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大法人の電子申告義務化制度が始まります

国税庁情報技術室 電子申告義務化担当チーフ 仲 佑治

1.はじめに

「大法人の電子申告義務化」、皆さんには聞き慣れたフレーズでしょうか。

国税庁では、「大法人の電子申告義務化」が円滑に導入されるよう、組織を挙げて制度の周知・広報、相談、指導などに丁寧に取り組むとともに、電子申告の環境整備としてのシステム開発などを着実に進めています。

本稿では、「大法人の電子申告義務化」について、皆さんの理解を更に深めていただくため、電子申告義務化制度の導入経緯等、概要、電子化促進のための環境整備を説明していきます。

2.電子申告義務化制度の導入経緯等

まずは、「大法人の電子申告義務化」が始まることとなった経緯について説明します。

平成28年9月に「経済社会の構造改革を進める上で必要な規制の在り方の改革に関する基本的事項を総合的に調査審議すること」を目的として設置された規制改革推進会議で、規制改革、行政手続の簡素化、IT化を一体的に進めるべき重点分野の一つとして「国税」分野が選定され、行政手続コストの削減目標が検討されることとなりました。

その後、「行政手続部会取りまとめ(平成29年3月29日 規制改革推進会議行政手続部会決定)」で「電子申告の義務化が実現されることを前提として、大法人の法人税・消費税の申告について、電子申告(e-Tax)の利用率100%」との数値目標が設定された後、平成29年6月に、期限を定めて確実に改革の実現を図っていくための「未来投資戦略2017」及び「規制改革実施計画」が閣議決定され、この「行政手続部会の取りまとめに沿って、積極的かつ着実に行政手続コストの削減に向けた取組を進める」こととされました。

これらを踏まえ、平成30年度税制改正において、大法人の法人税等の申告について電子申告の義務化が法制化され、令和2年4月1日以後に開始する事業年度等から、資本金1億円超などの要件に該当する大法人は、法人税等についてe-Taxによる申告が義務化されました。

これを受けて、財務省では、平成30年3月末に「『行政手続コスト』削減のための基本計画」を改定し、大法人の法人税・消費税のe-Tax利用率を100%とする目標を設定するとともに、申告書の電子化促進のための環境整備を行うこととなりました。

3.電子申告義務化制度の概要

(次頁図1−1 電子申告義務化制度の概要(1/2)及び図1−2 電子申告義務化制度の概要(2/2)参照)

電子申告義務化制度の概要は次のとおりです。

(1)対象税目

申告手続が一体として行われるものを一手続として数えると、法人税及び地方法人税、消費税及び地方消費税の実質二手続が義務化の対象となりますが、その他に地方税の法人住民税及び法人事業税が義務化の対象となります。

(2)対象法人の範囲

法人税及び地方法人税は、マル1内国法人のうち、その事業年度開始の時において資本金の額等が1億円を超える法人と、マル2相互会社、投資法人及び特定目的会社が対象となります。

なお、マル2は、資本金の額等にかかわらず一律対象となります。

消費税及び地方消費税は、法人税等の義務化の対象法人に加え、国及び地方公共団体が対象となります。

また、資本金の額等が1億円超であるかどうかは、「事業年度開始の時」に判定します。消費税等の申告で、期間特例を受けている法人の各課税期間の消費税等の申告は、「課税期間開始の時」に判定することになります。

(3)対象手続

確定申告書だけでなく、中間(予定)申告書、仮決算の中間申告書、修正申告書及び還付申告書が対象になります。

(4)対象書類

「申告書及び申告書に添付すべきものとされている書類の全て」となっているので、「財務諸表」や「勘定科目内訳明細書」等の全てが対象となります。

(5)届出規定

対象となる法人は、納税地の所轄税務署長に対し、適用対象事業年度等を記載した「e-Taxによる申告の特例に係る届出書」を提出する必要があります。

なお、この届出書は既にe-Taxを利用している場合にも提出する必要があります。

(6)適用日

令和2年4月1日以後に開始する事業年度(課税期間)から適用になります。

(7)例外規定

電子申告義務化制度には例外規定があり、書面申告が可能な場合があります。図1−2の下段の表に具体的なケースを例示しました。災害であれば、自然災害やインターネット回線の故障などによりオンライン手続が一時的に不能になった場合、その他、経営破たん等によりインターネットの利用契約を解除した場合等が挙げられます。このようなケースに該当した場合には、納税地の所轄税務署長の事前承認を受けることで書面で申告書の提出ができます。

なお、災害などにより書面による申告書の提出もできない場合は、従来からの制度である「申告期限の延長」を申請してください。

4.申告書の電子化促進のための環境整備

(次頁図2 利便性向上施策一覧参照)

続いて、「申告書の電子化促進のための環境整備」として導入する利便性向上施策です。

図2に示している各施策は、納税者である各企業の皆様や税理士会などから頂いたご意見・ご要望を踏まえ、技術的な対応可能性やコスト面などの観点から検討を行い実施することとなったものです。

具体的な項目は16項目ありますが、その中でも、法人税申告書を作成するに当たって利便性の向上が図られる施策と地方税との連携により実現する施策である10項目(図2マル3マル4マル5マル6マル7マル8マル11マル12マル13マル16)をそれぞれ個別に説明します。その他の施策については、是非e-Taxホームページ(https://www.e-tax.nta.go.jp/hojin/gimuka/sesaku.htm)をご覧ください。

なお、これらの利便性向上施策は、電子申告の義務化の対象となっていない法人も利用可能です。

(1)マル3勘定科目内訳明細書の記載内容の簡素化

(次頁図3−1 勘定科目内訳明細書の記載内容の簡素化参照)

勘定科目内訳明細書は、大法人の場合、記載件数が膨大になること、また、多くの法人は、取引の相手先を支店や事業所ごとに管理しているので、明細書記載のために相手先別に名寄せすることが大変とのご意見がありましたので、記載内容を簡素化できるようにしました。

例えば、売掛金の内訳書は、これまでは期末現在高が50万円以上のものを個別に記入し、その他は一括集計し記載するようお願いしていました。

しかし、平成31年4月以後に終了する事業年度の申告からは、記載すべき件数が100件を超える場合には、図3−1「見直し後」のとおり、上位100件(個別に99件記載し、100件目にその他合計分)を記載する方法(記載省略基準の柔軟化)か、支店・事業所別の合計金額を記載する方法(記載単位の柔軟化)のいずれかを選択できるようになりました。

併せて、貸付金や受取利息の内訳書の「貸付理由」欄や借入金及び支払利息の内訳書の「借入理由」欄等は記載欄そのものを削除し、記載不要とするなどの見直しも行いました。

(2)マル4法人税申告書別表(明細記載を要する部分)のデータ形式の柔軟化、マル5勘定科目内訳明細書のデータ形式の柔軟化

(図3−2 法人税申告書別表(明細記載を要する部分)のデータ形式の柔軟化、勘定科目内訳明細書のデータ形式の柔軟化参照)

例えば、法人税申告の別表六(一)は、配当等に係る所得税の税額控除額を計算するための別表で、銘柄ごとに収入金額や所得税額等の明細を記載する必要があります。

また、勘定科目内訳明細書も、前述のとおり明細を記載する必要があります。その上で、e-Tax送信を行う場合には、明細記載部分も含めてXML形式(データ・文書の構造を表示するためのテキストデータ)で送信する必要がありました。

一方で、企業の皆様からは、「企業内のデータをXML形式に変換するための調整作業が煩雑」、特に、記載件数が多数に上る大法人の皆様からは、「記載欄が数社分しかないため、同一の別表等を膨大な枚数作成する必要が生じ非効率」との指摘をいただきました。そこで、データのXML形式への変換作業や記載量が多くなる場合に同一別表を複数回作成する作業の事務負担を軽減するために、令和元年5月以後提出する申告から、明細記載部分(別表の明細記載を要する部分や勘定科目内訳明細書)をCSV形式で提出できるようにしました。

(3)マル6財務諸表のデータ形式の柔軟化

(次頁図3−3 財務諸表のデータ形式の柔軟化参照)

現在のところ、財務諸表をe-Taxで送信する場合、財務諸表データはXBRL形式で提出することとなっています。XBRL形式とは企業開示で使用されている国際的な標準形式であり、日本でも上場企業の有価証券報告書はこの形式で提出するよう義務付けられています。当初は、そのデータを利用することで法人税申告書に添付する財務諸表をスムーズに提出できるのではないかと考えていましたが、企業の皆様からは、「e-Tax送信のための調整作業が煩雑」との指摘を多くいただきました。

作業が煩雑になる主な原因としては、有価証券報告書で利用できる勘定科目は約6,400に上るのに対して、e-Taxで利用できる勘定科目は約1,600であるため、勘定科目の名称や順番を変更する等の作業が必要になることや、有価証券報告書は百万円単位で作成されていることなどから、有価証券報告書用のXBRLデータを補完する必要があることが挙げられます。

このように、有価証券報告書用とe-Tax用のXBRLデータ間で整合性が取りづらいといった状況となっていましたので、e-Taxで利用できる勘定科目と有価証券報告書の勘定科目をシステム的に紐付けできるよう、企業開示で標準的に使用されている約6,400の勘定科目に対して勘定科目コードを国税庁が策定し公表することとしました。

併せて、令和2年4月以後に提出する申告からは、勘定科目コードを使用した財務諸表データをCSV形式で提出できることとし、そのデータを作成するための「標準フォーム」を提供する予定です。

これらの対応により、自社の会計データからe-Tax送信用の財務諸表データと有価証券報告書のXBRLデータを整合的・効率的に作成できるようになると考えています。

(4)マル7e-Taxの送信容量の拡大

(次頁図3−4 e-Taxの送信容量の拡大参照)

図3−4のとおり、これまでは、e-Tax送信1回当たりの最大容量が、申告書は10メガバイト、添付書類は1.5メガバイトでしたが、平成31年1月から、申告書は20メガバイト、添付書類は8メガバイトにそれぞれ拡大しました。

前述の「勘定科目内訳明細書の記載内容の簡素化」や「データ形式の柔軟化」と併せることで大半の法人は全ての書類をオンラインで送信できるようになると見込んでいます。

(5)マル8添付書類の提出方法の拡充(光ディスク等による提出)

(次頁図3−5 添付書類の提出方法の拡充(光ディスク等による提出)参照)

一部の大法人の法人税申告には、租税特別措置法の適用や海外子会社の数が多数に上るなどの理由で、添付書類が桁違いに多い場合があり、こうした場合には、e-Taxの送信容量の限度を超える、追加送信にも時間がかかるなど、全てを電子申告しようとすると、かえって非効率となる可能性があります。

そこで、令和2年4月以後に提出する申告からは、申告書の添付書類に係る一部のデータを、光ディスク等で提出できるようにする予定です。ただし、光ディスク等で提出する場合もe-Tax送信と同様に添付書類の種類によって提出できるデータ形式が決まっているので注意が必要です。

更に、光ディスク等での提出が認められるのは添付書類のみであることにも注意してください。

(6)マル11法人事業税の申告における財務諸表の提出を不要

(図3−6 法人事業税の申告における財務諸表の提出を不要参照)

現在、国に対する法人税等の申告、地方に対する法人事業税の申告それぞれに財務諸表の添付が必要となっているため、企業の皆様からすると行政機関に対して同じ財務諸表を何度も提出している実態があります。

このような実態を解消するために、令和2年4月以後提出する申告からは、法人税申告書をe-Taxで提出し、財務諸表が電子データとして添付されている場合には、法人事業税の申告には財務諸表を提出する必要がなくなる予定です。

なお、法人事業税の申告に添付が必要な財務諸表は、情報連携により国税庁から地方団体に提供することとしています。

(7)マル12委任を受けた役員又は社員の電子署名による電子申告を可能及びマル13法人税申告における自署押印規定の見直し

(次頁図3−7 法人納税者の認証手続の簡便化参照)

これまで、法人税等の電子申告に当たり、その認証手続に関して、二つの問題点が指摘されていました。

一つ目は、法人税法上、法人税の申告書に法人の代表者と経理責任者の両方の自署と押印が必要であることを受けて、電子申告の場合も法人代表者と経理責任者の両方の電子署名と電子証明書が必要であるため、申告準備に時間と労力を要するということです。

二つ目は、株主総会と申告期限が近接している企業が多く、株主総会で代表取締役が変更となった際、新しい商業登記認証などを入手するのに2週間ほどかかるため、代表取締役の認証取得が申告期限に間に合わない場合があったということです。

これらの問題点を解決するため、平成30年度税制改正で、平成30年4月以後提出する申告書等からは、代表者の電子署名の代わりに、電子委任状を添付の上、委任を受けた役員若しくは社員の電子署名によることが可能とされました。また、平成30年4月以後終了する事業年度の申告からは、代表者及び経理責任者の自署・押印は不要とされ、電子申告の場合には経理担当者の電子署名等が不要になりました。

(8)マル16法人税及び地方法人二税の電子申告における共通入力事務の重複排除

(前頁図3−8 法人税及び地方法人二税の電子申告における共通入力事務の重複排除参照)

法人税と地方法人二税(法人住民税、法人事業税)には、重複して入力する項目が多く、「同じ情報を何度も入力するのは煩わしい」との指摘がありました。そこで、令和2年3月以後提出する申告から、e-Tax側で入力したデータのうち、そのまま地方法人二税で利用可能なデータ(法人名、住所・所在地、代表者名等)をエクスポートし、地方税電子申告システムのeLTAX側でインポートするシステムの開発を進めています。

将来的には法人税申告と地方法人二税の電子的提出の一元化を目指しています。

5.おわりに

皆さん、「大法人の電子申告義務化」について、理解を深めていただくことはできましたか。

「大法人の電子申告義務化」は、前述させていただいたように、確定申告書に限らず、中間申告書や修正申告書も対象となります。そのため、3月決算の義務化対象法人は、令和2年11月末に法人税の中間申告を電子申告する必要があり、また、消費税の中間申告が必要な場合や課税期間の特例を適用している場合には更に早くなるケースもあります。

電子申告義務化の対象は申告書及び申告書に添付すべきものとされている書類の全てとなりますので、義務化対象の法人等の担当の方は、中間申告などに間に合うよう万全の準備をお願いします。

最後に、本稿によって皆さんが「大法人の電子申告義務化」に関し、今まで以上に意識を持っていただき、今後、「大法人の電子申告義務化」というフレーズを耳にしたときに本稿を思い出していただければ幸いです。

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