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ニイ「ガタ」、「トキ」、書いてみませんか?第十回

第十回 家計調査の苦労とやりがい

新潟県総務管理部長(元財務省広報室長) 佐久間 寛道

3連覇を果たした浜松市を宇都宮市が抜き返した平成29年。毎年ニュースになる餃子の年間支出ランキングですが、この根拠として用いられているのが家計調査です。

家計調査は、ファイナンスを読まれている方の多くが関わったことがあるかと思います。様々な経済分析で用いられますし(例:ファイナンス平成30年2月号のコラム経済トレンド「女性の活躍が与える影響について」での共働きと専業主婦世帯の比較)、GDPの推計に用いられる故の影響の大きさとその精度でも話題になりました(平成27年10月の経済財政諮問会議における麻生副総理兼財務大臣の提案を契機として、順次見直しが行われています)。

自分自身、様々な場面で思い出のある家計調査。せっかく県庁の勤務の機会を得たので、今回、調査の現場が実際どのようになっていて、どんな苦労とやりがいがあるのか探ってみることにします。

統計を支える統計調査員

新潟県庁では、219の統計調査を実施しており(平成30年4月1日現在)、うち152が国の統計です。これには、家計調査のほか、メディアで取り上げられる毎月勤労統計調査、労働力調査などの基幹統計が26含まれています。

そして、調査の最前線は、統計調査員という特別職の非常勤地方公務員が担います。新潟県での登録者数は約2,260人で、その65%が女性です。年代別では、60代が35%、70代が41%、逆に30代以下は1%と高年齢者中心に担われていることがわかります。主婦の方、会社を退職した方、自営業の方など様々な方が登録下さっています。

平成30年度の統計調査全体では延べ約5,000人が携わる見込みで、毎月調査しているものでは労働力調査がもっとも多く延べ1,200人、今年度最も多いのは5年に1度の住宅・土地統計調査の2,000人です。家計調査は、毎月12人×12月で延べ144人が携わります。

調査の流れと苦労

プライバシー意識の高まりやライフスタイルの多様化により、新潟県でも例に漏れず調査員は苦労しているようです。

新潟県では、3自治体、具体的には新潟市、長岡市、魚沼市をサンプル調査しています。調査員1人で2区域を受け持つ形で、3自治体で計24区域を調査することになります。

不審者と思われないため、調査前に必要に応じて自治会長や交番に挨拶することもあるそうです(表のア)。そして、調査区域(50−120世帯程度)のすべての世帯を訪問し、世帯名簿を作成します(表のイ)。無作為抽出の信頼性を高めるため、大切なスタートです。空き家と思われる家であっても、隣近所には聞かず、何度も訪問を繰り返し、信頼性を高めるそうです。関係のないことまで当たり散らされ、何十分も足止めされることもあるそうです。長いリードでつながれた犬の存在で呼び鈴まで近づけないといったお約束のような状況もあるそうです。

世帯名簿作成後、そこから無作為抽出された7世帯(うち単身世帯1世帯)に調査を依頼します(表のウ)。調査開始一週間前には、家計簿やはかり等の調査用品を渡し、調査の仕方を説明します。

えっ、はかり? と思われた方! 写真のように、デジタルはかりを差し上げるんです。これは、生鮮野菜など価格が変動するものは、支出金額だけでは消費量が捉えられないことや、支出金額を購入量で割ることによって、平均購入価格、すなわち高級志向・低価格志向といった質的充足度を測る尺度になる観点からお願いしているものです。白米、まぐろ、キャベツ、りんご、茶葉といった食料品が対象になります。

依頼にあたっては、誰が依頼されたかを保秘する必要があるため、依頼世帯が隣接している場合訪問日時をずらすなどの配慮をしているそうです。

引き受けて頂くための苦労も乗り越え、本調査(表のエ)に入ります。調査開始後まもなく、正しく記入されているか、不明な点はないか等様子を聞くのがポイントだそうです。月2回、半月分の家計簿(約50ページ)の回収を行い、不明な点を確認の上、県、そして国へと情報が集約されていきます。5分ずれると苦情につながることがあり、約束の時間どおりに訪問することも大切とのこと。世帯側から宗教の勧誘等がある場合もあり、気分を害さないような対応を行っているそうです。

写真 写真:家計調査道具の一つ「はかり」

なぜ調査員を続けるの?

日本の経済政策の基盤の一翼を担っているから、という理由ではありませんでしたが、世帯に調査を引き受けてもらったときの喜び、丁寧に調査協力してくれたときの喜び、調査終了時に寂しいですといった手紙を受け取ったときの喜び、という世帯とのやりとりで生まれる喜びを糧に続けてくださっている調査員が多いと感じました。

家計調査では、電子マネー等への対応で平成30年1月から新しい様式の家計簿が導入され、オンライン家計簿も平成30年7月以降全国展開が始まっています。消費動向をより的確に把握する手法の検討やその実現はもちろん行う必要がありますが、今回の聞き取りから、詳細な家計簿をつけている世帯と調査員への感謝の気持ちでいっぱいになりました。

図表 表:家計調査における調査の流れの例

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