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麻生副総理兼財務大臣兼内閣府特命担当大臣、黒田日本銀行総裁共同記者会見の概要(令和3年7月10日(土曜日))

【冒頭発言】

大臣)この2日間にわたってG20の財務大臣・中央銀行総裁会議が開催されております。議題として世界経済とかパンデミックの対応とか国際課税、気候変動、低所得国支援とか金融セクターなど、幅広い課題について議論を行っております。今回のG20の成果としては、お手元に配付した声明に取りまとめられていると思いますので、それをご参考いただければと思っております。
 主なポイントとして、1ページ目の上段のところの世界経済については、これはワクチンの接種などによって見通しがさらに改善してきてはいますが、いわゆる変異株の拡大やワクチンの接種ペースの違いなどから下方リスクにさらされていることも確かなので、必要とされる間は全ての利用可能な政策手段を用いるとの決意表明を再確認しております。
 1ページ目の下段のパンデミックへの対応については、足元のコロナの危機への対応に加えて、将来のパンデミックへの備えと対応を強化する必要があるのではないかというので、保健当局と財政当局との間の連携強化に国際金融機関やWHOとの取組が合意されております。日本はG20大阪の議長のとき、財務、保健両大臣の合同会合を初めて開催するなど、両当局間での連携強化がヘルスに関するガバナンスの向上に重要であるとかねてから訴えてきていますので、国連で昔この話について話をしましたし、今回の合意はそういった意味では時間がかかりましたけれども大きな成果と考えています。
 2ページ目の中ほどの国際課税、いわゆるBEPS等については、BEPSの包摂的枠組みによる大枠合意をG20として承認、これはG7で確認されたものがG20で承認されたということになるので、一国の課税権というものが大きく変わりますので、100年ぶりぐらいの大きな歴史的変化だと思いますけれども、そういった合意ができたということだと思っています。2013年のG7のバッキンガムシャーで、私と黒田総裁が初めて出たG7の財務大臣・中央銀行総裁会議で国際的な議論というのを、議題を持ち出して、それがこの種の話がされた最初の例ですけれども、以来9年ぐらい、この問題をずっと言い続けてきていましたので、そういった意味では画期的な成果であったと思って、強く歓迎をしているところでもあります。
 2ページ目の下段については、コロナ危機を回復させるためには優れたコーポレートガバナンスが重要ということで、G20の中で「G20/OECDコーポレートガバナンス原則」の見直しに合意をしております。
 低所得国支援については、5ページの中段のSDR、スペシャル・ドローイング・ライツ、特別引出権についての新規配分について、私共が提案しておりました透明性、説明責任というものをきちんとしないで勝手にSDRだけ持っていくのは駄目ということを申し上げてきていますので、8月末までにそれをきちっと実施すること、SDRを脆弱国の支援というものに融通する選択肢を速やかに提示するということを求めております。どの国に対して求めているかはお分かりだと思います。
 6ページ目の債務問題については、チャドやエチオピアが話題に上がってきていますけれども、共通の枠組みを実施するためにコミットメントもこの点も確認をしております。
 このように今回のG20では従来に比べて多くの成果が上げられたのではなかろうかと考えています。
 G7については今朝、財務大臣の朝食会というものが開催されておりまして、国際課税について議論を行っております。バイについては、いろいろ各国財務大臣、また国際機関トップと面会させていただいて、有益な意見交換ができたんじゃないかなと思っています。

総裁)今回のG20の成果については、ただ今麻生副総理から説明があった通りですので、私からは二点だけ付け加えたいと思います。
 まず気候変動を巡っては、グローバルに重要な問題であるという認識のもとでリスクモニタリングを強化していくこと、あるいはシナリオ分析や情報開示など、金融面の対応を進めていくことが確認されました。私からは、先般、日本銀行が金融機関の気候変動対応投融資をバックファイナンスする新しい資金供給制度を導入すると公表したことと、気候変動に対する日本銀行全体の取組み方針を検討していることを説明しました。
 次に金融セクターについては、新型コロナウイルス感染症に対する金融安定面の教訓などに焦点が当てられましたが、こうした議論を踏まえ、私からは金融安定に向けた取組みを更に進めていくべきだと申し上げました。


【質疑応答】

問)国際課税の大枠の合意がG20でなされたわけですけれども、まだ10月まで課題が残っていると思います。例えば法人税率が15%以上、上がどこに行くかという点、ピラー1で言うと20%から30%の配分のどこに配分のポイントを置くかという点が残っております。先程、フランスのルメール大臣なんかは20%では不十分で、30%だと多いみたいな発言もされていたんですけれども、麻生大臣としてはこの20%から30%のうちのどういったところに置くべきか、最低税率15%以上の具体的なポイントをどこに置くべきだと考えていますでしょうか。

大臣)これは最低でも、15%以上でまとまっただけでもまずは十分と。あとは、どこでまとまるのも、適当なところでまとまってもらえば、それで十分なのであって、まずはまとまること、それが全てです。だから、あと20になっても30になっても15になっても、全部まとまればそれでよしだと思わないといけないところだと思っています。これは大体、基本的には財務官とか国際租税課長の話のレベルであって、財務大臣がそこまで、細かいことまで一々、延々と会議するということは、とても無理。

問)今日発表された共同声明でも国際課税で歴史的な合意というふうに書かれていますけれども、今回こういう歴史的な合意というのが発表レベルでなされたというのはどういった背景が、どういった視点でこういった歴史的な合意に至ったというふうにお考えなのか、大臣のご見解をお伺いします。

大臣)歴史的な話は黒田総裁の方が、元国際租税課長が説明されますので、今日の会議でも財務大臣の中で、日本だけが元国際租税課長としてという前置きをつけて、日銀、中央銀行総裁の方が話をされていますが、まず基本的には課税、課税の主権というのが決められていますので、ジャパンさん、おたくの課税をこれにしてくださいなんて誰が言えるんだという、課税主権というものは昔からありますから、そういったものの流れからいって、常識的には、お前何様のつもりだという話になりますから、そういうことは今までないルールになっています。

総裁)(麻生副総理のご説明に)補足的に申し上げますと、国際課税のルールというのは色々な案がありましたが、従来、戦前から戦後にかけて、麻生副総理が言われたようにパーマネント・エスタブリッシュメントという、支店や営業所などが存在するところでの売り上げから出た利益については国内所得として課税できるのですが、そういうものが存在しないところで利益を得た場合は、本国で課税するので、海外所得で課税できないという考え方、これは俗にPEと言いますが、パーマネント・エスタブリッシュメントの「ある・なし」で行うという、これは非常に分かりやすいといいますか、課税権の分担の方法は非常にはっきりしていたわけです。それによって物の売買や対面サービスなども従来から今のルールで行ってきました。ところが、デジタル経済が発展すると、その土地には支店も倉 庫も何もないわけです。本国や第三国から直接デジタルサービスを提供し、売り上げ・利益を得ますが、それは従来のPEという、「ある・なし」で課税権を割り振っていたことからいうと課税できないわけです。そこで、100 年ほど続いたルールを抜本的に変えて、まさに副総理が言われたように、課税主権の割振りについてのルールが根本的に変わるということです。デジタル経済が進んだことによ り、それを行わないと主権国家の間で税金を配分することが不公平になってしまうということで、副総理が国際課税の問題をバッキンガムシャーで問題提起をされ、BEPSができ、情報交換するようになり、それから本格的にデジタル課税の話になり、トータルすると10 年程度かかりましたでしょうか、それでこういう歴史的にみて画期的な合意ができたわけです。歴史的にみて画期的というのは、 今申し上げたように100 年近く続いた課税ルールを変え、それにG20の20 か国だけでなく百数十か国が合意したと、それをまさにG20ではっきりと示したということで、単に内容が画期的というだけではなく、歴史的にみても非常に画期的な合意だったということだと思います。これは私が言うのも僣越ですが、昔、国際租税課長をしていたので、そういうことを申し上げました。

大臣)例えばアマゾンを通して本を買いました。日本で輸入されたその本は、日本の飛行場だか港を使い、道路を使い、何を使い、やっているけど、日本には税金が一文も落ちませんと。全てGAFAの本社のある、GAFAの本社といえばアメリカだと思うでしょうけど、それがケイマンアイランドだったり、パナマだったり、いろんなところにあります。そこには税金が超安くて、日本だと法人税29%かかるところが、アイルランドだと12.5%とか、ケイマンアイランドだと2%とか1%とかというようなところで、そこに多額の金が、日本だったら29%のはずがいきなり2%ということですから、差額の27%は、アマゾンの本社じゃなくて、利益は子会社が出しているんだろうから、その子会社が持っていっちゃうという形で、誰が儲けるんだ、その話は、税金を払っているのは日本国民が払っているのであってもというようなことになって、いかがなものかというのは誰でも考えていたはずですよ。それを9年前におかしいじゃないかという話を話題にボンと出したときは、シーンとなったんですけれども、後のGAFAの影響するアメリカなんかは全く発言せず、その間、唯一乗ってくれたのはドイツでした。ドイツの人がえらい勢いで、同じ意見というふうなことを言っただけで、あとはほとんど言われない。そんなところからのスタートだったものですから、その頃を知っている人、OECDなんかがこれを主にやったんですけど、OECDなんかはずっとこの7~8年、こればっかりやっていた人がおられますので、そういう人達にとりましては絶対成立しないと当時は思われていたんですけれども、アメリカもおりてきて、ヨーロッパもおりてきて、そこの間に入っていろいろ調整して、結果として、アメリカが損するんじゃない、アメリカの政府はもともとお金が取れていないんだから、あなた達もいいでしょうがというような話やら何やら、時間がかかりましたね。もう少し簡単なのかと思ったら、とんでもなかった。

問)麻生大臣に2点お伺いしたんですけれども、1つは国際課税のことで、G7のロンドンの財務相会合と今回のG20の会合、もちろんメンバーも違いますから立場も違う国もあると思うんですけれども、大臣、両方出席されていますので、G7とG20の中で議論の中身というのは違ったのか、あるいはやっぱりそこはG7であれG20であれ同じ方向を向いて議論できたのか、何かそこら辺の違い、あるいは違いがなければ、そうじゃないということを教えてください。

大臣)G7とG20の間には約1カ月間の時差がありますので、その間に当然のこととしてG7の結果というのは皆知ることになりますので、それに基づいて各国と個別の交渉というのはOECDを媒介にしていろいろな形でやらせていただいていますので、内容がわかって、これならいいと言った国もあれば、なかなか、ちょっと待てと、これはどうなる、こうなると、細かい話はいっぱい出ましたから、それによって139あるのかな、BEPS包摂的枠組みは。そのうち6~7カ国、何となくちょっと待てというような、名前を言っても知らないような国からそこそこの国までいろいろあるんですけど、いろんな意見が出ました。その人達は今日のG20には出ていませんから、そういった意味ではその人達の意見はOECDが仲介していますので、どういう内容になったかというのは知っていますけれども、OECDが主にやっていたので、こちらの方はそこそこ皆、この一月の間に合意した国が130カ国、報告が来ているわけですから、その意味においては内容ががちゃがちゃになったというような感じで話が分かれたとか、G7の内容が全然違ったとかというような感じではありませんでしたね。

問)新興国もこの案に乗れたというのは、最大の理由は何なんでしょうか。

大臣)それは金が入るからですよ。

問)気候変動のところにコミュニケを見ると、適切であれば炭素に価格付けを行う仕組及びインセンティブの活用を含む、こういう手段が、手法が含まれるべきであると書いてあるんですけれども、これはカーボンプライシングの話だと思うんですが、今回のG20の会合ではカーボンプライシングというものについてはどういった意見、議論があったか教えていただけますか。

大臣)カーボンプライシングについて、これだけをサブジェクトにして延々と議論したというわけではありません。カーボンプライシングの話をした国もあれば、全くそうじゃない国もありましたので、その国が、議題をして話題が沸騰したということはないです。ただ、そういったものに対して、カーボンプライシングをかけないと炭素、いわゆるCO2に対しての、いわゆる増えていくというのを抑えられないのではないかという話が、皆思っているわけですから、それを言われた国もあれば、全くそれに乗ってこなかった国もありましたので、これは今からですな、まだ。大分時間がかかると思いますね。

(以上)