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ニイ「ガタ」、「トキ」、書いてみませんか?第二十三回

令和4年度の予算編成ができない!?(2)

新潟県総務管理部長(元財務省広報室長) 佐久間 寛道

前回、財政の悪化により新潟県の政策運営がこのままでは立ち行かなくなることをご紹介しました。

その収支の差の主な要因として、歳入では(1)人口減少等による地方交付税の減少や(2)税収の伸び悩み、歳出では(3)高齢化による社会保障関係費の増加等による歳出の高止まり、(4)今後、借金返済の実質的な負担が増加、とご説明したところです。

前回で予告したとおり、今回は、高齢化による社会保障関係費の増が地方の財政運営にもたらしている影響と、よく質問される「なぜ対応が遅れたの?」について書きたいと思います。

高齢化は自治体の歳入歳出両面の悪化要因

ファイナンスの読者であれば、高齢化により医療、介護などの社会保障関係費の増加の一部が将来世代の負担となっているとともに、成長著しい諸外国と比べ将来の投資に十分資金を充てられていないことは重々承知のことかと思います。

図1.地方交付税の配分にあたっての主な需要額の推移と比較の左側は、地方交付税の配分に用いるために算出された歳出ニーズの主なものについて、都道府県分を足し合わせたものです。この図にあるとおり、厚生労働費ニアイコール社会保障関係費がこの3年間で5.7%も増加しています(平成27年度6.57兆円から平成30年度6.95兆円)。

この社会保障関係費の増加にもかかわらず、合計は12兆円と同一水準で推移しています。その帳尻合わせ、というのはいいすぎとは思いますが、リーマンショック対応で臨時的に設けられた「歳出特別枠」のみならず、国の基準付けが弱い行政分野について人口と面積で簡素な算定を行う「包括算定経費」が大幅に減少しています。ただ、現実は、老朽化が進むインフラ施設の維持管理、過疎対策など、人口が減ったからと言って比例的に歳出を減らすことは難しい事項が多いです。赤字バス路線の維持費用など、むしろ増加するものもあります。

このように、高齢化は、(1)社会保障関係費の増を要因とした国の厳しい財政状況による地方の歳入となる地方交付税(臨時財政対策債を含む)の伸び悩み、(2)地方の歳出である社会保障関係費の増加、をもたらしており、歳出歳入両面で地方自治体の政策運営が苦しい要因となっているのです。加えて、高齢者の増加は、地方圏ではすでにピークに達しつつありますが、今後大都市圏で特に増加し、その分費用も増大が見込まれています。地方自治体・住民でこの事実を直視し、議論を深める必要性を痛感しています。

さらに、個別都道府県間の差という点では、特に税収の差で大都市圏と地方圏の財政力格差につながっています。地方自治体の自助努力を促すため、税収増の1/4は地方交付税の減にならない仕組みとなっており、図1の下側にある「留保財源」がそれに相当します。全国平均はプラス、新潟県はマイナスです。結果、全体として地方交付税が増えないなか、大都市圏は税収の増となっているところ、新潟県は歳入全体が減少する結果となっているのです。地方圏は、税収増につながりにくい下請け構造や資源的な産品によって国全体の産業と暮らしを支えている側面があり(例:新潟県のコメの生産は日本一、信濃川発電所で発電した電気はJR東日本の使用電力量の1/4)、国全体の産業立地と税源配分の在り方も引き続き大切な視点かと思います。

なぜこんな状況になるまで対応してこなかったの?

新潟県の財政運営の苦しさは、実は今に始まったことではありません。バブル崩壊後の景気低迷等による税収の伸び悩みや、国の景気対策に伴い発行した県債の返済増加で大幅な赤字が続き、平成11年度に財政健全化計画を策定、平成14年1月には財政健全化プログラムを策定(計画期間平成16年度まで、名目経済成長率1%で各年度平均約660億円の赤字を見込む)し、各種対策に取り組んできました。

しかしながら、平成15年度からは資金手当債(一定限度で特別に発行が認められる地方交付税措置のない地方債の総称)を発行したにもかかわらず、収支均衡は達成できませんでした。平成16年9月には、その後の計画として財政健全化計画骨子(案)を公表(計画期間平成19年度まで、名目成長率平成16年度0.5%、その後1.0%で各年度平均約650億円の赤字を見込む)しています。

この計画は成案とはならず、平成18年2月に、財政運営計画を策定。一転して、名目経済成長率3.4%(平成18〜28年度の期間平均)とこれまでと比べ高い水準を用いるとともに、資金手当債や財源対策的基金を最大限活用するという方針を打ち出しました。資金手当債の発行は、その分単年度では歳出を維持しても収支悪化とならない効果はあるものの、国の支援なく返済しなければならないことから、インフレや税収増が起こらなければ、将来長年にわたって県の財政運営の制約になるリスクを抱えるものです(推移は図3.収支(一般財源決算ベース)と資金手当債発行額・財源対策的基金残高の推移の下側参照)。

その後も様々な場で議論はあったものの、方針転換はせず、平成18年2月の計画と同様の考えで毎年度計画を改訂し、財政運営を行ってきました。当時の判断としては、国の経済政策等の施策とも連動し、県の施策が最大限効果を発揮すれば、景気が浮揚し成長が実現できると考えていたのです。残念ながら、経済成長率の実績は、当時の推計と比べると低い結果となっています(図2.財政運営計画において用いた経済成長率と実績参照)。税収も、伸び悩む結果となっています。

平成29年2月の改訂計画では、これまでの経済成長率の見通しと実績に乖離が生じていることを踏まえ、次期改訂に向けて検討することを記載。平成29年7月に示した平成28年度決算では、ついに財源対策的基金が減少する結果となり、その後も減少が続いています(図3の下側参照)。

平成30年2月の改訂計画では、経済成長率の見通しをより堅実なものに見直し、財政運営が持続可能でないことを示し、計画本体において財政運営の方針転換を明確にしました。

平成31年2月の改訂計画では、何ら手だてを講じなければ財源対策的基金が2年後(注:10月策定の行動計画における再計算では3年後)にも枯渇するため、持続可能な財政運営に向け、行動計画を策定することをうたい、令和元年10月に「新潟県行財政改革行動計画」を策定。結果として的確でない見通しを前提に財政運営を行ってきた県の責任を認めています。

このように、県税収入の伸びを大きく見込んでいたことなどにより、将来の見通しが十分でなかった、という点が対応が遅れた要因と行動計画で整理しています。

未来に希望を

といっても、おいしい食べ物やお酒が豊富にある、マリンスポーツもスノーレジャーもできる、通勤時間が短く余暇時間が多い、持ち家比率が高い、育児しながら働ける女性が多い、といった新潟県の優位性が揺らぐわけでもなく、悲観的になる必要はないと考えています。日本にとっての食料とエネルギー基地という強みに加え、伝統工芸品は全国3位の多さです。これまでのファイナンスでご紹介したとおり、様々な魅力があり、取組を行っています。

実際、この半年間、様々な事実の継続的な情報発信や議論を通じ、変えなきゃ、自分が行動しなきゃ、という声が聞こえるようになっています。意識が変わらなければジリ貧になる可能性は高いですが、ピンチはチャンス、日本のモデルになるような創意工夫ある取組をみなで進めていきたいと思っています。引き続きご理解ご協力よろしくお願い申し上げます。

(参考)新潟県行財政改革行動計画(令和元年10月25日)

https://www.pref.niigata.lg.jp/sec/zaisei/2019gyouzaiseikaikaku-plan.html

※新潟県 行動計画で検索下さい。

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