内の長期融資を実施)の解消のため、ASEAN+3域内の現地通貨建て債券市場の育成により域内の貯蓄を投資へと活用することを促進する取組みとして、2003年にABMIが開始された。本会合では、ABMIが着実に進展していることが改めて認識され、特に、企業が発行する社債に保証を供与し、現地通貨建て債券の発行を支援する信用保証・投資ファシリティ(CGIF)によるインフラファイナンスの支援に向けた継続的な努力や、域内の債券市場に係る情報発信を行うアジアンボンドオンライン(ABO)の有用性向上を目的とした新規の技術支援プロジェクトの開始などが歓迎された。

4.東南アジア災害リスク保険ファシリティ(SEADRIF)

SEADRIFは、自然災害へのリスクを抱えるASEAN諸国において保険スキームを活用し、その財務強靭性強化を目的としたASEAN+3の枠組みであり、日本は立ち上げ段階から議論を主導している。現在、SEADRIFの最初の成果物としてラオス、ミャンマーを対象とした自然災害保険の立上げに向けた準備が進行中であり、本会合ではその準備作業への進捗が歓迎された。また、他のASEAN諸国向けに公共財産保護を軸とした取組を行うべく作業部会が2019年12月に設置され、本会合においてその旨歓迎された。

5.ASEAN+3財務プロセスの戦略的方向性

ASEAN+3の金融協力を促進する新たなイニシアティブの探求を目的として、潜在的分野を検討する5つのスタディ・グループ(SG)の設立が歓迎されるとともに、各SGから提出された報告書を踏まえた今後の更なる議論への期待が表明された。

図.参考:ASEAN+3地域金融協力の概要
(1)チェンマイ・イニシアティブ(CMIM:Chiang Mai Initiative Multilateralisation)
金融危機の地域的な連鎖と拡大を防ぐため、短期の外貨資金を各国が融通する枠組み
(2)ASEAN+3 マクロ経済リサーチ・オフィス(AMRO:ASEAN+3 Macroeconomic Research Office)
ASEAN+3 地域経済の監視(サーベイランス)・分析を行うとともにCMIM の実施を支援する国際機関
(3)アジア債券市場育成イニシアティブ(ABMI:Asian Bond Markets Initiative)
域内における現地通貨建て債券発行を促進し、域内の貯蓄を域内の投資に結び付ける取組
(4)東南アジア災害リスク保険ファシリティ(SEADRIF:Southeast Asia Disaster Risk Insurance Facility)
保険スキームを活用してASEAN 地域での自然災害発生時の支援資金を供与する枠組み

(参考)

本会合について、麻生大臣とベトナム中銀総裁、岡村財務官とベトナム財務省次官が各々連名で英文メディアへの寄稿を行っているところ、こちらについてもご参照されたい。

・「Project Syndicate」への麻生大臣・ベトナム中銀総裁寄稿文https://www.project-syndicate.org/commentary/asian-economies-covid19-regional-currency-swaps-by-aso-taro-and-le-minh-hung-2020-10

・「Nikkei Asia」への岡村財務官・ベトナム財務省次官寄稿文https://asia.nikkei.com/Opinion/Boosting-ASEAN-3-s-economic-resilience-and-recovery-during-COVID-19