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コラム 海外経済の潮流119:Fed、FRB、連邦準備銀行、FOMC及び短期金利との関係

大臣官房総合政策課 海外経済調査係長 赤嶺 彰一

本稿では、FRBと一括りにされることがある米国の連邦準備制度(図1 連邦準備制度の仕組み)について整理した後、それらと短期金利との関係を考えてみる。

米国における中央銀行機能を持つ組織の総称は連邦準備制度(以下Fed*1)と呼ばれ、連邦準備制度理事会(以下FRB*2)と連邦準備銀行(以下連銀)で構成される。

FRBは、大統領によって任命された議長・副議長を含む理事7名(現在2名空席)で構成されており、主に連邦準備銀行の監督やディスカウントレート変更の承認等を所管している。

連銀は、全米50州を12地区に分割し、各管轄区において金融機関の監督・規制、決済システムの運営等を担当している。

連邦公開市場委員会(以下FOMC*3)は、日本銀行の「金融政策決定会合」に相当し、FRB理事と連銀総裁が出席し、政策金利の誘導方針など金融政策の方針を決定する。

以下では、連邦準備制度のなかで短期金利がどのように決定され、政策金利の誘導がなされているかを確認する。

【(1)政策金利(FFレート)誘導目標】

政策金利であるFFレート*4の誘導目標レンジはFOMCにおいて決定される(図2 (1)政策金利(FFレート)誘導目標)。

【(2)ディスカウントレート】

一般に、中央銀行が政策金利を目標に誘導するにあたり、上限を構成するものとして、ディスカウントレートが利用されている。ディスカウントレートは、差し入れた適格担保の範囲内で中央銀行から借り入れを行う際に適用される金利であり、上限となる理由は通常借り手側は最後の貸し手(ラストリゾート)である中央銀行からの借入コストであるディスカウントレートを超える金利で資金調達を行わないと考えられるためである。

Fedにおいて、このディスカウントレートは、各連銀がFRBに対し申請を行い、ディスカウントレート会合(Board of Governors discount rate meetings)をFRBが開催し*5、連銀の申請にFRBが承認を与えるという形となっている。

【(3)当座預金への付利金利*6】

超過準備がある限り、売りオペによって市場から資金を吸収しても、資金の超過供給を解消できず、オペによって金利を誘導できない。よって、一般に中央銀行の当座預金に対する付利金利が利用されている。例えば、日本銀行においては、補完当座預金制度適用金利であり、ECBにおいては、預金ファシリティ金利である。預金取扱機関からみると、付利金利を下回る金利で短期金融市場に資金を放出するインセンティブが働かない*7ため、付利金利が短期金融市場における下限として機能することが期待される。

以上から、一般に中央銀行が政策金利を誘導したい場合、(2)のディスカウントレートと(3)の付利金利で挟めばよいことになる。

ところが、Fedの場合、図3 (2)ディスカウントレート、(3)付利金利、政策金利(FF実効レート)を見てみると、付利金利を下回る金利での取引が成立している。これは、政府系金融機関(以下GSE等)*8の存在が関係している。GSE等は付利金利の適応を受けられないため、付利金利以下の金利水準であっても短期金融市場に資金を放出し(付利金利より低い)利回りを得る。以上から、FF市場において、現状では付利金利は短期金利の下限として機能していないと考えられる。

付利制度の適用を受けることが可能な預金取扱機関にとっては、仮に付利金利を下回る金利水準で資金調達ができた場合、その資金を単に当座預金に滞留させ付利の適用を受けることにより、その金利差分の利益を得ることが可能となる。逆からいうと、あくまで預金取扱機関は付利金利を下回る金利水準で資金調達ができるために、資金を調達しているのであり、付利金利を上回る金利で預金取扱機関が資金調達を行うインセンティブが働かない。以上から本来は下限として機能すると期待される付利金利が事実上、短期金利の上限として機能していると考えられる。なお、Fedにおいて、この付利金利はFRBが決定している。

【(4)リバースレポ金利】

政策金利のコントロールのためには新たな下限を設定する必要があり、Fedは付利の適用外であるGSE等でも利用可能なリバースレポ*9(図4 (3)付利金利、(4)リバースレポ金利、政策金利(FF実効レート))を導入しており*10、これに適用されるのがリバースレポ金利である。このリバースレポ金利は、FOMCにおいて決定されている。

以上から、現在のところ、政策金利を誘導する場合、(3)の付利金利と(4)のリバースレポ金利で挟み込めばよいことになる。

ところで、政策金利であるFF金利の実効レートをみると、このところ上限としての機能が期待される付利金利にFF金利の実効レートが近づいてきていた(図4)。よって、2018年6月と12月の政策金利の誘導目標レンジの引上げ(いずれも0.25%)の際、付利金利を0.20%の引上げに留めることで、政策金利がより誘導目標レンジの中央に位置するよう誘導したと考えられる。

(注)文中、意見に係る部分は全て筆者の私見である。

*1) Federal Reserve System

*2) Federal Reserve Board

*3) Federal Open Market Committee

*4) 銀行間短期市場(日本のコール市場に相当)における取引金利のこと。通常は翌日物。

*5) 原則2週間に1回及びFOMCの際に開催。ディスカウントレート会合議事録はFOMC議事録公表日の翌週の火曜日に公表されている。

*6) Fedでは、IORR(The interest rate on required reserves:所要準備付利金利)、IOER(The interest rate on excess reserves:超過準備付利金利)と呼ばれる。

*7) 付利金利を下回る金利で短期金融市場に資金を放出するよりも、当座預金に滞留させた方が高利回りのため。

*8) ファニーメイやフレディマックなど。

*9) FRBが金融機関から、米国債を担保に資金を借り入れて利息を支払う制度。

*10) 当該金利を下回る金利で市場に資金を放出するインセンティブが働かないため、リバースレポ金利がFF市場における実質的な下限として機能することが期待される。

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