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G20ブエノスアイレスの概要

G20ブエノスアイレスの概要

(2018年3月19日〜20日開催、於:アルゼンチン・ブエノスアイレス)

国際局国際機構課長 三好 敏之/課長補佐 瀧村 晴人/企画係長 松浦 晃弘

2018年3月19日〜20日にかけて、アルゼンチン・ブエノスアイレスにて、G20財務大臣・中央銀行総裁会議(以下「G20」)が開催され、日本からは木原副大臣と黒田日本銀行総裁が出席した。2日間にわたり、世界経済、インフラ、国際金融アーキテクチャ、金融セクター改革、国際課税、テロ資金供与対策など多岐にわたり議論が行われた。

今回のG20は、アルゼンチン議長下で初めての財務大臣・中央銀行総裁会議であり、また、各国における直近の動向から貿易や仮想通貨に関する議論への世間の注目も高かったが、その中で、日本としても積極的に議論に貢献し、マクロ経済政策や為替について、G20のこれまでのコミットメントを再確認することができた点が大きな成果である。本稿では、主な議論の概要を紹介したい。

参考1)参加国・国際機関

(ア)G20:G7(日本、カナダ、仏、独、伊、英、米、EU)、アルゼンチン、豪、ブラジル、中国、インド、インドネシア、韓国、メキシコ、露、サウジアラビア、南アフリカ、トルコ

(イ)招待国:チリ、オランダ、シンガポール、スペイン、スイス

(ウ)国際機関:金融安定理事会(FSB)、国際労働機関(ILO)、国際通貨基金(IMF)、経済協力開発機構(OECD)、国際決済銀行(BIS)、世界銀行(WB)、金融活動作業部会(FATF)

1世界経済

今回のG20は、世界経済が引き続き堅調に推移する一方、2月には各国の株価が一時大きく下落するなど金融市場における変動が高まった中で開催された。木原副大臣からは、直近の金融市場の大きな変動は世界経済のファンダメンタルズを反映したものではないとの認識を示したうえで、現在の世界経済の主なリスクは、主要国の金融政策の正常化に伴う資本フローの変化、地政学的リスクをはじめとする非伝統的リスク、保護主義等の内向き政策、の三つである旨指摘し、世界経済の安定を図るため、これまでのG20において合意されたコミットメントを改めて確認する必要があると主張した。その中でも、非伝統的リスクについては、北朝鮮の脅威に対して国際社会が一致して断固たる行動をとっていくべきであり、北朝鮮との過去の対話が非核化につながっていない教訓を踏まえて対応すべきことや、国連安保理決議の完全な履行をはじめとしたあらゆる手段を講じていく必要がある旨、発言した。

議論の結果、会議後発出されたコミュニケ(共同声明)において、前回のG20サミット(昨年7月独・ハンブルク)に続き、マクロ経済政策に関しては、金融・財政・構造政策の「全ての政策手段を用いる」こと、為替に関しては、「為替レートの過度な変動や無秩序な動きは、経済及び金融の安定に対して悪影響を与えうる」ことが確認された。

また、貿易に関しては、米政権の保護主義的な関税措置を受け、どのような合意がなされるかに注目が集まっていたところ、「ハンブルク・サミットでの貿易に関する首脳の合意を再確認」するとともに、「更なる対話や行動の必要性」が認識された。木原副大臣からは、保護主義的な措置による内向き政策はどの国の利益にもならず、自由で公正な貿易を通じて世界経済の成長を高めていくことが重要である旨の発言を行った。

写真 集合写真

2仕事の未来

本年のアルゼンチン議長下では、優先分野の一つとして、技術革新が経済や雇用に与える影響を取り上げており、これを「仕事の未来(Future of Work)」と呼んでいる。今回の会議では、「デジタル化を含むテクノロジーは、その国境がなく、形を持たないという性質や、認知的作業を自動化する能力の高まりにより、世界経済を根本的に作り変えつつある」という点が指摘され、「すべての人々が恩恵を享受できるよう、国際協調を含む政策対応が必要である」ことが確認されるとともに、政策の選択肢のメニューにつき、7月のG20会合において検討することとなった。

3インフラ

アルゼンチン議長下でのもう一つの優先分野として、インフラストラクチャー投資の推進が挙げられている。今会議では、「インフラは、生産性を向上させ、連結性を強化し、長期の包摂的な成長を維持し、市民に新しい経済への物理的・電子的なアクセスを確保するために、重要」であるにも関わらず、「インフラ整備の資金ギャップが依然として存在している」点が指摘され、「更なる民間資金の動員」の必要性が認識された。そして、「インフラを投資のアセットクラスとして発展させるための必要条件を整備する」ことが合意され、「インフラを投資対象とするためのロードマップ」が支持された。この「ロードマップ」は、インフラをアセットクラスとしていくために必要な措置を取りまとめたもので、規制の枠組みや資本市場、質の高いインフラを含む7つのワーク・ストリームが特定されている。

木原副大臣からは、アルゼンチンの掲げる、インフラをアセットクラスとしていくコンセプトについて、低金利の環境下で投資先を模索する投資家と、途上国における巨額のインフラ資金需要とを結びつけるものであること、そして、2016年9月の杭州サミットでも合意された通り、インフラプロジェクトの質の高さが重要であること等を発言した。

4国際金融アーキテクチャ

IMFの資金基盤に関し、木原副大臣から、引き続きIMF理事会にて検討が進められるべきであり、加盟国からの自発的資金貢献をクォータ改革に反映させることが重要である旨、発言した。会議においては、「強固で、クォータを基礎とし、かつ、十分な資金基盤を有するIMFを中心としたグローバル金融セーフティーネットの更なる強化へのコミットメント」が再確認された。

資本フローの監視及び資本フローに伴うリスクの管理に関する取組は、日本がG20等においてその強化の重要性を主張してきた。今回の会議においては、「引き続き、資本フローを監視し、国際通貨システムの強靭性を向上させるための手段についての理解を精緻化する」ことが認識された。このため、「システミックリスクを限定するマクロプルーデンス政策の重要性を認識」するとともに、資本フロー管理措置への理解を深めることとされた。また、「IMFの『機関としての見解』に基づいた、IMFによる更なる取組み」や、OECD資本自由化コードの見直しへの期待が示された。

低所得国の債務問題に関しては、木原副大臣より、低所得国での公的債務が積み上がっていることは大きな懸念であり、債務の透明性の向上に向けて国際社会が協調して取り組んでいく必要がある旨、発言した。会議においては、「債権者と債務者の両サイドにおいてより高い透明性を求める」ことが確認された。

4金融セクター

金融セクター改革に関しては、「金融危機後の規制改革の主要な要素の完了となるバーゼルローマ数字3の最終化」が歓迎され、「完全、適時かつ整合的な規制改革の実施及び最終化と、実質的な意図せざるいかなる結果も特定・対処し、規制改革がその目的を達成することを確保するための評価を行うことに、引き続きコミット」することが確認された。

注目された仮想通貨に関しては、会議では「暗号資産*1」と定義された上で、それが「ソブリン通貨の主要な特性」を欠いていると指摘される一方、「暗号資産の基礎となる技術を含む技術革新が、金融システムの効率性と包摂性及びより広く経済を改善する可能性を有している」という認識が共有された。木原副大臣からは、中でも国際的協調が特に必要なマネロン・テロ資金供与対策に関し、2015年のFATFガイダンスの内容を拘束力のあるFATF基準に格上げすることを期待するとともに、仮想通貨交換業についての法制度が未整備の国は現行のFATFガイダンスに則り速やかに法整備を進めることが必要である、と発言した。その結果、コミュニケでは、「暗号資産に提供される形でのFATF基準の実施にコミットし、FATFによるこれらの基準の見直しに期待し、FATFに対し世界的な実施の推進を要請」することが確認された。

5国際課税

国際課税のセッションでは、木原副大臣がリードスピーカーを務め、電子経済の課税上の対応につき、各国がバラバラに対応することを避け、国際的な合意に基づく長期的解決策によって対応することが重要であり、来年の日本議長下でも積極的に取り上げたい旨、発言した。また、暫定的措置の導入に当たってはOECDの中間報告書に盛り込まれた考慮すべき事項との整合性を確保すべきこと、税の透明性の向上についてもG20が協力して取り組む必要がある旨、主張した。

会議においては、「経済の電子化が国際課税システムにもたらす影響を分析したOECD中間報告書」が歓迎され、「2019年に進捗状況の報告を、2020年までに合意に基づいた解決策を追求すべく共に取り組むことにコミット」することが確認された。そのほか、「税源浸食と利益移転(BEPS)パッケージの実施に引き続きコミット」することが示されるとともに、「各法域による国際的に合意された税の透明性基準の順守状況を評価するための基準の更なる強化の在り方」について、OECDの提言に期待が示された。

6テロ資金供与対策

テロ資金供与対策に関しては、木原副大臣から、北朝鮮の脅威に対して金融制裁を含めた国連安保理決議の履行をはじめとするあらゆる手段を講じていく必要がある旨、発言した。会議においては、「テロ資金供与、マネーロンダリング及び大量破壊兵器拡散資金供与との我々の闘いの強化にコミット」することが確認された。

【出張者小話】

2018年G20の議長国を務めるアルゼンチンは、会議運営において様々な仕掛けを用いており、非常に興味深かった。

例えば、各国代表の手元にはスイッチが設置されており、会議冒頭で「現下の世界経済における最大のリスクは何か」という質問に対するクイックサーベイを行い、その場で結果を議長国が発表するという取組を行っていた。結果はやはり、保護主義への対応が最大の関心を集めており、各国の立場からすると論争を呼びかねない議題でも、こうしたアンケートで可視化して見せつけられると、ぐうの音も出ない。見事な運営に思える。

また、各国代表の発言時間を3分に制限し、発言中はモニター上に経過時間が表示されていた。参加国の多いG20の会合では、1カ国でも長く発言してしまうと時間切れを起こしやすくなり、不完全燃焼になりかねない(しかも、1国の大臣の発言なので、途中で話を遮るのは至難の業になる)。これもいい工夫だったと言える。

しかしながら、日本を代表して参加した木原副大臣の発言の段になると、同時通訳の音声が流れないトラブルがあり、控えていた我々代表団の皆が肝を冷やす場面もあった。日本が2019年に議長国となる際にはこれを他山の石とし、万全の会議運営を行いたいという思いを強くした出張であった。

写真 共同会見写真

*1) FSBにより、法定通貨であるとの誤解を避けるため、暗号及び分散型台帳等で構成される民間金融資産全体を指し「暗号資産」の用語を用いるよう整理された。

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