このページの本文へ移動

ファイナンスライブラリー:西出 順郎 著『政策はなぜ検証できないのか~政策評価制度の研究』

評者 渡部 晶

勁草書房 2020年6月 定価 本体4,500円+税

本書は、著者が2018年に早稲田大学大学院公共経営研究科に提出した博士論文「政策評価制度の評価行動」に大幅に修正を加えたものである。本書の帯の大書「『お手盛り』の評価が生まれる理由」から目がなかなか離れない。

著者の西出順郎氏は、現在、明治大学公共政策大学院教授で、福井県庁に入庁後、シラキュース大学マクスウェル行政大学院で修士課程(行政学・経済学)を修めたのち、約17年間の県庁勤務の間に、次第に実践から研究の道に入った。

本書の構成は、第<img style="vertical-align: text-top;" src="/common/images/no_01.gif" alt="ローマ数字1" height="13" width="13">部序論(第1章 本書のあらまし、第2章 評価制度導入以前の政策評価研究、第3章 評価制度の先行研究、第4章 作為的評価行動の仮説)、第<img style="vertical-align: text-top;" src="/common/images/no_02.gif" alt="ローマ数字2" height="13" width="13">部(第5章 作為的評価行動の探索:行動は実際に起きているのか?、第6章 作為的評価行動のモデル化:行動はどのように起きるのか?、第7章 作為的評価行動の説明:行動はなぜ起きるのか?)、第<img style="vertical-align: text-top;" src="/common/images/no_03.gif" alt="ローマ数字3" height="13" width="13">部制度設計の検討(第8章 現行制度の枠組み:制度は作為的な行動を統制できないのか?、第9章 評価制度の成立過程:統制できない制度がなぜ設計されたのか?、第10章 評価制度の見直し過程:作為的な行動をなぜ放置するのか?)、第<img style="vertical-align: text-top;" src="/common/images/no_04.gif" alt="ローマ数字4" height="13" width="13">部まとめ(第11章 起こるべくして起きた作為的評価行動、第12章 政策検証の限界:政策はなぜ検証できないのか?)となっている。

本書のねらいは、「はじめに」に詳しく書かれている。「本書で得られた知見が、評価制度の改革・改善にひいては実効ある政策検証の実現に少しでも寄与できたら、幸甚の至りである」との著者の真摯な姿勢に打たれる。

第<img style="vertical-align: text-top;" src="/common/images/no_01.gif" alt="ローマ数字1" height="13" width="13">部で示されるが、本書の学術的な意義として、静的な分析から実証による動的な分析アプローチへ、評価従事者の行動のありさまに対して分析の焦点を絞り込むという、ルールからヒトへの軸足へ、と、それぞれ移行していることに注目したい。また、「作為的評価行動の仮説」は、評価従事者が目論む評価目的が評価結果の特性を規定することを前提に、評価従事者の「評価目的」、評価従事者の目的に従う「活用行動」、これらによって導き出された「評価結果の特性」という構成要素も用いて提示できるとする。そして、その評価目的としては、(1)「行政資源の獲得の支援」、(2)「予定調和の制度運用」(3)「活動功績の積極的標榜」が抽出され、評価結果の特性としては、(1)「高い評価判定の提示」、(2)「既存の政策情報への追従」が抽出される。

第<img style="vertical-align: text-top;" src="/common/images/no_02.gif" alt="ローマ数字2" height="13" width="13">部で、この仮説が、法科大学院制度についての政策評価の検証、アンケートの回帰分析、評価部門職員へのインタビューを通じて、ブラッシュアップされる。第<img style="vertical-align: text-top;" src="/common/images/no_03.gif" alt="ローマ数字3" height="13" width="13">部では、なぜ、作為的評価活動が、政策評価制度で許容され、放置されているのかを分析する。「実施ルールを各機関の裁量に委ね、機関内の政策部門に評価をさせるという、政策部門による内部評価の囲い込みは、内部監査人のような評価の質に職分的な使命・責任を負う存在を排除し、評価の客観性、独立性を低減させる」や「総務省による第三者評価の囲い込みは、評価制度からの第三者機関もしくは各行政機関内の独立的評価部門を排除し、同時にその客観性、独立性を低減させる」(133頁)との指摘は、関係者には実に耳に痛い鋭い指摘だ。

第<img style="vertical-align: text-top;" src="/common/images/no_04.gif" alt="ローマ数字4" height="13" width="13">部で、「・・作為的評価行動を許容する評価制度は、機能不全を覚悟の上で行政職員集団の支持条件を満たすために設計された、確信的作品だったといえよう」(159頁)と断じる。また、「実態としても既存の組織管理システムとの連携がなされていない」(172頁)ことがこの制度が利用されないことにつながるのだ。

ここまでの政策評価制度への厳しい分析に、2000年前後、全国を覆った「行政革命」・「行政評価の時代」の熱気を複雑な気持ちで回顧する関係者も多いと思う。著者は「おわりに」で、この研究を踏まえ、(1)政策の「効果」を全政府的に検証するという厳格な立場からの解放と、(2)個別システムの分析作法を問うメソドロジーに焦点をあてる評価の可能性に、今後の政策評価の将来を見る。「・・組織特性のありかたを再検討し、同(政策評価)制度を肯定的に捉えるような変化を促しながら、政策の評価システムとしての矛盾等を飲み込んだ上で、行政職員集団と共存できるセカンド・ベストな仕組みを、地道に作り上げてゆくしかないであろう」(180頁)という。本書の知見を広く共有していくことは、「行政革命」の衝撃を新鮮に受け止めた世代の責務といえる。関係者にぜひ一読をお勧めしたい。