このページの本文へ移動

令和元年度決算税収について

主税局総務課主税企画官 佐野 美波/課長補佐 森田 茂伸

令和元年度決算が令和2年7月31日に公表された。以下、令和元年度決算の歳入のうち、税収の概要について紹介する。

1.ポイント

令和元年度決算税収は58兆4,415億円であり、前年度から▲1兆9,149億円減少した。消費税率引上げにより消費税は増収したものの、所得税、法人税が減少したことによる。

令和元年度補正後予算額(60兆1,800億円)との比較では、法人税や消費税を中心に▲1兆7,385億円下回った。新型コロナウイルス感染症の影響により企業収益や消費・輸入が減少したことに伴うものと考えられる。

2.主要な税目

〈所得税〉※税収全体の約3割

所得税は19兆1,707億円である。前年度から▲7,299億円減少し、補正後予算額を+1,067億円上回った。好調な雇用・所得環境を背景に給与税収は増加したものの、前年度に生じた一時的な大口配当の剥落の影響(対前年度比▲0.8兆円)により、前年度から減少したものである。

【給与】〈源泉分・申告分〉

給与税収は11.9兆円である。前年度から+0.2兆円増加し、ほぼ補正後予算の見込み通りとなった。この背景として、雇用者報酬が対前年度比+1.8%の増と7年連続で増加するなど、良好な雇用・所得環境が継続していたことが考えられる。

【配当】〈源泉分〉

配当税収は4.9兆円である。前年度から▲0.2兆円減少し、補正後予算額を+0.2兆円上回った。前述のとおり、前年度に生じた一時的な大口配当の剥落の影響もあり、前年度から減少した。

【株式譲渡】〈源泉分・申告分〉

株式譲渡税収は0.7兆円である。前年度から▲0.1兆円減少し、補正後予算額を+0.1兆円上回った。

〈法人税〉※税収全体の約2割

法人税は10兆7,971億円である。前年度から▲1兆5,209億円減少し、補正後予算額を▲9,179億円下回った。3月期決算の上場企業(全産業約1,700社)の経常利益は、新型コロナウイルス感染症の影響により対前年度比▲19.9%の減少となっており、企業業績の急速な悪化を背景に法人税収も減少した。

〈消費税〉※税収全体の約3割

消費税は18兆3,527億円である。前年度から+6,718億円増加し、補正後予算額を▲7,093億円下回った。その構成を見ると、国内取引に係る収納(国税庁分)が18.3兆円(対前年度比+0.7兆円)、輸入取引に係る収納(税関分)が5.4兆円(同+0.2兆円)、輸出等に係る還付が▲5.4兆円(同▲0.2兆円)であった。消費税率の引上げにより、前年度からは増収となったものの、新型コロナウイルス感染症の影響により、消費・輸入が減少したことに伴い、補正後予算額における見込みを大きく下回った。

個人消費の動向を見ると、民間最終消費支出は対前年度比▲0.1%の減であり、令和2年1月時点の政府経済見通しにおける見通し+1.2%を大幅に下回った。同様に、財貨・サービスの輸入についても、対前年度比▲6.1%の減となり、政府経済見通し時の▲4.0%を大幅に下回っている。このように、年明け以降、新型コロナウイルス感染症の影響により、消費・輸入が急速に悪化しており、消費税収についても、こうした経済情勢の変化に影響を受けたものと考えられる。

図表:(参考1)令和元年度決算税収

〈その他〉

その他の税目は10.1兆円であり、前年度から▲0.3兆円減少した。補正後予算額との比較でも▲0.2兆円下回っている。主な税目ごとに見ると以下のとおりである。

◇相続税は2兆3,005億円であり、前年度から▲329億円減少した。補正後予算額を▲325億円下回っている。

◇酒税は1兆2,473億円であり、前年度から▲278億円減少した。ビールの課税数量が見込みを下回ったこと等により、補正後予算額に対して▲237億円下回っている。

◇揮発油税は2兆2,808億円であり、前年度から▲670億円減少した。課税数量が減少したことが主な要因であり、補正後予算額からも▲222億円下回った。

◇平成31年1月に導入された国際観光旅客税は444億円であり、前年度から+375億円増加した。令和元年度より1年間分の税収が入るようになったため、前年度からは増加したものの、新型コロナウイルス感染症の影響で国際観光旅客数が見込みを下回ったため、補正後予算額を▲56億円下回った。

3.おわりに

令和元年度決算税収は、全体としては58兆4,415億円と前年度を下回った。決算額が前年比で減少したのは、平成28年度以来のことである。特に、年明け以降、全世界的に感染が拡大した新型コロナウイルス感染症の影響により、我が国経済も急激に悪化し、令和元年度の税収にも影響を及ぼした。足元では、新規感染者数が再び増加するなど、その影響は長期間に及ぶ可能性もある。引き続き、この感染症が我が国経済、そして今年度以降の税収に与える影響を注視していく必要がある。

図表:(参考2)一般会計税収の推移

図表:(参考3)雇用者報酬・給与税収の推移

図表:(参考4)配当金総額・配当税収の推移

図表:(参考5)株価・株式売買金額・株式譲渡税収の推移

図表:(参考6)企業の経常利益・法人税収の推移

図表:(参考7)民間最終消費・消費税収の推移