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ニイ「ガタ」、「トキ」、書いてみませんか?第二十四回

令和4年度の予算編成ができない!?(3)

新潟県総務管理部長(元財務省広報室長)佐久間 寛道

シリーズでご紹介している新潟県の財政危機。前月号では、高齢化による社会保障関係費の増が地方の財政運営にもたらしている影響と、「なぜ対応が遅れたのか」について書きました。

今回は、行財政改革の主な方策と、それを策定するにあたっての有識者会議等の議論の一端をご紹介して、このシリーズの一区切りとします。

収支改革の目標額が2つ

計画期間は令和元年度から令和5年度までの5年間としています。収支改革目標は、(1)収支の均衡を図るため、640億円(年度平均160億円)の収支改革、(2)中越大震災レベルの大災害に当面対応(令和5年度末の財源対策的基金残高230億円)するため、435億円(年度平均110億円)の収支改革(この場合依然として収支不均衡のため、令和4年度目途に計画見直し)、の二つを掲げています。これは、本来(1)収支均衡のみの目標とすべきですが、地方財政対策の動向等に大きく左右されることから、(1)を目指しつつ、少なくとも(2)を達成できるように取り組むとしたところです。

主な取組を挙げると、歳出面では、(1)すべての事務事業をゼロベースで見直し、各種事業(一般財源ベース)は、令和2年度に令和元年度比10%削減を基本としています(詳細は行動計画をご覧下さい)。(2)また、過去に行った借金の返済が今後の財政運営の重荷になることが判明していることを踏まえ、公債費負担適正化計画を令和元年度中に前倒して策定し、実質公債費比率の目標値と県債発行ルールを設けることとしています。(3)また、毎年度170億円程度という巨額の資金を一般会計から繰り出している県立病院事業については、経常損益の黒字化及び一般会計繰出金の縮減を目指し、県立病院の役割・あり方や機能・規模を整理し、人件費や経費を見直すなど、患者数等に見合った経営となるよう経営改革に取り組むこととしています。(4)人件費については、定員・給与制度の適正化を進めることとしています。また、給与の臨時削減について、知事は給料・期末手当20%削減、副知事等特別職は15%削減、部長級は給料・期末勤勉手当・管理職手当10%削減、課長級(所属長)は給料・期末勤勉手当・管理職手当5%削減を今年11月から実施しています(令和5年度末まで)。その他職員については職員団体と交渉中です。議員についても議会の判断として臨時削減を実施しています。

歳入面では、(1)産業振興等による税源涵養、収入率の向上や、税制を検討することとしています。核燃料税について、32億円の税収が平年度ベースで47億円となる内容の条例改正を行い、令和元年11月から施行しています。(2)使用料・手数料について、特に徴収していない施設の有料化や減免制度の見直しを重点的に検討することとしています。この12月議会に見直しを提案しています。(3)その他、未利用財産の売却と有効活用を図るとともに、広告収入や、ふるさと納税や企業版ふるさと納税等による一層の歳入確保に努めることとしています。また、一般財源の負担は減らしつつ事業量を維持するためにも、国庫補助金等を今まで以上に積極的に活用することをうたっています。

加えて、行政改革として、組織体制の見直し、57法人に計約420億円出資している県出資法人の見直し、業務力の向上を掲げています。

なお、議会やマスコミへの説明等のほか、例えば8ページのダイジェスト解説(例:資料1 太郎くんとトキ子さんがわかりやすく解説~県の財政状況は?行動計画ってどんなもの?~)を作成し、広報の取組をしています。県民への説明会の開催も予定しています。

肝となった有識者会議

7名の委員(資料2 新潟県行財政改革有識者会議 委員)からなる有識者会議は、小西砂千夫・関西学院大学教授を座長として5月から8月まで毎月計5回開催され、8月に出された意見書が行動計画の基礎となりました。財政学・公共経済学の第一人者、県内外の代表的経営者、首長(全国市長会長)経験者、公会計や労働分野の専門家から委員となって頂き、他の自治体との比較や民間の視点など、幅広い観点から活発な意見を頂きました。

同じく毎月開催した知事以下全部局長からなる「行財政改革推進会議」と2週間おきに開催し、その都度記者説明を行うことにより、議論の県庁内のフィードバックはもちろん、マスコミを通じた県民の議論喚起に資することになったのではと思います。国と異なり、新潟県庁では公表案件や会議の内容についてマスコミ説明を行う文化がそれほどなく、また、記者が県庁に常駐していない報道機関が多いのが実態です。公の場で自治体の政策が論じられることも多くはありません。県民が事実に基づくわかりやすい政策情報に接する文化を醸成するため、日程をあらかじめ明示し、会議と記者説明をセットにした形で半年間取り組むこととしました。

会議では、不都合な真実も含め、ファクトを数多く示し、議論の素材としました。人口減少の時代、去年と同じことをするだけでは豊かな社会にならない現実のなか、県民一人ひとりが政策に関心を示さないと、やがては自分や子供達の身に降りかかってくることを改めて実感してほしいとの思いからです。

例えば、他道府県の公債費の適正管理に関する取組や、県病院局が運営する県立病院の入院患者は将来増加見込との予測と異なり実績は減少していること等医療需要の見込が下ブレしていること(資料3 入院患者数の推移参照)、私学助成の生徒一人当たり単価の順位(全日制高校14位、通信制高校6位、中学校21位、幼稚園4位、専修学校13位)、商工団体補助の状況(補助金総額・補助対象職員数3位、商工団体数全国2位、補助対象職員1人当たり人件費全国24位、小規模事業者1社あたりの補助金額4位)を示しています。ホームページでも公開しています。

ちなみに、財政の健全度合いを示す法律上の指標を見ると、実質公債費比率は44位、将来負担比率は45位です。

有識者会議からのメッセージ

8月に取りまとめられた有識者会議の意見書、特に冒頭の総論には、味わい深いメッセージが込められています。その一部を以下に紹介して、新潟の財政状況に関する紹介を締めくくりたいと思います。

「今の状況は、川の上流で洪水が生じているのが見えていて、その影響が下流にいる自らに及ぶのを待っているようなものである。県ではこうした状況への対応が遅れており、このままでは県立病院は維持できなくなるなど、行政サービスの突然の見直しが余儀なくされる。」

「関係者一人ひとりが、漫然と過去をなぞるのではなく、知恵を出して新たな発想で取組を進めていかなければならない。」

「少子高齢化、人口減少が進む現代日本社会において、地方自治体はどの団体も多くの課題を抱えている。新潟県はその中でも特に大きな課題に直面しているが、厳しい現実に正面から向き合い、地に足の付いた改革を着実に積み重ね、他の地方自治体の見本となるような行財政改革を全うすることを期待する。」