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日仏修好通商条約、その内容とフランス側文献から見た交渉経過(4)〜日仏外交・通商交渉の草創期〜

在フランス日本国大使館参事官 有利 浩一郎

今回は、日仏修好通商条約第4条から第15条までを、フランス外務省外交史料館所蔵の仏文(筆者による現代語仮訳)、カタカナ文、漢字かな混じり文を元に解説することとしたい(仏文原文は本文末に掲載)。

4日仏修好通商条約の内容

(5)第4条

【仏文(現代語仮訳)】

第4条

日本におけるフランス臣民は、その宗教を自由に信仰する権利を有し、そのために、その住居用の土地に教会、礼拝堂、墓地などその宗教に適切な建造物を建設することができる。

日本政府は、キリスト教に対する冒瀆的な慣行の実施をすでに廃止した。

【カタカナ文】

第四条

ニツポンニアル フランスノヒト ジシンノ シユウシヲ カツテニ シンカウ イタスベシ○ ソレユエ フランスノヒト ソノスムトコロヘ ミヤ ヤシロヲ タツベシ○ ニツポンニオイテ フミヱノ シキタリハ スデニヤメタリ

【漢字かな混じり文】

第四條

日本にある佛蘭西人自國の宗旨を勝手に信仰いたし其居留の場所へ宮社を建るも妨なし

日本において踏繪の仕来は既に廢せり

第4条は、日本でのフランス人のキリスト教の信仰の自由、宗教建造物建設の自由及びキリスト教に対する冒瀆的慣行(踏絵)の廃止の確認を定めている。フランスと中国の間で同じ年に結ばれた天津条約の第13条は、中国のすべての個人によるキリスト教信仰の自由を定めていたが、日仏条約では、3(9)で見たように居留外国人のみにキリスト教信仰を認めており、日本人による信仰を認めたわけではない。これはキリスト教に関する規定を日本に無理強いしないとのフランス外務省の意向が働いたためとみられる。

次に居留地への教会、礼拝堂、墓地等の宗教建造物の居留地内における建設の自由であるが、仏文とカタカナ文・漢字かな混じり文を比べると、教会=ミヤ、礼拝堂=ヤシロという対応関係があると考えても、仏文に出てくる「墓地」はカタカナ文・漢字かな混じり文には登場しない。3(5)で触れたとおり、第3回協議では、フランス人墓地を日本の墓地内に設けたいと日本側が求めるも何の決定もなされなかったとされているが、その結果、日本側がカタカナ文・漢字かな混じり文において(居留地内に墓地を建設できるか不明瞭にすべく)墓地をわざと例示しなかったのか、それとも単なる翻訳漏れなのかは定かではない。

これら外国人の信教の自由及び居留地内の礼拝堂等の設置の自由は、日米条約第8条、日蘭条約第7条、日露条約第7条及び第5条、日英条約第9条にも規定されている。なお、日米条約第8条及び日蘭条約は、外国人による日本の宗教の尊重も定めている。

踏絵の廃止については、3(5)で触れたとおり、第3回協議において、日本側からは、踏絵の習慣は既になくなっている以上、条約において廃止を求めるのは無意味との見解が示されたため、踏絵のしきたり(仏文ではキリスト教に対する冒瀆的な慣行)はすでに廃止された旨が盛り込まれた。日米条約第8条、日露条約第7条に同様の規定がある。

(6)第5条

【仏文(現代語仮訳)】

第5条

日本皇帝陛下の領地内において、フランス人の間でその権利、その所有物又はその身体に関して起きたすべての係争については、その国に設置されるフランス当局の管轄に服するものとする。

【カタカナ文】

第五条

ニツポンニ オイテ フランスノヒトヽ フランスノヒトヽ ロンジテ スマザルコト アラバ フランスノ ミニストル マタハ コンシユルニテ トリハカラフベシ

【漢字かな混じり文】

第五條

日本にある佛蘭西人の間に争論起る事あらはミニストル又はコンシユル取計ふへし

第5条は、日本国内でのフランス人の間の係争はフランス側が裁き日本側の管轄権が及ばないことを定めており、領事裁判権(治外法権)の一つである。これは確かに不平等条約の要素の一つであるが、実際は、司法制度が未発達かつフランス語も普及していない日本で、フランス人の間の紛争を日本側が裁くのは困難だったと思われる。なお、仏文では、権利、所有物及び身体についての係争とされているが、カタカナ文及び漢字かな混じり文では、こうした係争の対象が書かれていない。日英条約第4条に同様の規定がある。

(7)第6条

【仏文(現代語仮訳)】

第6条

フランス臣民に対する犯罪行為によって咎められるべき日本人は、日本の法律に従って、権限ある日本の当局によって逮捕され処罰されるものとする。

日本人又は他の国家に属する個人に対する犯罪行為によって咎められるべきフランス臣民は、フランス領事の前に召喚されフランス帝国の法律に従って処罰されるものとする。

裁判は、いずれの側でも公正かつ公平に執り行われるものとする。

【カタカナ文】

第六条

フランスノヒト ニツポンノヒトヘタイシ フラチアラバ フランスノ コンシユル ソノコトヲ ヨクタヾシテ フランスノ ケイバツニ オコナフベシ○ マタ ニツポンノヒトモ フランスノヒトヘタイシ フラチアラバ ニツポンノ カウクワン ソノコトヲ ヨクタヾシテ ニツポンノ ケイバツニ オコナフベシ ソノ ケイバツニ オコナフニモ ニツポンノヤクニンモ フランスノコンシユルモ ギヲ タヾシテ オコナフベシ

【漢字かな混じり文】

第六條

佛蘭西人日本人に對し不埒の事あらは佛蘭西コンシユル糺明の上自國の法度を以罰すへし

日本人佛蘭西人に對し不埒の事あらは日本役人糺明の上日本の法度を以罰すへし

但何れも偏頗なく取行ふへし

第6条は、フランス人が日本人に対し犯罪行為を行った場合にはフランス領事が、日本人がフランス人に対し犯罪行為を行った場合には日本の当局が、それぞれ逮捕し、処罰することを示している。フランス人が犯罪行為の主体である場合には、第5条と同じくフランス領事が管轄権を有することから、不平等条約の要素である領事裁判権(治外法権)の一つをなしている*1。日米条約第6条、日蘭条約第5条、日露条約第14条、日英条約第5条に同様の規定があり、特に日英条約第5条はこの条と全く同じ規定ぶりである。

(8)第7条

【仏文(現代語仮訳)】

第7条

ある日本人について訴えのあるすべてのフランス臣民は、フランスの領事館に赴き、その要求を述べなければならないものとする。

領事は、その要求が根拠を有するものかを審査し、かつ、事案の仲裁を図るよう努めるものとする。同じく、ある日本人があるフランス臣民について訴えがある場合には、フランス領事はそれを聞き、かつ、事案の仲裁を図るよう努めるものとする。

領事が物事を収めることができない困難が生じた場合には、当該領事は、当該領事において権限ある日本の当局と協力して事案を入念に審査し、かつ、当該事案に対して公正な解決をもたらすことができるようにするために、当該当局の援助を求めるものとする。

【カタカナ文】

第七条

フランスノヒト ニツポンノヒトヘ タイシ ウツタヘヲ ナスコトアラバ フランスノ コンシユルノトコロヘユキ ソノコトヲ マフスベシ コンシユル コトノシダイヲ ギンミシテジツイニ トリハカラフベシ マタ ニツポンノヒト フランスノヒトヘタイシ ウツタヘヲ ナスコトアラバ ブギヤウシヨヘ ソノコトヲ マヲスベシ ブギヤウシヨニテ コトノ シダイヲ ギンミシテ ジツイニ トリハカラフベシ○モシ フランスノ コンシユル ソノコトヲ トリハカラヒ デキザルセツハ ニツポンノ カウクワンノ タスケヲカリ トモニ サウダンノウヘ トリハカラフベシ

【漢字かな混じり文】

第七條

佛蘭西人日本人に對しもし訴訟の事あらは佛蘭西コンシユルへ其事を告コンシユル事の次第を吟味し実意に取計らふへし又日本人佛蘭西人に對し訴訟あらは奉行所へ其事を告奉行所にて事の次第を吟味し実意に取計らふへし

若佛蘭西コンシユル取計兼る節は日本高官の助をかり相談の上取計らふへし

第7条は、日本人とフランス人の間で民事の争いが生じた場合の裁判管轄権を規定している。フランス人が日本人を訴える場合にはフランス領事に対して行うこととされているが、問題は、日本人がフランス人を訴える場合であり、仏文ではフランス領事が訴えを聞くとされる一方でカタカナ文・漢字かな混じり文、さらに蘭文でも日本の奉行所に訴えることとされ、両者が食い違っている*2。この点について、1859年9月6日に初代駐日フランス総領事として赴任したギュスタヴ・デュシェヌ=ド=ベルクールが幕府に対し申入れを行い、1859年10月17日、日仏条約第7条の文意は日英条約第6条と同じとの宣言(証書)を日仏間で合意し、日本人のフランス人に対する訴えはフランス領事が聞くことに確定させている。なお、第7条では、フランス領事が問題を解決できない場合には、日本の当局と協力して事案を審査し公正な解決をもたらすために、日本の当局に支援を仰ぐことともされている。上述のとおり、日英条約第6条に同様の規定がある。

(9)第8条

【仏文(現代語仮訳)】

第8条

貿易に開かれたすべての港において、フランス臣民は、輸入禁制品ではない全ての種類の商品について、この条約に付される関税表に規定される関税を支払いつつ、その他の負担金を負担する必要なしに、自国又は外国の港から輸入し、売却を行い、購入を行い、かつ、そこから自国の港又は他の国の港に向けて輸出する自由を有する。

日本政府及び外国人に対してしか売却してはならない戦争の武器を除き、フランス人は、自由に、日本人が売却し又は購入することになる品物を日本人から購入し又は日本人に売却することができ、かつ、当該売却若しくは当該購入に際し又はこの取引の支払い若しくは受取りを行う場合においていかなる日本職員*3の介入も受けないものとする。

全ての日本人は、フランス臣民が日本人に売却するすべての品物について、購入し、売却し、保管し、かつ、使用することができる。

日本に居住するフランス人がその役務のために日本人を雇い、かつ、当該日本人を法律が禁止しないすべての職務に用いることについて、日本政府はいかなる妨げも行わないものとする。

【カタカナ文】

第八条

フランスノヒト ニツポンノ ヒラキタル ミナト ミナトニ オイテ ジコクノ シナモノハ モチロン タコクノ シナモノニテモ アキナヒ イタスコト クルシカラズ○ シカシ ニツポンヨリ トメラレタル シナモノハ アキナヒ イタスベカラズ ニツポンノ ヒラキタル ミナトヨリ ジコク マタハ タコクヘ シナモノヲ モチユキ アキナヒ イタスコト クルシカラズ ソノセツハ サダメタルトホリニ ウンジヤウヲ イダスベシ ブキハ ニツポンノ セイフナラビニ グワイコクノ ヒトノホカハ タニアキナフベカラズ フランスノヒト ニツポンノヒトヽ ナニシナニヨラズ ウリカヒヲ イタシテ クルシカラズ ソノセツハ ニツポンノ ヤクニン タチアフコトナシ マタ ダイギンヲ ハラフセツモ ドウヤウナリ ニツポンノヒトハ ナニビトニテモ シナモノヲ フランスノヒトヽ カツテニ ウリカヒ マタハ シヨヂシテ クルシカラズ○ ニツポンニアルフランスノヒト ニツポンノヒトヲ ヤトフセツハ ニツポンノ ヤクニン サマタゲナシ

【漢字かな混じり文】

第八條

佛蘭西人日本の開きたる港々において自國の品物は勿論他国の品物にても商賣いたす事苦しからすといへとも日本禁止の品物は商賣いたすへからす日本の開きたる港より自國又は他國へ品物を持行商賣いたす事苦しからす其節は定めたる通りに運上を出すへし武器は日本政府並外國人の外賣へからす佛蘭西人日本人と何品によらす日本役人立會*4なくして賣買苦しからす代金を拂ふ節も同様たるへし

日本人は何人によらす佛蘭西人と品物賣買且所持する事苦しからす

日本にある佛蘭西人日本の賎民を雇ふ事障なし

第8条は、商品の輸出入及び売買に関する規定である。箱館、長崎、神奈川(横浜)など外国との貿易に開かれた港において、フランス人は輸入禁制品(例えば阿片)を除いてあらゆる商品を、日仏条約に付される関税表(貿易章程第7則)に定める関税を払った上で、フランス又は他の国から輸入し、売買し、フランス又は他の国に輸出することができると規定されている。また、武器は日本政府又は外国人にしか売ってはならず、一般の日本人には売ってはならないこと、売買や代金支払・受取時に日本の当局の介入を受けないこと、フランス人の売却する品物を日本人が売買所持することが出来ること、日本に住むフランス人が日本人を雇えることも定められている*5。なお、関税という言葉は当時まだ使われておらず、「運上」の語が用いられている。日米条約第3条及び第4条、日英条約第8条及び第14条、日露条約第9条及び第10条、日蘭条約第2条及び第3条に同様の規定がある。

(10)第9条

【仏文(現代語仮訳)】

第9条

この条約に付される貿易の規則の各条は、不可欠な一部をなすとみなされるものとし、この条約に署名した両締約国にとっての義務にもなるものとする。

日本におけるフランスの外交官は、そのために日本政府により指名されうる公務員と協力して、添付の貿易の規則の条の規定の執行に必要な規則を貿易に開かれたすべての港において定める権限を有する。

【カタカナ文】

第九条

コノタビ サダメタル アキナヒノ ハフハ デウヤクノトホリニ マモルベシ○コノ デウヤク ナラビニ カウエキノハフヲ ジフブンニ トリオコナフタメ コマカキ オキテヲ ナスコトアラバ フランスノ ミニストルト ニツポンノ カウクワント サウダンスベシ

【漢字かな混じり文】

第九條

此度定たる商法は条約*6の通守るへし

此条約並に交易の法を十分*7に取行ふ為の規律を全備せんと要せは佛蘭西ミニストルと日本高官と議定すへし

第9条は、日仏条約に付される貿易章程(実物の表題は、仏文では貿易規則、カタカナ文では交易規則、漢字かな混じり文では税則)*8にも日仏両国による履行義務があることや、貿易章程の実施のための細則をフランスの外交官と日本の高官が相談して定めることが規定されている*9。この貿易章程は、船の出入港時の手続などの税関規則や(協定)関税率について規定しており、日本の税関業務の先駆けとなる事項が記載されている。日米条約第11条及び第12条、日英条約第12条、日蘭条約第9条に同様の規定がある。

(11)第10条

【仏文(現代語仮訳)】

第10条

それぞれの港における日本の当局は、不正及び密輸を防止するために最も適切と思われる措置をとるものとする。

この条約及びそれに付される貿易規則に対する違反の結果課されるすべての過料及び押収物は、日本皇帝陛下の政府に帰属するものとする。

【カタカナ文】

第十条

ニツポンヘ キンゼイノ シナモノヲ モチワタラザルヤウニ マタハ イツハリテ ウンジヤウナド イダサヾルコトヲ トムルタメニ ニツポンセイフヨリ ミナトミナトヘ オキテヲタツベシ デウヤクト カウエキノ ハフヲ マモラザルヒトヨリ トリアゲタル クワレウモ ニモツモ ニツポンノ セイフノ モノニナスベシ

【漢字かな混じり文】

第十條

日本禁制の品持渡らさるため又は偽りて運上を出さヽる事を防くために日本政府にて港々へ掟を立へし条約又は交易の規則を守らさるものの過料又は荷物ともに日本政府へ取上へし

第10条は、密輸・関税脱税の防止のため日本の当局は各港について必要な措置をとる(カタカナ文・漢字かな混じり文では「掟を定める」)ことや日仏条約及び貿易章程に違反して課された過料及び押収物が日本政府に帰属することを定めている。日米条約第6条、日英条約第18条及び第19条、日露条約第14条、日蘭条約第5条に同様の規定がある。

(12)第11条

【仏文(現代語仮訳)】

第11条

日本の開かれた港の一つに到着したフランスのすべての商船は、港に入るために水先案内人を雇用する自由を有するものとし、また同様に、当該商船が合法的に課されたすべての債務及びすべての関税を支払い、かつ、出発の準備が整ったときは、港から出るために水先案内人を雇用する自由を有する。

【カタカナ文】

第十一条

フランスノフ子 ニツポンノ ヒラキタル ミナトヘ キタルトキニハ ミヅサキノ モノハ カツテニ ヤトフベシ フランスノ ヒトビト シヤクザイ ナラビニ ウンジヤウヲ ハラヒズミノ ウヘニテ シユツパン イタストキハ ミナトソトマデ ミヅサキアンナイハ カツテニ ヤトフベシ

【漢字かな混じり文】

第十一條

佛蘭西舩日本の開きたる港に来る時は水先のもの勝手に雇ふへし佛蘭西人借財並に運上拂済の上にて出帆の節港外まての水先案内は勝手に雇ふへし

第11条は、外国との貿易に開かれた港に到着したフランス商船が港に入る時及び代金等の債務や関税を支払済のフランス商船が港を出る時に、水先案内人を雇うことが出来るとの規定である。3(5)で述べたように、第3回の条約交渉会議において、日本人の海外渡航を禁じていた日本側からフランス側に対し、フランス船の雇う水先案内人が日本政府の手の及ばないところへ行かないようにしたいと要求し、仏文では「港から出るために」水先案内人を雇うことができるとの限定が付され、カタカナ文・漢字かな混じり文では「港外までの」水先案内人を雇えるとの限定が付されている。日英条約第13条に同様の規定がある。

(13)第12条

【仏文(現代語仮訳)】

第12条

日本の開かれた港の一において商品を輸入し、かつ、求められる関税を支払ったフランスのすべての商人は、日本の税関の長からこの支払がなされた旨を証する証明書を得ることができ、当該証明書により、その後、いかなる種類の追加的な関税を支払う必要なく、日本の開かれた他の港にその荷物を運び出すことができる。

【カタカナ文】

第十二条

フランスノヒト ニツポンノ ヒラキタルミナトヘ シナモノヲ モチワタリテ ウンジヤウ イダシタルウヘニテ シナモノヲ ウリハラハザルセツハ ニツポンノ ヤクニンヨリ ウンジヤウ ウケトリタル カキツケヲ ウケトリ ニツポンノ ヒラキタルホカノミナトヘ モチユキ ウリハラフトモ ウンジヤウ イダスニオヨバズ

【漢字かな混じり文】

第十二條

佛蘭西人持渡りたる品物運上納済にて日本役人より請取書を請取*10外開きたる港へ持行賣拂ふ時は運上出すに及はす

第12条は、外国との貿易に開かれた港において商品を輸入し関税を支払った場合、日本の税関から支払済証を受け取ることができ、その支払済証により、当該商品を外国との貿易に開かれた日本国内の他の港に移動し*11ても追加的な関税を払う必要がないことを規定している。日英条約第17条に同様の規定がある。

(14)第13条

【仏文(現代語仮訳)】

第13条

フランス臣民によって日本の開かれた港において輸入され、かつ、この条約の定める関税を支払ったすべての商品は、いかなる物品税又は通過税、個別間接税その他すべての性質の税を支払うことなく、帝国のすべての部分において日本人により移動することができる。

【カタカナ文】

第十三条

フランスノヒト ニツポンノ ヒラキタル ミナトヘ シナモノ モチワタリテ サダメドホリノ ウンジヤウヲ ハラヒシ ウヘハ ソノシナモノヲ ニツポンノヒト ニツポンノ クニウチヘ モチユキ ウンジヤウシナニ*12 ウリハラフトモ クルシカラズ

【漢字かな混じり文】

第十三條

佛蘭西人日本の開きたる港へ持渡りたる品物定例の運上拂ひし上は日本人國中に持行とも運上取立る事なし

第13条は、外国との貿易に開かれた港において輸入され関税を支払った商品は、その他の税を払うことなく日本国内で流通することを規定している。日米条約第4条、日英条約第16条、日露条約第10条、日蘭条約第3条に同様の規定がある。

(15)第14条

【仏文(現代語仮訳)】

第14条

全ての外国貨幣は日本において通用力を有し、類似の日本の貨幣の重量と比較した当該外国貨幣の重量の価値において通用する。

フランス及び日本の臣民は、互いに行う必要のあるすべての支払において、日本又は外国の貨幣を自由に使用することができる。

日本政府*13が外国貨幣の価値を正確に知るまでにいくらかの時間がかかるため、権限ある日本の当局は、フランス臣民に対し、それぞれの港の開港に続く年の間は、当該臣民が当該当局に渡した貨幣と同じ重量かつ同じ性質の日本貨幣を、交換で、新たな貨幣鋳造のための手数料を支払うことなく提供するものとする。

銅貨を除くすべての種類の日本の貨幣及び鋳造されていない外国の金及び銀は、日本の外に持ち出すことができる。

【カタカナ文】

第十四条

グワイコクノ カ子ヲ ニツボンニテモ ツウヨウ イタスベシ ソノツウヨウハ ニツポンノカ子ト グワイコクノカ子ト キンハキン ギンハギント カケアハスベシ○ ニツポンノ ヒトモフランスノヒトモ シヤウバイスルニ ニツポンノ カ子ト グワイコクノ カ子ト トリマゼ カツテニ モチウベシ○ ニツポンノヒト グワイコクノ カ子ノクラヰヲ シラザルユヱ ミナトヲヒラキタル シヨホツニ タウヨウダケ ニツポンノカ子ト グワイコクノカ子ト カケアハセテ グワイコクノカ子ヲ ヤクシヨヘ ヒキトリ ニツポンノカ子ヲ フランスノヒトヘ ワタスベシ○ニツポンノ ツウヨウノ キン ギント グワイコクノ キン ギンハ モチユクコト クルシカラズ ニツポンノ アカヽ子ゼニト ニツポンノコシラヘザル キンギンハ モチユクコトナラズ

【漢字かな混じり文】

第十四條

外國の貨幣日本にても通用いたさすへし其通用は日本の貨幣と外國の貨幣金は金銀は銀と懸合すへし

佛蘭西人日本人との商賣に日本の貨幣と外國の貨幣と取交用うへし

日本人外國の貨幣に慣れされは交易の初發に當用丈は日本貨幣を外國貨幣と懸合せ役所にて佛蘭西人へ引替渡すへし

日本通用金銀と外國の金銀は持行事苦しからすといへとも日本銅錢と貨幣に拵らへさる金銀は持行へからす

第14条は、外国貨幣の日本における取扱いを定める規定である。日米条約第5条、日英条約第10条、日露条約第13条、日蘭条約第4条に同様の規定があり、これらは、国の通貨・外国為替政策の根本を決める重要な規定であった。具体的には、

○外国貨幣が日本で通用力を有し、日本での類似の貨幣との比較において(額面でなく)その重さで通用する(カタカナ文・漢字かな混じり文では金貨は金貨と、銀貨は銀貨とそれぞれ重量を比較して通用させると規定)、

○日仏両国民とも日本・外国貨幣のいずれをも支払に使用できる

○日本人が外国貨幣の価値を知らないためフランス人が外国貨幣を直ちに日本にて使用できないと想定されることから、開港後1年間は、日本の当局がフランス人から外国貨幣を受け取り、手数料なしで同種・同じ重量の日本貨幣に両替する

○日本の銅貨以外の貨幣(金銀貨幣)及び鋳造されていない外国の金銀を外国に持ち出せる(逆にいうと、日本の銅銭と日本の鋳造されていない金銀は外国に持ち出せない)

と定められている。

一番の問題は、外国貨幣と日本貨幣の間で、金貨は金貨と、銀貨は銀貨と重量を比較した上で外国貨幣を通用させるとした点にあった。この規定は、日米条約交渉時にアメリカ領事のハリスに押し切られたものであるが、日本での金銀の交換比率(金1:銀4.6)*14と、外国での金銀の交換比率(金1:銀15.5〜16)*15が異なっていたために、不合理な結果をもたらすこととなった。貨幣の概念を介さず単純に説明すれば、日本に4.6グラムの銀を持ち込めば1グラムの金と交換でき、それを外国に持ち出せば15.5〜16グラムの銀と交換でき、さらにその銀を日本に持ち込めば3.3〜3.4グラムの金と交換でき、それをまた外国に持ち出すという具合で、理論的には、1回の両替取引で元手を3.3〜3.4倍に増やすことが可能となっていた。この結果、日本に外国の銀貨が大量に持ち込まれ、それに代わって金の小判が流出する事態となったため、1860年に天保小判の金含有量の29.3%しか含まない万延小判を発行しこれを一両とすることにした。これにより日本での金銀の交換比率が金1:銀15.8とほぼ外国の水準と同じとなったため、金の流出は止まったものの、一方で、実質的な小判(1両)の価値が大きく下がったため、国内物価が急激に上昇したとされる。

なお、元々は日本でも、金銀の交換比率は国際水準に近かったとされるが、それに比して通貨の一分銀の銀含有量を少なくする(幕府の信用力で一分銀に実力以上の通用力を与える)ことで幕府は発行益を得て財政を支えていたとされる。一方で、開国に伴って生じた一連の事態は、国内財政上の要請で採用されていた通貨政策が海外に市場を開放した瞬間に、金の流出やインフレといった形で経済に混乱をもたらすことになった例とも言える。

(16)第15条

【仏文(現代語仮訳)】

第15条

商人によりその商品のいくつかに対して行われた評価に対し日本税関の長が満足しない場合には、この公務員は、当該商品について価格を見積もり、かつ、そのように定められた単価において当該商品を購入することを提案することができる。所有者が自らに対してなされた提案の受入れを拒むときは、当該所有者は、この見積りに応じた関税を税関の上級庁に支払わなければならない。逆に、当該提案が受け入れられたときは、提案の金額は、割引又は値引きなしで、直ちに商人に対して支払われるものとする。

【カタカナ文】

第十五条

フランスノヒト ニツポンヘ シナモノヲ モチワタリテ ウンジヤウヲスクナク イダサンガタメニ シナモノヽ 子ダンヲ ゲンジタルセツハ ニツポンノ ヤクニン シナモノヲ アラタメテ 子ダンヲツクベシ フランスノヒト ソノ子ダンヲ シヨウチ イタスナラバ ソノ子ダンニテ ニツポンノ ヤクニン カヒトルベシ シカシ ニツポンノ ヤクニンノツケタル 子ダンニテ フランスノ アキンド シナモノヲ ニツポンノ ヤクニンヘ ウラザルセツハ ソノ ツケタル 子ダンニ ヒキアハセテ ニツポンノヤクニンヘ ウンジヤウヲ イダスベシ○ソノセツ ニツポンノ ヤクニン ソノシナモノヲ カヒトラバ ソノ子ダンヲ スコシモ ゲンズルコトナク スグニハラフベシ

【漢字かな混じり文】

第十五條

佛蘭西人品物持渡運上を少なく拂はんか為其價を減したると察せは日本役人是を改め相當の價を付へし

佛蘭西人其價にて承引せは其價を少しも減する事なく日本役所へ買入へしもし是を否む時は付たる價に従て運上を納へし

第15条は、フランスの商人が申告した商品の価額に日本の税関当局が疑いを抱いた場合、税関当局自身がその価額を見積って商人に提示することが出来るとの規定である。この商人が税関の見積価額を拒否する場合には、その価額に応じた関税を日本の役人(仏文では税関の上級庁)に支払わなければならない一方で、税関の見積価額を承諾する場合には、日本の税関当局がその価額で商品を買い取るべきことが規定されている。日米条約第4条、日英条約第15条、日露条約第10条、日蘭条約第3条に同様の規定がある。

商人側が税関当局の見積価額を承諾した場合には税関当局が買入義務を負うため、税関当局が不当に高額な見積価額を提示することを防止する仕組みとなっている。一方、実際の価格よりは低い見積価額を税関から提示されその価額で税関当局に買い入れられたくない場合には商人はその見積価額に基づく関税を払うため、税関当局にとっては、正確な価額の見積りを行えば関税収入を最大化できる仕組みになっている。

(注)文中意見にわたる部分は筆者の個人的な見解であり、筆者の属する組織の見解ではありません。なお、文中の日付は旧暦は用いず、すべて太陽暦を用いています。

(コラム)デュシェヌ=ド=ベルクール

初代駐日フランス公使の墓地探し

デュシェヌ=ド=ベルクール初代駐日フランス公使*16は、1817年2月23日パリ生まれ、1842年頃フランス外務省に入省、1844年に同省政務局へ異動、1848年にコペンハーゲン公使館書記官、1855年にフランクフルト公使館書記官として勤務の後、1857年に中国臨時大使館の一等書記官として派遣されグロ男爵の下で勤務した。彼は、1858年6月27日に清仏間で締結された天津条約をフランス本国に持ち帰る任務を帯びたため、直後の江戸での日仏条約交渉には随行しなかったが、翌1859年2月2日に、初代駐日フランス総領事として任命され、9月6日に江戸に到着、9月22日に幕府と日仏条約の批准書の交換を終えている。5年間の滞日中、攘夷運動による外国人襲撃への対処(1859年のフランス領事館従僕殺害事件、1860年の本人自身の従僕の傷害事件、1863年のフランス陸軍少尉斬殺事件などの対処のほか、同年の薩摩藩によるイギリス人殺害事件(生麦事件)の賠償交渉にも参加)、1863年の長州藩による下関での米仏蘭艦船への攻撃に対する米仏の報復攻撃の支持、孝明天皇の攘夷勅命を受け同年に幕府が企図した開港場横浜の閉鎖交渉の拒否など、様々な問題に対応する。また、1860年には弁理公使、1861年には特命全権公使に任命されている。1864年の日本離任の後、チュニス(チュニジア)、バタヴィア(オランダ領東インド)、キト(エクアドル)のフランス総領事を務め、1880年に退官、1881年7月23日にパリで死去している。

彼の墓は、パリのペール=ラシェズ墓地の17区中央の崖の下にあるとのことだったが、探しても一向に見つからない。諦めかけたその時、ある墓の上に積もった落ち葉の隙間から、彼の姓の一部分の字がちらりと眼に入った。もしやと思い、慌てて落ち葉をはらってみると、果たせるかな、それが彼の墓であった。

彼の墓石には、「ギュスタヴ・デュシェヌ=ド=ベルクール、特命全権公使 1817−1881」*17とのみ刻まれている。

写真 デュシェヌ=ド=ベルクール初代駐日フランス公使の墓

(付録)日仏修好通商条約の仏文(フランス外務省外交史料館所蔵)〔第4条から第15条まで〕

Article Quatre.

Les sujets Français au Japon auront le droit d’exercer librement leur religion et à cet effet ils pourront y élever dans le terrain destiné à leur résidence les édifices convenables à leur culte, comme Eglises, chapelles*18 cimetières &&.

Le Gouvernement Japonais a déjà aboli dans l'Empire l’usage des pratiques injurieuses au Christianisme.

Article Cinq.

Tous les différends qui pourraient s'élever entre Français au sujet de leurs droits, de leurs propriétés ou de leur personne dans les domaines de Sa Majesté l’Empereur du Japon seront soumis à la juridiction des autorités Françaises constituées dans le Pays.

Article Six.

Tout Japonais qui se rendrait coupable de quelque acte criminel envers un sujet Français serait arrêté et puni par les autorités Japonaises compétentes conformément aux lois du Japon.

Les sujets Français qui se rendraient coupables de quelque crime contre les Japonais ou contre des individus appartenant à d’autres nations seront traduits devant le Consul de France et punis conformément aux lois de l’Empire Français.

La justice sera équitablement et impartialement administrée de part et d'autre.

Article Sept.

Tout sujet Français qui aurait à se plaindre d’un Japonais devra se rendre au Consulat de France et y exposer sa réclamation.

Le Consul examinera ce qu'elle aura de fondé et cherchera à arranger l'affaire à l'amiable. De même, si un Japonais avait à se plaindre d’un sujet Français, le Consul de France l'écoutera avec intérêt, et cherchera à arranger l'affaire à l'amiable.

Si des difficultés surviennent qui ne puissent pas être aplanies ainsi par le Consul, ce dernier aura recours à l'assistance des autorités Japonaises compétentes afin que de concert avec elles, il puisse examiner sérieusement l'affaire et lui donner une solution équitable.

Article Huit.

Dans tous les ports*19 ouverts au commerce, les sujets Français seront libres d’importer de leur propre pays ou des ports étrangers, et d'y vendre*20 d’y acheter et d’en exporter pour leurs propres ports ou pour ceux d'autres Pays, toute espèce de marchandises qui ne seraient pas de contrebande, en payant les droits stipulés dans le tarif annexé au présent traité, et sans avoir à supporter d'autre charge.

A l'exception des munitions de guerre qui ne pourront être vendues qu'au Gouvernement Japonais et aux étrangers, les Français pourront librement acheter des Japonais et leur vendre tous les articles qu’ils auraient à vendre ou à acheter, et cela, sans l'intervention d'aucun employé Japonais*21 soit dans cette vente ou dans cet achat soit aussi en effectuant ou en recevant le paiement de ces transactions.

Tout Japonais pourra acheter vendre garder*22 et faire usage de tout article qui lui serait vendu par des sujets Français.

Le Gouvernement Japonais n’apportera aucun obstacle à ce que les Français résidant au Japon puissent prendre à leur service des sujets Japonais et les employer à toute occupation que les lois ne prohibent pas.

Article Neuf.

Les articles réglementaires de commerce annexés au présent traité seront considérés comme en formant*23 partie intégrante, et ils seront également obligatoires pour les deux hautes parties contractantes qui l’ont signé.

L'agent diplomatique français au Japon, de concert avec les fonctionnaires qui pourraient être désignés à cet effet par le Gouvernement Japonais auront*24 le pouvoir d'établir dans tous les ports ouverts au commerce les règlements qui seraient nécessaires pour mettre à exécution les stipulations des articles réglementaires de commerce ci-annexés.

Article Dix.

Les autorités Japonaises dans chaque port adopteront telles mesures qui leur paraitront le plus convenables pour prévenir la fraude et la contrebande.

Toutes les amendes et les confiscations imposées par suite d’infractions au présent Traité et aux règlements commerciaux qui y seront*25 annexés appartiendront au Gouvernement de Sa Majesté l’Empereur du Japon.

Article Onze.

Tout bâtiment marchand Français arrivant devant l’un des ports ouverts du Japon sera libre de prendre un pilote pour entrer dans le port, et, de même, lorsqu’il aura acquitté toutes les charges et tous les droits qui lui auraient été légalement imposés, et qu’il sera prêt à partir, il sera libre de prendre un pilote pour sortir du port.

Article Douze.

Tout négociant Français qui aurait importé des marchandises dans l’un des ports ouverts du Japon et payé les droits exigés, pourrait obtenir, des chefs de la douane Japonaise un certificat constatant que ce paiement a eu lieu, et il lui serait permis alors d’exporter son chargement dans l'un des autres ports ouverts du Japon, sans avoir à payer de droit additionnel d’aucune espèce.

Article Treize.

Toutes les marchandises importées dans les ports ouverts du Japon par des sujets Français et qui auraient payé les droits fixés par ce traité pourront être transportées par les Japonais dans toutes les parties de l’Empire sans avoir à payer aucune taxe ni aucun droit de transit, de régie ou de toute autre nature.

Article Quatorze.

Toute monnaie étrangère aura cours au Japon et passera pour la valeur de son poids comparé à celui de la monnaie Japonaise analogue.

Les sujets Français et Japonais pourront librement faire usage des monnaies Japonaises ou étrangères dans tous les paiements qu’ils auraient à se faire réciproquement.

Comme il s’écoulera quelque temps jusqu’au moment où le Gouvernement Japonais*26 connaitra exactement la valeur des monnaies étrangères, les autorités Japonaises compétentes fourniront aux sujets Français pendant l'année qui suivra l'ouverture de chaque port, de la monnaie Japonaise en échange, à poids égal et de même nature que celle qu'ils lui donneront et sans avoir à payer de prime pour le nouveau monnayage.

Les monnaies Japonaises de toute espèce, à l’exception de celle de cuivre, pourront être exportées du Japon aussi bien que l’or et l'argent étrangers non monnayés.

Article Quinze.

Si les chefs de la douane Japonaise n'étaient pas satisfaits de l'évaluation donnée par les négociants à quelques unes de leurs marchandises, ces fonctionnaires pourraient en estimer le prix et offrir de les acheter au taux ainsi fixé. Si le propriétaire refusait d'accepter l'offre qui lui aurait été faite, il aurait à payer aux autorités supérieures de la douane les droits proportionnels à cette estimation. Si au contraire l’offre était acceptée, la valeur offerte serait immédiatement payée, au négociant sans escompte ni rabais.

(à suivre)

*1) 第6条を詳しく見ると、(1)仏文では日本人の犯罪行為の取扱いを先に、フランス人の犯罪行為の取扱いを後に規定しているところ、カタカナ文・漢字かな混じり文ではフランス人の犯罪行為の取扱いを先に、日本人の犯罪行為の取扱いを後に規定している、(2)仏文では、フランス人は、日本人だけでなく第三国の者に対する犯罪行為の場合も、フランス領事に召喚され、フランスの領事裁判権の対象となると規定しているが、カタカナ文・漢字かな混じり文においては日仏以外の第三国の者に対する犯罪行為の取扱いについて規定していない、といった差異が見られる。

*2) 仏側(メルメ=カション神父)が交渉時に仏文の条文案をカタカナ文に翻訳したときに誤り、それが漢字かな混じり文作成、さらには森山栄之助による蘭文翻訳にそのまま反映されてしまったとみるのが自然であろう。

*3) 普通に訳せば「日本人雇用者」。仏文上「日本の公務員」と規定すべきだったと思われる。蘭文でもJapanische Ambtenaren(日本の公務員)と規定。

*4) フランス外務省外交史料館所蔵のもう一通の漢字かな混じり文及び日本の条約集(締盟各国条約彙纂第一編297頁)では「立合」の字が使われている。

*5) 仏文は、雇用した日本人を「法律が禁止しないすべての職務に用いること」ができると規定している。

*6) 前文では「條約」の字が用いられているが、この第8条、第9条及び第13条では「条約」の字が用いられている。

*7) 日本の条約集(締盟各国条約彙纂第一編298頁)では「充分」の字が使われている。

*8) 仏文は、貿易章程が日仏条約の不可欠な一部をなすと規定する一方、カタカナ文・漢字かな混じり文は「条約の通りに」守るべしと規定している。「条約と同じものとして」の意を表そうとしたと思われる。

*9) 仏文では、フランスの外交官が、日本政府の指名する公務員と協力して細則を定める権限を有すると規定しており、第3条と同じく、文法上は制定主体がフランス外交官ということになってしまっている。

*10) フランス外務省外交史料館所蔵のもう一通の漢字かな混じり文でも「請取」の字を使う一方、日本の条約集(締盟各国条約彙纂第一編299頁)では「受取」の字が使われている。

*11) カタカナ文・漢字かな混じり文は「持って行き売り払っても」と規定する一方、仏文は「売り払っても」とは規定していない。

*12) 文意から見て「ウンジヤウナシニ」の誤り。なお、フランス外務省外交史料館所蔵のもう一通のカタカナ文では「ウンジヤウナシニ」と正しく記述されている。

*13) 漢字かな混じり文及びカタカナ文では、「日本政府」ではなく「日本人」となっている。日米条約や日英条約の英文も「the Japanese(日本人)」と規定しており、仏文の規定が誤っていると考えられる。

*14) 当時の日本では一分銀4枚を金の小判1枚(1両)に両替することができた。天保一分銀は4枚分で金0.072g・銀34.107g・その他0.321gを含有する一方、天保小判は金6.387g・銀4.822g・その他0.042gを含有しており、その他の部分を捨象した上で両者が同じ価値だと考えると、日本における金と銀の交換比率をxとすれば、0.072*x+34.107=6.387*x+4.822を解いて、x=4.64となる。

*15) 当時のアメリカでは1ドル銀貨は20枚分で銀481.140g・その他53.460gを含有する一方、20ドル金貨には金30.093g・その他3.344gを含有しており、その他の部分を捨象した上で、アメリカにおける金と銀の交換比率をyとすれば、30.093*y=481.140を解いて、y=15.99となる。また、当時のフランスでは1フラン銀貨は20枚分で銀90g・その他10gを含有する一方、20フラン金貨は金5.806g・その他0.645gを含有しており、その他の部分を捨象した上で、フランスにおける金と銀の交換比率をzとすれば、5.806*z=90を解いて、z=15.50となる。

*16) 彼の生涯は、西堀昭著「初代フランス特命全権公使ギュスターヴ・デュシェーヌ・ド・ベルクールについて(1)」及び「初代フランス特命全権公使ギュスターヴ・デュシェーヌ・ド・ベルクールについて(2,完)」に詳しい。また、アンリ・コルディエ著「1857年から1858年の中国派遣、外交史・注釈・文書」(《L'Expédition de Chine de 1857-58, histoire diplomatique, notes et documents》par Henri Cordier)162頁にも彼の経歴が記述されている。

*17) フランス語で「GUSTAVE DUCHESNE DE BELLECOURT MINISTRE PLENIPOTENTIAIRE 1817-1881」と刻まれている。

*18) 通常は、この後には「,」が置かれる。

*19) フランス外務省外交史料館所蔵のもう一通の仏文、カタカナ文・漢字かな混じり文及び日本の条約集(締盟各国条約彙纂第一編297頁)に照らす限り、この後「du Japon(日本の)」が欠落していると思われる。なお、蘭文は、本稿掲載の仏文と同じく「van Japan(日本の)」という語は使用していない。

*20) 通常は、この後には「,」が置かれる。

*21) 文意並びに漢字かな混じり文、カタカナ文及び蘭文からみて、d’aucun fonctionnaire Japonaisの誤りと思われる(*3参照)。また、この後2つあるsoitの前には通常は「,」 が置かれる。

*22) 通常、acheter vendre garderの間には「,」が置かれる。

*23) フランス外務省外交史料館所蔵のもう一通の仏文及び日本の条約集(締盟各国条約彙纂第一編298頁)ではfaisantの語が使われている。ただし、法律用語としてはformant partie intégrante、faisant partie intégranteのいずれも「不可欠な一部をなす」の意である。

*24) この文の主語はL'agent diplomatique Françaisなので、動詞avoirの未来形の活用が誤っており、aurontではなくauraとなるべきである。

*25) フランス外務省外交史料館所蔵のもう一通の仏文及び日本の条約集(締盟各国条約彙纂第一編298頁)では現在形のsontの語が使われている。

*26) les sujets japonaisの誤りと考えられる(*13参照)。その後ろのconnaitraのiには(現在は許容されるが)アクサンがついていない。

財務省の政策