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神田財務官記者会見の概要(令和3年10月29 日(金曜日))

【冒頭発言】

神田でございます。いつもお世話になっております。今日はG20財務大臣・保健大臣合同会議が行われましたので、それをご報告申し上げます。
 今日のG20財務大臣・保健大臣合同会議では、足元の新型コロナ感染症への対応、将来のパンデミックへの予防・備え・対応の強化に向けた取り組み、この予防・備え・対応というのはPPR、プリベンション・プリペアドネス・アンド・リスポンスということでよく使われている言葉ですが、これの強化に向けた取り組みなどについて議論が行われました。日本からは後藤厚生労働大臣がオンラインで、それから私が対面で参加をいたしました。この会議は財務当局と保健当局の連携強化を目的として2019年の大阪サミットの際に初めて開催されまして、昨年のサウジアラビア議長のもとでの開催に続いて3回目の会合でございます。つまり日本が最初に始めたということで、今日も複数の参加者から、日本がやったことがこうやって続いているという認識がございました。
 まず足元の新型コロナ感染症への対応につきましては、2022年半ばまでに全ての国においてワクチン接種率70%の達成に向けてACT-A、これは新型コロナウイルス対応ツールへのアクセス加速事業ですけれども、これや、あるいはCOVAXファシリティなどを通じた途上国支援の継続を確認いたしました。この70%というのは目標としてよく言われていたんですけれども、しっかりと担当大臣レベルでこれを具体的にやっていくことを約束したのは初めてでございます。
 それから、包摂的で強靱な国内保健システムの強化を通じたユニバーサル・ヘルス・カバレッジ、UHCの実現に向けたコミットメントを確認しております。これも皆さんご案内のとおり、日本がずっと主導してきたUHC、これがまたさらに進んだ、特に今回の新型コロナでUHCの重要性が再確認されたことだと考えられております。
 今回、一番議論になって、また目玉になっているのが将来のパンデミックへの予防・備え・対応、先程のPPRですね、これに向けて財務・保健当局及び国際機関間の連携強化を目的とした新たな枠組み、すなわちG20財務・保健合同タスクフォース、これの設立に合意いたしました。非常にいろんな議論があったんですけれども、これを新たにつくることになりました。私からは次のような発言をしています。第1にUHCの実現には保健財源の確保が肝要であり、財務・保健当局が連携してUHCの推進を加速させることが必要である。それから第2に将来のパンデミックへのPPRにおける財務・保健当局及び国際機関間の連携強化のためにタスクフォースの設立を支持する、我々は明確にサポートをいたしております。それからグローバルな課題に対してG20が一致して力強いメッセージを世界に示す必要があると、この3点を発言してございます。
 それから後藤大臣からもオンラインで、COVAXなど日本のコロナ対応への貢献やWHO改革への期待等をご発言いただいてございます。
 日本といたしましては、引き続き関係各国とも連携して財務・保健当局の連携強化に向けた国際的な取り組みに貢献してまいりたいと考えております。

【質疑応答】

問)タスクフォースについてなんですけれども、タスクフォースとして何か具体的に現時点で目指す成果というものがあるのかというのが1点と、来年の初めに保健大臣及び財務大臣に報告するとあるんですけれども、この報告に向けた取り組みの、22年末に始動と一番最後に書いてあるように読めるんですけれども、初めの段階での報告事項というのはどういったものが想定されているのか、教えてください。

答)ご質問については結構コミュニケにも書き込んでおりまして、お手元のものの3ページ目の下の方ですね。具体的にやることはここにありますようにパンデミックPPRに関係する議題についての対話と国際的な協力の強化、経験とベストプラクティスの効果の促進、財務省と保健省の間の連携体制の進展、共同行動の促進、国境を越えて影響を及ぼす健康危機の評価と対処、それからパンデミックPPRの対応の資金の効果的な管理の奨励、こういったものでかなり広範なものでございます。予定の方はおっしゃったとおり、まず2021年末までに当面のロードマップに合意して、あと事務局の任命を固めるということなんですけれども、ご案内のとおり2022年の頭から、正確に言うと2021年の末から共同議長みたいな感じで、インドネシアに議長が移ります。したがってこのタスクフォースは2021年と2022年のG20議長国、つまりイタリアとインドネシアが共同でやって進めていくわけでありまして、具体的な最初の報告は2022年の初め、つまりインドネシアがやる最初の保健大臣・財務大臣合同会議で大臣レベルでご報告をいただくということになっております。ただ、詳細のところはまさにこのタスクフォースの中でこれから固めていくことになりますので、我々もしっかりと貢献していきたいと考えております。

問)前段の目指すところなんですけれども、目標、概念として連携の強化であったりとかPPRとかというのは理解できるんですけれども、その具体策としてどういったことをやっていって、ここまでに何をするとか、そういった何か、そういう形態的なものは何かあるんですか。

答)それはまさに、今言ったようなことを実現していくために具体的に何をやるかというのを議論する場がタスクフォースですので、それを予断することはできません。また既にいろんなことが動いている中でどういうものに優先事項を置くか、あるいは新しいことをどういう形でやるのか、新しいことをやるときはとりわけ今既にあるものと重複しないように、効率的にやらなければいけませんし、またいろいろな取り組みがたくさんございますので、それとの関係を整理しなきゃいけないようなこともあるので、今の段階でどうなるかというのがわかっていれば逆にタスクフォースなんか要らないわけですので、これからしっかりと議論していく、そういった場が初めてしっかりとできた、言ってみれば財務・保健で一緒にやっていかなきゃいけない、財務と保健の両方の観点で協力してやっていかなきゃいけないというのを時々、これまで3回大臣会合をやったわけでありますけれども、そういったことが言ってみれば恒久的にといいますか、平時からずっと続けてなされるような場が初めてできましたので、今までできなかったような議論が深まることが期待されると考えております。

問)3点ほど質問させてください。1つ目なんですけれども、タスクフォースの件とも絡むんですが、PPRとかタスクフォースに関する共同声明の話と将来の健康危機への予防とか検出とあるので、例えば新たな感染症の早期発見とか把握みたいなものがそこに入ってくるのかなと思うんですけれども、以前、世界の議論で国際条約、パンデミック早期発見の国際条約を結ぶみたいな議論があったと思うんですが、今日そのような議論が出たかどうかというのを教えていただきたいというのが1点です。2点目はかなりここから外れてしまう質問だったら恐縮なんですが、コロナ危機からの経済再生という観点で、今日は財務大臣もいらっしゃるので、インフレとか供給制約といったようなテーマの話し合いや発言みたいなのがあったかどうかというのを教えてください。3点目が、これもまたちょっと極端な質問で恐縮なんですが、G7のサミット、コーンウォール、イギリスのサミットではWHOの総会とかイベントに台湾をオブザーバー参加させるのを支持するというようなコミュニケに文言が入っていたと思います。当然、今日は中国がいるのでなかなか難しい問題だと私も認識していますが、これに関して何か発言とか関連するような議論とか、もしあったとすれば教えてください。

答)1つ目ですけれども、当然新たな感染症についてどうするのか、あるいはいまあるだんだんと薬が効かなくなるような話、そういった伝統的な問題というのは全て排除されていませんので、当然そういったものも議論の対象になることは考えられますけれども、ただ、具体的に今おっしゃった国際条約をやるとかやらないとか、そういった議論は中心ではなかったと思います。
 2つ目の経済再生の話は、ワシントンで行われたG20財務大臣・中央銀行総裁会議では、ちょうど資源価格が上がっていく、輸入価格が上がっていく、少なくとも、エコノミストあるいはマーケットの方で予想していたよりはインフレが長引くんじゃないか、特にサプライチェーンの障害と、エネルギー価格の想定外の上昇について相当に議論がありました。それはもちろん我々いろんな場で議論を続けております。今回もいろんな方がローマに集結していますので話をしていますけれども、ただ、このG20財務大臣・保健大臣合同会議の今回の議題、あるいは権限というのはまさに保健の問題を財務大臣と保健大臣でしっかりと深めるということでしたので、ここでは直接の議論にはならなかったと思います。
 それから台湾の話は、やはりG20ですので、この場では議論になっていないと思います。G7では当然やりやすいんですが、G20になるとなかなかそういった議論をする感じではなかったのかもしれませんね 。

問)1点目、最初の質問に絡んでしつこいようで申し訳ないんですけれども、タスクフォースをつくった背景というか、具体的にこれまで何ができなかったから、G20としての課題はどこに持っていて、それを解決するためにタスクフォースをつくろうという話になったのか、もう少し体系的なものの説明をいただけると幸いです。2点目が70%、これは大臣級で出すのが初めてという話だったのか、ということでいいんですかね。

答)それを実施する、目標としては春から掲げられているんですけれども、それを実際に実施するためには当然資金も必要だし、様々な枠組みを動かさなきゃいけない、それを担保するものとして初めて財務大臣と保健大臣が承認して、具体的に、ここにいろいろ列挙されているような取り組みというものを進める約束をしたということなので、要するに、あえて言えばただの目標ではなくなって、しっかりとやっていく担保ができたということだと思います。

問)70%に対する評価なんですけれども、途上国、例えばアフリカとか南米とかでは特に遅れが目立っていると思うんですが、先進国に比べて。先進国は大体7割、と思うんですが、そういったものへのG20としての評価の声というのはどういうものだったんでしょうか。

答)評価の声というか、みんな相違についてはものすごく関心を持っているというか、心配をしていて、それはずっと議論をしています。よく言われるアフリカは、前に議論したときは2%で、今は数え方によっては6%という数字もあるんですけれども、圧倒的に離れていて、それ以前にものすごく不公平というか、人類の団結の観点からおかしいだけではなくて、やはりワクチンがしっかりと普及しなければ、そこが将来のクラスターになって、どんどん変異株が出てきてしまうと、それがまた今度は先進国も脅かすので、地球が一つである以上は、例えばアフリカの人達は関係ないと言っていられないというのはみんなわかっているので、それは何とかしようというのでCOVAXなんかもずっと、今回もいろんなところで出てきていますけれども、強化するだけじゃなくて、それだけじゃなくて、ここにありますように途上国での生産を強化するとか、様々な取り組みというのを進めていっている。ただ残念ながら、まだうまくいっていないのも事実なので、共同声明にありますようにかなりの分量を割いてここのところに努力を集中させようという姿勢を示しているんだと思います。
 それから前半のご質問、タスクフォースの話というのはずっとよく言うギャップですね、今回のパンデミックになったときに、本当にいろんな保健システムの脆弱性というのが明らかになった、この一番最初のパラグラフにいろいろ書いてありますけれども、いろんなギャップがあって、これを何とかしなきゃいけない、それは資金だけじゃなくて、まさに各国の、途上国の保健システム、あるいは我々、反省を込めて言えば日本だって医療システム、うまく機能しなかったわけですね。だからこれを何とかしていかなきゃいけないという問題意識の中でいろいろな取り組みといいますか、ご提言がある。特にG20のプロセスでは春にG20ハイレベル独立パネルというものがパンデミックのPPRについて有識者を集めてレポートを出していただきました。シンガポールのターマン・シャンムガラトナム上級相、ラリー・サマーズ元米財務長官、ンゴジ・オコンジョ-イウェアラWTO事務局長が共同議長で、その中でやはり我々がずっと主張してきた財務・保健の連携では、よくできていないんじゃないかということも含めて様々な提言がありました。そこではBoardをつくれということになったんですけれども、結局、今あるWHOとの関係とか、様々な取り組みとの整理とか、どういう予定でやるのか、いろんな議論がなされる中で最終的にはタスクフォースをつくってはどうかということで総意を得ることができたわけであります。その権限は先程のご質問にお答えしたような、かなり網羅的なものをやることになっております。

問)簡単に言い過ぎかもしれないんですけれども、要するに保健の分野で課題とされているところにうまくお金が回っていないんじゃないかというのがあるということですか。

答)いや、お金だけじゃなくて、あらゆる意味でシステム、これを読んでいただければわかりますけれども、根本的にシステムがうまく動いていなかったという反省に立って、繰り返しませんけれども、網羅的に今まで足りなかったところを点検して強化をしていこうということであります。

問)本当にしつこいようですが、システムというのは保健のシステムが回らないところを保健で見直すというのはわかるんですけれども、なぜそこに財務省が絡むのかのところ、私がちょっと理解できなくて。質問があまりにも……。

答)質問の趣旨がよくわかりませんけれども、要するに、なぜ財務省が関係するかということですか。一番大きいところはファイナンスですね、それをどうやって効率的、効果的にやるのかというときに、2つあって、1つは直接に資源を分配する立場にある財務省がいるというのが重要であるだけじゃなくて、少なからずの国では財務省がよくも悪しくも強いので、そこがしっかりとパンデミック対応について旗を振るということが正当性を与える、政策に重みを与えるということもよく言われていたと思います。言ってみれば政策の中心に重要な医療問題、パンデミック対応の問題を位置づけることができるとともに、実際に政策対応をしていく上で財政面での後付けをするとともに、やはり効率的にやらなきゃいけませんから、そういった資金の効率的運用に関心のある財務大臣が入るということは、効率的・効果的な医療システムを持続可能な形でつくっていくのに非常に意味があるだろうという、だから様々な視点からこの両者を一緒にすることがいいんであろうという議論だったと思います。ただ、一番最初は国民皆保険も含めて、それは当然財務省の協力がなければできませんので、パンデミックの前の段階ではどちらかというとユニバーサル・ヘルス・カバレッジ、UHCのために財務省が入ってこなければうまくいかないんじゃないかというところがあったと思います。途上国の文脈ではそのときに一つ大きかったのは国内資金動員、結局、日本も社会保険料をうまく使う仕組みをつくる過程の中で皆保険をやってきたわけでありますけれども、途上国は非常に徴税能力がないものですから、そういった面でもしっかりと持続可能な保険体制をつくろうと思ったら財務省が協力して先導しなきゃいけない部分もあるんだろうということを言う人達も少なくありません。

問)先程ご説明があったかもしれないので繰り返しになってしまったら恐縮なんですけれども、資金メカニズムについて検討というのは、先程のラリー・サマーズ氏の話としては4月に提案されたような話が具体的にされるということでいいんでしょうか。

答)もちろんいろんな提案が世の中に出ていますし、ニーズもいろんなのがあります。これはまだ何も決まっていない、ただ、何カ所か出てきますよね。1つは全体的にPPRのための資金調達のパラグラフのところで新たな資金メカニズムの設立を検討することを含めて、より重要なのはその手前のところの、既存の多国間資金メカニズムを適切に組み合わせて動員して潜在的な資金ギャップに対処するとともにというのがあって、しかしそれでもギャップがあるんだったら新たな資金メカニズムの設立を検討することも含めてということがあって、それからさらにタスクフォースの権限の中でタスクフォースの目的をつらつらと書いているところにパンデミックPPR対応の資金の効果的な管理の奨励、これは別に新しいのをつくるかどうかではなくて、資金をより効率的に使いましょうと。さらにはより直截になっているのが一番最後の方のパラグラフで、これはまたタスクフォースのところで、パンデミックPPRに割り当てられた既存の公的及び民間資金や関連する資金ギャップについて議論すべきであるというところの次に、パンデミックPPRに対する資金調整及び資金動員の機会を特定するというふうになっています。ここまでが財務大臣・保健大臣レベルで合意できたところで、まだかなり抽象度が高い、しかも既存のものを強化する方が早いし効率的だと言う人もいれば、いや、既存のものじゃ駄目だということがわかったから新しいのをつくるべきだと。今おっしゃったサマーズ氏達はどう見ても今のシステムにはギャップがあるので、新しいメカニズムが必要だという考え方ですけれども、いや、今のでもできるという人達もいらっしゃいますので、その辺はやっぱり議論していくことになるんだろうと思います。

問)何となくいろんなイニシアティブがあって、何か統率がとれていないような、そんなイメージを持っていらっしゃる国もあったりするんですか。

答)それはあらゆる政策を実現するときの手段について、何が一番いいのか、みんな真摯に考えて、提案をし合っているわけであって、建設的な議論をしているんだと思います。とにかく今回、残念ながらパンデミックへの対応というのがうまくいっていなかったわけですね、たくさん人が亡くなって。そういった反省から始まった一連の取り組みですので、資金面についても一番効果的・効率的なやり方は何だろうかというのをみんなで頭を悩ませながらやっている。特に中心になるのは国際機関、これにも出てきましたけれども、多国間リーダーズ・タスクフォースというのがあって、そこが一生懸命やってくれているので、足元ではそういう人達に頑張ってもらう中で、我々はさらにそれで足らざるところがあれば新しいものをやらなきゃいけないし、そうじゃなかったら既存のものを強化していけばいいし、そういった議論も含めてこれからタスクフォースの場、あるいはそれ以外の場で議論がなされていくんだろうと思います。

(以上)