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日EU経済連携協定(日EU・EPA)の大枠合意について

日EU経済連携協定(日EU・EPA)の大枠合意について

〜財務省所管品目の市場アクセス交渉等に関する結果を中心に〜

前 関税局関税課経済連携室長  西村 聞多

1 はじめに

2017年(平成29年)7月6日、日本とEU*1は、これまで約4年3カ月にわたり交渉を続けてきた日EU経済連携協定(EPA*2)の大枠合意に至った。世界のGDPの約3割、人口の約1割、世界貿易の約4割を占める日EUによる、世界で最大級の規模の、自由な先進経済圏が新たに誕生することになる。

経済的意義としては、日EU・EPAは、相互の市場開放等により貿易・投資を活発化し、雇用創出、企業の競争力強化等を含む経済成長に資するものである。また、我が国の成長戦略の重要な柱であり、日本企業の欧州市場進出を促進する。

戦略的意義としては、英国のEU離脱や米国の環太平洋パートナーシップ(TPP)協定からの離脱など、世界的に保護主義的な動きがある中、日EUが自由貿易の旗を高く掲げるとの強い政治的意思を示すことができたことは誇るべき成果であり、世界に対する力強いメッセージでもある。

包括的で、高いレベルの、バランスのとれた本協定は、質の高い協定として、自由で公正なルールに基づく、21世紀の経済秩序のモデルとなるものである。また、日本とEUの間で国際貿易・投資を一層促進させ、日本国民、EU市民の双方が大きく裨益する。政府としては、この大きな成果を日EU間で確たるものにすべく、早急に条文を確定し、速やかに協定を締結できるよう努力していく考えである。

本稿では、以下、財務省所管品目(酒類、たばこ、塩)の市場アクセス交渉等を中心に、日EU・EPAの大枠合意の概要について説明する。

2 日EU・EPAの大枠合意のポイント

日本とEUは、これまで一進一退の厳しい交渉を続けてきたが、日EUが率先して自由貿易の旗を掲げ続けなければならないとの強い使命感を抱きつつ、互いの国内のセンシティビティに最大限配慮しながら、双方が政治的指導力を発揮し建設的な協議を行った結果、今般の大枠合意に至った*3,*4。

〈物品貿易:互いの新規市場の開拓〉

【日本側・主な攻めの分野(EU側としては守りの分野)】

28か国5億人のEU市場は、海外展開を推し進める日本企業・日本産品にとって大きな魅力となる。日本側は、EU関税の撤廃・削減(鉱工業品等の高関税。特に、乗用車10%、電子機器最大14%等)や、輸入規制など日本産品がEU市場で直面する課題の改善等を通じ、日本産品のEU域内での競争力を高め、新たな市場を確保することを目指した。

交渉の結果、これまで我が国の輸出額の約7割においてEU側から関税を課されていたが、今回の合意によって、ほぼ全ての品目で関税が撤廃された*5。これにより、EU市場における競争条件は大幅に改善されることになる*6。特に自動車・自動車部品については、日本側が求める形で自由化を得ることができ、多くの品目で即時撤廃に合意するとともに、そうでない場合も、撤廃期間の短縮を獲得した*7。また、農林水産分野でも、水産物、牛肉、緑茶をはじめとする輸出重点品目のほとんどの品目で即時撤廃を獲得した。

【日本側・主な守りの分野(EU側としては攻めの分野)】

複数の農業国をかかえるEU側は、日本の農産品市場に幅広い関心があった。また、自動車、化学品、食品安全、医療機器、医薬品等の非関税措置にも関心があった。特に関税分野では、EU側は、関心品目(乳製品、豚肉・牛肉、ワイン、加工調製品(パスタ、チョコレート菓子、キャンディー)、皮革・履物)につき、TPP以上の対応を求めた。

国益を守るぎりぎりの交渉の結果、農林水産分野においては、国家貿易制度の維持、関税削減期間の長期化等の有効な対策を確保した。具体的には、米について関税削減・撤廃等からの「除外」を確保したほか、麦・乳製品の国家貿易制度、糖価調整制度、豚肉の差額関税制度といった基本制度の維持、関税割当やセーフガードなどの有効な措置を獲得している。特に乳製品については、全体としてTPP並に抑えることができた*8。

〈GIの相互保護:日本産品の魅力発信・輸出促進〉

EU由来の制度である地理的表示(GI:Geographical Indication)*9は、EU側の関心事項だが、日本側も既に法整備し日本GIの保護を強化している中、日EUが互いの農産品及び酒類GIを保護し合うことに合意した*10。今回の合意によって、日本のGIの生産者が、EU側に直接申請手続を行わなくとも、EUにおいて保護されることになる。これにより、日本GIの国際的保護の確立だけでなく、日本産品の輸出の促進にもつながることが期待される。

今後、国内法に基づいて公示手続を行い、相互に保護を求めるGI産品が確定される予定である。保護する産品や具体的な保護のルールは、公示手続の結果も踏まえて決めることになる。

〈政府調達:互いの市場アクセス改善〉

GDPに占める政府調達市場の比重が高い(11〜12%。日本は6〜7%)EU側は、鉄道分野を始め政府調達に強い関心があり、日本側も鉄道分野を中心にEU政府調達市場に関心がある中で、日EU双方で市場アクセスの更なる改善を講じることに合意した。

日EUともに競争力を有する鉄道分野については、日本側は安全注釈(運転上の安全に関連する調達をWTO政府調達協定(GPA)の対象外とすることができる注釈)を撤廃し、EU側はGPAでは日本企業を除外できるとしている車両を含む鉄道産品の一部の調達市場を日本に開放する。

また、地方自治体については、日本側は、都道府県・指定都市が設立する地方独立行政法人等に対象を拡大するとともに、中核市の一般競争入札による一定基準額以上の調達(建設サービスを除く)に限り、これまでどおり入札参加者の事業所の所在地を資格要件として定めることを可能としつつ、EU供給者も参加できるようにする。

〈国際ルールの確立や協力:日EU間の安定的ビジネス環境創出〉

投資、サービス、知的財産、さらには中小企業の海外輸出のツールとして極めて重要である電子商取引・デジタルデータの利活用について高いレベルのルールに合意した。日EU・EPAを契機に、相互の投資の促進や、環境、安全等に関する規制/標準の策定で日EUが協力し、日EUで世界をリードしていくことが期待される*11。

3 財務省所管品目(酒類、たばこ、塩)の市場アクセス交渉等に関する大枠合意結果の概要

(1) 財務省所管品目関連

EUにとって、ワインはアルコール飲料であるのみならず、ぶどうという農産物に根ざした産品であることが強く意識されており、他の農産物と同じく共通農業政策の下にある。

今回の交渉においては、EU側は欧州を代表する主要輸出品であるワインに関心が高く*12、日本市場におけるチリ産ワインとの競争の観点から、即時撤廃を強く要求する中で、一進一退の厳しい交渉の結果、可能な限り早期の大枠合意の実現という大局的見地から、ワイン関税の即時撤廃を受け入れた*13。

(注1)日チリEPA(2007年発効)により、チリ産ワインは段階的に関税撤廃され、2019年にはゼロ関税となる。日チリEPAで関税が下がり、安価になったチリ産ワインはシェア(ボトルワイン輸入量に占める割合)を拡大しており、2016年は29%のトップとなった。他方で、フランス産ワインのシェアは、2008年(日チリEPA発効翌年)に42%だったが、2016年に27%まで下がっている。

一方、EUは主要生産国(米、豪、チリ、南ア、加)に対し、ワイン醸造方法を相互承認する二国間協定を締結して、ワインの輸入規制を例外的に撤廃してきているが、新たに「日本ワイン」について、EUの輸入規制撤廃を実現した。これまで、「日本ワイン」の多くがEUではワインとは認められなかったが、今後は、EU域内で自由に流通、販売できるようになる。

ワインの輸入規制撤廃は、EU関税の即時撤廃と相まって、「日本ワイン」にとって、5億人の巨大なEU市場を新たに開拓するという意義があり、全体としてみれば、バランスを確保したと考えている。

(注2)EUには、ワイン自体を定義し、その醸造方法やラベル記載内容を厳格に規定するワイン法が存在する*14。醸造方法については、産地の気候条件に応じて、アルコール度数や総酸度などの下限や上限が定められ、補糖や補酸、アルコールの添加といった醸造時の補助操作に対し、添加量の上限などの基準が設けられている。ワインの種類や産地ごとに定められた基準を満たさない場合、たとえ同じような醸造方法で同じ地域で生産されたとしても、EUのワインとは認められず市場に流通できない。EUのワイン法はEUに輸入されるワインにも適用される。

〈大枠合意結果のポイント〉

○EU関税や輸入規制の撤廃、日本GIの保護を通じ、日本産酒類の競争力を高め、新たな市場を確保

【関税分野(物品市場アクセス(MA))】

(EUへの輸出)

・酒類、たばこ、塩:全品目を即時撤廃

(日本への輸入)

〈酒類〉

・ワイン(ボトルワイン、スパークリングワイン等):即時撤廃

・清酒、焼酎等:11年目に撤廃

〈たばこ〉

・紙巻たばこ:協定税率として無税(現在、暫定税率で無税)

・手巻きたばこ、加熱式たばこ:6年目に撤廃(現行税率3.4%)

・葉巻たばこ:11年目に撤廃(現行税率16%)

〈塩〉

・精製塩:11年目に撤廃

《解説》

○酒類

〈現状〉

EU側

・ボトルワイン:0.154ユーロ/L(約20円)

※アルコール度により異なる。14度の場合を例示

・スパークリングワイン:0.32ユーロ/L

(約41円)

・ 清酒:0.077ユーロ/L(約10円)

(焼酎は無税)

日本側

・ボトルワイン:67円〜125円/L

・スパークリングワイン:182円/L

・清酒:70.4円/L

・焼酎:16%(従価税)

〈交渉結果〉

EU側

・清酒の関税を即時撤廃。ワインの関税も即時撤廃

日本側

・ワインの関税を即時撤廃。清酒・焼酎の関税を11年目に撤廃(段階的撤廃)

○たばこ

・紙巻たばこ:1987年(昭和62年)より暫定無税としており、実行税率は無税であることから、国内産に直ちに影響しない。

・加熱式たばこ:葉たばこ農家の保護や加熱式たばこの競争環境の整備等の観点から、「6年目に撤廃」とし、一定の経過期間を確保した*15。

【地理的表示(GI)】

●GI「日本酒」などの酒類GIの相互保護により、日本産酒類のブランド価値を向上させ、輸出促進

《解説》

〈現状〉

◆日本が指定したGIはEUでは保護されない。

→日本以外の他国で製造された清酒(sake)であっても日本酒と称して販売することができる

※清酒では、国レベルのGIとして「日本酒」(日本の米を原料とし日本国内で製造された清酒)を指定済み。また、地域レベルのGIとして「山形」 、「白山」を指定済み

※焼酎では、「壱岐」、「球磨」、 「薩摩」 、「琉球」を指定済み

※ワインでは、「山梨」を指定済み

〈交渉結果〉

◆酒類GIの相互保護により、清酒、焼酎、ワインのEU域内での保護を確保

→模造品等の流通が防止され、ブランド価値向上が期待できる

→特にGI「日本酒」が保護されることにより、日本酒と他国で製造された清酒がEU域内で差別化されるなど、将来に渡り日本酒のブランド価値保護が実現される

※日本側もEUのGI(「シャンパン」、「ボルドー」等139名称)を保護(日本の業者にとっての激変緩和措置として、5年間GIの先使用を認める)

【非関税措置(NTM)】

●日本産酒類の非関税措置(「日本ワイン」の輸入規制、単式蒸留焼酎の容器容量規制)を撤廃し、EU市場を新規開拓

マル1「日本ワイン」の輸入規制(醸造方法・輸出証明)の撤廃

・これまで、EU域外からEU域内への輸出は、EUワイン醸造規則に適合したものしか認められず、適合している旨の公的機関による証明書を義務付け

→新たに、EUは「日本ワイン」の醸造方法を容認(補糖、補酸、ぶどう品種の承認等)

→協定発効後は、「日本ワイン」の自由な流通・販売が可能。また、業者の自己証明の導入により、コスト負担が軽減

(注)主要なワイン添加物について、日EUそれぞれが申請手続きを開始。これにより、国内ワイン業者にとっても、EUで承認されたワイン添加物が使用できるようになる。

《解説》

〈現状〉

◆EUは補糖量など独自の基準を定めているため、国際的なルールを踏まえて定義した「日本ワイン」であっても輸出ができない

○EUワイン醸造規則に従って製造されたもののみが流通可能

→気候・風土の相違等により、ほとんどの「日本ワイン」はEUワイン醸造規則を満たすことが困難

〈主なEUワイン醸造基準〉

・補糖量(2.5%〜5%以下に制限)、補酸量(2.5g/L以下に制限)

・ブドウ品種(ヴィニフェラ種及びそのハイブリッド種に限定)

※ヴィニフェラ種とは、シャルドネ、メルロー等

○EUワイン醸造規則に従っている旨の証明書の添付の義務

→証明書取得の金銭的、時間的な負担

・輸出するロットごとに証明書の添付義務

・EU登録機関(独立行政法人酒類総合研究所)が業者から醸造に関する書類や分析用ワインを受け取り、証明書を発行

※証明書発行手数料:1ロットにつき27,100円

◆日本でワインに使用できる添加物が、EUでは承認されていない

〈交渉結果〉

◆EU仕様で製造しなくても、多くの国内向け「日本ワイン」をそのまま自己証明を付して輸出できるようになる

○EUは、「日本ワイン」(国産ぶどうのみを原料とし、日本国内で製造された果実酒)の醸造方法を容認

→EUワイン醸造規則によらず、「日本ワイン」であれば輸出可能

※ 「日本ワイン」は、国税庁が「酒税の保全及び酒類業組合等に関する法律」に基づく「果実酒等の製法品質表示基準(平成27年10月国税庁告示第18号)」により定義

○業者の自己証明を導入

→金銭的、時間的な負担を大幅に軽減

※「日本ワイン」の名声保護や証明書の偽造防止等の観点から、酒類総研が、自己証明が適切に行われていることを確認する予定(実施方法の詳細については今後調整)

◆主要なワイン添加物について、日EUそれぞれが申請手続きを開始

→国内ワイン業者にとっても、EUで承認されたワイン添加物が使用できるようになると期待 (日本側25品、EU側28品。日本側は国税庁がEU企業に代わり厚労省に承認申請)

マル2単式蒸留焼酎の容器容量規制の緩和

・これまで、700mlや1,750ml等の決められた容量以外の容器は流通不可

→協定発効後は、焼酎の四合瓶や一升瓶での輸出が可能

《解説》

〈現状〉

◆蒸留酒の容器容量規制*16

→EUへの輸出専用として、ビンの調達や瓶詰設備等の追加的な投資負担

・700mlや1,750ml等の決められた容量以外では流通・販売ができない

・日本で流通する焼酎は、主に四合瓶(720ml)や一升瓶(1,800ml)

〈交渉結果〉

◆単式蒸留焼酎の容器容量規制の緩和

→単式蒸留焼酎(本格焼酎と泡盛)について、日本で流通する四合瓶や一升瓶の輸出が可能

(2) その他(ルール分野)

ルール分野において、財務省が主体的に関わった主なものは以下のとおりである。

【税関・貿易円滑化】

日本がこれまで締結したEPAにおいては、経済連携を進める際には、二国間レベルで協力して個別・具体的な問題を解決し、貿易円滑化を促進することが重要であるとの観点から、税関手続の予見可能性、透明性の向上や税関手続の簡素化を図るための規定を設けるのが通例である。

日EU・EPAにおいても、税関手続について透明性及び予見可能性のある適用を確保し、簡素化を図るとともに、通関の迅速化等について規定することとしている。また、貿易円滑化の促進や関税法令違反の防止を図るための税関当局間の協力についても規定することとしている。

【知的財産(国境措置)】

日本がこれまで締結したEPAにおいては、知的財産に関する規定を設けており、手続の簡素化・透明化、知的財産の保護強化のほか、知的財産権保護の権利行使(エンフォースメント)の強化を図っている。

日EU・EPAにおいても、知的財産権侵害物品について、権利者による通関停止の申立てに加えて、税関当局が職権により差止めを行う権限を付与するなど、国境措置に係る権利行使について規定することとしている。

【原産地規則】

原産地規則は、EPA締約国の原産品であることの認定を行い、またEPA締約国で生産された産品のみならず、実質的に第三国で生産された産品が、ある締約国を経由して別の締約国に輸入される場合にまで、EPA上の特恵税率が適用されることを防ぐ(「迂回輸入」の防止)ことを主な目的として規定されている*17。

日EU・EPAにおいても、輸入される産品について、関税の撤廃又は削減(関税上の特恵待遇)の対象となる原産品として認められるための要件及び特恵待遇を受けるための証明手続(自己証明制度の導入)等を規定することとしている。

【Anti-Fraud Clause(反不正条項)】

日EU・EPAでは、物品ルールとして、原産地規則を遵守せずに特恵関税の適用を受ける組織的な不正行為に対抗するための規定を導入することに合意した。この規定は、関税を免れる不正行為があり、相手国が情報交換等の協力を拒む場合、特恵関税の適用を停止することができるとする。同時に、正当な貿易業者が不利益を被らないことを担保している。EU側は、Anti-Fraud Clause(反不正条項)はEUが第三国に特恵待遇を与える前提条件であるとしており、この規定はEU側の提案をベースとしている。

4 今後の対応

政府としては、今般の大枠合意を踏まえ、

引き続き署名に向けて協議を進めるとともに*18,*19,*20,*21、今回の合意内容や意義等について国民への説明を丁寧に行うほか、経済効果分析も含め、本協定の効果を最大限に活かすために必要な政策の検討に着手することとしている。

具体的には、日EU・EPA、さらにはTPPの早期発効に向けた11か国による取組も踏まえた政策を体系的に整理し、本年秋を目途に、総合的なTPP関連政策大綱を改訂することとしている*22。

特に日本産酒類については、日EU・EPAによる輸出拡大のチャンスを活かすことが重要であり、日本産酒類の競争力強化のため、日本産酒類の情報発信や輸出環境整備、技術支援等のための措置を一層講じることが必要となると思われる。

5 おわりに

2013年(平成25年)に始まった日本とEUのEPA交渉は、2015年(平成27年)中に大筋合意する目標であったが、双方の懸隔が大きい物品関税等の調整が難航し、目標を1年先延ばししても合意できず、停滞感が漂っていたところ、今年に入って交渉が加速した。

その大きな要因として、米国ではトランプ大統領が、本年1月、TPPから離脱するなど、保護主義的な政策を相次いで打ち出している。EU内部でも、英国の離脱や、域内各国での保護主義的な政策を掲げる政党の躍進などが続き、EU自体の結束が揺らいでいる。こうした中、日本とEUは、今回のEPAが合意に至れば、自由貿易への求心力につながるという狙いから、交渉を進める機運が高まったといわれている。

日EU双方ができる限り早期の大枠合意を目指して最大限努力する中で、関税局は、経済連携室及び原産地規則専門官(現・原産地規則室)を中心に、交渉のフロントや国内調整の業務に精力的に取り組んだ。

日EU双方の様々な思惑が絡み合い、期待と懸念が交錯する中で、財務省としては、所管品目のワインがEUの関心品目という基本構造の下、最終局面であるこの1年間は、「5億人の巨大なEU市場を確保する」との目標を掲げ、攻めの姿勢を最後まで貫いた。これまでの通商交渉は守り一辺倒であり、やせ我慢を続けてきたことは否めないところ、攻めに転じた今回の交渉は、今後の通商交渉のモデルケースになるものと思われる。

財務省幹部に交渉状況を報告した際、当該幹部から、放送中のNHK大河ドラマに掛けて、「真田丸だな」と評された。日本側の守りの分野において、大勢の策は大坂に籠城と決する中で、財務省は大坂城の外に出丸を築き、EU側を迎え撃つことを決めたのであり、「戦国の荒波に立ち向かう一艘の船」に例えた言葉は、的を射たものであって、意を強くした。(実のところ、言葉の意味をその場で理解できず、家に帰って風呂の中で分かったが、含蓄のある言葉は、得てしてそういうものであろう。)

EUのワイン輸入規制は、欧州のワインの歴史、ワイン文化を支えるワイン法の成り立ちに由来する「岩盤規制」であり、その緩和を要求する交渉は入り口から難航し、幾度となく暗礁に乗り上げ、パッケージを小さく纏めることを覚悟する場面もあった。交渉を巡る情勢は不安定、不確実、複雑、曖昧であり、論理と理性(サイエンス)が必ずしも機能しない状況の下で、直感と感性(アート)も拠り所にし、「美意識」に頼って、最終的に大きく纏めることができた。このような交渉の舵取りを最後まで貫けたことは、酒類行政を担当する国税庁課税部酒税課の多大な理解と協力があったおかげであり、特にEUとの交渉のフロントで語り尽くせない活躍をされた飯島隆課長補佐には心から感謝している。

(参考1)主要国からのボトルワインの輸入状況

(参考2)日EU貿易構造

(参考3) 最近の日本産酒類の輸出動向

輸出金額、輸出数量は共に年々増加し、過去最高を記録しているが、EU向け輸出は未だ少量*23。

(コラム1) 関税局と経済連携協定(EPA)交渉

○自由で公正な貿易を堅持し発展させていくため、従来から、WTO(世界貿易機関)を中心とする多角的な自由貿易体制を推進しているが、WTO交渉が実質的に停滞する中、経済環境の変化に合わせて通商ルールを進化させるためには、新たな枠組として、基本的価値を共有し、志を同じくする国々の共通ルールを作る必要がある。こうした考えの下、近年、より広範囲に効力を有することが期待される広域経済連携(メガFTA)の締結交渉を積極的に進めてきている。

○財務省は外務省・経済産業省・農林水産省とともに、共同議長4省の一角として経済連携交渉に参加している。特に関税制度(EPAに基づくセーフガードや関税割当等)、協定発効に伴う関税関係国内法令の整備や税関行政を所管する立場から、税関手続(情報交換、税関協力、貿易円滑化等)、原産地規則、財務省所管品目(酒、たばこ、塩)の関税、地理的表示、非関税措置等に係る交渉等を担当している。

○関税局においては、経済連携室が経済上の連携に係る関税及び税関行政に関する制度の企画・立案を担っており、相手国との交渉や国内調整に取り組んでいる*24。

○我が国では、2017年3月現在、20か国との間で16の経済連携協定(EPA)が発効又は署名済である。発効済・署名済EPA相手国との貿易が貿易総額に占める割合は40.0%(うちTPPは17.5%)である(日EU・EPAは11.9%の貢献)。

○数年間の交渉を経てTPP協定に結実した新たなルールは、21世紀型の経済体制のスタンダードであり、今後の経済連携の礎となるものである。我が国はこの成果を基礎として、日EU・EPAの署名、締結に至るプロセスを進展させるとともに、RCEP*25などの枠組みが野心的な協定となるよう経済連携交渉をリードしていく。

○「未来投資戦略2017」においても、「自由で公正な市場を、アジア太平洋地域をはじめ、世界に広げていくため、我が国が締結したTPP協定の発効に取り組むとともに、参加国・地域の拡大について議論を進めていく。また、日EU・EPA、RCEP、日中韓FTAなどの経済連携交渉を、戦略的かつスピード感を持って推進する。我が国は、自由貿易の旗手として、こうした新しい広域的経済秩序を構築する上で中核的な役割を果たし、包括的で、バランスのとれた、高いレベルの世界のルールづくりの牽引者となることを目指す。」こととされている。

○こうした政府全体の方針を踏まえ、関税局は関税制度や通関行政を所管する立場からアジア・太平洋地域、東アジア地域、欧州などとの経済連携を推進している。

(参考4)経済連携協定(EPA)交渉等の進捗状況

(参考5)日本の貿易総額に占める国・地域別の貿易額の割合

(コラム2) 日本ワイン

○国産ぶどうのみから醸造された「日本ワイン」は、近年、国際的なコンクールで受賞するほど高品質なものが登場していること等を背景に消費が拡大している。また、地域振興等を通じて、新たな「日本ワイン」造りへの参入も期待できる成長産業である。

○国税庁では、「日本ワイン」の国際的な認知の向上や消費者の商品選択が容易になるよう、国際的なルールを踏まえたワインの表示ルールとして「果実酒等の製法品質表示基準」を平成27年10月に制定した。あわせて、地理的表示制度の活用を図るため、地理的表示の指定要件の明確化や、消費者に分かりやすい統一的な表示をルール化する「酒類の地理的表示に関する表示基準」を平成27年10月に改正した。これらを通じ、「日本ワイン」の健全な発達を促している。

○伊勢志摩サミット(平成28年5月)においては、日本ワイン選考委員会(座長・後藤奈美(独)酒類総合研究所理事長)が設けられ、事前に審査を行ったうえで、各種食事の際に提供されるワインが選定された。日EU・EPAにおいても、交渉の機会に合わせ、後藤理事長からEU側要人や交渉担当者に対し、「日本ワイン」のPRを実施していただいたところである。

(参考6)国内市場におけるワインの流通量の構成比

(参考7)果実酒製造場数の推移

(参考8)主要な産地における果実酒製造場数

(コラム3) EUの通商政策

○EUでは、EU理事会*26による授権(mandate)に基づき、欧州委員会*27がWTOを含む通商協定の交渉を行う。欧州委員会は、授権の際の交渉指令に基づき単独で交渉にあたり、都度、加盟国により構成される委員会に交渉状況を報告する。交渉妥結後、理事会の決定に基づき、協定への署名がなされる。また、協定発効のためには、欧州議会*28の同意が必要となる。

○協定がEUの排他的権限に属する分野(加盟国がEUに対して権限移譲している分野)だけでなく、加盟国との共有権限に属する分野も対象とする場合には、協定発効のためには、理事会の決定、欧州議会の同意だけでなく、加盟各国の批准も必要となる*29。

○主な通商協定は、以下のとおりである。

〈欧州経済領域(EEA:European Economic Area)〉

域内における物、人、サービス、資本の移動の自由を確保

・欧州自由貿易連合(EFTA(ノルウェー、アイスランド及びリヒテンシュタイン)、スイスを除く) (1994年発効)

〈関税同盟(Customs Union)〉

域内の関税・数量制限を撤廃するとともに、域外に対する共通関税を適用

・トルコ (1995年発効。工業製品および農産加工品が対象)

〈自由貿易協定(FTA:Free Trade Agreement)〉

・スイス(1973年発効)

・韓国(2015年発効)

・カナダ(包括的経済貿易協定(CETA)、2017年9月暫定適用予定)

・シンガポール(2014年に署名)

・ベトナム(2016年2月に交渉妥結)

・日本(2017年7月に大枠合意)

(FTA交渉中) 米国*30、マレーシア、タイ、インド、フィリピン、メルコスール、湾岸協力会議(GCC)他

※アジア大洋州においては、マレーシアとタイ、インドとの交渉は停滞する一方、フィリピンと2015年に、インドネシアと2016年に交渉開始で同意するとともに、オーストラリアとニュージーランドについて2017年中の交渉開始が見込まれる。

*1) 欧州連合(EU:European Union)とは、欧州連合条約に基づく政治・経済統合体。経済・通貨統合について国家主権の一部を委譲するとともに、域外に対する統一的な通商政策を実施する世界最大の単一市場を形成。加盟国は28か国、総人口は5億820万人(日本の約4倍、米国の1.6倍)、GDPは16兆2204億ドル(日本の3.9倍,米国の0.9倍)。

*2) Economic Partnership Agreement の略称。FTAの要素(モノ・サービスの貿易の自由化)に加え、投資や人の移動、二国間協力を含む包括的な経済連携を図る協定である。

*3) 昨年11月、「日EU経済連携協定交渉に関する主要閣僚会議」を設置し、本閣僚会議の下に萩生田内閣官房副長官を議長とする「日EU経済連携協定交渉推進タスクフォース」(局長級)を立ち上げ、政府一丸となって交渉にあたってきた。

*4) 大枠合意の具体的な内容は、「日EU経済連携協定(EPA)に関するファクトシート」http://www.mofa.go.jp/mofaj/files/000270758.pdf を参照されたい。

*5) 日本とEUの間の関税は、EUから日本に対する輸出は7割が無税であるのに対し、日本からEUに対する輸出は7割が有税であり、本交渉ではこの不均衡な状況を一掃するように努めた。

*6) 特に自動車、電子機器をはじめ、日本企業がEU市場において韓国企業に劣後している(EU韓国FTAは2011年7月に暫定適用)との我が国経済界からの意見がある。

*7) 乗用車(現行税率10%)は8年目に撤廃。自動車部品(ギヤボックスの現行税率3.0%〜4.5%、乗用車タイヤの現行税率4.5%、エンジン関連部品の現行税率2.7%等)に関し、貿易額ベースで92.1%の即時撤廃で合意した。これは、TPPにおける米国の譲許内容(81.3%)及び韓国EU・FTAにおける欧州の譲許内容(90.2%)を上回る高い水準である。

*8) 乳製品のうち、ソフト系チーズについては、TPPで関税撤廃や関税削減となったものも含め一括して関税割当に留め、枠数量については,意欲ある酪農家の生産拡大の取組に水を差さないよう、国産と輸入を含めた国内消費の動向を考慮して国産の生産拡大と両立できる範囲に留めた。

*9) 地理的表示制度は、産品の確立した品質や社会的評価がその産品の産地と本質的な繋がりがある場合において、その産地名を独占的に名乗ることができる制度。欧州を中心に古くから国際貿易の主要産品として取引されてきたワインの原産地呼称制度が起源であり、EUは、農産品、ワイン、蒸留酒について独自のGI制度がある。日本は、ぶどう酒と蒸留酒について、国税庁が1995年にWTO協定の一部である「知的所有権の貿易関連の側面に関する協定」(TRIPS協定)の範囲内でGI制度を施行し、2005年に清酒、2015年に全酒類に対象を拡大。農林水産省が2015年に農産品全般を対象とする独自のGI制度を導入。

*10) EUは、これまで国際協定を通じて相手国国内におけるEUのGIの保護を推進している。日本は、TPP協定の実施に伴い、GIの海外での保護を通じた農林水産物の輸出促進を図るため、農産品GI法を改正しており、日EU・EPAは、日本にとって、農産品GIについて、国際協定により相互保護することに合意する初めての協定となる。

*11) ルールについては、以下の分野が規定されている。

物品貿易一般ルール、貿易救済、原産地規則、税関・貿易円滑化、衛生植物検疫(SPS)措置、貿易の技術的障害(TBT)、サービス、投資、電子商取引、資本移動・支払い・移転、反トラスト、国有企業、補助金、知的財産、政府調達、コーポレート・ガバナンス、貿易と持続可能な開発、農業協力、規制協力、中小企業、紛争解決 等

コーポレート・ガバナンス、農業協力はTPPにはない分野である。

*12) EUの主な農産品の輸出(上位10品目、下線は財務省所管品目)

対世界:マル1ワイン(28,745億円)マル2チーズ(25,426億円)マル3蒸留酒(23,989億円)マル4豚肉(23,943億円)マル5チョコレート菓子(19,559億円)マル6小麦(17,758億円)マル7ペーストリー(16,950億円)マル8牛肉(15,184億円)マル9たばこ(13,822億円)マル10ノンアルコール飲料(12,040億円)〈2013年、EU域内貿易を含む〉

対日本:マル1豚肉(1,649億円)マル2ワイン(1,186億円)マル3紙巻たばこ(1,113億円)マル4製材(874億円)マル5加熱式たばこ(506億円)マル6構造用集成材(324億円)マル7ナチュラルチーズ(309億円)マル8オリーブ油(307億円)マル9ペットフード(277億円)マル10かつお・まぐろ類(生鮮・冷蔵・冷凍)(268億円)〈2016年〉

*13) 具体的な品目は、スティルワイン(非発泡性ワイン)、スパークリングワイン(発泡性ワイン)、フォーティファイド・ワイン(酒精強化ワイン)、フレーヴァード・ワイン(香味付けワイン)、ぶどう搾汁であり、いずれもぶどうを使用した生産物である。

*14) EUのワイン法は、複数のEU理事会規則と欧州委員会の施行規則によって構成され、加盟各国の国内法に優先して各国政府や企業の行動を直接規制する。「EUのワイン産業に対する支援措置」、「使用可能なぶどう品種、醸造法、原産地呼称・地理的表示制度、ラベル表記などの規制措置」(狭義のワイン法)、「域外国との輸出入規定」、「生産調整に関する規定」などからなる。

*15) 加熱式たばこは、紙巻たばこに代替する商品として、近年、市場で急速な拡がりを見せている(米PMI「iQOS(アイコス)」、JT「プルーム・テック」、英BAT「グロー」)。iQOS(アイコス)は2016年4月以降より全国販売しており、当該製品のEU(イタリア等)からの輸入額が急増している(2014年:3億円→2015年:27億円→2016年:506億円→2017年1〜4月:409億円)。

*16) EUでは消費者向け製品の容量・サイズ規制が存在する。2007年の規制緩和によりほぼ全ての製品で廃止されたが、ワイン及び蒸留酒に残っている。

*17) 一般的な内容は以下のとおり。

・原産性の基準:協定上原産性が認められる産品(原産品)は、マル1完全生産品、マル2原産材料のみから生産された産品、マル3原産材料と非原産材料から生産された産品。マル3については、品目別規則(附属書として添付)の要件(付加価値基準、加工工程基準、関税分類変更基準)を満たせば原産性が認められる。

・累積:締約国間で行われた生産工程をひとまとまりのものとみなし、原産性の基準を満たしているか否かを確認する。一の国では原産性の基準を満たしていなくても、締約国での生産工程を累積することにより原産性の基準を満たすことが可能。

*18) 日EU・EPAの発効までには、大枠合意で先送りとなった分野(投資家と国家の紛争解決(ISDS)、個人データの越境移転)の解決に加えて、協定条文を確定させ、署名に向けたEU域内の調整、双方の議会承認手続等を完了させる必要がある。

・EU韓国FTA:交渉妥結(2009年7月)、署名(2010年10月)、暫定適用(2011年7月)、正式発効(2015年12月)

・EUカナダFTA(CETA):交渉妥結(2014年9月)、署名(2016年10月)、暫定適用(2017年9月予定)

*19) ISDSはInvestor-State Dispute Settlementの略称。投資家と投資受入国との間で投資紛争が起きた場合、投資家が当該投資紛争を国際仲裁を通じて解決する。EU域内では一部に、多国籍企業に強い権限を与えるとして反発があり、EU側は「投資裁判所制度(ICS)」の導入を提案している。

*20) 大枠合意時に発出された、日EU首脳による共同宣言では、2018年の早い時期までに個人データの越境移転の目標を達成するとされている。

*21) EUシンガポール自由貿易協定(FTA)について、EU司法裁判所は、EUの専権事項だけでなく、加盟国と権限を共有する分野の条項も含まれる混合協定(Mixed Agreement)と判断しており、ポートフォリオ投資とISDSの2分野についてEUと加盟国が権限を共有しており、協定の正式発効にはEUだけでなく加盟国の承認も必要としている。

*22) 今回の大枠合意を踏まえ、できる限りの総合的な対策を実施するために必要な国内体制の整備や対策の策定などについて、総理から石原TPP担当大臣に指示が出された。これを踏まえ、「TPP総合対策本部」は「TPP等総合対策本部」に改組され、事務局体制も「TPP政府対策本部」は「TPP等政府対策本部」に改組されている。

*23) 清酒・焼酎の輸出は、米国、東アジア等に比べてEU向けは少ない。ワインの輸出は僅かである。日本からの輸出量(平成28年)は以下のとおり。

・清酒:19,737KL、15,581百万円(うちEU向け:1,605KL、1,085百万円)

・焼酎:3,834KL、1,954百万円(うちEU向け:28KL、26百万円)

・ワイン:207KL、154百万円(うちEU向け:10KL、15百万円)

*24) そのほか、参事官室(国際交渉担当)がWTO(世界貿易機関)を中心とする多角的自由貿易体制の維持・強化、各国税関との情報交換等を、参事官室(国際協力担当)がWCO(世界税関機構)における国際協力、途上国税関に対する技術協力等を、それぞれ担っている。

*25) 東アジア地域包括的経済連携。Regional Comprehensive Economic Partnershipの略称。ASEANの10カ国と日本、中国、韓国、オーストラリア、ニュージーランド及びインドの6カ国が交渉に参加する広域経済連携である。

*26) EU理事会(Council of the European Union)。EUの共同決定機関であり、欧州議会と共に立法機関としての役割を果たす。政策分野ごとに10の会合があり、それぞれの理事会は各加盟国の各分野を所掌する閣僚により構成。

*27) 欧州委員会(The European Commission)。EUの執行機関。各加盟国から1人ずつ任命された28名の欧州委員(閣僚相当)で構成(任期5年)。各委員の下に、「省庁」に相当する各分野別の「総局」等を配置。

*28) 欧州議会(The European Parliament)。議員は各加盟国において直接選挙によって選出される。各加盟国の人口比に応じて、国別の議員数が決定(定数751名、任期5年)。

*29) リスボン条約(2009年発効)は、EUに授与されている権限を3つの領域に分類し、EUと加盟国の間の権限分担を明確化している。

第1の領域は、EUが単独で権限を持つ分野(排他的権限)。EUだけが立法や国際協定の締結を行うことができる。例として共通通商政策。

第2の領域は、EUと加盟国が共に権限を持つ分野(共有権限)。両方が立法することができるが、EUが権限を行使してEU法を制定すると、加盟国はそれと異なる立法を行うことができない。

第3の領域は、加盟国の分担責任をEUが補充する分野(補充的権限)。EUは加盟国が分担する責任を支援、調整、補充するための行動を行うが、EUの分担責任とすることはできない。

*30) EUと米国は、包括的貿易投資協定(TTIP:Transatlantic Trade and Investment Partnership)の交渉を2013年7月に開始し、これまで15回の交渉ラウンドを行ったが、米国トランプ政権の誕生に伴って交渉は停止状態(on hold)にある。

財務省の政策