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G20ブエノスアイレスの概要(2018年7月21日〜22日開催、於:アルゼンチン・ブエノスアイレス)

国際局国際機構課長 緒方 健太郎/課長補佐 瀧村 晴人/企画係長 西岡 凌

2018年7月21日〜22日にかけて、アルゼンチン・ブエノスアイレスにて、G20財務大臣・中央銀行総裁会議(以下「G20」)が開催され、日本からは麻生副総理兼財務大臣と黒田日本銀行総裁が出席した。2日間にわたり、世界経済、インフラ、低所得国の債務問題、暗号資産、国際課税など多岐にわたり議論が行われた。

今回のG20では、貿易等に関する議論への世間の注目も高まる中で、日本としても積極的に議論に貢献し、マクロ経済政策や為替について、G20のこれまでのコミットメントを再確認することができた点が大きな成果である。本稿では、主な議論の概要を紹介したい。

参考1)参加国・国際機関

(ア)G20:G7(日本、カナダ、仏、独、伊、英、米、EU)、アルゼンチン、豪、ブラジル、中国、インド、インドネシア、韓国、メキシコ、露、サウジアラビア、南アフリカ、トルコ

(イ)招待国:チリ、オランダ、シンガポール、スペイン、スイス

(ウ)国際機関:東南アジア諸国連合(ASEAN)、アンデス開発公社(CAF)、金融安定理事会(FSB)、グローバル・インフラストラクチャー・ハブ(GIH)、国際通貨基金(IMF)、経済協力開発機構(OECD)、米州開発銀行(IDB)、国際決済銀行(BIS)、世界銀行(WB)、金融活動作業部会(FATF)、国連(UN)

1世界経済

今回のG20は、世界経済が引き続き堅調に推移する一方、新興国経済の金融脆弱性や、貿易関係の緊迫化というリスクが強く認識される中で開催された。

麻生大臣からは、先進国で金融政策の正常化が徐々に行われつつある中で、中国を含めた新興国における通貨下落が資本流出圧力を招き、世界金融市場のリスクとなり得る点についての懸念を指摘した。さらに、保護主義が伸長する背景にも取り組んでいく必要があるということ、及び構造的な成長の停滞や格差問題に対処するため、必要な構造改革を着実に実施していくベきであるということを主張した。加えて、経常収支の過剰なインバランスの解消は、二国間ではなく多国間で解決すべきものであり、関税の賦課等による調整ではなく、貯蓄や投資のバランスといったマクロ経済政策や構造改革によって対応を行うべき点を主張した。

加えて、日本政府が新たな経済・財政再生計画を決定したことで、財政の健全化目標として2025年の国・地方を合わせたプライマリーバランスの黒字化を目指すということを掲げたことを報告し、後がないという危機感を持って計画に沿った歳出改革に真摯に取り組むということで、この目標の達成を確かなものにしていきたいことを述べた。また、同時に決定した成長戦略を含めた方針に基づいて日本が直面する喫緊の課題である少子高齢化に立ち向かっていきたいという決意を併せて発言した。

議論の結果、会議後発出されたコミュニケ(共同声明)において、前回のG20サミット(本年3月亜・ブエノスアイレス)に続き、マクロ経済政策に関しては、金融・財政・構造政策の「全ての政策手段を用いる」こと、為替に関しては、「為替レートの過度な変動や無秩序な動きは、経済及び金融の安定に対して悪影響を与えうる」ことが再確認された。

また、貿易に関しては、「ハンブルク・サミットでの貿易に関する首脳の合意を再確認」するとともに、「リスクを緩和し信認を高めるための対話や行動を強化する必要性」が認識された。麻生大臣からは、保護主義的な措置による内向き政策というのはどの国の利益にもならず、自由で公正なルールに基づく貿易を通じて世界経済の成長を高めていくことが非常に重要である旨の発言を行った。

2仕事の未来

本年のアルゼンチン議長下では、優先分野の一つとして、技術革新が経済や雇用に与える影響を取り上げており、これを「仕事の未来(Future of Work)」と呼んでいる。今回の会議では、技術変革を取り入れるに際して、その便益が広く共有されることを確保し、技術変革によって個人、事業及び政府にもたらされる課題に取り組むこととされ、「仕事の未来のための政策選択メニュー」が支持された。

3インフラ

アルゼンチン議長下でのもう一つの優先分野として、インフラストラクチャー投資の推進が挙げられている。今会議では、「インフラ投資をさらに押し上げるとともに、成長と発展を支えるための『インフラを投資対象とするためのロードマップ』の進展が歓迎」された。

麻生大臣からは、インフラをアセットクラスとして確立するために、投資家にとって魅力のあるプロジェクトをつくるということが重要であることを述べた。さらに、インフラをアセットクラスとするためにも、インフラ投資の質の高さが重要であるということを強調し、質の高いインフラ投資というものが、包摂的な成長を持続させるということなどを指摘した。

4国際金融アーキテクチャ

麻生大臣からは、IMFのクォータ改革については、借入資金の果たす重要な役割を反映すべきという日本の立場を主張した上で、加盟国間の意見に隔たりが残っていることからIMFで議論を継続していくべき旨、発言した。会議においては、「強固で、クォータを基礎とし、かつ、十分な資金基盤を有するIMFを中心としたグローバル金融セーフティーネットの更なる強化へのコミットメント」が再確認された。

資本フローの監視及び資本フローに伴うリスクの管理に関する取組は、日本がG20等においてその強化の重要性を主張してきた。今回の会議においては、「3月に合意した取組を引き続き進めていく」ことが確認された。麻生大臣からは、資本フローの管理政策の適否を整理したIMFの作業を歓迎し、さらなる事例の蓄積を期待する旨、発言した。

低所得国の債務問題に関しては、麻生大臣から、低所得国における債務の積み上がりに対する懸念を表明し、債務の透明性向上を通じた持続可能性確保のためには、借り手、貸し手、相互の取り組みが不可欠であると発言した。会議においては、「債務の透明性及び持続可能性の向上や、債務者及び公的・民間双方の債権者による持続可能な金融慣行の改善に向けて取り組む」ことが確認された。

5金融セクター

金融セクター改革に関しては、「金融システムは引き続き、開かれ、強靭で、成長を支えなければならない」こと、「金融危機後の規制改革の完全、適時、かつ、整合的な実施及び最終化と、その影響の評価を行うことにコミットすること」、及び「金融システムにおいて生じつつあるリスク及び脆弱性を引き続き監視し、必要に応じ対処する」ことが確認された。

仮想通貨に関しては、3月の会議で「暗号資産*1」と定義され、それが「ソブリン通貨の主要な特性」を欠いていると指摘されたが、今回の会議において、「現時点でグローバル金融システムの安定にリスクをもたらしていないものの、引き続き警戒を続ける」ことが合意された。麻生大臣からは、技術革新は金融システム及び広く経済に重要な便益をもたらし得る一方で、暗号資産に関しては、消費者及び投資家保護、市場の健全性、脱税、マネロン・テロ資金供与などに関する問題や金融システムの安定への潜在的なリスクを考えて、FSBなどの基準設定主体に対してリスクを監視し、多国間での対応について評価するため、さらなる作業を期待するとともに、FATFに対して今年10月にFATF基準がどのように適用されるか明確にすることを求める旨、発言した。

6国際課税

国際課税のセッションでは、麻生大臣からは、まずG20が政治的機運の維持に引き続き大きな役割を果たすべきであること、また、電子経済に対する課税上の課題に関し、2020年までに長期的解決策を求めることとされており、時間も限られていることから対象を絞って検討を進めることが有用であることが主張された。税の透明性に関しては、非協力的法域を特定するための基準の強化について、新基準に基づくリスト作成プロセスを通じて各国における税の透明性向上の取組みを促すことが重要である旨、発言した。

7金融包摂及びテロ資金供与対策

金融包摂及びテロ資金供与対策のセッションでは、麻生大臣がリードスピーカーを務めた。金融包摂に関しては、麻生大臣から、経済成長、金融の安定性、格差の縮小のため、G20が取り組むべき重要な課題であり、G20の専門家グループであるGPFIが取りまとめたデジタル技術を用いた金融包摂に関する報告書を支持する旨の発言を行った。また、GPFIは高齢者を金融包摂が必要な対象としており、我が国における課題を紹介するとともに、今後この点に関して議論を深めていくことへの期待を表明、同時にGPFIがG20の優先課題や主要テーマに即した議論を効率的・効果的に行うため、組織の整理、合理化を行うことを支持する旨の発言を行った。

会議では、「持続可能な資金の動員及び金融包摂の強化は、世界の成長にとって重要であること」が確認された。また、「金融包摂のためのグローバル・パートナーシップ(GPFI)を通じ、金融包摂の向上に重要な進展が見られてきたものの、GPFIが経済成長、金融の安定及び格差の縮小を引き続き支えていくため、その作業計画及び体制を合理化することを求める」ことが合意された。

テロ資金供与対策に関しては、麻生大臣から、4月にフランスが主催した国際会議の成功および、FATFの新たな議長である米国が大量破壊兵器の拡散金融リスクへの対応を優先課題として位置づけたことを歓迎する旨の発言を行った。

会議においては、「テロ資金供与、マネーロンダリング及び大量破壊兵器拡散資金供与との闘いは続いており、FATF基準の完全、効果的、かつ、迅速な履行を求めること」が確認された。また、「FATFに対し、大量破壊兵器拡散資金供与対策の取組の更なる強化を求める」こと、「テロリスト集団を支える金融網を撲滅するため、個別及び共同の取り組みをさらに進めることにコミットする」との合意がなされた。

写真 共同記者会見の様子

写真 G20ファミリーフォト

*1) FSBにより、法定通貨であるとの誤解を避けるため、暗号及び分散型台帳等で構成される民間金融資産全体を指し「暗号資産」の用語を用いるよう整理された。

財務省の政策