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コラム 海外経済の潮流125

韓国の経済構造について

大臣官房総合政策課 渉外政策調整係長 田邊 宏典

日本と韓国の間では、フッ化水素などの半導体素材の輸出管理見直しや、それに反発した韓国国内での日本製品不買運動などが起こり、日韓関係は悪化している。そのような中、韓国のGDPは2019年第1四半期にマイナス成長に転じるなど、厳しい状況が続いている【図1】 韓国GDP成長率の推移。そこで今回は、韓国経済が減速している原因について、経済構造面に着目して概観する。

まず、韓国GDPの需要項目別内訳を見ると、2018年の輸出依存度は42.8%と、日本と比較しても非常に高いことが分かる【図2】 日韓GDPの需要項目別構成(2018年)。これは、戦後、国土が狭く資源にも恵まれていない中で、輸出主導型の経済成長が重視されてきたことによるものである。時代とともに、軽工業→重工業→ハイテク産業へと産業の高度化が進んだものの、輸出主体の経済構造は現在も続いており、韓国経済は輸出の動向に大きく左右されやすい構造となっている。

現在、特に韓国経済にとって重しとなっているのが、中国経済の減速と、世界的な半導体需要の減退である。先ほど述べたように、韓国は輸出依存度の高い国であるが、輸出の中でも、中国向けの割合が約4分の1を占めるなど、中国への依存度が高い【図3】 韓国の国別輸出額(2018年)。しかし、中国経済は内需停滞や米中貿易摩擦の影響を受けた景気減速により輸入額が減少しており、韓国の中国向け輸出も、そのあおりを受けて大きく減少している。【図4】 韓国の対中輸出の推移。

一方、韓国の輸出品目のうち、半導体が全体の約2割を占めており、韓国経済は半導体産業が中心の産業構造といえ、半導体需給や半導体価格の動向の影響を受けやすい【図5】 品目別輸出(2018年)。しかし2019年以降、世界的なスマートフォン販売台数の鈍化やデータセンター向け設備投資の一巡から半導体市況が悪化しているほか【図6】 半導体販売額の推移、最大の輸出先である中国が半導体の国産化を進めており、今後、中国向け輸出が減少する可能性がある。さらに、中国の半導体供給能力が拡大すれば、世界的に韓国製半導体需要が鈍化する可能性もあり、韓国経済にとって懸念材料となっている。

韓国国内においても、韓国の半導体製造はサムスン電子等の財閥企業が大きな割合を占めており、これら企業の業績悪化が韓国経済へマイナスの影響を与えている。韓国における財閥は、輸出主導型の経済政策を採るにあたり、政策遂行の効率を高めるため優遇された結果、誕生したものであり、現在では、一部の財閥企業の業績が韓国経済の成長を左右するまでになっている。中でも、韓国財閥トップのサムスン電子の売上は、韓国GDPの10%を超えており、その影響は大きい。しかし、2019年7-9月期のサムスン電子の連結決算では、主力の半導体事業の不振により、営業利益が前年同期比で56%減少するなど、厳しいものとなっている。

さらに、2019年7月に公表された日本の半導体素材の輸出管理見直しによっても、韓国の半導体製造に影響が及んでいる。これは、韓国が輸出産業の発展段階において、中間財、資本財の供給を海外に依存した組立加工中心の工業化政策を採り、部品メーカー等の裾野産業や中小企業の育成を怠ったことによる。韓国政府は2019年8月、日本に依存する100品目を戦略品目に指定し、5年以内に「脱・日本依存」を目指す「素材・部品・装備競争力強化対策」を発表し、半導体製造に必須のフッ化水素などの国産化を進めているものの、完全な国産化とそれを担う中小企業の育成には時間がかかると言われている。

また、文在寅大統領は、財閥中心の経済構造を転換するため、「輸出中心の大企業主導の経済」から「所得増や雇用増を通じた人中心の経済」へのパラダイム転換を掲げて経済政策運営を行っている。具体的には、公共部門における雇用創出や最低賃金の引上げ、非正規職の正規職転換などを推進しているものの、急激な最低賃金の引上げにより、特に若年層の就業者が減少するなどの副作用も生じている【図7】 最低賃金の推移。また、財閥への経済力集中の防止を図るとしているが、財閥改革の推進により大企業の力を削ぐことになれば、韓国の経済成長を阻害しかねない恐れもある。韓国の経済構造の動向について、今後も注意が必要である。

(注)文中、意見に係る部分は全て筆者の私見である。