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特集:令和2年度国債発行計画について

理財局国債企画課長 石田 清

本稿では、昨年12月20日に公表した令和2年度国債発行計画の内容を中心として、来年度の国債管理政策の概要を説明したい。

1.現下の国債市場の状況

令和元年は、年明け以降、米中間の貿易問題など世界経済を巡る不透明感が増したこと等を背景に、米欧債金利が大幅に低下したことを受け、我が国の長期金利はマイナス圏まで低下した。8月以降、米中貿易摩擦の激化・長期化懸念が深刻化し、長期金利は、一時、2016年7月以来の水準である▲0.295%まで下落。その後は、米景気減速懸念の後退や米中貿易協議の進展期待等もあって、長期金利は上昇基調に転じ、年末にかけてゼロ%近辺まで上昇して推移している。

我が国における各年限の金利の動きを見ると、年前半は、全年限で金利が低下し、中期債・長期債金利がマイナス圏で推移する中、プラス金利の超長期債が買われ、イールドカーブはフラット化。年後半は、長期金利が上昇基調に転じる中で、超長期債金利も上昇するとともに、追加緩和期待が剥落したことで、中期債金利も上昇した。

2.令和2年度国債発行計画の概要

以上のような市場環境を踏まえ、令和2年度国債発行計画を策定した(表1 令和2年度国債発行計画の概要)。

(1)発行根拠法別発行額

令和2年度の国債発行総額は、令和元年度当初と比べ4.7兆円増の153.5兆円となった。

発行根拠法別(表2 令和2年度国債発行予定額、左表)の内訳をみると、まず一般会計予算の歳入となる新規国債(建設国債・特例国債)は、前年度当初比▲0.1兆円減の32.6兆円となった。

復興債は、東日本大震災からの復興のための施策に要する費用の財源に充てるため、復興特別税等の収入が確保されるまでのつなぎとして発行されるものであり、令和2年度においては、同▲0.0兆円減の0.9兆円の発行を予定している。

財投債は、財政融資の新規の貸付規模、財政融資資金全体の資金繰り等を勘案した結果、令和2年度においては前年当初と同額の12.0兆円となった。

借換債は、過去に発行した国債の満期到来に伴う借換えのために発行するものであり、国債発行総額の大半を占めている。国債残高の増加を背景に借換債の発行額は多額に上っており、令和2年度においては、同4.8兆円増の108.0兆円となった。

(2)消化方式別発行額

国債の消化方式は、大別すると、「市中発行」、「個人向け販売」、「公的部門」の3方式がある(表2 令和2年度国債発行予定額、右表)。

大半を占める「市中発行」分のうち、通常の入札による市中発行額(カレンダーベース市中発行額)については、前年度当初比▲0.6兆円減の128.8兆円の発行を予定している。

「個人向け販売」分は、足元の販売状況等を踏まえ、同+0.1兆円増の4.8兆円とした。

また、「公的部門」(日銀乗換)は、日本銀行が保有する国債が満期を迎えた際に、その一部について国会の議決を経た金額の範囲内で借換債を引き受ける制度である。令和2年度は、国債発行総額や市場環境等を踏まえ、前年度と同額の2.2兆円となっている。

(3)年限別発行額

カレンダーベース市中発行額の年限別発行額については、低金利環境と市場のニーズを踏まえ、40年債を+0.6兆円増額している(表3 令和2年度カレンダーベース市中発行額)。

長期債(10年債)、中期債(5・2年債)、短期債(1年債)については、前年度と同額としている。

また、「流動性供給入札」については、需要が低下している残存5年~15.5年のゾーンを▲1.2兆円減額し、計11.4兆円としている。

3.令和2年度国債発行計画の策定プロセス

令和2年度国債発行計画の策定に当たっては、昨年10月に開催した「国の債務管理の在り方に関する懇談会」において、民間有識者の方々から、中長期的な国債管理政策について助言を頂いた。

昨年11月及び12月には「国債市場特別参加者会合」及び「国債投資家懇談会」を開催し、市中発行の年限構成等について市場関係者との対話をきめ細かく実施し、市場のニーズの把握に努めた。

こうした民間有識者の指摘や市場関係者の声を踏まえつつ、令和2年度国債発行計画を策定したところである。

4.おわりに

令和2年度国債発行総額は、令和元年度と比べて増加しており、極めて高い水準にある。また、国債発行残高は令和2年度末に約997.9兆円に達すると見込まれている。今後も国債の大量発行を余儀なくされる中で、国債の確実かつ円滑な発行と中長期的な調達コストの抑制を基本目標とする国債管理政策はますます重要となっている。

国債発行当局としては、引き続き国債市場の動向を注視しつつ、市場関係者との緊密な対話を行い、国債管理政策の適切な運営に取り組んでいく所存である。