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日本政策投資銀行の女性起業支援に向けた取組について〜DBJ女性新ビジネスプランコンペティション〜

前大臣官房政策金融課 富永 隼行/寒川 翔平/服部 大樹*1

5月号及び6月号の特集では、政策金融の意義と取組について概観してきたが、本稿では、その番外編として、株式会社日本政策投資銀行*2(以下、「政投銀」という)の女性起業支援に向けた取組であるDBJ女性新ビジネスプランコンペティション(以下、「DBJ女性コンペ」という)を紹介する。

1.女性起業支援の意義

産業構造の転換と人口の高齢化、女性の高学歴化、性別役割分業意識の変化に加え、男女雇用機会均等法、育児・介護休業法、女性活躍推進法等の法令整備による制度改革もあり、女性の労働を取り巻く社会環境は大きく変化した。この結果、女性の労働参加は飛躍的に拡大し、女性の就業率はこの十数年で10%以上上昇し、2017年に67.4%に達した(図表1 男女別就業率推移)。女性活躍の推進が経済に与える正の影響については、既に様々な研究成果*3によって示されており、女性の労働参加に向けての動きは今後さらに加速していくものと考えられる。

特筆すべきは、経済の最前線で中心的な役割を担う女性の数が徐々に増えてきていることである。例えば、我が国の上場企業の女性役員は、役員全体に占める社外取締役の割合の増加等に後押しされ、ここ10年でその割合が約3倍となっている(図表2 上場企業における女性役員数及び全役員に占める女性役員の割合)。

また、起業家数の女性割合についても、1999年から2017年にかけて、約1.5倍になっている(図表3 起業の男女比推移)。日本政策金融公庫総合研究所が実施した調査*4によれば、女性の起業家は男性の起業家に比べて、女性消費者のニーズや女性雇用の受け皿となっている傾向*5があるという。本調査は、女性活躍の好循環の形成や働き方改革の推進をしていくという意味でも、女性起業家の数が増えることが好ましいことを示唆している。

これらを背景として、政府は、持続的な経済成長の実現のための最重要課題である潜在成長率の引上げに向けて、「経済財政運営と改革の基本方針2018」及び「女性活躍加速のための重点方針2018」において、女性の活躍の場の更なる拡大に取り組むべく、女性役員登用の推進や女性起業に対する支援強化等を掲げている。これから紹介するDBJ女性コンペは、起業に挑戦する女性に競い合う中で成長する場を提供し、女性活躍の推進に向けた政府の施策を強力に後押しする意義深い取組である。

2.DBJ女性新ビジネスプランコンペティションの開催

政投銀は、2011年に女性起業サポートセンターを起ち上げ、「女性の起業活動により、経済・社会の活性化、構造改革を促す」ことを目標に、DBJ女性コンペを毎年開催している。これまで計6回のコンペで応募されたビジネスプランは累計2,121件であり、応募業種は生活関連サービス業が多いのが特徴的である(図表4 過去のDBJ女性コンペ応募プランの件数及び上位5業種)。

DBJ女性コンペの募集対象は、女性経営者による、高い事業性(事業として大きな成長が期待できる)と高い革新性(技術、サービス、ビジネスモデル等において新規性あるいは高い付加価値が期待できる)を有する、開始5年以内の事業である。応募されたプランの中から、1次審査(書類)、2次審査(面接)、最終審査(外部審査員に対するプレゼン)と、三段階の審査を経て「大賞」「優秀賞」「ソーシャルデザイン賞」「事業奨励賞」が決定されている。第6回からは、社会の課題解決に資するサステイナブルな取組をSDGs*6の観点も踏まえ評価する「ソーシャルデザイン賞」が新たに創設された。各段階の審査では、一貫して、(1)事業性、(2)革新性、(3)経営者の3点が評価基準となる。受賞者には、最大1,000万円の事業奨励金の授与だけではなく、外部専門家によるメンタリングや会社紹介など事業を成功に導くための事後サポートの機会が受賞後1年間提供される。

昨年11月、第6回DBJ女性コンペの審査結果発表及び表彰式が開催された(図表5 第6回DBJ女性コンペ受賞者)。4度目のチャレンジでの大賞受賞となった川島史子氏は表彰後に「今回大賞を受賞したことで、今まで在宅医療拡大のため、小規模診療所を助けたいと言う思いでやってきたことが間違いでなかったことに確信が持てた」と語った(川島氏のビジネスプランはインタビュー参照)。

3.次回第7回DBJ女性コンペ募集中

次回第7回DBJ女性コンペは、7月に開催の告知がなされ、8月下旬より募集が開始されている(図表6 第7回DBJ女性コンペの概要)。第7回も募集対象、表彰内容、評価基準、事業奨励金及び事後サポートは、第6回と同様となっている。

応募を検討の方又は関心のある方は、下記URLから募集要項等を確認して欲しい。

◇ https://www.jeri.or.jp/wec/competition/

今後とも、DBJ女性コンペの開催を始め、地方自治体や地域金融機関など関係機関と連携したセミナーの企画等、政投銀による各種支援の推進・展開により、女性の起業マインドの向上と起業促進がより一層図られることに期待したい。

写真 注)第7回DBJ女性ビジコンの表彰式の模様

写真 注)大賞を受賞した川島氏

〈参考文献〉

・ジェームズ=レイモ・福田節也, 2016, 「女性労働力率の上昇─結婚行動の変化の役割」『日本労働研究雑誌』2016年9月号(No.674).

・筒井淳也, 2014, 「女性の労働参加と性別分業―持続する「稼ぎ手」モデル」『日本労働研究雑誌』2014年7月号(No.648).

・山口一男, 2017, 「働き方の男女不平等 理論と実証分析」日本経済出版社.

DBJ女性起業大賞(受賞者インタビュー)

クラウド技術の活用により在宅医療の負担軽減と医療職女性の活躍の機会を提供

株式会社クラウドクリニック代表取締役 川島史子さん

第6回DBJ女性コンペで大賞を受賞致しました川島です。大学で社会福祉を学んだ後、病院相談員を始まりに医療系の研究機関や企業に勤務、その後名古屋大学医学部附属病院で共同研究員として医療コンシェルジュサービス開発に携わった経験等を踏まえ、起業の道を選び、2015年に今回受賞した事業を行う株式会社クラウドクリニックを創立致しました。

当社はクラウド技術を活用し、在宅医療を行う医師の負担軽減を図るアウトソースの支援サービス「クラウドクリニック」事業を展開しています。超高齢化での医療費高騰により、大病院中心の医療から在宅医療への移行が求められ、また自宅で最期を迎えたいと希望する人も増えていますが、一方で、在宅医療は携わる医師の負担等の課題に直面しています。私は父の死を通じて在宅医療を知ったことで、これまでの大学病院や研究機関勤務で得た知識・教育ノウハウやサービス開発等の経験を活かせることに気付き、この解決のために起業に至りました。

当社のサービス(下表参照)は、在宅医療の繁雑な事務作業を、遠隔オペレーションセンターで受託し現場の医師をサポートするものですが、サポートを行うスタッフは出産等で離職した医療有資格者の女性で、彼女達のスキルの有効活用・キャリア形成も同時に実現する点も特徴となっています。当社事業により、多くの医師が在宅医療に携わり、高い品質の在宅医療が提供されること、また潜在する医療職の女性に活躍の機会を提供することで働き方改革にも繋がればと願っております。今後は事業を通じて得たノウハウを活かし、より高度なサービスのためシステム開発に注力し、在宅医療現場の更なる効率化を一層推進して行きたいと考えております。

*1) 本稿の意見にわたる記述は、筆者の個人的な見解である。

*2) 出資と融資を一体的に行う手法や、その他の高度な金融手法を用いた業務を営むことにより、長期の事業資金を必要とする者に対する資金供給の円滑化や、金融機能の高度化に寄与することを目的とする株式会社。

*3) 例えば、山口(2017)の中で、女性の活躍と労働生産性の関係についての詳しい分析がなされている。

*4) 日本政策金融公庫総合研究所, 2013, 「女性起業家の開業〜「2013年度新規開業実態調査(特別調査)」の結果から〜」

*5) 女性起業家は、一般消費者向け、とりわけ女性を主な顧客とする事業を選ぶ傾向がある。また、女性を多く雇用し、「仕事と家庭の両立」に配慮した取組を行っている割合が高い。

*6) 持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals)。2015年9月の国連サミットで採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」にて記載された2016年から2030年までの国際目標。

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