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南の島担当IMFエコノミストとして勤務して

前国際通貨基金(IMF)アジア太平洋局 エコノミスト(現財務省理財局国有財産調整課総括補佐) 西澤 英敬

1.はじめに

私は国際通貨基金(IMF, International Monetary Fund)の日本理事室で勤務した後、IMFの中途採用試験を受け、2016年7月から本年7月まで、アジア太平洋局(APD, Asia and Pacific Department)のSmall States Division(SSD)に所属し、エコノミストとして勤務していました。SSDがカバーする太平洋の島嶼国13カ国(パプアニューギニア(PNG)、ソロモン諸島、フィジー、バヌアツ、キリバス、ミクロネシア連邦、パラオ、マーシャル諸島、ナウル、サモア、トンガ、ツバル、東チモール)のうち、私はソロモン諸島とバヌアツを担当していました。本稿では、太平洋の島嶼国及び両国の概要に触れたのち、IMFのエコノミストとして私が経験した具体的な業務について述べたいと思います。

2.太平洋の島国とソロモン諸島・バヌアツ

南の島と聞けば、サンゴ礁に青々とした海そして楽園というイメージを思い浮かべる人もいると思います。確かにそうしたイメージに合致する観光地もあるわけですが、全ての国で観光業が盛んなわけではありません。むしろ、太平洋の島嶼国は、政治・経済・社会的に実に多様性に富んでいます。

2.1 地理・人口・面積・自然災害等

地理的には、ミクロネシア(ギリシャ語で小さい島の意)、メラネシア(黒い島の意)、ポリネシア(多くの島の意)の3つに区域に分けられ、ソロモン諸島及びバヌアツはメラネシアに属しています(太平洋島嶼国の地図を参照)。ワシントンD.C.からは、一度西海岸の都市(ロサンゼルスやサンフランシスコ)で乗り換えて、ソロモン諸島の場合は豪州ブリスベン、バヌアツの場合はフィジーかシドニー経由で行きます。土曜日に出発すれば、現地時間の月曜日に着きます。日本から行く場合は、上記の経由地に加え、ソロモン諸島の場合はPNGの首都ポートモレスビー、バヌアツの場合は、ニューカレドニアの首都ヌメアを経由して行く方法もあるようです。

最大の領土面積を有する国はPNGですが、排他的経済水域(EEZ、Exclusive Economic Zone)で見た場合、キリバスが最大となります。ナウルが領土面積・EEZの両方で最小です。人口の規模で見ても、825万人のPNGから、1万人程度のツバルまで様々です。

一方、自然災害への脆弱性に晒されている点においては共通しています。世界リスク報告書によれば、World Risk Index上位15カ国のうち、6カ国を太平洋の島嶼国が占めています(第1位はバヌアツ、第2位はトンガ、第4位はソロモン諸島)。実際、近年大規模なサイクロンが太平洋の島嶼国を直撃し、大きな被害が出ています(2015年3月バヌアツ、2016年2月フィジー、2018年2月トンガ等)。また、同地域は環太平洋造山帯に属し、度々大きな地震が発生しています。火山活動も活発な地域で、バヌアツでは、2017年後半からアンバエ島にあるマナロ山が噴火し、島民が近隣の島に避難せざるを得なくなりました。更に、海抜の低いツバル・キリバスは、温暖化による海面上昇により、国の存在そのものが脅かされています。

2.2 政治体制・旧宗主国・公用語等

政治体制は、PNG・ソロモン諸島・ツバルのように、英連邦に属しエリザベス2世女王を元首とする立憲君主国家や、パラオ・マーシャル諸島・ミクロネシア連邦のように、大統領制をとる国、フィジー・バヌアツ・キリバス・ナウルのように、共和制をとる国があります。

ソロモン諸島は1978年英国から独立しましたが、イギリス連邦(Commonwealth of Nations)の加盟国であり、また豪州やカナダと同様に英国女王を国家元首とする英連邦王国(Commonwealth realm)の1国でもあります。議会は1院制で議席数は50、任期は4年、国会が首相を選出して首相が閣僚を任命する議院内閣制を採用しています。1990年代後半から2000年代前半にかけて発生した民族紛争により国内が混乱、2003年には豪州を中心とするRAMSI(Regional Assistance Mission to Solomon Islands)が派遣されましたが、治安回復・国家機能の回復が図られ、2017年6月末をもってRAMSIは無事に撤収したところです。

一方、バヌアツは英仏共同統治下より1980年に独立しました。イギリス連邦の加盟国ですが、ソロモン諸島のように英連邦王国ではありません。大統領を元首とする共和制を採用し、行政の実権は首相にあります。議会は1院制で議席数は52、任期は4年となっています。政権基盤は脆弱でしばしば政権交代が発生しています。なお両国とも軍隊は有していません。

ソロモン諸島の公用語は英語ですが、現地語と英語が混ざってできたピジン語(Pidgin)が共通語となっています。バヌアツの公用語は、英語・仏語・ビスラマ語(英語と仏語が混ざり変化して生まれた言語)になります。

図表 太平洋の島嶼国(地図)

図表 IMFに加盟する太平洋島嶼国の主な指標等

2.3 経済・主要産業等

所得水準は、国連から後発開発途上国(LDC, Least Developed Country)と認定され、海外からの援助に依存しているソロモン諸島・バヌアツ・キリバス・ツバルで低くなっていますが、高所得国に分類されるパラオのような国もあります。

主要産業についても、観光業の盛んなパラオ・フィジー・バヌアツ、天然資源に恵まれ鉱業の盛んなPNG(原油・液化天然ガス・金・銅)・ナウル(リン鉱石)、林業の盛んなPNG・ソロモン諸島、漁業権収入が歳入の3割程度を占めるキリバス・ミクロネシア連邦と、様々です。

なお、バヌアツはタックスヘイブン(租税回避地)としても知られています(私は担当するまで知りませんでしたが)。バヌアツが独立する前の1971年、まだニューヘブリディーズ(New Hebrides)と呼ばれていた時代に、英国が主導して、オフショア金融センターの仕組みを整えたそうです。近年では、フィンテック企業の誘致に力を入れているところです。

2.4 外交関係

外交関係は、ミクロネシアの3カ国(パラオ、マーシャル諸島、ミクロネシア連邦)を除く、多くの国が豪州・ニュージーランド(NZ)と密接な協力関係にあり、経済的・人的支援を受けています。ミクロネシア3国は、1914年から1945年まで日本の委任統治下にありましたが、戦後は米国との関係が深くなり、経済支援の代わりに軍事権を米国に委ね、軍地基地を米国に貸与することを決めた自由連合盟約(コンパクト)を締結しています。

中国・台湾との関係では、全世界で台湾と国交を持つ17カ国のうち、6カ国が太平洋の島嶼国(ソロモン諸島・キリバス・マーシャル諸島・パラオ・ナウル・ツバル)です。近年、太平洋の島嶼国をめぐって、中台日米豪の外交戦が活発化しており、各国首脳の同地域への訪問が相次いでいます。ソロモン諸島では、本年4月に発足したソガバレ政権が台湾との国交の見直しに言及し、年末までに外交方針を決定することから、当局の判断に関心が高まっています。他方、バヌアツは、近年中国との関係を強化しており、2018年11月にPNGの首都ポートモレスビーで開催されたAPECに合わせて、中国が提唱する広域経済圏構想「一帯一路」に関する覚書を締結しました。

写真 青々とした海が広がるバヌアツの首都ポートビラ(筆者上空より撮影)

3.IMFと4条協議

3.1 IMFとは

IMFは、1944年7月に開催されたブレトン・ウッズ会議で調印された「国際通貨基金協定(IMF協定)」に基づき設立された国際機関で、ワシントンD.C.に本部があります。日本は1952年に加盟、2019年8月時点の加盟国は189カ国になります。ちなみに、一番直近に加盟した国はナウル(2016年加盟)です。

主な業務としては、(1)対外的な支払い困難(外貨不足)に陥った加盟国に対する金融支援、(2)世界・地域・加盟国の経済・金融情勢のモニタリング及び加盟国の経済政策に関する助言の提供(サーベイランス)、(3)加盟国の政策遂行能力を高めるための技術支援、があります。以下では私が関与した(2)の国別サーベイランスについて説明したいと思います。

3.2 4条協議とは

国別サーベイランスでは、各加盟国の経済政策に関する包括的な協議の形で定期的に(通常は年1回)実施されますが、このような年次協議は、IMF協定の第4条に規定されていることから4条協議(Article IV consultation)と呼ばれています。4条協議の出張のことを、Article IVミッション、またミッションのヘッドのことをミッションチーフと呼んでいます。

4条協議のプロセスはミッションの2ヶ月くらい前から準備が本格化し、それまでに当局が公表した資料・経済指標や報道等から、セクター毎のエクセルファイルを更新し、チームメンバーとの議論を踏まえ、経済財政見通しや政策提言案を含むPolicy Note(PN)を作成していくことになります。ミッションの1ヶ月前くらいには、PNをIMFの他局に送付し、他局のレビュー担当者も参加するPCM(Policy Consultation Meeting)を開催し、PNの内容や本ミッションの着眼点等について議論を行います。他局からのコメントを反映したPNをIMFマネジメントに送付し、ミッション開始1週間前位までには彼らの了解を取り付けることになります。

ミッション中は、当該国政府及び中央銀行のみならず、他の国際機関、豪州・NZ・JICAといったドナー、国有銀行、民間金融機関、年金基金、NGO等と議論を重ね、経済見通しや政策提言の修正の必要性についてチーム内で議論を行います。島嶼国の場合、現地に行って初めて得られる情報も多いため、ミッション中に経済見通しが変わったり、政策提言のトーンが変わったりすることもあります。最終的には、ミッションの主な調査結果を文書にまとめ、財務大臣や中銀総裁も参加するConcluding Meetingでそれに対する当局の正式な見解を伺うことになります。その日の夜は当局主催の夕食会が開催され、翌日の午前中は現地のプレス向けに当該国の経済財政等の状況についてIMFの見解を説明した後、質疑応答を行い、全てが終わってから午後の飛行機便でワシントンへの帰路に就くことが多かったです。

帰国後は、Staff Reportと呼ばれる年次報告書を作成します。年次報告書には、経済財政金融の現状、政策提言、当局の見解、各セクターの指標に加え、トピック的にコラムや政策提言の根拠となる深い分析を記したアネックス(付属書類)も含まれます。また債務の持続可能性分析(DSA, Debt Sustainability Analysis)については世界銀行と共同で行うこととなっているため、IMFで作成したDSAの報告書案に対する世界銀行のコメントも反映した上で最終化します。年次報告書及びDSA報告書を基にIMF理事会で議論が行われ、4条協議が終了します。通常帰国してから2ヶ月以内に理事会が開催され、理事会終了後速やかに報告書がIMFのホームページに掲載されます。チームによって異なりますが、私のいたチームでは、通常4条協議が無事に終了したことを祝って、リサーチアシスタントを含むチーム全員でランチに行くことが多かったです。

写真 IMF理事会が開催される部屋(筆者撮影)

4.IMFエコノミストの仕事

一般的にIMFエコノミストは、国内総生産やインフレ率等を扱うリアルセクター、国際収支を扱う対外セクター、財政セクター、金融セクター及びDSAのうちどれか1つを担当することになりますが、島嶼国の場合は、ミッションチーフを入れて3人程度で見ているので、1人当たり2つか3つのセクターを担当することになります。ここでは、私が主に担当した財政セクターとDSA、ソロモン諸島・バヌアツ両国の財政や債務の状況について一部ご紹介したいと思います。

まずエコノミストとして大事なことは、当たり前のことですが、数字の裏付けを丁寧に行い、財政セクターのエクセルファイル内の数字、他のセクターとの関連性について、完全に理解することが大切です。特に低所得国の場合、データの質に懸念があることが多く、当局が公表している数字をそのまま鵜呑みにすることは出来ません。例えば、ソロモン諸島の場合、IMFのGFS(Government Finance Statistics)に基づく公表を行っていないため、各予算項目について、GFSに沿って分類する必要がありました。バヌアツはGFSに基づく公表をしていますが、借入れにより債務残高が大幅に上昇しているのにも関わらず、財政収支が黒字となっている等、整合性が取れていないことがわかり、新規借入や返済を考慮しながら、計数を調整する必要がありました。

4.1 財政

ソロモン諸島では、2016年後半から2018年にかけて、放漫財政により資金繰りが悪化しました。IMFではソロモン中銀から月次で政府の口座残高の計数をもらい資金繰り状況をモニターするとともに、電気代や工事代金等の国内向けの支払いに延滞が生じていないか、海外の債権者への支払いが滞っていないかなどの確認作業を行いました。国内向けの延滞金が生じている事例が見つかったことから、まずは延滞金の全体像を把握すべく徹底的な調査を行った上で、延滞金解消に向けた計画を策定するよう提言を行いました。さらに、ベースラインシナリオと改革シナリオを提示し、経常的経費の2ヶ月分の資金をバッファーとして保持するよう提言しました。具体的な改革案としては、歳出面では、不要不急な支出(特に、近年急増したCDF(Constituency Development Fund)と呼ばれる、議員が自分の選挙区向けに自由に使える資金や成績不振者への奨学金等)の削減、歳入面では、税滞納の削減・徴税強化、また木材の輸出税(贈与を除く歳入の2割強を占有)を計算する際の木材の基準価格を国際価格に沿った形にすること等を提言しました。

バヌアツはソロモン諸島とは異なり、フローについては若干の懸念はあるものの大きな問題は生じていませんでした。2015年3月のサイクロンパムを受けて強化したEconomic Citizenship Program(ECP)が功を奏し、ここ数年市民権(パスポート)売却による税外収入が急増しています。2018年には、贈与を除く国内収入の33%(GDP比で約10%)も占めるまでになりました。バヌアツはイギリス連邦の加盟国であるため、バヌアツのパスポートがあれば、VISAフリーで125カ国に入国することが可能であることをうたっており、中国人が多く購入していると言われています。また、ビットコインで市民権の購入が可能な最初の国と報道されたことから、一気にECPへの関心が高まりました。当局はドルでの支払いしか受け付けていないと否定しましたが、仲介業者の中では、ビットコインでの購入を受け付け、当局にはドルで支払っているところもあるようです。IMFとしては、AML/CFT(Anti-Money Laundering / Counter Financing of Terrorism)の観点からレピュテーションリスクが発生した場合、当該収入は激減する可能性があるため持続可能な収入源とみなすことはできず、現在政府が検討している、恒久的で安定財源である所得税の導入を支持しています。またサイクロンや火山噴火等の自然災害が多発し財政上の負担となっていることから、当局は自然災害基金の創設を検討しています。これを受け、IMFとしても、基金のあり方等について助言を行いました。

4.2 債務

ソロモン諸島は民族紛争後の2005年に、一部の債権者と合意した債務再編(Honiara Club Agreement)により借入れが不可能となったこともあり、公的債務残高(GDP比)は50.3%(2006年)から8.2%(2016年)まで大幅に減少しました。その間、公的債務残高の上限値の導入や保証を付す際の方針等を含む債務管理の枠組みを整備し、ようやく借入れが可能となったところです。

バヌアツはソロモン諸島と状況が異なり、2018年の公的債務残高(対GDP比)は2014年と比べ2倍以上増加し、52.4%となっています。原因は、中国が支援する道路建設計画、JICAによる埠頭整備計画、世界銀行による飛行場整備計画などのインフラ整備に係る借入れによるものです。

DSAの概要については、2019年2月ファイナンス号「開発についての諸考察:IMF及び世界銀行による低所得国向け債務持続性分析」に譲るとして、ここではDSAを行う上で、私が具体的に何をしたかという点に絞って、バヌアツを例にして述べることとします。

DSAでは、仮定次第でリスク格付け(低・中・高リスク)はいくらでも変わり得ます。したがって、どう仮定を置くかが重要となるわけですが、当局と一番議論した点は、借入れや政府保証に係る仮定です。2.4で述べたように、バヌアツは2018年11月に中国が提唱する広域経済圏構想「一帯一路」及び道路建設計画(フェーズ2)に関する覚書を中国と締結しました。当局とは道路建設計画の借入条件(金利・猶予期間・満期)等について議論し、2021年までに中国からの支払いは終わるものと仮定しました。2022年以降は具体的な計画がないので、借入れはなしと仮定するのも一つの考え方ではありますが、「一帯一路」に関する覚書を締結したという事実から今後とも借入れが継続しうると仮定したところです。

2030年までにバヌアツへの訪問者数を現行の3倍以上にするという観光業強化計画(Shared Vision 2030)に関し、国営のバヌアツ航空が新規路線開設を目指し複数の航空機の購入を検討中です。当局とはその資金調達方法について議論をしました。DSAでは、国有企業の借入れに政府保証が付されている場合、公的債務の定義に含める必要があります。同社は以前市中銀行から借り入れた際、その借入れに政府保証が付されており、今回市中銀行から借りられた場合でも政府保証を求められる可能性があり、IMFとしても注視していたところです。ただ、四条協議の時点では、具体的な資金調達スキームが明確化されていなかったため、航空機購入に係る費用は今回のDSAでは考慮しませんでした。他方、すでに政府がバヌアツ航空に対し航空機の購入補助用に貸し出した資金については、政府の偶発債務になりうるので、その分をDSAのストレステストの中で反映させました。

写真 当局と野外での打ち合わせ後、バヌアツチームと(筆者一番左)

5.最後に

太平洋の島嶼国・ソロモン諸島・バヌアツ・IMFエコノミストの仕事について長々と記載してきましたが、本稿をきっかけに関心を持って頂ければ幸いです。私自身、世界経済を見る上で新たな視点が得られたことは、大きな財産になりました。こうした機会を与えてくださった財務省・IMF、そして4条協議を通じて知り合った当局関係者すべての方々に感謝したいと思います。

現在財務省では、再生プロジェクトが進行中で、コンプライアンスの確保に向けた取組み、働き方改革・業務効率化の取組み、コミュニケーション強化の取組み等が実施されているところです。日本の行政機関を離れ、3年間国際機関に勤務した人間として、これらの取組みに貢献できるよう、自らも知恵を出し実践していきたいと思います。

※本稿の内容及び意見は筆者の個人的見解であり、筆者の所属する(した)組織の見解を示すものではない。また、あり得べき誤りはすべて筆者に帰すものである。

プロフィール

西澤 英敬

現財務省理財局国有財産調整課総括補佐

2004年財務省入省、主計局・近畿財務局・米国留学・大臣官房・金融庁・IMF日本理事室・アジア太平洋局を経て、2019年7月より現職。

<コラム>ミッション中の週末の過ごし方

4条協議ミッションは大体2週間程度続き、週末を2回挟む場合は、前半の週末は観光に、後半の週末は仕事に充てることが多かったです。もちろん観光費用は個人負担となりますが、ホテルの中でパソコンと向き合っているだけでは、見えてこない世界があります。観光を通じてその国の社会歴史文化に触れ、現地の人々と交流したりすることでその国のことをより知ることができ、時に仕事に活かされることもあります。例えば、国際機関の支援で以前作られた道路に多くの凹凸が生じているのを見て、財政当局とインフラの維持管理費について議論するきっかけとなりました。

ソロモン諸島の首都ホニアラが所在するガダルカナル島は第二次世界大戦中に日米の決戦の舞台となった所であり、補給路が断たれ多くの餓死者を出したことから、ガ島(餓島)と呼ばれた所です。ソロモン諸島は観光地としては、あまり知られていませんが、沈んだ戦艦や輸送船の周辺でのスキューバダイビングを経験できるツアーや日米両方の慰霊碑・当時の戦車戦闘機等が見られる博物館等を案内してくれる戦跡ツアーがあり、私は上司や同僚と戦跡ツアーに参加しました。

放置された戦車に木の根っこが絡まり、年月の経過を感じさせるもの、米国の慰霊碑が当時の戦況を詳細に記しているのに対して、日本の慰霊碑では、慰霊の言葉が添えられているだけというそのコントラストがとても印象に残っています。また、地元の人の案内により、日本兵と思われる遺骨が見つかった場所にも行きました。つい昨年も、遺骨収集団が収容したご遺骨が、海上自衛隊護衛艦により帰還し、厚生労働省に引き渡された後、千鳥ヶ淵戦没者墓苑に埋葬されるとのことでした。ガダルカナル島での戦いから、すでに77年以上経過していますが、当時の爪痕はまだ残されているのです。

バヌアツは観光地ということもあり、首都ポートビラにあるエファテ島を一周するツアーや、バンジージャンプ発祥の地ペンテコスト島で行われるランドダイビングの儀式を見学するツアー等様々なものがありましたが、私はエファテ島から小型機で1時間ほどのタンナ島にあるヤスール火山を見に行くツアーに同僚と参加しました。ヤスール山の標高は361メートルと低く、世界で一番火口に近づける活火山として知られているようですが、当然日本なら立ち入り禁止区域に指定されていることでしょう。バヌアツ基準でレベル3(Minor Eruption)以上になった場合(現在の火山活動はレベル2(Major Unrest))は、立ち入り禁止の措置をとっているようですが、レベル2から3に変わるような噴火を予測することは誰もできず、ちょっとした恐怖心から噴火がある度に思わず身構えてしまったものです。ただ、間近で見る(もう二度とないと思いますが)噴火活動は迫力満点でした。

写真 IMFの上司・同僚と日本の慰霊碑の前で(筆者一番左)

写真 現地の人が集めた兵器やヘルメット等(筆者撮影)

写真 ヤスール火山の噴火の様子(筆者撮影)