現在位置 : トップページ > 広報・報道 > 広報誌「ファイナンス」 > 平成29年9月号 > 対日金融審査について

対日金融審査について

対日金融審査について

主計局次長(前金融庁参事官)  神田 眞人

平成28事務年度は稀にみる当たり年であった。5年に1度のIMF(国際通貨基金)による金融部門審査、所謂、FSAP(金融セクター評価プログラム)に遭遇したほか、FSB(金融安定理事会)によるピアレビュー(相互評価)を初めて受けたのである。本稿では、これら対日審査について簡単に紹介する。

なお、圧倒的な作業量であったFSAPの対応は、私のデピュティーを務めてくれた石谷良男氏を中心に池田賢志氏、小堀琢也氏、清水まりな氏達が献身的に支えてくれた。また、FSBピアレビューは原田佳典氏、高橋寛行氏、江原斐夫氏達が、補論のコーポレートガバナンスレビューは関谷遥香氏、中山隼太氏、佐々木絵里氏達、FATF(金融活動作業部会)関係は関谷康太氏を中心に大城健司氏、曾根邦幸氏達が活躍してくれた。本稿についても、石谷氏、原田氏、両関谷氏の貴重なご協力を得たことに感謝申し上げる。また、本稿は金融庁等の公式見解ではなく、神田の私見にすぎない。

1 FSAP

(1)FSAPの意義

FSAPは、IMFによる金融部門の安定性にかかるサーベランスの最重要プログラムである。アジア金融危機の後、1999年に導入されたが、2008年の国際金融危機を受けて、2009年の見直しにより抜本的に強化され、少なくとも、現存する国際機関による世界の経済関係の審査の中で、最大規模の作業といわれている。特に融資のない先進国向けでこのような深度の作業は余り例をみない。今回の対日審査も、金融庁の主な対面会議だけで150回、参加した当方職員は100人、先方のミッションも大きなものだけで数週間のものが三回あり、20人近くがワシントンDCから参加した。2016年夏から1年近くにわたって、我々とIMFミッションの間で徹底的な議論が行われ、2017年7月26日のIMF理事会を経て、ようやく、結果が確定した。

この審査の結果は金融市場が注目しており、落第点をくらうと金融株が暴落するなど、市場に混乱をもたらすリスクがあるし、制度面の是正要求があると、将来にわたって、FSB審査やIMFの年次4条協議でフォローされ、責められ続けるので大変である。我が国も2003年度の対日審査では、銀行の資本不足や監督制度等の不備が厳しく指摘されて、その対応に苦慮したといわれている。

他方、IMFスタッフの最先端の手法とグローバルな知見から謙虚に学び、本邦金融部門の改善・強化に活用することも重要であるし、改革努力を後押しするものともなりうる。

実際、今回の対日審査の結果は、人口減少、低金利・低成長環境等、日本が直面している課題が共有されたうえで、本邦金融機関の現状は健全と評価しつつも、今後のリスクを適切かつ明確に示し、これに対応すべく金融庁が推進している改革の多くを支持すると共に、幅広く処方箋を示唆している。また、日本が少子高齢化が真っ先に進行する課題先進国であることを捉え、日本の改革努力が日本にとどまらず、世界全体に重要な意義を有していることを謳っている。硬直的で重箱の隅をつつくような審査とはならず、このような大きな視座からの分析を享受できた背景として、私のカウンターパートであるFSAPミッションチーフのガストン・ジェロス氏が、IMFの金融分析全体の責任者であり、IMF金融安定報告の著者であった幸運も働いていよう。

(2)FSAPの進化

当初、任意であったFSAPは2010年からシステム上重要な金融部門を有する25か国を対象に5年に1度行うことが義務化された。勿論、日本を含み、2013年には29か国(豪、墺、白、伯、加、中、丁、芬、仏、独、香港、印、愛、伊、日、韓、ルクセンブルグ、墨、蘭、諾、波、露、星、西、瑞典、瑞西、土、英、米)まで拡大した。その他の国や地域については任意である。

FSAPは5年に一度、見直しが行われるが、2014年のFSAPのレビューでは、2009年のレビューにおけるマル1脆弱性分析へのリスク評価マトリックスの導入、マル2ストレステストをより広範なリスクをカバーするよう拡充、マル3波及効果分析の進展、マクロプルーデンス枠組、金融セーフティネットも審査対象化といった改善が評価された。その上で、今後は、マル1ストレステストの対象を銀行部門以外に拡張、マル2相互連関性、国境を超えるエクスポージャ、波及効果の分析を強化、マル3ミクロプルーデンス、マクロプルーデンス面の監督やセーフティネットの制度面の枠組みのより体系的な評価の導入の改善が求められた。

これらを踏まえ、今回の対日審査においても、マル1金融安定評価をシステミックリスクに焦点をあてること、マル2相互連関性の深度ある扱いやクロスボーダーのエクスポージャやスピルオーバーのより体系的な分析等の導入、マル3マクロプルーデンス政策のより体系的な取扱い等の改善が観察された。また、4条協議におけるマクロ経済サーベイランスとの整合性の確保についても強化されてきている。

(3)今回対日審査の主な概要

○ 低成長・低金利は、その根底にある少子高齢化という逆風と共に、金融システムにとって、慢性的なチャレンジを課している。緩和的な金融環境に関わらず、低迷する国内需要が、投資と国内与信の伸びを鈍らせている。低金利とフラットイールドカーブと相まって、これらの要素は、世界で最も大きくかつ最も洗練された金融システムの一つである、(日本の)金融システムに持続的なチャレンジを投げかけている。かなりの程度、こうした環境の背景にあるのは、特に少子高齢化という逆風を反映した、性質において構造的なものである。銀行や生命保険会社の収益率は低く、ネット金利マージンは縮小している。多くの先進国は将来同様の逆風に直面するであろうことから、こうしたチャレンジへの日本の対応の重要性は、国境を越えたものである。

○ 日本の金融システムは引き続き安定しているものの、低収益環境は新たなリスクを生み出しており、またプレッシャーは続くであろう。銀行による利回りの追及は、いくつかの銀行の海外活動の拡大につながり、より一般的には、不動産向け貸出しと外債投資の増加につながっている。中小企業へのリスクベースの貸出を増やすという取組みは歓迎するが、多くの銀行は、それに見合った与信審査能力をつけていく必要がある。ストレステストは、市場リスクが増加しており、地銀において幾分の脆弱性があるが、銀行セクターは引き続き概ね健全であると示している。保険会社は、金利保証に見合うだけの利回りを提供する海外投資を進めたが、生命保険会社の経済価値ベースのソルベンシーは著しく低下している。潤沢な円の流動性と全通貨ベースのポジションに比して、特に海外展開をしている地銀のいくつかにおいて、外貨ポジションにおいて潜在的な脆弱性が存在する。

○ 少子高齢化は、日本の金融システムが徐々に構造的に変化していくことを意味するであろう。実証分析によれば、高齢化は、金融仲介機能における銀行の役割を減少させる可能性がある。低需要により、国内の銀行業は取引手続サービスや、手数料サービスに向かってより進化していくであろう。少子高齢化の逆風による影響は、地銀、信金において特に強い。こうしたチャレンジに対処するために金融機関が進めている取組は、リスク無しではなく、また彼ら自身の取り組みそれだけでは不十分かもしれない。

○ 金融監督は著しい改善を遂げてきたものの、こうした新たに生じてきている課題に対応するためには、更なる進展が必要である。銀行、保険、証券会社に亘り生じてきているより洗練された活動にペースを合わせたフル・リスク・ベースの健全性監督をサポートするためには、更なる内部プロセスの進展が鍵となる。コーポレートガバナンスは、銀行・保険セクターに亘って強化される必要がある。資本要求は、個々の銀行のリスクプロフィールにより合わせる必要があり、銀行が他行や他の業種の金融サービス会社との連携を進める中、リスクが蓄積するのを防止するために、関連者に対するエクスポージャーについてより強固なプリンシプルベースのアプローチが必要である。保険会社については、将来の制度に係る確実性は保険会社がビジネスや投資戦略を調整することを助けうるものであることから、経済価値ベースのソルベンシー制度の実施に向け、更なるステップを取るべきである。金融庁・日本銀行連絡会のマンデートの明確化とマクロプルーデンスツールのプロアクティブな拡大により、マクロプルーデンス政策の枠組みは更に強化しうる。

○ それ故、引き続き、マクロ経済・人口動態のトレンドの持つ意味合いについて金融機関とエンゲージしていくことが重要であり、金融機関の持続可能性に懸念が認識された場合には、適時に対応することが重要となる。当局は、銀行が将来の持続可能性に関わる根底にあるトレンドの意味を完全に理解することを確保するために、銀行の取締役会やシニアマネジメントと更にエンゲージするとともに、金融機関がもはや存続不可能な時には、金融機関の退出を促進するよう迅速に行動することが推奨される。地銀は、手数料収入を伸ばすことを検討するよう推奨されるべきである。合併のみでこれらチャレンジに対応するには不十分かもしれないが、地銀の合併は、規模の経済をもたらすとともに、地方におけるより小さな金融システムへの移行をスムーズにするかもしれない。金融業界による金融サービスの提供は、引き続き高齢化社会の要求に適応していく必要がある。

○ 多くの銀行のビジネスモデルに対するこれら長期的なチャレンジは、大きなシステミックに重要な金融機関の存在と相まって、強固な危機管理と破綻処理制度枠組みの必要性を強調している。破綻処理制度の枠組みや、再建・破綻処理計画において、重要な進展はあったものの、更なる改善の余地がある。破綻処理制度における様々な手段が取られ得る状況に関する曖昧さと、制度の複雑性は、破綻処理の実行を困難なものとし、それ故公的支援に対する期待に結びつくかもしれない。遅滞なく監督権限が行使されることを確保するための更なるステップが当局の早期介入の枠組みに、より確固とした形で埋め込まれるべきである。破綻処理ツールキットの拡張、CCPへの拡大を含めた(破綻処理に係る)法的枠組みの強化及び明確化、及びオペレーショナルな側面における改良は、当局の用意と市場の期待・インセンティブの舵を切る(steer)ことを助けるであろう。

(4)今次対日審査の主な勧告

(分野横断的課題)

・銀行・保険セクターに亘り取締役会の独立性とシニアマネジメントによる監督機能の強化のためにコーポレートガバナンスの基準の更なる引き上げ

・銀行・保険・証券会社に対するフル・リスク・ベースの監督をサポートするための更なる内部プロセスの発展

・重要な監督事項における金融庁・日銀の独立性強化の検討

(システミックリスク)

・銀行のソルベンシー及び流動性についてのリスク分析及び保険会社のソルベンシーについてのリスク分析のための独自の監督ストレス・テスト・モデルの構築、及び定期的な大口与信先に係るストレステストの実施

・引き続き重要な外貨に対する定期的な流動性テストを実施するとともに、十分なカウンターバランス能力、特にHQLAの保持を銀行に求めること

(金融監督)

・リスクプロファイルに基づいた銀行毎の資本要求

・関連者取引に対するより特化した定期的な報告、及びよりプロアクティブな調査の導入

・保険会社の経済価値ベースのソルベンシー制度実施に向け更なるステップを取ること

・システム上重要な証券会社に対する監督について、経験を積んだスタッフを十分に確保し、海外業務をオンサイトでモニタリングすることで強固な監督を確保すること

・CCPの再建計画に関する課題への対処

・クリアリングメンバーを通じたコンテ―ジョンリスクを最小化し、クリティカル・サービスの継続性を確保しつつ、極端なストレスシナリオを含むことで、JSCCの再建計画を更に強化すること

(マクロプルーデンス政策)

・金融庁・日本銀行連絡会のマンデートの明確化

・分野別ツールを含む、マクロプルーデンスツールのプロアクティブな強化の検討

・引き続き、システミックリスクの分析対象の拡大及び深化を進めること

(危機対応、破綻処理、及び金融セーフティーネット)

・破綻処理ツールの選択に係る曖昧さの除去、法的ベイルイン権限の導入、破綻処理の早期開始を可能とするためのトリガーの明確化、及び裁判所の関与が効果的な破綻処理の妨げとならないことの確保による破綻処理制度の強化

・当局間の危機対応フォーラムを通じた危機対応及び当局間の調整の強化

・国際的なガイダンスに従い、CCP及びその他のFMIオペレーターについて秩序ある破綻処理制度を構築すること

・より早く早期是正措置を取ること、及び破綻処理に至るまでの明確な道筋を示すこと

・損失吸収能力(loss-absorbing capacity)の構築を求められる対象金融機関の範囲の拡大の検討

・日銀特融の制度の強化及び破綻処理時における一時的な公的資金の活用要件の引き締め

(金融仲介機能)

・引き続き、マクロ経済・人口変動の傾向の影響について金融機関とエンゲージしていくこと、及び個別の金融機関の存続可能性に問題が見つかった場合には、タイムリーにアクションを取ること

・新たなビジネス活動に合ったリスクマネジメントの構築を銀行に促すこと

・中期的な収益性の懸念に対応するため、地銀や信金に対してコスト削減、統合、収益の多様化及び手数料構造の見直しを促すこと

・信用保証のカバレッジの引き下げ

2 FSB対日ピアレビュー

(1)経緯

FSBでは、FSBメンバー国における規制・監督の実施状況や有効性をレビューするために、IMF・世銀が行うFSAPの指摘事項に焦点を当てて、2010年より毎年2、3か国ずつ、順次国別ピアレビューを実施している。ピアレビューでは2つ程度のテーマを設定した上で、それらに関する対象国の最近の取組みの評価と、更に取組みを進めていくための指摘事項(提言)が提示されるが、最近は特にマクロプルーデンス政策、金融機関の破綻処理、ノンバンクをテーマとして実施されることが多い。これまでに、FSBメンバー25カ国のうち、20カ国に対するピアレビューが終了し、その報告書が公表されている。

日本に対しては、2015年より最初の国別ピアレビューが、マル1マクロプルーデンス政策、マル2金融機関の破綻処理をテーマとして実施され、2016年12月21日に報告書が公表された。

(2)対日審査報告の概要(これまでの取組みの評価)

報告書においては、マクロプルーデンス政策と金融機関の破綻処理のいずれについても進捗がみられるとの評価が得られた。

マル1マクロプルーデンス政策

前回のFSAP以降、マクロプルーデンス政策の枠組みの強化のための重要なステップが実施されている。

ローマ数字小1)制度的枠組み

2014年6月から金融庁・日本銀行連絡会が開催されており、ハイレベルでの定期的な金融システムにおけるリスクの分析や評価に関する意見交換が実施されている。また、2016年3月からは、国際金融市場の動向に関する金融庁・財務省・日本銀行の会合が設置され、定期的に開催されている。

2015年には金融庁内にマクロプルーデンス総括参事官室が設置され、主に金融市場や銀行セクターの動向を中心に、監督局や検査局と協働しながら、マクロプルーデンスの観点からモニタリングを実施している。マクロプルーデンス分析の結果は関連部局を含め庁内に共有されており、金融システムにおけるシステミックリスクについて金融庁内の幹部レベルの会議で議論されている。

ローマ数字小2)データ収集と共有

金融庁・日本銀行において、例えばクロスボーダーエクスポージャーや外貨調達ミスマッチに関するデータ収集を強化するなど、データ収集の改善が図られている。また、リスク分析のための市場情報の活用も向上している。

ローマ数字小3)分析枠組み・リスク評価

前回のFSAP以降、ダッシュボードやヒートマップ、早期警戒指標の活用やボトムアップストレステストの実施など、金融庁と日本銀行において、リスク評価のためのツールの強化がなされている。

ローマ数字小4)コミュニケーションと透明性

金融庁と日本銀行において、金融安定上のリスクの評価に関する対外的なコミュニケーションや透明性の向上が図られている。金融庁では、2014年以降、様々な金融機関の動向や、金融機関のビジネスモデルのリスクや妥当性の分析等を記した金融モニタリングレポートを公表している。また、日本銀行では、日本の金融システム全体の状況についての分析・評価を目的として、金融システムレポートを公表している。

マル2金融機関の破綻処理

業界横断的な破綻処理制度を作った国は、FSB加盟国にも殆どなく、2013年の改正預金保険法は、日本の破綻処理制度の大幅な強化を示している。

・日本の破綻処理制度は、広範な処理権限を提供している。更に、当局は、再建・破綻処理計画策定の対象をD-SIBsにも拡大するとともに、G-SIBsの望ましい破綻処理戦略を策定した。

(3)対日審査の指摘事項(提言)

(2)で述べたこれまでの取組みに対する評価を踏まえ、両テーマにおける更なる進捗を促すための指摘事項(提言)が示されている。

マル1マクロプルーデンス政策

上記のように、我が国におけるマクロプルーデンス政策の取組みについて評価をする一方で、(ローマ数字小1 )システムリスクの評価及びその政策上の含意を幹部レベルで議論するための明確なプロセスの策定が必要、(ローマ数字小2 )システムリスクに関する金融庁と日本銀行の連携が限られている、(ローマ数字小3 )ノンバンクセクターによるシステムリスクの評価をはじめ、リスク分析を拡充する必要がある、といった点が指摘されている。これらに対応するための取組みとして、以下の指摘事項(提言)が示されている。

ローマ数字小1 )金融安定に係る制度的枠組みを、 (a)システムリスクの評価や政策を議論する当局内部のプロセスを、明示的に幹部レベルで行うものへと更に発展させる、(b) 金融庁・日本銀行連絡会に堅固な制度的基盤を整備すべき(正式なマンデートの付与、参加当局の拡大など)。

ローマ数字小2 )金融庁と日本銀行の間におけるシステミックリスクに係るデータ共有や共同の分析作業(ストレステストや相互関連性の分析)等を促進することにより、リスク評価枠組みの連携を進めるべき。

ローマ数字小3 )金融庁と日本銀行は、 (a)ストレステストの対象をSIBs以外へ拡大、(b)ノンバンクセクターのリスク評価を向上、(c)ソブリン債と金融安定性の相互連関性に関する分析の充実、によるシステムリスク分析の拡充を検討すべき。

マル2 金融機関の破綻処理

1)市場参加者に対する明確性を高め、破綻処理制度の信頼性を向 上させ、適時の破綻処理が可能となるよう、(a)「危機対応措置」と「秩序ある処理」の違いを明確化し、(b)「債務超過のおそれ」という概念を詳細化した、透明かつ公式のガイダンスを策定すべき。

2)破綻処理における一時的資金供与についての市場の期待と当局の意図の間のギャップを最小化するため、(a)金融機関の破綻から生じる損失補填は、まず民間資金に頼ることを意図していること、(b) 当局による資金援助は最終的には業界から回収されることが期待されていることを、パブリックコミュニケーションの中で明確化すべき。

3)国際的な議論を踏まえ、システミックに重要なノンバンク金融機関について、業態別の破綻処理対応や破綻処理戦略を策定すること を考慮すべき。

4)裁判所の関与が適時かつ実効的な破綻処理の実施を妨げることのないよう、破たん処理計画の中で裁判所の関与のあり方に留意すべき。

3 その他

(1)FSBテーマ別ピアレビュー

○ OECDやFSBでは、各国の進捗状況を点検したり、政策を進化させるといった目的で、政策テーマ別のピアレビューも行われている。FSBにおいては、2010年から本稿2.の国別ピアレビューと共に、テーマ別ピアレビューが実施されており、国際的な基準やFSBにおける合意事項の実施状況をストックテイクし、メンバー国間での経験共有機会の提供や、競争(race to the top)等を通じた更なる実施の推奨を企図したものである。

2017年度はFSBにおいて、金融機関におけるコーポレートガバナンスについて実施された。また、後述のとおり、2018年度はOECDコーポレートガバナンス委員会において、企業統治規律適用の柔軟性と比例性について実施されることとなっている。

マル1コポガバ ピアレビューの経緯

2015年12月のFSB・SCSI会合において、テーマの1つとして、コーポレートガバナンスが選定され、2016年前半にToR、質問案等が断続的に議論された。FSBが本テーマを扱うにあたり、「FSBの作業に関連の深い原則に対象を限定すべき」との多数の意見が出され、マル1OECD・コーポレートガバナンス原則(CG原則)を本ピアレビューの唯一の基準として採用し、マル2同原則中、第1章(有効なコーポレートガバナンスの枠組みの基礎の確保)、第5章(開示及び透明性)、第6章(取締役会の責任)に中心的に依拠し、マル3対象を上場金融機関に限定し、レビューを実施することとされた。

7月に質問が発出され、2016年秋〜17年春にかけ、分析結果が主にSCSI会合(テレコン含む)にて議論された。また、16年11月、17年3月のOECD・CG委員会本会合において、ピアレビュー・チームのヘッドであるマリサ・ラゴ前米財務省次官補等が分析結果を発表し、同委メンバーからの指摘も踏まえ、最終的に2017年4月に報告書が公表された。

マル2 報告書の主な内容

報告書においては、

・多くの国で、包括的なCG枠組みが導入されているが、複数の関連法令等や当局機関間で、義務付け・推奨事項の整合性や責任分担が不明瞭であれば、実効性に悪影響を及ぼしうる。

・企業の規模等に応じた一定の比例性(proportionality)が導入されているが、所有・支配形態や地理的要素、企業の発展段階等に応じた制度設計も検討可能。

といった分析結果が示された。

また、FSBメンバー国、OECD等の基準設定主体、金融機関等に対し、12の提言が示されたところ、主な内容は以下の通り。これらの提言はあくまで推奨事項であるところ、今後特段のフォローアップ等は予定されていない。

・効果的なガバナンス枠組みの基礎の確保:CG枠組みが複数の法令等や当局機関にまたがっている場合、これらが整合的に機能することの確保。

・開示と透明性:支配形態、投票方式、株主間の合意、株式持合い等に関する開示の改善。

・取締役会の責任:倫理憲章の採択、取締役会の評価等。

・株主の権利と公平な取扱い及び主要な持分機能:報酬方針や取締役等への報酬総額に係る投票権の確保。

・その他:関連当事者取引の枠組み、取締役会における独立取締役の役割と責任。

本ピアレビューによる推奨も踏まえて、OECDコーポレートガバナンス委員会の2017年ピアレビューにおいて、企業統治規律適用の比例性・柔軟性が取り上げられることとなった。成長促進や市場の統合性維持等に貢献するために、各国のコーポレートガバナンス枠組みに、どのような制度設計の工夫が加えられているか、調査・分析が進められている。

(2)FATFピアレビュー

マル1FATFの機能

FATFは、マネー・ローンダリング(資金洗浄)対策における国際協調を推進するため、1989年のG7アルシュ・サミットにおいて設立された政府間会合であり、OECD内に事務局が置かれている。2001年9月の米国同時多発テロ以降は、テロ資金供与対策に関する国際的な協力についても指導的な役割を果たしている。ここでは、マネロン・テロ資金対策に関する国際基準であるFATF勧告の策定及び見直しを行っているほか、加盟国等(2017年6月現在35ヶ国・2地域機関)におけるFATF勧告の遵守状況を加盟国等が相互に監視(相互審査)するとともに、非加盟国についても、各地域(アジア太平洋・カリブ・南米・アフリカ等)のマネロン・テロ資金対策機関等と協力しつつ、マネロン・テロ資金対策推進のための支援活動を実施している。また、マネロン・テロ資金対策に非協力的な国・地域を特定・公表し、是正措置を求めるなど、各国におけるFATF勧告の着実な実施を促している。

マル2FATF相互審査の位置づけとインパクト

1)FATF第3次対日相互審査の結果は2008年10月15〜17日ブラジルで開催されたFATF全体会合において採択され、同年10月30日(木)にFATFより対日相互審査報告書の概要が公表された。そこでは、以下の主な指摘を含め、当時あった全49の勧告中25について不備(Non-Compliant又はPartially Compliant)が指摘された。

・テロ資金供与の犯罪化が不完全(テロ行為へのアジトの提供など物的支援も処罰対象とすべき)

・金融機関、非金融機関に対し適用のあるマネー・ローンダリング及びテロ資金供与の予防措置に関し、顧客管理の要件や義務の一部欠如

・テロリストの資産凍結に関する仕組みが不完全(国内における資金移動防止に不備)

・パレルモ条約(国際組織犯罪防止条約)の未締結

日本はFATFによる相互審査結果のフォローアッププロセスを通じ、数年にわたりその対応に追われ、2011年4月には犯罪収益移転防止法を一部改正(2013年4月全面施行)する等対応を実施してきた。しかしながら、上記の指摘に完全対応するための法改正等を速やかに実施しないままでは、いずれFATFのブラックリストに掲載され、本邦金融機関が国際金融から排除されるリスクがあったところ、実際、日本は立法措置の進展が遅れたことから、2014年6月27日にはFATFから日本に対し、迅速な対応を促す声明が公表された。

こうして日本は「最も対応が遅れている国」(財務省)と警告されたことを受けとめ、2014年秋の臨時国会において、以下のとおりいわゆるFATF関連三法を成立させ、所要の法制度の改善を実施した。

・テロ行為への資金支援だけでなく、土地、建物、物品、役務の提供等の物質的支援についても処罰の対象とする「改正テロ資金提供処罰法」を成立させ、同年12月に施行

・国際テロリストによるクロスボーダーの取引(外為法の対象)に加え、新たに国内取引を規制する「国際テロリスト財産凍結法」を成立させ、同法政省令とともに2015年10月に施行

・疑わしい取引の届出に係る判断方法に関する規定の整備や、事業者の体制整備等の努力義務の拡充等を内容とする「改正犯罪収益移転防止法」を成立させ、同法政省令とともに2016年10月に施行

こうした改善実施の結果、日本は漸く、2016年10月に第3次相互審査のフォローアッププロセスから事実上の卒業を果たした。

2)2012年に改定されたFATF勧告(それまでのマネロン対策に関する「40の勧告」とテロ資金対策に関する「9の特別勧告」を整理・統合し、新「40の勧告」に改定)に基づき、2014年より、加盟国等の第4次相互審査が順次開始されている。第4次相互審査では、法令や金融監督等、制度面の整備状況に加え、制度に則った対策の実効性についても評価が行われており、一層の制度面の充実に加え、マネロンされた財産の没収額や疑わしい取引の報告件数等の定量的なデータにも裏付けられた成果の実績を示し、制度が有効に機能してマネロン・テロ資金対策に効果を発揮していることの証明が求められる。我が国に対する相互審査は2019年から開始され、2020年6月のFATF会合で審査結果が採択される予定である。

上記のとおり、第4次相互審査においてはマネロン・テロ資金対策の有効性を証明するための事前の実績作りがポイントとなることから、日本も関係省庁が連携して着実な対応を準備しているところである。

【参考資料】FSAP対日審査要旨

(1)EXECUTIVE SUMMARY

Weak growth and low interest rates, together with underlying demographic headwinds, are posing chronic challenges for the financial system. Despite accommodative financial conditions, sluggish domestic demand have dampened investment and domestic credit growth. Combined with low interest rates and a flat yield curve, these factors are posing a sustained challenge for the financial system―one of the largest and most sophisticated in the world. To a significant extent, factors behind this environment are structural in nature, reflecting in particular demographic headwinds. Profitability of banks and life insurers is low, and net interest margins are shrinking. Since many advanced economies are likely to face similar headwinds in the future, the importance of Japan’s response to these challenges extends beyond its borders.

While the financial system has remained stable, the low profitability environment is creating new risks, and pressures are likely to persist. The search for yield among banks has led some to expand their overseas activities, and more generally to a growth in real estate lending and foreign securities investments. Efforts to increase risk-based lending to small-and medium-sized enterprises (SMEs) are welcome, but many banks still need to develop commensurate credit assessment capacities. Stress tests suggest that the banking sector remains broadly sound, although market risks are increasing and there are some vulnerabilities among regional banks. Insurers have turned to foreign investments to provide the yield needed to meet the interest guarantees, but economic-value based solvency positions of life insurers have declined substantially. Compared to ample liquidity in yen and on an all-currency bases, potential vulnerabilities exist in foreign currency positions, particularly for some internationally active regional banks.

An aging and shrinking population is likely to imply gradual structural changes in the Japanese financial system. Empirical analysis suggests that aging will likely reduce the role of banks in financial intermediation. With low demand, domestic banking is more likely to evolve toward transactional and fee-based services. The impact of demographic headwinds is particularly strong for regional and Shinkin banks. Actions underway by these institutions to address these challenges are not without risks and may not be sufficient on their own.

While financial oversight has undergone significant improvements, further progress is needed to respond to these emerging issues. Further developing internal processes is key to supporting full risk-based prudential supervision to keep pace with the more sophisticated activities emerging across banks, insurers, and securities firms. Corporate governance needs to be strengthened across the whole banking and insurance sectors. Capital requirements need to be more tailored to individual bank risk profiles, and a stronger principles-based approach to related party exposures is required to prevent risks from building up as banks form alliances with other banks and other types of financial services firms. Further steps should be taken to implement an economic-value-based solvency regulation for the insurance sector, since certainty about the future regime would help companies adjust their business and investment strategies. The macroprudential framework could be further strengthened by clarifying the mandate of the Council for Cooperation on Financial Stability (CCFS) and proactively expanding the macroprudential toolkit.

It is therefore important to continue engaging with financial institutions on the implications of macroeconomic and demographic trends, and take actions on a timely basis when viability concerns are identified. The authorities are encouraged to further engage with bank boards and senior management to ensure that banks fully understand the implications of underlying trends for the future viability of their institutions and act promptly to facilitate the exit of firms when they are no longer viable. Regional banks should be encouraged to consider increasing fee-based income. Consolidation among regional banks may bring valuable economies of scale and scope and smoothen the transition to smaller financial systems at the regional level, although consolidation alone is unlikely to be sufficient to address the challenges. The supply of financial services by the industry should continue to adapt to the demands of an aging population.

These long-term challenges for business models of many banks, combined with the existence of large systemic institutions, highlight the need for a strong crisis management and resolution framework. Despite important advances in the design of the framework and in recovery and resolution planning, there remains room for improvement. The complexity of the framework, and ambiguities regarding the circumstances under which different components of the framework would be used, could prove challenging for implementation and may thereby contribute to expectations of public support. Further steps to ensure that supervisory powers are deployed without delay should be embedded more firmly in the authorities’ framework for early intervention. Expansion of the resolution toolkit, enhancements and clarifications in the legal framework―including its extension to central counterparties(CCPs)―and improvements in operational aspects would help authorities’ readiness and steer market expectations and incentives.

(2)FSAP Key Recommendations

Recommendations and Authority Responsible for Implementation

★Cross-Cutting Issues

マル1Further raise corporate governance standards to bolster independence of board and oversight functions from senior management across banking and insurance sectors (JFSA).

マル2Further develop internal processes to support full risk-based supervision for banks, insurers, and securities firms (JFSA, SESC).

マル3Consider enhancing independence of JFSA and BoJ in key supervisory issues (PM, MoF, JFSA, BoJ).

★Systemic Risks

マル1Develop own supervisory stress testing model for both solvency and liquidity risk analysis for banks, and for solvency risk analysis for insurers, as well as stress test large exposures periodically (JFSA).

マル2Continue conducting liquidity stress testing regularly for significant foreign currencies and require banks to hold sufficient counterbalancing capacity, particularly high-quality liquid assets (JFSA).

★Financial Sector Oversight

マル1Give JFSA the power to set capital requirements for banks based on specific risk profiles (Gov)

マル2Introduce more specific periodic reporting requirements and more proactive investigations into related party transactions (JFSA).

マル3Take further steps to implement an economic-value-based solvency regime for insurers (JFSA).

マル4Ensure robust supervision of the systemically important securities firms by ensuring access to sufficient number of experienced staff and onsite monitoring of overseas operations (JFSA, SESC).

マル5Address recovery planning issues on regulation for central counterparties (JFSA).

マル6Enhance recovery plan further by including extreme stress scenarios while ensuring continuity of critical services and mitigating contagion risks through clearing members. (JSCC).

★Macroprudential Policy

マル1Clarify the mandate of the Council for Cooperation on Financial Stability (JFSA, BoJ).

マル2Consider proactively enhancing the macroprudential tool box, including sectoral tools (JFSA).

マル3Continue to broaden and deepen the scope of systemic risk assessments (JFSA, BoJ).

★Crisis Management, Resolution, and Financial Safety Nets

マル1Strengthen resolution framework by removing ambiguities in the choice of tools, introducing a statutory bail-in power, clarifying triggers to enable early entry into resolution, and ensure that the role for the courts does not hinder effective resolution (JFSA).

マル2Enhance crisis preparedness and coordination via an interagency crisis management forum (MoF, Minister for FS, BoJ, JFSA, DICJ).

マル3Establish an orderly resolution regime, following international guidance, for central counterparties and other FMI operators (JFSA).

マル4Encourage earlier prompt corrective action and provide a clearer path to resolution (JFSA).

マル5Consider broadening the perimeter of institutions to establish loss-absorbing capacity (JFSA).

マル6Strengthen framework for the provision of emergency liquidity assistance and tighten preconditions for the use of temporary public funding in resolution (MoF, BoJ).

★Financial Intermediation

マル1Continue engaging with banks on implications of macroeconomic and demographic trends and take actions on a timely basis when viability concerns are identified for individual institutions (JFSA).

マル2Encourage banks to evolve risk management practices in line with new business activities (JFSA).

マル3Encourage regional and Shinkin banks to review measures such as cost reduction, consolidation, income diversification, and fee structures to address medium term profitability concerns (JFSA, Gov).

マル4Lower coverage of credit guarantees (SME Agency).

財務省の政策