このページの本文へ移動

特集:令和元年度補正予算及び令和2年度予算について

主計局総務課主計官 寺岡 光博

1.令和元年度補正予算及び令和2年度予算編成の背景と考え方

日本経済については、海外経済の減速等を背景に外需が弱いものの、雇用・所得環境の改善、高水準の企業収益等により、内需を中心に緩やかな回復を続けている。一方で、昨年は、自然災害が相次ぎ、広範囲にわたり甚大な被害が発生した。また、通商問題を巡る動向をはじめ、様々な不確実性が存在しており、海外発のリスクには留意していく必要がある。

(参考)

令和元年度の実質GDP成長率は0.9%程度、名目GDP成長率は1.8%程度と見込まれており、令和2年度はそれぞれ1.4%程度、2.1%程度と見込まれている。

こうした経済認識の下、昨年12月5日に(1)災害からの復旧・復興と安全・安心の確保、(2)経済の下振れリスクを乗り越えようとする者への重点支援、(3)未来への投資と東京オリンピック・パラリンピック後も見据えた経済活力の維持・向上を柱とする「安心と成長の未来を拓く総合経済対策」が閣議決定され、13兆円規模の財政支出を講じることとなった。

経済対策に基づき、15ヵ月予算の考え方の下、令和元年度補正予算を新たに編成するとともに、予備費を含めた令和元年度予算、令和2年度の臨時・特別の措置を適切に組み合わせることで、リスクに対して強靱な経済構造を構築し、民需主導の持続的な経済成長の実現につなげていくこととしている。

一方、財政状況に目を転じれば、国と地方の債務残高がGDPの2倍程度に膨らみ、なおも累増が見込まれ、また、国債費が毎年度の一般会計歳出総額の2割以上を占めるなど、引き続き、厳しい状況にある。

このような状況において、引き続き、経済再生と財政健全化に着実に取り組んでいく必要があり、そうした中で、我が国としては、人口減少・少子高齢化という大きな課題を克服するため、全世代型社会保障制度の構築とその持続的運用をはじめとした、経済社会の構造改革を加速していくことが極めて重要である。

2.令和元年度補正予算の概要

令和元年度補正予算は、前述の「安心と成長の未来を拓く総合経済対策」の実行等のためのものであり、予算フレームは以下の通りである。

歳出については、経済対策の実行及び国際分担金等の追加財政需要について、4兆4,722億円の歳出の追加を行うこととしている。

これらの財源面については、歳出において、既定経費を1兆2,908億円減額するとともに、歳入においては、建設公債2兆1,917億円、税外収入1,881億円及び前年度剰余金8,016億円を計上することとしている。他方、税収は▲2兆3,150億円の減額を見込んでおり、また、国税の減収に伴う地方交付税交付金原資の減額の補塡のため、所要額を計上している。これらについて、特例公債金2兆2,297億円を発行することで対応することとしている。

この結果、令和元年度補正後予算の総額は、当初予算に対し歳入歳出ともに3兆1,946億円増加し、104兆6,517億円となる。

また、特別会計予算等についても所要の補正を行っている。

令和元年度一般会計補正予算(第1号)フレーム

令和元年度補正予算(第1号)の概要

3.令和2年度予算の概要

(1)令和2年度予算のポイント

令和2年度予算は、消費税増収分を活用した社会保障の充実、経済対策の着実な実行、歳出改革の取組の継続により、経済再生と財政健全化の両立を実現するものとしている。

本予算は、前述の経済財政状況等をふまえ、「令和2年度予算編成の基本方針」(令和元年12月5日閣議決定)に沿って編成が進められたものであり、具体的なポイントは以下の通りである。

1. 消費税増収分を活用し、全世代型社会保障制度の構築に向けて、既に実施している幼児教育・保育の無償化、低年金の高齢者等に対する支援給付金の支給に加え、本年4月から実施予定の高等教育の無償化、予防・健康づくりの取組の抜本的強化などの社会保障の充実のために、約1.7兆円(国費ベース:以下同じ)を計上している。

・高等教育の無償化〔2020年4月~〕

4,882億円

・幼児教育・保育の無償化〔2019年10月~〕

3,410億円

・予防・健康づくりの取組の抜本的強化

700億円

・勤務医の働き方改革の推進

183億円

など

2. 次に、経済対策を着実に実行し、東京オリンピック・パラリンピック後も、個人消費や投資を切れ目なく下支えするため、本年度も通常分の予算に加え、「臨時・特別の措置」を講じ、合わせて約1.8兆円を計上している。

・キャッシュレス・ポイント還元事業

2,703億円

・マイナンバーカードを活用した消費活性化策

2,478億円

・すまい給付金

1,145億円

・「防災・減災、国土強靱化対策のための3か年緊急対策」の着実な実行

1兆1,432億円

など

3. 一方で、「経済財政運営と改革の基本方針2018」(30年6月15日閣議決定)において定められた「新経済・財政再生計画」の下、引き続きその方針に沿って歳出改革に取組むこととし、社会保障関係費については、実質的な伸びを高齢化による増加分におさめるとの方針を達成し、また、非社会保障関係費についても、継続して全般的な歳出の見直しを行い、「目安」を達成することができた。

・社会保障関係費

+4,111億円(高齢化による増)

・非社会保障関係費

+330億円(これまでの取組の継続)

これらの結果、令和2年度当初予算から新規国債発行額を1043億円減額し、新規国債発行額は安倍政権発足以来8年連続で縮減することとなり、平成24年度当初予算と比較して11兆6,878億円の減額となっている。

(2)令和2年度予算のフレーム

令和2年度予算の予算フレームは以下の通りである。

歳出については、通常分は100兆8,791億円、それに「臨時・特別の措置」の分である1兆7,788億円を合計して、一般会計総額は102兆6,580億円となっている。

これに対し、歳入については、租税等の収入は、過去最高となる63兆5,130億円、その他収入は6兆5,888億円を見込み、公債金は32兆5,562億円となっている。

令和2年度予算フレーム

(3)主要な経費の概要

社会保障関係費については、「新経済・財政再生計画」に沿って、様々な歳出抑制努力を積み重ねた結果、実質的な伸びを「高齢化による増加分におさめる」という方針を達成するとともに、消費税増収分を活用した社会保障の充実を実施することとしている。これらの結果、35兆8,608億円を計上している。

文教及び科学振興費については、教職員定数において効率化と必要な分野の充実を図るほか、私立高校授業料の実質無償化、大学改革、安全・安心な学校の施設整備等を推進することとしている。また、科学技術基盤を充実するとともに、イノベーションを促進することとしている。これらの結果、5兆5,055億円を計上している。

地方財政については、地方の一般財源総額を適切に確保しつつ、臨時財政対策債の発行を縮減するなど、地方財政の健全化に資する内容となっている。これらの結果、15兆8,093億円を計上している。

防衛関係費については、格段に速度を増す安全保障環境の変化に対応するため、中期防衛力整備計画に基づき、防衛力整備の一層の効率化・合理化を徹底しつつ、防衛力を強化することとしている。これらの結果、5兆3,133億円を計上している。

公共事業関係費については、一連の豪雨・台風災害等を踏まえ、治水対策を中心とした防災・減災対策等の強化を図るほか、中長期的な成長の基盤となるインフラの整備を推進することとしている。これらの結果、6兆8,571円を計上している。

経済協力費については、戦略的外交を後押しする観点から、「自由で開かれたインド太平洋」の取組強化を進めつつ、ODAは予算・事業量ともに必要な額を確保することとしている。これらの結果、5,123億円を計上している。

中小企業対策費については、経営者保証を不要とする新たな信用保証制度の創設など事業承継に対する支援を充実するほか、生産性向上や資金繰り対策にも万全を期すこととしている。これらの結果、1,753億円を計上している。

エネルギー対策費については、再生可能エネルギーの主力電源化や脱炭素化に向けた取組を拡充するほか、国内資源の開発や海外資源の権益確保等を推進することとしている。これらの結果、9,495億円を計上している。

農林水産関係予算については、農林水産物・食品の輸出環境整備、高収益作物の生産支援、新規就農者の確保を進めるほか、水産改革の推進等に取り組むこととしている。これらの結果、全体で2兆4,117億円を計上している。

東日本大震災からの復興については、復興・創生期間の最終年度において必要な復興施策を確実に実施するため、令和2年度東日本大震災復興特別会計の総額を2兆739億円としている。

主要経費別内訳

消費税率引上げ(8→10%)に伴う社会保障の充実

一般会計税収、歳出総額及び公債発行額の推移

4.結び

前述の通り、令和元年度補正予算及び令和2年度予算は現下の重要な課題に的確に対応しつつ、経済再生と財政健全化を両立するものとしており、関連法案と合わせて、国会での御審議を経て速やかに成立することが期待されている。

経済再生を図りながら、歳出と歳入両面の改革を続けることで、着実に公債発行額を減らし、2025年度の国・地方を合わせたプライマリーバランスの黒字化を確かなものとしてまいりたい。

( 以 上 )