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上級管理セミナー(坂口裕昭氏、令和元年9月24日開催)

講師 坂口 裕昭 氏(株式会社IBLJ代表取締役社長/四国アイランドリーグplus理事長)

演題 地方創生のリアル~覚悟はあるのか~

 

1.はじめに

ご紹介いただきました坂口です。本日はよろしくお願いします。

私は、四国とは何の縁もない人間です。東京生まれ、神奈川育ちで、職業は弁護士、企業法務に特化して事業再生やM&Aに関わってきました。

四国アイランドリーグが生まれた7年目のシーズン、2011年に私は、徳島インディゴソックスの球団社長として、アイランドリーグに関わるようになりました。当時の徳島インディゴソックスは、経営的にも非常に脆弱で危ない状況で、立て直しに5年間かけました。そこからアイランドリーグ運営事務局に入って4年、アイランドリーグ全体の立て直しに取り組んできました。この9年間、泥だらけになって地べたを這いずり回ってきました。しかし、自分の中では何一つやり遂げたとは思っていません。

「地域の課題」と一言で言いますが、この9年間で、その課題の根深さはもっと深いところにあることを感じています。また、よく「スポーツを核に地方創生を」と言われますが、実際その現場でかじ取りをしていると、そんなに簡単なものではないもどかしさと言うか、机上の空論では理解できないような場面に毎日出くわします。

本日は、私のこれまでの取組みをご紹介することを通じて、日本の将来を皆さんと共に考えていけたらと思っています。

2.四国アイランドリーグplusについて

(1)アイランドリーグ概要

日本の野球を支える裾野がだんだん狭くなってきており、そこで必要とされてできたのが独立リーグです。プロかアマチュアかの区分ではプロの側に入っています。もっと正確に言うと、アマチュアからはプロと言われ、プロからはアマチュアと言われる、苦しい立ち位置の存在です。

アイランドリーグは、かつては九州に進出したことがあります。三重が入っていた時期もあります。関西の独立リーグと交流戦をやっていたこともあります。ただ、やはり地域性やブランディングであるとか、さらにもっと現実的な問題で言うなら、その移動距離、移動経費の問題があり、最終的には発足当時の四国の4球団が残っています。

アイランドリーグは今年で創立15年目です。設立当初から、赤字はいくらで、いつ潰れるのかなどとマスコミに散々叩かれてきましたが、それでも15年間続いて今に至っています。

続けることができている、というのが一つのポイントかなと私は思います。

アイランドリーグは日本で初めてのプロ野球の独立リーグです。独立というのは、プロ野球の中でもセ・パ両リーグを擁する日本野球機構(以下、NPB)から独立していることから独立リーグだとよく言われます。しかし、私は、そうではないと言っています。「独立」というのは、既存の価値にとらわれない新しい価値を生み出せるから「独立」という意味なのです。

実力は、セ・リーグ、パ・リーグの二軍、三軍と比べると、三軍よりちょっと強いぐらいで、二軍のチームと試合をしたら10試合で4試合勝てるくらいのレベルです。社会人野球で言うなら、常に都市対抗であるとか、日本選手権に出ることができるようなチームよりは少し劣ります。とはいえ、そうした全国大会に出るか出ないかというレベルにはいつも届くぐらいの実力があります。

(2)所属選手

これまでの14年間で、62人がアイランドリーグからNPBに行っています。アイランドリーグを1つの社会人チームとして捉えると、14年間でこれほど多くのプロ野球選手を輩出しているチームはほとんどありません。また、私たちは選手だけではなく、コーチ、トレーナー、通訳などといったスタッフも大勢NPBに輩出する育成機関だとも言えます。

読売巨人軍が今年優勝を決めた試合で10回表の決勝打をセンター前に打った選手は誰でしょうか。そう、四国アイランドリーグplus出身の増田大輝選手です。

私が彼と出会ったのは、彼が19歳の時で、今から6年前です。彼は、野球推薦で大学に入学した後、事情があって野球部を辞め、大学も辞めてしまいます。その後、ひっそりと地元の徳島に戻って草野球をやりながら、とび職をしていたのです。私は、とび職の棟梁と飲み友達だった縁で彼と初めて出会いました。

彼は、アイランドリーグの徳島インディゴソックスに入り、2年で巨人の育成選手となりました。そこからさらに頑張って4年目の今年4月に初めて一軍に上がり、そして巨人が優勝を決めた試合で決勝打を打ったのです。

また、増田大輝選手の前には、ロッテの角中勝也選手が2回パ・リーグで首位打者を取っています。その角中選手も高知ファイティングドッグスの出身です。二人ともアイランドリーグがなければプロ野球の世界には行けなかった若者です。

このほかにも、米メジャーリーグで本塁打王を獲得したマニー・ラミレス選手や阪神の藤川球児選手も在籍していました。

(3)試合数、観客動員数

四国アイランドリーグplusは公式戦を年間160試合開催しています。結構な試合数です。

観客動員数は、1試合当たり500人から600人くらいです。直感的にこの観客動員数を多いと思いますか、少ないと思いますか。ほとんどの方は少ないと思いますよね。では、何と比べて少ないとお考えでしょうか。おそらく、阪神で5万人、巨人で4万人の観客と比べて少ないと判断されたと思います。しかし、それは比較対象として適切なのでしょうか。

それが地方創生のリアルの一つの典型です。数字の魔力です。

1試合当たり500人から600人というのは確かに少ないかもしれませんが、四国の人口、交通機関、スタジアムの施設の質など総合的に判断するとこの観客動員数は悪い数字ではありません。そもそも、私たちはトップリーグではありません。育成のリーグです。アイランドリーグからドラフトで指名されてセ・リーグ、パ・リーグに行くのです。しかもドラフトで指名される確率はだいたい5%ぐらいです。私たちの独立リーグにいる120人の選手の5%ぐらいです。それぐらいしか上に行けない実力のチームで、さらに四国という地で、同じことを飽きもせず年間160回もやっているのです。

エンターテインメントで考えてみてください。年に160回も全く同じことをやり続けて、常に500人、600人の人を呼べるコンテンツがほかにあるでしょうか。この四国には絶対ありません。あるとしたらJリーグぐらいでしょう。

3.地域に役立ち得る潜在能力・地域との関係性

今、地方の問題は何でしょうか。

一言で言うなら少子高齢化です。徳島県では65歳以上の人が40%を超えました。50%超の自治体も出てきている状況です。生産年齢人口がどんどん減り、流出過多がずっと続いています。

四国アイランドリーグplusの選手の平均年齢は23歳の若者です。彼らの85%以上が四国の外から来ています。流入です。このような数字には、地域に役立ち得る潜在能力があると思います。

トライアウトには毎年200人以上の若者が集まります。これほど誘因力のあるコンテンツがほかにあるでしょうか。「四国4県どこかに派遣されますが、働きに来てください、給料も月10万円から15万円程度です。」という条件で四国の外から若者を引っ張ってくることができる仕事はほかにはないでしょう。

私は、この誘因力をどうにかもっと活用できないかと常に考えています。

外から四国に来て野球をやって、辞めていく選手たちの中で、そのまま四国に残る若者も大勢います。例えば、群馬から来た選手は、地元四国の人から応援してもらい、この温かみに初めて触れることができました。そして、田舎での生活を初めて体験し、農業に初めて触れました。そして、農業で暮らしてみようかと故郷に帰らずにそのまま四国に残って農業をやっているのです。また、地元のテレビ局の女性と結婚してそのまま四国に残る、子供を持って人口も増やしてくれるという、ありがたい選手もいっぱいいるのです。これが一番多いパターンです。

アイランドリーグがなければできなかったであろう関係性がこの15年間で確実に形成されてきているのです。

先ほど62人がプロ野球に行ったと申し上げました。それ以外に、アイランドリーグを最後に、野球を諦めて社会人になっていく若者が過去14年間に800人以上います。800人以上の若者が青春の大切な時期の2、3年を四国で過ごして四国と関わりを持ち、少ないとはいえ四国でお金を稼いでいるのです。こういったつながりをもっともっと活用できないかと考えて、いろいろ取り組んできています。

4.海外とのつながり

インドで少年野球のチームがどれくらいあるかみなさんご存知ですか。北インドだけで少年野球チームが800あります。それぞれに選手が30人ぐらいいるらしいのです。相当な人数になります。日本では野球をやる子供が少なくなり、野球人口が減っていますが、世界に目を向けるとどんどん増えていることが分かります。

今年の6月、メジャーリーグがインドに事務所を出しました。しかし、日本は全く動いていません。これは、野球界の話に限ったものではありません。全ての分野において、完全に世界という単位で物事を見られなくなってきています。

そのような状況だからこそ、私たちは海外のつながりを意識した取組みを続けたいと思っています。

(1)北米遠征

この夏、3年ぶり3度目となる北米遠征を行いました。一か月、米マイナーリーグのダブルA(AA)クラス6チームと20試合をするという武者修行の旅です。ダブルAは日本で言うと1軍半程度の強豪です。

あの潰れそうだったアイランドリーグが本場の強いチームと対戦していい勝負をするといったように、四国であっても世界とつながっているというのはすごく夢のあることだと思います。

(2)東南アジアでの盛り上がり

私たちは、野球が盛んな韓国や台湾だけでなく、野球がそれほど盛んではない地域とのつながりも常に持ってきました。

この8月にジャカルタで入団テストを行ってまいりました。インドネシアでは野球はやっていないだろうと思われるかもしれませんが、実はやっています。インドネシアに野球のスリランカ代表、フィリピン代表、ブルネイ代表、インドネシア代表の若者が集まりました。アジアには野球に魅力を感じる若者がたくさんいるのです。

(3)制限のない外国人選手枠

私たちのリーグには外国人選手枠がありません。その結果、ジンバブエ人、ブルキナファソ人、エルサルバトル人など本当に多くの国から野球をしに来ています。彼らからしたら四国が全てです。四国に来て野球をして母国に帰るのです。このことを何かに活かせないか、また、このように眠っているコンテンツはまだまだほかにもあるのではないかと思っています。

(4)日本のノウハウ

中国では現在、何十個も野球場が建設されています。プロリーグも発足しました。そして何年か前にメジャーリーグが中国で育成機関を作りました。5つの拠点があり、南京もその一つです。

米プロスポーツ界は巨額のお金をかけて素晴らしい施設を作り、スカウティング網を張り巡らせます。米プロバスケットボールリーグのNBAは、中国国籍のスーパースター姚明(ヤオ・ミン)を発掘しました。姚明一人でNBAが中国に投資した金額の何百倍、何千倍もの見返りがあったのです。一人のスーパースター選手を発掘するために投資する、これが米国のやり方です。私たちのように、地べたを這いずり回ったり、中に入って何か浸透させようとか、文化レベルにまで高めようとか、そういう活動は一切しないのです。

では、今の日本で米国と同じやり方をすべきでしょうか。私は、同じやり方はすべきでない、同じようなマーケットで戦うべきではないと思います。

私が縁もゆかりもない四国で9年間も取り組んでいるのは、もしかしたら、この日本が将来世界に打って出ていくときに勝てる、そういうノウハウを作り上げることができるのではないかと信じているからなのです。確かにアイランドリーグはすごく小さなモデルかもしれません。しかし、そうした取組みの途中で出てきたのが増田大輝選手という逸材なのです。

日本では野球人口が減っている、だから対策を打たなければならない、それはそのとおりです。そこで日本がこれまで蓄積してきたノウハウ、地べたを這いずり回って文化として浸透させていくノウハウを活かして、どんどん海外に出て行き、そこでできることがあるのだということを私たちは示すべく、いろいろなところに出掛けていくのです。

5.人材育成と地域貢献

いろいろお話ししてまいりましたが、私たちは結局何をやっているのでしょうか。それは、「人材育成と地域貢献」だとリーグ創設当初から言ってきています。

(1)人材育成

これまで62人をプロ野球選手としてNPBに送り出してきました。しかし、残り800名の若者に対しては必ずしも十分に目を向けることができなかった面はあると思います。

そこで、NPBに行く若者を育てる以上に、地域でのいろいろな活動を通じて社会性を身に付ける、いろいろな地域社会の文化を身に付けさせる人間教育をする、残り800人の若者がアイランドリーグを最後に野球は諦め、一人の社会人として社会に出ていったときに有為な人間になれるような教育をしていこうという方向にシフトチェンジしてきています。

(2)地域貢献

各球団とも年間200回ぐらい様々な地域活動を行っています。野球教室、まちの清掃活動、お祭りでの神輿の担ぎ手など、多くの行事に選手だけでなくスタッフも含めて参加しています。200回という数を見て分かるように、決してシーズンオフの空いている時間だけにやっているわけではないのです。シーズン中であるか否かに関わりなく、私たちは出まくっているのです。

リーグ全体では年間800回ということになります。これは四国総人口の何人かに一人は一年のうち、どこかでは私たちと接していることになるのです。この接触人口は大変多いと思います。徳島の阿波踊りでは私も選手も踊りました。高知では選手が地元の幼稚園児と一緒に田植えをやりました。刈り取りまで一緒にやり、カレーを作ってみんなで食べるのです。

こうした行事に参加していると、とてもいいことをやっている気分になります。私みたいに都会で育った人間からすると、子どもたちと一緒に泥だらけになっているだけで地域貢献している気になります。綺麗事に酔っているといった感じでしょうか。これが地方創生でありがちなワナだと思います。私たちは本当に地域の課題を解決することをやっているのだろうか、こうしたことが本当に地域のためになるのだろうかと常に疑問に思っていました。

地域貢献というのは、地域を盛り上げる、賑わいづくり、そんな抽象的な言葉で盛り上がっても意味はありません。結局のところ、経済的なインパクトをもたらさなかったら私たちは地域に貢献しているとは言えません。逆に地域のお荷物になります。地域の人はそこをしっかり見ているのです。雇用を創出してカネを生み出して税金を納めなかったら、リーグ運営も球団運営もやっている意味がないのです。だから私たちは黒字にしなければいけないのです。経済の主体として、どうやったら地域にリアルに参画できるかというところを目指していかなければいけない。そのために様々な関係先とのパートナーシップの戦略を考えています。

6.パートナーシップ戦略

(1)活動経費

各球団の事業規模、つまり活動経費は、一番少ない徳島で9千万円、一番多い愛媛でも1億5千万円ぐらいです。Jリーグと異なり、税金で運営費をいただくということもほとんどありません。

私たちの活動経費がどこから捻出されているかと言うと、2014年ぐらいまではリーグ全体のオーナーがポケットマネーで出してくれていました。いわゆるタニマチ文化です。日本のスポーツ界にはよくある話です。しかし、このタニマチ文化は、これからの日本で成り立つことは難しいでしょう。全てにおいて自立していくことが求められるのです。

では、9千万円から1億5千万円の経費を自力でどうやって捻出するかということになります。

(2)スポンサー料

四国アイランドリーグplusはいろいろなところにスポンサーになってもらい、スポンサー料をいただきながら運営しています。いずれの球団もスポンサー料がおよそ70%から80%を占めます。

スポーツビジネスとしては、本来なら入場料収入の割合を高めていきたいのです。50%以上を入場料収入で賄えていたら、大変すばらしい球団経営です。しかし、私たちはトップリーグではありません。お金を払ってスポーツを観る、という既存の価値観に立つと、私たちが入場料収入を40%、50%にもっていくのは不可能です。そこを目指しても時間の無駄です。

よって、スポンサーとのパートナーシップの内容をどうするかという話になります。

リーグの立ち上げ当初は、スポンサーの側にも期待感があります。ユニフォームの胸のところに自社の名前が出る、外野の横断幕に自社の名前が出る、これだけで数千万円が動きました。しかし、それは3年で終わりました。

外野の横断幕に名前が出る、ということだけではもはやスポンサーからお金はもらえません。なぜなら観客が1試合500人から600人程度しかいないからです。一万人以上観客を集めて、初めて横断幕のような広告宣伝が形になるのです。

観客数が1試合500人から600人程度であっても、名だたるナショナル企業がスポンサー料を出したくなるようなところを突いていくのです。

(3)ローカル商社

私は東京に営業に来ても、野球の話はほとんどしません。巨人や阪神と同じ土俵に上げられたくないからです。私は弁護士ですから、負ける土俵では絶対に戦いません。絶対勝てるところに論点を移すのです。

私は、「四国アイランドリーグplusは野球のリーグだと思っていますよね。でも、それは違いますよ。確かに野球はやっています、こういった素晴らしい選手もいますが、私たちの本当の価値がどこにあるか、実は、私たちはローカル商社です。」と説明しています。

私たちは四国で15年地べたを這いずり回ってきました。四国のどこの地域の出身の方よりも、私は四国のことを知っている自信があります。それは政治のことであったり、経済のことであったり、文化のことであったり、それら全ての裏側のことであったり、要するに全てです。

私たちは「インフラ」なのです。野球というコンテンツはソフトのくくりですが、実は、人のつながりを作るインフラなのだというのが私の考えです。私たちは、どこどこのおばちゃんから知事まで、みんな知っているという感覚です。

この15年かけて培った様々な地域の情報網であったり、人とのコネクションであったり、いろいろな地域の情報であったり、それによって気軽に知事に会いに行くことができたり、ということが私たちの強みなのです。だから「ローカル商社」なのです。地域に網の目のように張ってきたこの関係性が私たちにはあるのです。

(4)スポンサー同士の結び付き

今年、トリドール、ダスキン、伊藤園、アイリスオーヤマという大企業と新たにパートナーシップ契約を結びました。アイランドリーグとしては11年ぶりの新規大口スポンサーです。

丸亀製麺を展開しているトリドール、掃除のプロフェッショナルであるダスキン、自動販売機以外のところでお茶の効用を訴えたい伊藤園、LED照明事業や人工芝などのスポーツ事業を積極的に展開するアイリスオーヤマなどといった各スポンサーをどうやって組み合わせていくかということが切り口となります。

どこの地域にどんなニーズがあるとか、こういうキーマンがいるとか、そういうところの間に入る商社の役割を私たちが行えば、そうした会社から私たちはスポンサー料をいただける。人を雇わずに済むのですから、スポンサーからしても安いものです。私たちが本業の仕事をやっていく中で出来てくる人間関係や得られる情報、こういったものがそのまま価値になるわけです。そこを上手い具合にやり取りしながら、お互いのコアな部分でそれぞれが利益を上げましょう、そして、そうやってシェアをすることによって、さらに関係性が生まれていく。

これはまさにWIN-WINルールのようなもので、そうなったら、私たちだけが苦しい思いをしなくても済むのです。スポンサー同士を結び付ければいいのです。具体的には、「各スポンサーのコアビジネスの営業協力をしますよ。」ということです。これが「ローカル商社」ということなのです。

例えば、トリドールに「ダスキンを全店舗で入れましょうよ。」と提案して、ダスキンには「トリドールさんのところで、まだ入っていないところにも入ってくださいよ。」と提案することもできます、なぜならこれがスポーツの誘因力なのです。同じスポーツチームを応援している者同士、あるいは私がこうして打ち立てている方針に共感していただいている皆さん同士ですから、とても親和性が高いのです。アイランドリーグという接点がなかったら結び付き得なかったスポンサー同士が結び付くのです。

四国アイランドリーグplusには、リーグ全体の共通スポンサーと個々の球団のスポンサーがあります。役割が全然違います。個々の球団のスポンサーには、100社から200社、地元のあらゆる分野の企業になっていただいています。15年間かけてこれだけのコネクションを作り上げてきました。これを組み合わせると無限大の組み合わせになります。私たちは間に入って結び付けるのです。これは本当に面白いところです。

7.様々なパートナーシップの具体例

パートナーシップの具体例をいくつかご紹介します。

(1)サプライヤー関係

四国アイランドリーグplusは、世界的スポーツブランドの「アンダーアーマー(UNDER ARMOUR)」とパートナー契約を締結して、2017年からアンダーアーマー製ユニフォームや公式球などの物品の提供を受けています。

(2)インバウンド関係

インバウンドの関係でJTBにもスポンサーになっていただいています。

中国人富裕層の野球少年たちを四国に招いて、四国の野球場で、私どもの監督やコーチを送り込んで、一緒に野球をする。そういうのを売りにして中国人富裕層の子供たちの旅行を全部JTBに送客するのです。最初から最後までJTBを使ってもらうのです。

徳島県だけで昨年1年間で1,200泊ぐらい送客しています。徳島県は奈良県と共に宿泊者人口最下位を争っています。その徳島県で1,000泊以上というのはものすごい数です。これが地域貢献なのです。でも地元の方にはそれほどまでには見えないかもしれません。阿南市で中国人の子供が野球をやっているだけですから。

私たちは、JTBに「鳴門のうずしおを見に行こう」というツアーを組んでもらったり、子供と一緒に中国から来た父母を対象に「藍染の体験をしてもらおう」というツアーを藍染関連のスポンサーを絡めた形にして、JTBに組んでもらいます。こういったことを私たちがやるのです。これは大きな地域貢献になります。

自治体が高額な予算をかけてプロモーションビデオを作ったりしていますが、そんなことにカネをかけなくても、ターゲットを絞って取り組めばいくらでもできます。やらせてほしい、来てほしい、というお願いが私たちのところにたくさん来ているのです。

外国の方は、お寺に泊まって懐石料理を食べるだけで喜んでくれるのです。わざわざ高額の新たな施設を作らなくていいのです。見過ごされているリソースが多すぎるのです。

(3)一球入力データシステム

プロ野球には試合中一球速報のサービスがあります。四国アイランドリーグplusでもこれをやりたいと考えました。プロ野球ではヤフーが一球速報をやっていますが、ヤフーはデータスタジアムという会社からプラットフォームを利用させてもらい、対価を払っています。B to Bの世界です。しかし、これは結構カネがかかります。

このデータ分析の仕組みをB to Cの世界に広げることができたら、マーケットは大きく拡大するのではないでしょうか。例えば、少年野球や草野球の試合で一球速報が楽しめたら、とてもうれしいのではないでしょうか。

プラットフォーム利用にはコストがかかる。それならば、自前で作ってしまおうと考えました。そこで、中国人の技術者を呼んできて一球入力のデータ分析の新規事業を立ち上げました。

ポイントは、コストをプロフィットに変えるべく思い切って投資する決断ができるかどうかです。チマチマとコスト削減をやるようでは四国に未来はないのです。

すでにWEBで四国アイランドリーグplusの一球速報を配信しています。他の野球関係者にも「こんな面白いシスステムを作ったので使いませんか。」と勧誘した結果、1年で閲覧ユーザーが370万人超となっています。先日5,000万ビューを達成しました。

(4)アカデミー事業

アカデミー事業については、これを全部自分でやろうとするのは無理です。人手が足りません。そこで、既にこういったことをやっているところと一緒にやっていくことにしました。日本で4万5千人の子供を対象にスポーツスクール事業をやっているリーフラス(Leifras)という企業とスクールパートナー契約を締結して野球スクールを開校しました。リーフラスは「技術よりもスポーツから学べることがいっぱいある。」というスタンスで、勤勉性や意欲、忍耐力、思いやりなどといった非認知能力を育む教育で定評があります。

システム構築のような場合は、一から自分で立ち上げて、B to Cの世界でビジネスを展開していきますが、スクール事業とかグッズ販売などの場合は、すでに確立しているものを持つ社と提携した方が効率は良いのです。

こうしたいろいろなパートナーシップの組み合わせを工夫していくことで、経済的なインパクトを生み出していくことができるのだと思います。

8.地方創生とゼネラルマネージャーの役割

本日は、増田大輝選手の話からパートナーシップまでいろいろとお話ししました。徐々に地域課題というところに話が向かってきました。

私たちには地域課題を解決する使命があります。しかし、その使命を達成するには様々な課題があります。

その最たるものは、スポーツ界における現場とフロントのトレードオフの関係(相反する関係)です。現場は当然勝ちたいのでカネがかかることしか言いません。フロントはできるだけカネがかからないようにしたい、また儲けるために選手に試合以外のところで協力を求める。でも選手は試合に集中したい。トレードオフの関係は難しいのですが、逆に言うと醍醐味があります。

現場サイドとフロントサイドの間に入って、バランスをとる、これがゼネラルマネージャーの役割です。経営サイドの意識も現場のことも両方分かっていなければならない。その中でうまく差配してマネジメントしていくことがゼネラルマネージャーには求められるのです。

日本全体で見ると、地方創生で一番大事なのは、このゼネラルマネージャーですが、この存在がいないのです。本来、ゼネラルマネージャー的な役割が国の役割であり、自治体の役割なのだと思います。

9.おわりに

地域社会にリソースがないわけではないのです。リソースはあるのです。75点から80点くらいの合格点のものが散在しているのです。

鳴門のうずしおだけなら高速道路から眺めれば十分だし、祖谷のかずら橋を渡るためだけにあんな山奥には行かないのです。しかし、温泉があり、金毘羅さんがある。これなら成り立つのです。

観光だけではなく、産業でも文化でも同じで、75点から80点くらいの合格点のものをどうやって結び付けていくかという話です。

リソースが持つ価値を最大化できてないことが地域の最大の課題なのです。価値が最大化されていないものを結び付けて新しい価値を生み出す、見せ方を変えていく、これが地方創生なのです。ゼロから1をつくり出すことではなくて、1+1を3とか5にしていくことが地方創生なのではないかと思います。

では、それを阻んでいるものは何か、一つには物理的なものがあります、例えば、四国が本州と陸続きになっていないとか、四国と本州を結ぶ橋が3本しかないとかいうことです。

しかし、それ以上に私が問題だと感じるのは、本質ではないところの見えない壁です。疎外感です。同じ県内でもお互いに無関心な自治体、意味のない自治体の行政区分、青年会議所と商工会議所が一か月遅れで同じ場所で同じようなイベントをやって自慢し合っているおかしな縦割りの制度、こういったものがリソ-スの価値の最大化を阻んでいるのです。

そのためにはイノベーションが必要です。しかし、イノベーションはゼロから1をつくり出すことではないのです。本来結び付き得ないものを結び付ける、例えば、トリドールとダスキンの組み合わせ、我々とダスキンの組み合わせです。このような組み合わせがイノベーションなのです。

自治体の壁や組織の壁を破り、これまで結び付いていなかったものを繋げるのはテクニックではありません。そこを踏み越えていく勇気が必要なのです。こうした勇気が新しいイノベーションを生み出すのです。

ご清聴ありがとうございました。

講師略歴

坂口 裕昭(さかぐち ひろあき)

株式会社IBLJ代表取締役社長/四国アイランドリーグplus理事長

東京大学法学部卒業後、2004年に弁護士登録、主に企業法務や企業再生などを担当。2011年、弁護士として相談に乗っていた四国アイランドリーグ(IL)徳島インディゴソックスから手腕を買われ、球団代表に就任し、経営破綻寸前だったチームの立て直しに尽力。2018年、四国IL・plus理事長、2019年2月、国立大学法人徳島大学の客員教授(研究支援・産官学連携センター)、同年3月、四国IL・plusを運営する株式会社IBLJ代表取締役社長に就任。

地域をベースに新しい価値を創造することが重要だとして、地方創生や地域活性化に関する講演会・セミナー等での招聘実績も多数。