このページの本文へ移動

三重県庁の参加型予算「みんつく予算」の取組について

三重県総務部財政課 富永隼行/谷口純一*1

1.はじめに

2019年4月に再選した鈴木英敬三重県知事の表明*2を受け、三重県庁は2020年度予算編成での参加型予算の導入を決め、愛称を「みんなでつくろか みえの予算」(略して、「みんつく予算」)と定めた。

本稿では、財務省から三重県庁に財政課長として出向中の筆者(富永)が取り組んだ参加型予算「みんつく予算」を紹介する。

三重県

人口178万人。中部圏と近畿圏の両方に属し、伊勢神宮、伊賀の忍者、海女など文化的資産を持つ。四日市など製造業が盛んな地域がある一方、伊勢志摩・東紀州地域など豊かな自然に恵まれる。松阪牛など食べ物もおいしい。G7伊勢志摩サミット(2016年)を開催した志摩市で、2021年に第9回太平洋・島サミットを開催予定。

2.参加型予算

住民に身近な存在である地方自治体では、住民(市民)が政策過程の諸段階に自発的に関与する「参加」が重要である*3。このため、公職選挙での投票だけでなく、直接的な参加の制度として、住民投票、請願、公聴会や説明会、情報公開、アンケート、パブリック・コメントなどが用意されている。参加型予算(Citizen Participatory Budgeting)は、行政の資源配分を決める重要な政策過程である予算編成に市民が直接関与する仕組みであり、市民の意思を行政活動に直接的に反映できる方法として注目される。

首長の予算編成権*4は事業実施部局と査定部局との議論で具体化されるが、職員同士の折衝が中心であり、そこに市民が参加する機会は多くない。しかし、近年の市民のニーズの多様化、複雑化に伴い、市民の声を予算編成に直接取り入れる必要性が高まっている。

参加型予算には、市民の参加方法に関して多様な仕組みが想定できる。三重県の「みんつく予算」では、市民から事業アイデアの「提案」を受け、実行主体となる県庁で「審査」し、絞り込んだ提案に対し具体的な事業案を作成した上で、市民の「投票」で実行する事業を決定するという方法を採用した。

3.先行事例

世界各国で実施される参加型予算の一部を(1)~(3)で紹介する*5。日本の基礎自治体の事例を(4)で、東京都の事例を(5)で紹介する。

(1)ポルトアレグレ市(ブラジル)

1989年に開始した同市での成功が、参加型予算が世界に広まるきっかけとされる*6。
まず、全市民が参加できる地区毎の評議会にて予算の優先順位の議論を行うと共に代議員を選出する。そして、地区代表者による代議員総会において予算案をまとめ、最終的に市議会で予算を決定する。
貧困の改善に繋がる生活インフラの整備などバランスのとれた都市開発が実現されたことに加え、行政の透明性が高まりガバナンスが改善されたと評価される。

(2)パリ市(フランス)

2014年から2020年までの「投資予算」*7の5%(7年間で約5億ユーロ)の使途を市民による提案と投票で決定する世界最大の予算規模の事例である*8。
全パリ市民がデジタルプラットフォーム(Paris Budget Participatif)を通してプロジェクトの提案に参加できるほか、市民によるプロジェクトの検討を支援するワークショップも開催される。市による提案プロジェクトの審査で選定される投票対象に対し、市民が投票箱及びオンラインで投票し、採用事業が決定される。市民によるモニタリングとして、過去の提案事業の進捗状況をオンラインで一覧できる。
2019年の取組では、14万3,489人の投票(1人8票まで)で194のプロジェクトが選定されたが、多くが市民の関心が高い地域のインフラ整備である*9。

(3)ポルトガル

提案と投票の2段階で実施する参加型予算を、国レベルで最初に導入した事例である。ポータルサイト(Orçamento Participativo Portugal)を通じて又は全国で開催される参加型会議の場で提案ができ、実現可能性の審査を通過すれば投票の対象となる。これまで2回実施(図表1.ポルトガルの参加型予算の実施状況)され、国民のネットワーク作りや地域間統合の促進を狙いとしており、文化的な連帯感を育むプロジェクトの選定が特徴的である*10。

(4)三重県名張市

「住民が自ら考え、自ら行う」まちづくりを実現するため、2003年から「ゆめづくり地域予算制度」を実施している(2019年度予算額 1億600万円)。
従来の地域向け補助金を廃止した上で、概ね小学校区を単位とする15の地域づくり組織に使途の限定がない交付金を交付し、住民の合意により実施するまちづくり事業*11に充てている。

(5)東京都

行政にはない新たな発想の活用や、都民の都政への参画を目的とし、「都民が提案し、都民が選ぶ」仕組みである「都民による事業提案制度」を2018年度予算から導入している*12。提案をテーマ別に募集後、都庁で精査し、事業案にまとめた上で、インターネット投票(1人3票まで)を実施している(図表2.東京都の参加型予算の実施状況)。

4.三重県「みんつく予算」の概要

(1)目的

市民参加の視点を予算編成に取り入れてきた*13三重県庁にとって、更なる挑戦となる「みんつく予算」の主な実施目的は、次の2点である。

・事業の構築に新たな発想や身近な問題意識を取り入れることで事業の質の向上や限られた資源の有効活用を図ること
・予算の使い道について県民の理解、共感及び納得性を高めながら県政への参画を促すこと

また、職員を良い意味で刺激し、行政の在り方に前向きな変化を引き起こすことも狙いである*14。

(2)規模

総額を約5千万円、1事業を1千万円以内と定め、総額の中で複数の事業を選定し、毎年2月に県議会に提出される当初予算案に盛り込むこととした。
5千万円という規模は、2020年度三重県一般会計当初予算7,407億円の0.01%に満たない。しかし、新規性の高い事業の計上は限定的であること*15を踏まえれば、インパクトのある規模であろう。

(3)参加プロセス

市民参加の機会を「A.事業提案の募集」と「D.県民投票による事業決定」の2点で設けた(図表3.「みんつく予算」スケジュール)。提案への応募は、独自のアイデアをまとめる必要があり、参加へのハードルが比較的高い。より参加しやすい形態である投票プロセスを取り入れることで、多くの人が参加できる仕組みとした。
募集と投票の間に行う「B.投票候補案の審査」と「C.具体的な事業内容の構築」を県庁が担う。そのまま実行に移せる詳細な計画の形で提案を受ける訳ではないため、事業の実行主体となる行政の観点で提案内容を審査した上で、予算やスケジュールを含め事業を具体的に組み立てる担当部局の役割は大きい。
提案を募集する対象について、20のテーマ*16を設定した。参加のハードルを下げることを目的としたが、運営上の混乱を少なくする効果*17もあった。他方で、提案者側から見れば、テーマの限定により出したい提案が自由に出せない、県庁にとって都合の良いテーマだけが選ばれている、という批判があった。
多くの市民の参加のため、メディアを通じて訴えることは勿論、より直接に市民に訴える取組*18を続け、知名度の向上を図った。また、職員個人のフェイスブックの利用や専用ツイッター*19の開設により、SNS上の拡散を狙ったものの、アカウントのフォロワー数が少なく、発信力は限定的であった。

写真1:提案者によるプレゼンテーションの模様(後藤さん)

5.「みんつく予算」取組の結果

(1)A.事業提案の募集

提案の募集では、設定されたテーマから1つ選び、「事業の概要、提案に至った思い、見込まれる効果」を記載することとした*20。1か月(9月20日~10月18日)の募集期間で、計229件の提案が集まった。
応募資格には、三重県に関心を持つ人から幅広く提案を募るため、住所や年齢の制限を設けなかった*21。地元大学の講義の中で周知したほか、事業提案を課題として取り上げたゼミの先生もいたため、大学生からの提案が多く集まった*22。若年層の行政への理解を深めるため、高校生への周知も今後の課題となる。
提案期間中に、みんつく予算をテーマにしたワークショップが有志により複数開催され、その1つに筆者も講師として招かれた(石田礼子さんの感想を参照)。市民が集まってアイデアの改善・統合を進める議論の場は理想的な参加民主主義の実践である。提案を議論する機会を、県庁主催で又は市民と連携して、より多く提供することが望まれる。

(2)B.投票候補案の審査及びC.具体的な事業内容の構築

集まった提案を担当部局で審査し、20件(1テーマにつき1つ)の投票候補案を選出した。恣意的な審査を防ぐため、4つの観点(手段の有効性、事業の効果、手段の効率性、緊要性)で点数評価する客観的な審査方法を定めた。絞り込んだ20件の提案は、各担当部局で実施方法、スケジュール、予算の見積もりなど具体的な事業内容に落とし込まれた。
提案者へのヒアリングは提案の意図を確認する程度であったが、より魅力的な投票候補案の構築に向けて、提案の絞り込み・具体化の過程にこそ、提案者や他の市民も交えた討論の場や投票など市民参加が必要だとの指摘もあった。

写真2:「みんつく予算総選挙」のチラシ(イラスト:清水夏樹)
写真3:採択事業の提案者への感謝状贈呈式(3月25日)の模様

(3)D.県民投票による事業決定

20本の事業に対し、どの事業を実施して欲しいかの投票(1人3票まで)を行った*23。投票期間を年末年始を挟んだ1か月間(12月7日~1月6日)とした。投票資格は、予算の使い道を決める投票であることを踏まえ、18歳以上の三重県民とした。高校生など18歳未満の若者の参加を求める意見もあった。
12月12日には、提案者本人が担当部局の職員と共に鈴木知事を含む幹部職員の前で提案への思いや事業の効果を訴えるプレゼンテーションを開催し、投票の参考にしてもらうため、その模様をインターネットで中継した(写真1)。明らかに普段の予算編成とは異なる活気があり、提案者(市民)と職員とが協働する場として有意義なイベントとなった*24。
投票の呼びかけは、職員による宣伝だけでは限界がある中で、提案者を中心とする広がりが見られた。「みんつく予算総選挙」のチラシ(写真2)のデザイン作成など、運営面でのボランティア的協力も頂いた*25。

(4)投票結果:2020年度予算への計上

投票者数2,837人、投票総数6,381票の結果*26を踏まえ、投票数の多い順に上位6事業(総額5,020万4千円)を2020年度当初予算に計上した(図表4.予算に計上された上位6事業の投票結果)。
市民目線のユニークな6事業が選定されたが、その効果的な執行には、パリ市のような市民による進捗状況のフォローが必要である。継続した情報公開は、次の市民参加を促し、提案の質を向上させる。
また、採択に至らなかった14事業、投票候補案とならなかった提案、投票期間中に寄せられた意見など多くのアイデアを県庁は得ている。これらを無駄にせず、行政運営に取り込むことも求められる*27。

6.次回の「みんつく予算」に向けて

(1)市民参加の拡大・深化

多くの提案(229件)及び投票(2,837人)の獲得は成果であるが、三重県人口(178万人)を考えれば、市民参加の絶対数を伸ばす必要がある。また、参加型民主主義で大事となる市民相互の交流・対話の機会が、実際に集まる場と、それを補完するデジタルプラットフォームで提供されることが必要だ。
今回、デジタル手法(インターネット)を中心に置きつつ、アナログ手法(対面、紙媒体)も併用したが、両者の特徴を活かした改善が求められる。アナログ手法は場所と時間の確保など手間暇がかかる分、参加の質・量への貢献は大きかった。ワークショップ開催が提案のブラッシュアップに役立ったほか、紙媒体での提案・投票*28の数も想定より多かった。シビックテックの流れの一環として、近年の参加型予算の世界的普及で大きな役割を果たしたデジタル手法の活用は不可欠である。パリ市のように、提案と投票だけでなく、アイデアの議論、事業のフォローアップまでワンストップでできるデジタル基盤の整備が望ましい。

(2)市民参加を活かす行政への変化

今回、事業提案を20テーマに限ったことに対し、自由な提案を認めて欲しい旨やテーマの幅を広げて欲しい旨の意見が多数寄せられた。自由度を広げた制度設計が望ましいが、その場合、県庁での審査・具体化・実行が難化する懸念がある。
また、実施すべき事業ではなく、廃止すべき事業を選ぶ仕組み(「みんやめ予算」)を求める意見もあった。事業の背景には多くの利害が関わるため、投票結果だけで事業の廃止を決めることは難しいが、行政が既存の事業を不要だとは言いにくい現状を打開する意味で、市民が指摘する仕組みは一考の価値がある。
拡大・深化する市民参加を活かすために、行政自身が市民の声をよりストレートに聴くよう変わるべきである。市民の提案を市民目線で受け止め、具体的な事業に落とし込む過程は、職員に良い刺激を与え、政策立案・実行能力の向上に繋がる*29。市民の意見は行政にとって耳の痛い話が多く、それを正面から受け止めることは容易ではないが、真摯に向き合う姿勢が必要である。

「みんなでつくる避難所プロジェクト」を提案した石田礼子さんから、参加者の視点で感想を頂いた。

「みんつく予算」で理想の三重県に近づけよう 石田礼子

「みんつく予算」で2つの投票候補事業を提案しました。介護職場の魅力をリアルに発信する「みえのささえびと」事業は採択に至りませんでしたが、避難所を身近な存在にしたいという思いから提案した「みんなでつくる避難所プロジェクト」は最多得票を頂戴しました。私は、三重県の自宅からフルリモートワークでソーシャル経済メディアであるNewsPicksの仕事をしながら、地元・津市の(株)中部システムセンターにて働き方改革のサポートの副業もしています。個人ではリモートワークやパラレルワークなど新しい働き方の実践者を集めたコミュニティを運営しています。

初めて「みんつく予算」を知った時、私自身が応募するだけでなく、県内外から多くの方に応募してもらいたいと思いました。沢山のアイデアを集めることで真に三重県に必要な予算ができると考え、「みんつく予算」に応募するアイデアについてみんなで話し合うワークショップを企画しました。具体的には、Facebookでイベントページを立ち上げ、三重県内外から三重を変えたい、地方を面白くしたいと思っている方々に呼びかけました。

当日(10月1日)は、愛知県のクリエイティブデザイナー、NPOの運営者、女性起業家をサポートする社労士、東京から移住したライター、IT関連の起業家、農業研究者、子育て中の女性、研修を全国で行う講師など様々なバックグラウンドをお持ちの20名ほどの方が副業先のコワーキングスペースに集まりました。

まず、富永課長から「みんつく予算」の説明を受けると、こう運営を改善したら多くの応募が集まるのでは、などのアイデアが参加者から集まりました。その後、募集中のテーマについてそれぞれ考えてきたアイデアを発表し合い、他の参加者がフィードバックを行いました。参加者同士で理想の三重県の姿について話が盛り上がる場面もありました。

ワークショップが終わった後も、参加者がSNS上でアイデアを更に醸成しつつ、「みんつく予算」について投稿を行うことで、この取組自体を広めることにも繋がりました。投票も、それぞれが行うだけでなく、県民への呼びかけを行い、参加者一人一人がいわばインフルエンサーのような役割を自然と担っていきました。

参加型予算は、誰もが自分事として地元が抱える課題を考えられる点が非常に魅力的です。自分の住む街をより良くしたいと多くの人が願っていますが、実際にそのために行動できる人はそれほど多くないのが現状です。「みんつく予算」は、熱意で理想の三重県の姿に近づける機会だと思いました。採択された事業が成功すること、そして、今後も「みんつく予算」が実施されることを期待しています。

写真:石田さんの提案に添えられた避難所のイメージイラスト
写真:ワークショップの模様(場所:中部システムセンターWORKSPACE)

*1)本稿の意見にわたる記述は、筆者の個人的な見解である。みんつく予算の事業提案と投票に参加して頂いた方、応援して頂いた方に感謝を申し上げる。

*2)「未来展望みえの会の政策集 2019」p54では、「厳しい財政状況の中でも、県民の皆様と協創で予算を作り上げるという観点から、フランス・パリ市などで行われている「参加型予算」の導入について検討します」と記述されている。

*3)「住民(市民)参加」の定義、意義に関しては、多様な議論がなされている。ここでは、西尾(2016)p72の定義を用いた。兼村(2016)p14では、一般的な概念として、「市民」は良識ある参加者たる規範的な主体を指すのに対し、「住民」は地域的に利害をもち利己的であるなど多様な価値観をもった主体を指すとする。本稿では、主に「市民」を用いる。

*4)二元代表制を採る地方自治体の予算は、首長である知事又は市町村長が調製し(地方自治法第149条第2号)、議会が議決する(同法第96条第1項第2号)ことで成立する。議会に提出する予算案の編成は、財政課長査定・総務部長査定・知事査定などと段階的に進む。

*5)参加型予算の定義が一定ではないため、その総数は明らかではないが、相当数の導入例があるとされる。

*6)軍政から民政への移行が進む当時のブラジルでは、民主化と地方分権が進められていたが、予算を市民の生活改善に配分するための手法として労働者党のオリヴィオ・ドゥトラ市長により参加型予算が導入された。最大で3万人近い(人口140万人の約2%)多くの市民が参加した。

*7)投資予算は、総予算から行政運営に必要な運営予算を除く公共施設の整備等に充てる経費。2019年では、17億ユーロが投資予算となっている。

*8)2014年に就任したアンヌ・イダルゴ市長が開始した。プロジェクト参加プラットフォーム(Idee.paris)など他の仕組みも提供されている。

*9)2,084のプロジェクトが提案され、市の審査の結果、430が投票の対象となった。選定された194のプロジェクトのうち、パリ全域の利益になる全域プロジェクトが11(街路樹の整備、ごみ分別収集箱の設置、太陽光発電街路灯の設置、水泳ができる運河への改修など)、特定の地区のための地区プロジェクトが183(交差点の改修、駐輪場の設置、湖の遊歩道の改修など)。高校生や大学生、公営住宅居住者向けの参加制度も設けられている。

*10)全国プロジェクトと地域プロジェクト(7つの地域別)に1票ずつの計2票を投票できる。2018年は、3の全国プロジェクト(闘牛文化の啓発、お菓子イベントの開催など)、19の地域プロジェクト(無料の子ども演劇学校の設置、天文学公園の設置など)が選定された。

*11)交付金の対象は、住民の合意により実施するまちづくり事業であり、防犯パトロール、防災訓練、環境美化活動、高齢者や子どもの活動、地域文化活動、住民交流などに充てられている。

*12)2020年度予算に計上された事業としては、防災備蓄品リストを提示するウェブサイトの構築(4,100万円)、都営住宅等の空き住戸のシェア居住向け整備(700万円)などがある。2019年度予算から「大学研究者による事業提案制度」も導入している。

*13)知事査定のインターネットでの公開など予算編成過程の透明性を高めてきたほか、県民の声を反映した行政サービスを提供するため、毎年、県民1万人を対象とする「みえ県民意識調査」を実施し、予算編成の参考としている。

*14)鈴木知事は「県庁の中で、お金がないからどうせ新しいことを言ってもみたいな、思考が止まっているところも見受けられたから、そういうものを打破する意味でも、新しい発想で提案して欲しい」と説明している。(2019年9月20日知事定例記者会見)

*15)厳しい財政状況の継続により、近年の予算要求基準では、政策的なソフト事業に充てられる一般財源は約30億円、このうち、重点事業(特定課題推進枠)に充てられる一般財源は約3億円となっている。

*16)防災、子ども・若者、高齢者、環境、ダイバーシティ、三重の魅力発信などの分野から、各部局からの推薦も踏まえ、県政の重要課題である20のテーマを設定した。具体的には、「避難行動の促進」、「男性育児参画」、「モビリティ・マネジメント」、「食品ロスの削減」、「多文化共生の理解促進」、「三重の農林水産品の魅力向上」など。

*17)設定したテーマを所管する担当課が明確となることで、集まった提案の担当部局への割り当ては混乱なく行われた。投票候補案の審査・具体化は、提案と投票の間の限られた期間(10月下旬~11中旬)に行わなければならなかったが、事前のテーマ設定により審査の観点も準備できたため、円滑に進んだ。

*18)県内29市町、国の地方機関、関係団体、事業者、ボランティア等への周知、県庁主催のイベント等でのチラシ配布など。

*19)財政課長名で公式ツイッターを開設し、みんつく予算の宣伝をしつつ、予算編成の過程など財政課の仕事を紹介した。現在、約600フォロワー。

*20)応募方法は、電子申請、メール、郵送、職員による回収、財政課への持ち込みとした。電子申請では、独自のインターネット応募フォームを新たに構築する余力がないため、既存の電子申請システムを活用しつつ、リンクできるQRコードをチラシに掲載してアクセスを容易にした。

*21)県内からの提案が182件、県外からの提案が47件あり、最年少は18歳、最高齢は81歳であった。

*22)投票対象となった20の選定候補案のうち、大学生から提案は3件(うち、1件が予算に計上)。

*23)投票方法は、電子申請、メール、郵送、投票箱とした。投票箱は、県庁3階の財政課と津駅前にあるアスト津3階のみえ県民交流センターに設置した。

*24)鈴木知事から「提案者と職員が一緒に説明するのは画期的であり、職員も普段より自信を持って説明ができていた。職員に良い刺激を与えてもらった。」との好意的な評価があった。

*25)県庁ウェブサイトの見づらさが課題となっていたところ、事業内容を一覧できる「みんつく予算総選挙」の応援ウェブサイトを構築した方もいる。

*26)投票結果は知事査定の冒頭(1月16日)で発表したが、その際、投票時に受け付けた事業への意見(613個)も併せて公表した。

*27)投票で次点(406票)となった「三重県ペット防災事業」(啓発アニメの制作、ペット参加型避難訓練の実施)には、アイデアを活かして既存の施策の改善に繋げて欲しいとの声が結果発表後も多く寄せられた。

*28)既存の電子申請システムを活用した応募フォームの使いにくさの問題があったことも一因である。同フォームではファイルの添付ができない中、紙媒体での提案の中には、写真やイラストを活かしたものもあった。ただし、紙媒体での提案・投票は、回収・集計の手間など職員の負担が大きい。

*29)財政課は、内部での管理、調整の事務が業務の大半を占めるため、市民との直接的な関わりが少ない部署と言わざるを得ない。しかし、今回の取組を通じて、応募の相談や予算の在り方に関する叱咤激励の声が多数寄せられた。これは、職員に良い刺激をもたらす経験となった。

(参考文献)

・西尾隆(2016)『現代の行政と公共政策』、放送大学教育振興会

・兼村高文・洪萬杓(2012)「住民参加型予算の現状と今後─日韓の事例を中心に─」、『自治総研』通巻405号

・兼村高文(2016)『市民参加の新展開:世界で広がる市民参加予算の取組み』、イマジン出版

・山口まみ(2016)「パリ市における市民参加型予算」『Best Value』vol.34 Theme 8

・Paris Budget Participatif(https://budgetparticipatif.paris.fr/bp/)

・Orçamento Participativo Portugal(https://opp.gov.pt/)