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コラム 経済トレンド73

外国人労働者の動向と共生施策のあり方

前大臣官房総合政策課 調査員 関 祥吾/村田 亮

本稿では、日本における外国人労働者の動向と共生施策のあり方について考察した。

外国人労働者数増加の経緯

・1990年代以降、研修・技能実習制度の発足、日系人を対象とした身分に基づく在留資格「定住者」の創設や留学生増加に向けた様々な施策が実施されたこともあり、外国人は2008年のリーマンショックによる景気後退期まで増加傾向が続いた(図表1.在留外国人の推移)。

・2010年代に入り、景気回復や人手不足等を背景に、外国人労働者数は急速に増加してきた。在留資格別にみると、技能実習や留学、高度人材等が増えている(図表2.外国人労働者数と就業者全体に占める割合、図表3.在留資格について)。

外国人労働者が欠かせない存在に

・外国人労働者の就労先をみると、約3割は製造業で、単純労働の従事者が多いとみられ、次に多いサービス業(他に分類されないもの)には、製造業を含む派遣労働者が多く含まれると考えられる。そのほか、卸売業・小売業や宿泊業・飲食サービス業での従事者が多い(図表4.在留資格別・産業別外国人労働者(2019年))。

・業種別に、近年の全ての就業者数の増減と、外国人労働者の増減を比較すると、農業・林業や卸売業・小売業、製造業等では、外国人の増加が就業者数変化の大きな割合を占めており、これらの業種では、短期滞在の技能実習生や留学生といった外国人労働者が欠かせない状況となっている(図表5.産業別就業者数と外国人労働の伸び(2012-2019年))。

・また、外国人労働者のうち約35%が30人未満の事業所で就労し、中小・零細企業の人材確保の大きな助けとなっている(図表6.事業所規模別外国人労働者数構成比(2019年、%))。

外国人材受入れに関しての政策的対応

・これまでは、人手不足を短期滞在の外国人で補ってきたが、企業によっては、長期で多様な業務を担う外国人材のニーズも拡大している(図表7.外国人材受入れ企業による行政への要望(n=500))。また、外国人の増加により、制度と実態の乖離から生じる問題や、地域社会における生活面の問題が指摘されることが多くなっている。

・こうした状況を踏まえて、一定の専門性等を有し即戦力となる外国人材を広く受け入れるため、技能実習よりも業務範囲が広い在留資格「特定技能」(1号は通算5年、2号は期限なし)が創設された(図表8.就労が認められる在留資格の技能水準)。

・それに伴い、外国人材の適正・円滑な受入れに向けた取組みや、共生社会実現に向けた環境整備を推進する観点から、法務省の外局として「出入国在留管理庁」の設置や、「外国人材の受入れ・共生のための総合的対応策」が策定され、共生社会実現に向けて目指すべき方向性が示された(図表9.共生施策(例))。

持続可能な社会に向けて

・これまでは、外国人はもっぱら短期滞在が前提となっており、定住者等が多くいる自治体を除けば、共生政策は重要な課題とは位置付けられていなかった。実際、多くの自治体では「外国人に対する情報提供」や「医療現場での対応」、「予算・人員」での課題を挙げており、受入れ体制の整備が遅れていることがわかる(図表10.現在の多文化共生施策の課題(都道府県、2017年、n=31))。

・また、外国人材受入れに関しては採用後のケアが重要という声がある中で、企業が外国人の生活支援を特に行っていない割合は4割強を占めており、企業サイドの更なる支援が期待される(図表11.外国人従業員への支援状況(複数回答、n=449))。

・中長期で見れば、若年労働者が減少する日本は、外国人材に依存せざるを得ない。今後は、従来のような特定の国籍の外国人だけでなく、多様な国籍の外国人の増加や滞在期間の長期化が見込まれるため、共生に向けた本格的な取組みが必要であろう。日本人と外国人が安心して安全に暮らせる持続可能な社会の実現に向けて、官民による努力を期待したい。

(出典)
法務省「在留外国人統計」、「登録外国人統計」、厚生労働省「外国人雇用状況の届出状況」、総務省「労働力調査」、日本国際交流センター「『多文化共生と外国人受け入れに関するアンケート調査 2017』調査報告書」(2018年2月)、日本総研「『人手不足と外国人採用に関するアンケート調査』結果」(2019年4月17日)、パーソル総合研究所「外国人雇用に関する企業の意識・実態調査」(2019年9月)、首相官邸「外国人材の受入れ・共生に関する関係閣僚会議(令和元年12月20日)」、出入国在留管理庁「新たな外国人材の受入れ及び共生社会実現に向けた取組」

(注)文中、意見に関る部分は全て筆者の私見である。