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地方創生の現場から【第5回】宮城県・東松島市の取組み

地方創生に積極的に取り組む自治体(原則人口5万人以下)に対しては、国家公務員や大学研究者、民間人材を、市町村長の補佐役として自治体に派遣しています。本記事では、2017年度に財務省から各地に派遣された職員から、現地の概況や地方創生の取組について紹介します。

イラスト イートくん イ〜ナちゃん

宮城県・東松島市の取組み

宮城県東松島市 総務部経営調整監 兼 地方創生推進室長 榑谷 健太郎

1.東松島市の概要

(1)まちの特徴

日本三景の一つ「松島」の一部を有する東松島市。奥松島と呼ばれる松島湾の東側のエリアは、美しい眺めと新鮮な海産物が楽しめるため、観光地として最適です。海産物では、牡蠣や皇室御献上の海苔が有名で、特に牡蠣は粒も大きく味も濃いため、10〜3月の旬の時期は非常に人気となっています。

市内にはブルーインパルスの本拠地である航空自衛隊松島基地があり、もしかしたらドラマ「空飛ぶ広報室」の舞台としてご存知の方もいらっしゃるかもしれません。

人口は現在40,138人*1で、直近数年はほぼ横倍で推移しています。仙台市と石巻市の間に位置していること、豊かな自然環境と松島基地があること等が要因かと思われますが、東北太平洋沿岸地域としては人口減少問題に対して健闘している都市と言えます。

写真 ▲航空祭でのブルーインパルスの展示飛行

(2)東日本大震災の影響

2011年3月11日の東日本大震災で、太平洋沿岸にある東松島市は津波による甚大な被害を受けました。浸水地域は市街地の65%と被災市町村の中で最大であり、死者・行方不明者1,133名(人口の3%)、東側に位置する石巻市等とともに東日本大震災における最も被害の大きかった被災地の一つです。震災による直接被害に加え、住む場所や働く場所を失われたために、3,400人もの人口減少となりました。

写真 ▲野蒜地区(旧東名駅周辺)の被災状況

(3)復興状況

震災から7年半が経過し、多くの方々の尽力により東松島市の復興は進んでいます。市内の津波被災エリアの世帯(172.6ha)を、市内7箇所の防災集団移転地(内陸部や高台)へ集団移転を実施したほか、災害公営住宅17団地1,101戸の整備も2018年度中の完了見込みとなっています。産業については、基幹産業である農業漁業の施設は9割近く復旧した一方、奥松島を含めた観光入込客数については、民宿施設の半減や野蒜地区の復旧の遅れもあり、震災前の6〜7割程の回復に留まっています。

復興のために、全国の自治体から派遣職員(県・市から累計319人)、企業・個人からの寄附金や物資に留まらない様々な支援、海外からの支援等、国内外を問わず多くの方々の温かい支援を頂いています。今は2020年度末の復興期間終了を目指し市民・職員が一丸となって復興を進めています。

2.市の課題

(1)人口減少

現在、地方創生担当として人口減少問題に取り組んでおりますが、前述の通り現時点では本市の人口は横倍状態であり、近隣市町と比較してもかなり良い部類となります。しかし、少子高齢化に加え、震災による人口減少、働く場所の喪失に伴う若者の流出等により、2040年には人口が3万3,000人になると推計されています。

また、働き手の人口減少に伴う、各分野での担い手不足も大きな課題となっています。具体的には、担い手が少ないために行政各分野から依頼する際には特定の人に依頼が集中する傾向があります。地方都市の課題は、資金面よりも「新しい取組みを始められる若い世代の担い手が、そもそもいない(少ない)」ことにあり、人材育成のみで解決できる問題ではありません。

これらの課題を解決するため、「移住定住」「しごとの創出」を進める必要があります。

(2)復興の完結に向けて

住まいの復旧は進んでいるものの、依然として課題は山積しています。

ア)被災元地と呼ばれる集団移転した元地のうち31haが未活用

市内で被害の大きかった野蒜地区や立沼・牛網地区において、被災元地が虫食い状態で残っており、活用方法が決まっておりません。災害危険区域でもあるため、土地の活用方法に制約があり、今後復興期間中に活用の見通しがつくか不透明な状況です。他の沿岸被災地も集団移転元地に同様の問題を抱えていると聞いており、解決すべき課題となっています。

イ)自治体派遣職員の帰任後の市役所の業務について

現在は市職員392名に加えて全国の自治体からの派遣職員49名により、事業が進められているものの、復興期間終了により自治体からの派遣職員はゼロとなる見通しとなっています。復興期間後にも役所としての業務を継続していくために、如何に影響を少なく体制移行できるかが課題となっています。

ウ)観光分野の未回復

震災前には112.3万人の観光客が東松島市を訪問していたものの、2017年度は68.7万人に留まっています。野蒜地区にあった「かんぽの宿」が撤退したことや民宿数が半減したこと、従来あった野蒜海岸海水浴場がまだ復旧していないこと等、観光分野での復旧が途上にあり早期の回復が望まれます。

写真 ▲防災集団移転団地と移転促進区域(被災元地を含む)

3.東松島市における取組み

(1)人口減少対策

地方創生人材派遣制度を活用し、シティマネージャーとして財務省から派遣されていた前任(現大臣官房総合政策課 福留課長補佐)の主導により、東松島市では積極的に地方創生各種制度を活用しています。「東松島市人口ビジョン・総合戦略」に基づき5つの地域再生計画を策定し、地方創生推進交付金等や地方創生応援税制(企業版ふるさと納税)を活用して市の抱える課題に対して様々な取組みを進めています。

例えば、観光分野では近隣の石巻市・女川町と共同でDMOを設立し、圏域として観光振興に力を入れています。また、移住定住促進のために、空き家等利活用計画を策定するとともに、復興の段階から参加頂いている地域おこし協力隊の方々(現在12名)が定着し、更には持続的な定住へつながる流れを検討しています。他にも、市内にある地域金融機関等と連携協定を締結し、市内での起業を促すための各種取組みの共同実施が可能か協議を進めています。

(2)SDGs未来都市

2011年末から東松島市は「環境未来都市」として、震災後に始まった地域新電力事業やスマート防災エコタウン事業等を進めてきました。そして2018年6月15日、国連が定めるSDGs(持続可能な開発目標)の達成に向けた優れた取組みをする自治体として、東松島市は「SDGs未来都市」に選定されました。全国で29都市が選ばれる中、東日本大震災の被災地として唯一選ばれました。東北地方でも3都市しか選ばれていないため、今後SDGsの取組みとして始める事業が、他の東北地方や東日本大震災の被災地へも横展開できる事例を生み出していければと考えています。当然、行政のみで達成できる目標ではないため、震災後にご縁ができた全国の企業の力も借りられるような仕組み作りについて、目下模索しているところです。

写真 ▲イートくん&イ〜ナちゃんSDGs版

(3)東京オリンピック・パラリンピック競技大会「復興の火」

2020年の東京オリンピック・パラリンピック競技大会の際に、ギリシャから聖火が日本に最初に到着する場所が、東松島市の「松島基地」となる見込みです。この聖火は「復興の火」として東日本大震災の被災3県に2日ずつ展示され、その後聖火リレーのスタート地点へ移されます。国内最初の聖火到着地として、今後関係各所との準備を進めていきます。

(4)復興の加速

地方創生担当として、現在は間接的に復興事業の推進に向けた取組みをしています。具体的には、地方創生推進交付金を使った被災元地を活用した事業の検討や、復興期間終了後を見越した行財政改革の検討等を現在市役所内部で進めています。

4.今後の展開

東松島市はまだ東日本大震災からの復興途上にあり、市民・職員が一丸となって復興の完結を目指し日々職務に励んでいます。復興期間の終了まで残り2年半となり、復興の課題と復興期間後の課題も明らかになってきています。まずはこれらの課題に正面から取り組む必要があるとともに、地方創生担当・国からの派遣職員として、復興期間を終えても持続的に東松島市が発展していけるよう、関係機関の力も借りつつ知恵を出していきたいと思います。その際、SDGs未来都市や東京オリンピック・パラリンピック競技大会等の機会を上手く活用できればと考えています。そして、全力で残りの任期を全うしたいと思います。

写真 ▲牡蠣 粒が大きくミネラルたっぷり

写真 ▲航空自衛隊松島基地のブルーインパルス

写真 ▲大高森から松島湾を望む、松島四大観の一つ「壮観」

写真 ▲松島湾(奥松島)の嵯峨渓を巡る遊覧船

〜秋冬シーズンは新鮮な牡蠣、夏にはブルーインパルスの航空祭、春秋には奥松島「大高森」からの松島湾の眺望、遊覧船からの「嵯峨渓」の絶景等、観光地として東松島には魅力が沢山あります。もし可能であれば是非一度、東松島へ観光にお越し下さい〜

イラスト 東松島市アクセスマップ

*1) 住民基本台帳登録数。なお、数字については特に記載が無い限り2018年4月1日時点とします。

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