主税局総務課主税企画官 尾﨑 輝宏/課長補佐 田中 雅敏
平成30年度決算が令和元年7月31日に公表された。以下、平成30年度決算の歳入のうち、税収の概要について紹介する。なお、文中意見にわたる部分は、筆者の個人的な見解であり、筆者の属する組織の見解ではない。
1.ポイント
平成30年度決算税収は60兆3,564億円であり、前年度から1兆5,689億円増加した。基幹3税(所得税、法人税、消費税)が前年度同様そろって増収し、これまでの最高額であった平成2年度の60兆1,059億円を超え、過去最高である。
平成30年度補正後予算額(59兆9,280億円)との比較では、所得税を中心に4,284億円上回った。なお、所得税の増加要因は、大口の親子間配当に係る源泉所得税(0.4兆円)が主な要因であり、後段で記述のとおり、30年度限りの一時的な押し上げ要因である。
2.主要な税目
〈所得税〉※税収全体の約3割
所得税は19兆9,006億円である。前年度から+1兆190億円増加し、補正後予算額を+4,256億円上回った。好調な雇用・所得環境を背景に給与税収が増加したことに加え、一時的な大口配当の影響により配当税収も増加したことによる。
【給与】〈源泉分・申告分〉
給与税収は11.7兆円である。前年度から+0.4兆円増加し、ほぼ見込み通りである。雇用・所得環境を見ると、雇用者報酬は対前年度比+2.8%の増であり、雇用者数(対前年度比+1.8%)と一人当たり雇用者報酬(対前年度比+0.9%)がともに増加している。
【配当】〈源泉分〉
配当税収は5.0兆円である。前年度から+0.8兆円増加し、補正後予算額を+0.5兆円上回った。後段で記述のとおり、大口の親子間配当に係る源泉所得税(0.4兆円)は、30年度限りの一時的な押し上げ要因と考えられる。
〈法人税〉※税収全体の約2割
法人税は12兆3,180億円である。前年度から+3,227億円増加し、補正後予算額を+220億円上回った。3月期決算の上場企業(金融を除く全産業約1,600社)の経常利益の伸び率は、対前年度比+1.9%の増加であり、好調な企業業績を背景に法人税収も堅調に推移した。
〈消費税〉※税収全体の約3割
消費税は17兆6,809億円である。前年度から+1,670億円増加し、補正後予算額を▲1,421億円下回った。その構成を見ると、国内取引に係る収納(国税庁分)が17.7兆円(対前年度+0.2兆円)、輸入取引に係る収納(税関分)が5.2兆円(同+0.3兆円)、輸出等に係る還付が▲5.2兆円(同▲0.3兆円)であった。
個人消費の動向を見ると、民間最終消費支出は対前年度比+0.8%の増であり、29年度の伸び率(同+1.4%)を下回ったものの、堅調に推移している。
財貨・サービスの輸入は対前年度比+6.5%の増(出典注釈)であり、昨年度から引き続き増加している。品目別の輸出入動向をまとめた貿易統計(確報)によると、30年度の輸入は、全体で82兆3,041億円であり、+7.2%増加している。特に、原粗油、液化天然ガスといった鉱物性燃料が増加しており、その価額は+17.5%増加した。
また、財貨・サービスの輸出についても、対前年度比+2.1%の増であり、昨年に引き続き増加した。
〈その他〉
その他の税目は10.5兆円であり、前年度から+0.1兆円増加した。補正後予算額との比較でも+0.1兆円上回っている。主な税目ごとに見ると、以下のとおりである。
◇相続税は2兆3,333億円であり、前年度から414億円増加した。補正後予算額を933億円上回っている。
◇酒税は1兆2,751億円であり、前年度から290億円減少した。ビールの課税数量が見込みを下回ったこと等により、補正後予算額に対して359億円下回っている。
◇国際観光旅客税は、日本から出国する旅客に対し、出国1回につき1,000円課税される平成31年1月から導入された新しい税である。平成30年度税収は69億円であり、予算額を9億円上回った。
3.平成30年度限りの一時的な押し上げ
平成30年度決算税収においては、大口の親子間配当に係る源泉所得税(0.4兆円)が、30年度限りの一時的な押し上げ要因となる。
親子会社間の配当は、親会社の経営判断によって行われるものであり、翌年度も生じるか明らかでないことから、当該配当に係る源泉所得税については、その年度限りの一時的な要因として整理している。大口の親子間配当に係る源泉所得税については、親会社の確定申告により法人税額から控除されるが、持株会社である親会社は法人税を納税していないことが多く、所得税額を控除しきれず還付になると見込まれる。また、この還付は翌年度に生じることになる。
このため、大口の親子間配当に係る源泉所得税(0.4兆円)は、平成30年度税収を一時的に押し上げることになるものの、令和元年度税収の増加にはつながらず、むしろ、同額の還付が生じる分、税収の押し下げ要因となる。
4.おわりに
平成30年度決算税収は、全体としては60兆3,564億円と過去最高の税収であった。決算額が60兆円を超えた年度は、60兆1,059億円を記録した平成2年度以来である。その構成を見ると、平成初期は資産価格上昇により土地等の譲渡所得が増加して所得税収が押し上げられた面が強かったが、平成30年度は所得税、法人税、消費税の基幹3税がそろって増加している。しかし、財政の現状を見ると、歳出が税収を上回る状況が続いている。今後、2025年度の国・地方を合わせたPB黒字化に向け、経済再生と財政健全化に一体的に取り組むことが重要である。
図表 (参考1)30年度一般会計税収
図表 (参考2)30年度限りの一時的な押し上げ
図表 (参考3)一般会計税収の推移
図表 (参考4)雇用者報酬・給与税収の推移
図表 (参考5)配当金総額・配当税収の推移
図表 (参考6)企業の経常利益・法人税収の推移
図表 (参考7)民間最終消費・消費税収の推移