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地域開発金融機関(RDBs)の年次総会等について

国際局開発機関課課長補佐 乾 慶一郎

1.概要

国際開発金融機関(MDBs)のうち、特定の地域における開発を支援する地域開発金融機関(RDBs)であるアジア開発銀行(ADB)、米州開発銀行(IDB)、アフリカ開発銀行(AfDB)、欧州復興開発銀行(EBRD)については、例年、春ごろに各機関の年次総会を開催している。本年は、新型コロナウイルスの感染拡大の影響を受け、春に予定されていた年次総会が延期されることとなった。延期後も引き続き対面での会議開催が難しい状況であることから、年次総会が来年まで延期されたIDBを除く3機関について、8月から10月の間に、史上初めてバーチャル形式で年次総会が開催されることとなった。また、IDB・AfDB・EBRDの3機関については、総裁選も実施された(IDBは総裁選のみを実施、AfDB・EBRDは年次総会の開催に併せて総裁選を実施)。

以下、開催順に沿って、4機関の年次総会・総裁選の概要を紹介したい。

2.アフリカ開発銀行(AfDB)年次総会・総裁選

アフリカ開発銀行(AfDB)第55回年次総会・アフリカ開発基金(AfDF)第46回年次総会は、当初、本年5月にAfDB本部が所在するコートジボワール・アビジャンでの開催が予定されていたが、新型コロナウイルスの感染拡大を受けて延期された結果、8月26・27日の日程でバーチャル形式で開催されることとなった。

年次総会の最大のトピックは、8月27日に実施された総裁選であった。総裁選の立候補者は、2期目を目指す現職のアキンウミ・アデシナ総裁のみであり、バーチャル形式で行われた総裁選の結果、当選要件を満たす支持を獲得し、アデシナ総裁が再選された。日本からは、遠山財務副大臣(当時)が臨時総務代理としてアデシナ総裁の再選を支持する投票を行った。

なお、アデシナ総裁に対しては、不適切な行為があったとして本年1月に内部告発が行われたが、理事会の下に設置された倫理委員会や外部の独立パネルでの検討を経て、不適切な行為の証拠は見つけられないとの結論が出されていた。内部告発を処理するプロセスにおいて明らかになったAfDBのガバナンス面での課題に対応するため、今回の年次総会において、ガバナンス改革を検討する委員会を総務会の下に創設することが決定された。

日本からは、麻生副総理兼財務大臣が日本国総務演説を行った。総務演説では、アデシナ総裁の1期目の実績を踏まえ、総裁選における再選支持を表明するとともに、2期目における、質の高いインフラ投資の促進、債務管理能力や債務の透明性の強化、ガバナンス強化、日本との協力の継続・強化への期待を表明した。

次回の年次総会は、2021年5月24~28日にガーナ・アクラでの開催が予定されている。

3.米州開発銀行(IDB)総裁選

米州開発銀行(IDB)については、3期、15年間総裁を務めたルイス・アルベルト・モレノ総裁の任期が本年9月末までであったことから、9月12日にバーチャル形式で総裁選が実施された。

総裁選に先立ち、中南米の一部の国が、新型コロナウイルスの感染拡大の状況下では十分な議論を行えないため総裁選を延期すべきとの主張を行っていたが、最終的には総裁選は予定通りの日程で実施された。立候補者は、米国のマウリシオ・クラベルカロネ国家安全保障会議(NSC)西半球担当補佐官補のみであった。日本は、総裁選に先立ちプレスリリースを発出し、クラベルカロネ氏への支持と予定通りの総裁選の実施への支持を表明した。投票の結果、当選要件を満たす支持を獲得し、クラベルカロネ氏が当選した。IDB総裁は過去4代にわたって中南米出身者が務めてきたが、クラベルカロネ氏は初の米国出身の総裁として、10月1日に就任した。

なお、IDBの第61回年次総会は、当初、本年3月にコロンビア・バランキージャで開催予定だったが、新型コロナウイルスの感染拡大により2021年3月17~21日に延期されている。開催地は変更なく、コロンビア・バランキージャでの開催が予定されている。

4.アジア開発銀行(ADB)年次総会

アジア開発銀行(ADB)の第53回年次総会については、当初、本年5月に韓国・インチョンでの開催が予定されていたが、新型コロナウイルスの感染拡大により延期され、9月17・18日にバーチャル形式で開催された*1。本年1月に浅川雅嗣総裁が就任して以来、初めて開催された年次総会となった。

年次総会開催期間中には、様々なセミナー・イベントが開催され、日本・ADB・WHO共催の財務・保健大臣合同シンポジウムや、ADB主催の税に関するセミナーにおいて、麻生副総理兼財務大臣がオープニングスピーチを行った。また、「Developing Asia Beyond the Pandemic」というテーマで開催されたADB総務セミナーには、ADBの日本国総務代理である黒田日銀総裁がスピーカーとして参加した。

年次総会の開催に先立って、アジア開発基金(ADF)の最終増資会合が開催された。ADFは、島嶼国など脆弱な国々を支援する財源となる基金であり、4年に1度増資が行われている。今回の増資会合において各国が拠出額をプレッジし、増資が成功裡に妥結したことは、今回の年次総会における大きな成果の一つである。ADF増資においては、日本が重視する質の高いインフラ投資や保健などが引き続き重要政策と位置付けられている。

日本国総務演説においては、引き続きADFの最大のドナー国として、ドナー貢献の35%、約1,076億円を拠出する意図を表明するとともに、日本の開発プライオリティである保健・質の高いインフラ投資・債務持続可能性・国内資金動員について、ADBによる取組みの継続・強化への期待を表明した。

次回の年次総会は、2021年5月2~5日にジョージア・トビリシでの開催が予定されている。

5.欧州復興開発銀行(EBRD)年次総会・総裁選

欧州復興開発銀行(EBRD)の第29回年次総会は、当初、本年5月に英国・ロンドンでの開催が予定されていたが、新型コロナウイルスの感染拡大により延期され、10月5~8日にバーチャル形式で開催された。

任期満了に伴い、7月2日に退任したスマ・チャクラバルティ前総裁の後任を選出する選挙が10月8日にバーチャル形式で実施された。最終的な立候補者は、フランスのオディール・ルノーバッソ経済・財務省国庫総局長と、ポーランドのタデウシュ・コシチンスキー財務大臣の2名であった。当初は、イタリアのピエール・カルロ・パドアン元財務大臣も立候補していたが、投票日までに立候補を取り下げた。投票の結果、当選要件を満たす支持を獲得し、ルノーバッソ候補が当選した。日本からは、中西財務副大臣が臨時総務代理としてルノーバッソ候補を支持する投票を行った。

また、今回の年次総会では、EBRDの次期中期戦略(2021~2025年)の採択も行われた。日本国総務演説においては、次期中期戦略の採択を支持した上で、所得水準が高く移行が進んだ国(ATCs:Advanced Transition Countries)の卒業に関して、コロナ危機後の国別戦略において段階的な卒業に向けた道筋を確保すべきと述べるとともに、EBRDの支援対象国のサブサハラへの拡大の必要性については、EBRDの付加価値が認められる分野や他の国際機関等との関係などについて更なる議論が必要であることを表明した。

次回の年次総会は、2021年5月19~20日にアルメニア・エレバンでの開催が予定されている。

6.終わりに

次回以降の年次総会や総裁選の形式がどうなるか現時点では確たる見通しは示せないが、今回の一連の会議は、主催者・参加者双方にとって前例にないバーチャル形式の会議を成功させた経験として有意義なものとなったと考えている。

文中、意見にわたる部分は、筆者の個人的見解である。

*1)このほか、財務諸表と純利益の配分の採択のため、5月に小規模総会をバーチャルで開催している。