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平成29年度決算税収について

前 主税局総務課主税企画官(歳入・地方税) 西村 聞多

平成29年度決算概要(見込み)が30年7月4日に公表された。以下、平成29年度決算の歳入面のうち、税収の概要について紹介する。

1.ポイント

29年度決算税収は58.8兆円であり、基幹3税(所得税、法人税、消費税)*1が3年ぶりにそろって増収し、前年度から+3.3兆円の増加となった。

29年度予算(57.7兆円)*2との比較では、所得税及び消費税を中心に+1.1兆円上回った。このうち、29年度限りの一時的な押し上げは+0.4兆円程度と見込まれる。これを除くと今後の税収増に寄与する分(土台増)は+0.7兆円程度と見込まれる。

2.主要な税目

〈所得税〉※税収全体の約3割

所得税は18.9兆円の見込みであり、前年度から+1.3兆円の増加となり、予算を+0.9兆円上回った。給与の堅調な伸びに加え、好調な企業業績を反映して配当や株式譲渡が大きく増加したことによる。

【給与】〈源泉分・申告分〉

給与税収は11.3兆円の見込みであり、前年度から+0.4兆円の増加となった。予算との比較では、29年度予算(11.4兆円)は28年度補正後予算(11.0兆円)を基に見積もったが、28年度補正後予算から28年度決算は▲0.1兆円の減となったため、▲0.2兆円下回った。雇用・所得環境を見ると、名目雇用者報酬は対前年度比+2.3%の増であり、雇用者数(対前年度比+1.5%)と一人当たり雇用者報酬(対前年度比+0.8%)がともに増加している。

【配当】〈源泉分〉

配当税収は4.2兆円の見込みであり、前年度から+0.5兆円の増加となり、予算を+0.5兆円上回った。企業収益が過去最高を更新する中、コーポレート・ガバナンス改革を受けた株主還元強化の動きと相まって、上場企業の配当総額は過去最高となっている。

【株式譲渡】〈源泉分・申告分〉

株式譲渡税収は1.0兆円の見込みであり、前年度から+0.4兆円の増加となり、予算を+0.3兆円上回った。好調な企業業績を支えに、日経平均株価が26年ぶりの高水準を回復し、株式売買が活発化している(日経平均株価:28年平均16,920円⇒29年平均20,209円)。

〈法人税〉※税収全体の約2割

法人税は12.0兆円の見込みであり、前年度から+1.7兆円の増加となった。旺盛な外需や堅調な内需などを背景に、企業業績が大幅に増益したことによる。上場企業の2018年3月期決算(連結)*3を見ると、経常利益は対前期比+16.9%(中間予想+11.6%)、最終損益は対前期比+34.6%(中間予想+17.1%)であり、年明け以降、業績予想の上方修正が相次いだ(増収増益)。

法人税収が前年度から大きく増加したことには以下の4つの要因があると分析している。

(1)旺盛な外需により自動車や機械の輸出が拡大したこと(特に輸送用機器、機械)

(2)素材の市況回復によりマージンが改善したこと(特に化学、鉄鋼)

(3)建設やインバウンド関連を中心に内需が堅調であったこと(特に建設、陸運)

(4)内外の株高等により資産運用が好調であったこと(特に保険)

これらの業種大手は、過去の繰越欠損金をほぼ解消しており、企業業績の増益が法人税収の増加に繋がりやすい。こうした基本的な構図の下、本業の稼ぎが好調なことに加え、運用環境の改善も追い風となり、法人税収が大きく増加した。*4

予算との比較では、29年度予算(12.4兆円)は28年度補正後予算(11.1兆円)を基に見積もったが、28年度補正後予算から28年度決算は▲0.8兆円の減(年明け以降、為替が円高方向に推移したことにより、企業業績が伸び悩んだ)となったため、▲0.4兆円下回った。

なお、前年度から+1.7兆円の増加となったが、特殊要因(大口還付)の剥落(+0.5兆円)、子会社からの受取配当の影響(+0.2兆円)*5を除けば+1.0兆円程度の増加となる。

〈消費税〉※税収全体の約3割

消費税は17.5兆円の見込みであり、前年度から+0.3兆円の増加となり、予算を+0.4兆円上回った。*6個人消費の持ち直しに加え、資源価格(特に原油価格)の上昇による輸入増に伴い、輸入消費税が大きく増加したことによる。

個人消費の動向を見ると、民間最終消費支出は対前年度比+1.2%の増であり、28年度(同▲0.2%)から持ち直している。

財貨・サービスの輸入は対前年度比+11.6%の増であり、3年ぶりに増加に転じている。品目別の輸出入動向をまとめた貿易統計(通関ベース)によると、29年度の輸入は原粗油、液化天然ガス等の品目が増加しており、金額で+13.6%増(4年ぶりの増加)、数量で+3.3%増(2年連続の増加)であった。

また、財貨・サービスの輸出は対前年度比+10.3%の増であり、3年ぶりに増加に転じている。

(注)消費税収の構成を見ると、国内取引に係る収納(国税庁分)が17.5兆円(対前年度+0.2兆円)、輸入取引に係る収納(税関分)が4.9兆円(同+0.5兆円)、輸出等に係る還付が▲4.9兆円(同▲0.4兆円)であった。収納額全体が22.4兆円(対前年度+0.7兆円)となり、対前年度比+3.2%の高い伸びとなったことは、後述のとおり、輸入消費税が年度内に仕入税額控除し切れないことによる。

〈その他〉

その他の税目は10.4兆円の見込みであり、前年度から+0.1兆円の増加となり、予算を+0.2兆円上回った。大きく増減した税目は以下のとおりである。

◇相続税は2.3兆円の見込みであり、前年度から+0.2兆円の増加となり、予算を+0.2兆円上回った。株価上昇等により財産価格が増加したことによる。

◇たばこ税は0.9兆円の見込みであり、前年度から▲0.0兆円の減少となり、予算を▲0.1兆円下回った。紙巻きたばこの販売が減少し、加熱式たばこの販売が増加したことによる。

◇関税は1.0兆円の見込みであり、前年度から+0.1兆円の増加となり、予算を+0.1兆円上回った。牛肉等の肉類の輸入が増加したことによる。

このように、29年度決算税収は前年度から+3.3兆円の増加となったが、このうち、法人税の特殊要因(大口還付)の剥落(+0.5兆円)、制度改正によるもの(+0.2兆円)*7、ストック価値の影響を受けるなどGDPの伸びに連動しにくいもの(株式譲渡、配当、相続税:+1.0兆円)が含まれており、これらを除くと前年度から+1.6兆円の増加となる。

(注)税収の上振れ(当初予算*8を上回ること)の主な要因は、

(1)GDP(フロー)の伸びに連動しにくいもの(配当税収(企業の資本政策に影響)、株式譲渡税収(ストック価値に影響)など)*9

(2)景気回復局面における一時的なもの(法人の繰越欠損金解消による課税ベースの拡大など)

に大別される。GDP(フロー)の伸びに連動しやすいもの(給与税収、消費税収)は、当初予算から大きな乖離なく推移しており、今後、繰越欠損金の解消効果が逓減していく中、税収(配当及び株式譲渡を除くベース)は経済成長と整合的な形で増加していくものと思われる。

3.29年度限りの一時的な押し上げ

29年度予算を+1.1兆円上回ったうち、29年度限りの一時的な押し上げは+0.4兆円程度と見込まれ、その内訳は以下のとおりである。これを除くと今後の税収増に寄与する分(土台増)は+0.7兆円程度になるものと見込まれる。*10

〈所得税:+0.3兆円程度〉

▲好調な企業業績を背景に、子会社から持株会社への配当支払いが増加したが、これに係る源泉所得税は翌年度に還付される(+0.1兆円程度)。*11

▲株価が昨年末にかけて連騰して大きく上昇したが、年明け、世界同時株安のあおりを受けて一旦下落した。その後、若干回復したが、年始の高値に戻っていない(+0.2兆円程度)。*12

〈消費税:+0.1兆円程度〉

▲資源価格の上昇につれて、年度後半にかけて輸入額の伸びが強まったため、輸入消費税が年度内に仕入税額控除し切れない。*13

4.おわりに

29年度決算税収は、全体としてはバブル期並みの水準となったが、その構成を見ると、バブル期は資産価格上昇により土地等の譲渡所得が増加して所得税収が押し上げられた面が強かったが、29年度は所得税、法人税、消費税の基幹3税がそろって増加しており、バランスのとれたものとなっている。*14

29年度は、内外経済の好調と市場環境の好転に支えられた1年であった。給与の堅調な伸びに加えて、旺盛な外需や堅調な内需などを背景に、企業業績が大幅に増益したこと、また、それを反映して配当や株式譲渡が大きく増加したこと等の好条件が重なり、それが税収にも反映された。

今後、貿易摩擦など海外経済の不確実性や金融資本市場の変動等が生じうる中で、経済や市場を取り巻く好環境が続くかどうかを含めて、注視していく必要があると考えている。

また、財政の現状を見ると、歳出が歳入(税収)を上回る状況が続いている。30年度の税収は3年度以来の高水準を見込んでいるが、税収等では歳出全体の約2/3しか賄えておらず、残りの約1/3は借金(公債金)に依存している。*15財政健全化に向けて、必要な歳入の確保を図るため、税制の役割のひとつである財源調達機能の向上に取り組んでいくことも重要である。*16

図表 (参考1)29年度一般会計税収

図表 (参考2)29年度決算税収と30年度税収への影響

図表 (参考3)一般会計税収の推移

図表 (参考4)雇用者報酬と給与税収の推移

図表 (参考5)配当金総額と配当税収の推移

図表 (参考6)株価・株式売買金額と株式譲渡税収の推移

図表 (参考7)企業の経常利益・申告所得と法人税収の推移

図表 (参考8)上場企業の3月期決算(連結)の経常利益伸び率の推移

図表 (参考9)民間最終消費支出と消費税収の推移

*1) 所得税、法人税、消費税の基幹3税で一般会計税収全体の8割強を占めている。

*2) 昨年末の時点で、29年度税収は、所得税は配当税収及び株式譲渡税収が増加する一方、法人税は当初予算より下振れることが見込まれており、全体として当初予算から大きな乖離は生じないと見込まれたため、補正を行わないこととした。

*3) 3月期決算法人は法人税収全体の約6割を占めている。但し、連結決算は海外子会社の損益が反映されるため、連結決算の好調が法人税収の増加に必ずしも繋がらない。

*4) そのほか、製造業では、電気機器が大幅に増益したが、過去の繰越欠損金を抱える企業が多い。非製造業では、商社が大幅に増益したが、収益の大半である海外子会社からの配当は益金不算入である。このため、法人税収の増加に繋がらない。

*5) 子会社が親会社に配当金を支払う場合、当該配当金は、翌期の親会社の利益に計上されるため、当該配当金に係る源泉所得税額の法人税額からの控除も翌期にずれ込む。このため、29年度は申告税額の伸びが申告所得の伸びを上回ったものと見込まれる。これは、法人税収に影響するが、配当税収を含む税収全体に影響しないため、後述の29年度限りの一時的な押し上げには寄与しない。

*6) 予算との比較では、29年度予算(17.1兆円)は28年度補正後予算(16.8兆円)を基に見積もったが、28年度補正後予算から28年度決算は+0.4兆円の増となったため、+0.4兆円上回った。

*7) 例えば、27年度税制改正では、27・28年度において法人税の先行減税を行った(▲0.2兆円)。

*8) 毎年度の予算編成における税収見積りは、その時点までの課税実績や政府経済見通しの諸指標等を基礎として個別税目ごとに積み上げて行っている。

*9) 上場企業の配当や株価の水準は、海外子会社の損益も反映した連結決算をベースに判断する流れとなっていることからも、配当税収や株式譲渡税収はGDPの伸びに連動しにくいといえる。

*10) 「中長期の経済財政に関する試算」との関係では、29年度決算税収が(予算での見込より)増加した分は、30年度以降の税収を増加させる一つの要因となりうる。一方、さらなる税収増が実現できるかどうかについては、今後、「成長実現ケース」が想定している成長パス(名目3%超)をどこまで達成できるかにもよる。

*11) 親会社が子会社から受け取る配当に源泉所得税が課されるが、当該所得税額は、法人税の前払いとして、親会社の確定申告の段階で法人税額から控除される。親会社が持株会社である場合は法人税を納付していないことから、当該所得税額を控除し切れないため、還付されると見込まれる。当該還付は、配当に係る所得税が源泉徴収された年度の翌年度に生じる。

*12) 上場株式等の譲渡益について、源泉徴収口座(特定口座)に係る税額は、暦年単位で計算される。昨年末時点で29年度の株式譲渡税収を1.0兆円と見込み、これを基に30年度の株式譲渡税収を同程度と見積もっている。

*13) 輸入消費税は、仕入税額控除により、確定申告の段階で売上税額から控除されるが、国の決算時期と企業の決算期が異なることにより、輸入消費税の仕入税額控除が翌年度にずれ込む。29年度は年度後半にかけて輸入額の伸びが強まったため、輸入消費税が年度内に仕入税額控除し切れなかったと見込まれる。

*14) 過去最高の税収は2年度の60.1兆円、次いで3年度の59.8兆円であり、29年度は過去3番目となる。ただし、所得税収は2年度26.0兆円、3年度26.7兆円であり、このうち分離課税分(利子及び土地の譲渡所得等)は2年度10.7兆円、3年度10.2兆円である。

*15) 一般会計における歳出・歳入の状況を見ると、30年度(予算)は歳出97.7兆円、税収59.1兆円、公債発行33.7兆円である。一方、3年度(決算)は歳出70.5兆円、税収59.8兆円、公債発行6.7兆円であった。

*16) 国民所得に対する租税負担率(国税分)を見ると、30年度(予算)は15.2%となっている。一方、3年度(決算)は17.1%であった。

財務省の政策