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麻生副総理兼財務大臣兼内閣府特命担当大臣記者会見の概要(令和3年2月26日(金曜日))

【冒頭発言】

本日、イタリアはご存じのように新しい内閣ができて、イタリア中央銀行の副総裁が今回財務大臣になってまだ1週間ぐらいで、G20の議長国が今イタリアなものですから、その議長のもとで初めての財務大臣・中央銀行総裁会議がリモートで開催され、私と日銀の黒田総裁とが日本から出席しております。会議では世界経済の回復に向けた政策対応とか、金融に関する議題についていろいろ議論を行っております。SDR等の話です。日本の発言のポイントを紹介しておきます。
 世界経済のセッションにおいて、私の方からは日本は比較的感染が抑制されております。ご存じのとおりで、ほかの国に比べて100分の1、150分の1ぐらいになりますので、国によって違いますけれども、人口当たり7,000人と50万人というような数になりますので、抑制をされております。今我々は緊急事態を宣言させていただいた1月7日以後、感染者は急速に減少しておりますのはご存じのとおりで、当時7,500人ぐらいだったものが今1,000人ぐらいということになるので約7分の1ぐらいになっているということなんですが、そういった感染者が急速に減少し、幸い経済は持ち直しの動きが出ておりますのはご存じのとおりなので、そういった動きが確実に動いておりますということを申し上げて、他方、世界全体としてはIMF等が言っておりますワクチンの接種と、いわゆる変異株というものが出てきておりますので、どうやってワクチンの接種と変異株、この競争、ワクチンに勝つか負けるか、そういった話ですから、これは。そういった意味で様々な不確実性に直面しておりますから、警戒が引き続き必要ということだと理解をしております。また、このワクチンに関しては、低所得国等は経済の回復が遅いのに加えて経済格差プラス、ワクチンの接種等に関する格差、いろいろあるんですけれども、格差が拡大をしておりますので、G20としては低所得国等に対して支援のためにさらに結束をしていかなければいけない。特に低所得国への支援に関しては、日本としてはSDR、スペシャル・ドローイング・ライツのことですけれども、特別引出権、IMFの、SDRの新しい新規配分というのをやろうとしているんですけれども、その案を支持しますと。ただ、SDR、特別引出権によって金を得た国が今、この新しいルールができ上がる前に既に借りている国に関して、私共としてはどこの国がどの国に対して幾ら貸しているということに対して明らかにしてもらおうと。少なくとも国でやっているのに関しては明らかにしてもらいたいということを言ったのはご存じのとおりですが、この前のときも、その前のときにも言っておるんですが。民間銀行だと、巨大な中国国家開発銀行は、あれは民間銀行だと言って、だから出す必要がないというような話があったりして、いろいろもめていたので、じゃあ民間も全部出せということで、全部民間も出すということになって、最終的に話がついたことになっていますが、本当にちゃんとそれが正しいかどうか、我々は調べる権限がないから、それを調べる権限を持っているのはIMF。しっかり引出権は持っていった、使ったけど、その金を全て返済に使われたんじゃ何の意味もないと。そういった意味では、借りている金は全部表に出してもらおうと。貸している国も出せということで、それはIMFできちんとやってもらう。そういった特定債権国が隠している債務の返済に充てられるというのでは低所得国の利益には全くなりませんから、そういった意味ではこの点についての運用上の手当というものを必ずやってもらいたいということ。また、いわゆるIDAが必要とする資金の確保に向けた議論というものも先進国としてやらなければいけないところだということで申し上げております。
 もう1点、デジタル課税、BEPSという話です。あれについては昨年末までに終わる予定だったんですけれども、残念ながらコロナのおかげでなかなか左様なわけにいかなくなった事情がありますので、前回のときに今年2021年の半ばまでにこれはきちんとやってもらうということで第1の柱と、第2の柱という2つの柱があったんですけれども、その件に関してもめている状況はきっちり調整してもらうということで、今G20で一致してこの取組をやって、成果を7月までには出してもらうという話を重ねて申し上げて、皆そこそこのところで合意ができそうな気配まで大分かかりましたが、ちょうど8年かかったことになりますかね、8年かかりましたけれども、日本が言い出し始めて国際課税という、こういったBEPSという面については成果が出つつある。国際会議の話だから最後の最後までわからないですよ。わかりませんけれども、少なくとも一番もめていたところがそこそこ折り合いつつありますから、そういったところまで来たと。よくここまで来たかなというところですけれども、そういう話をしております。
  第2セッションは、金融に関するセッションにおいては黒田総裁の方から発言がありますが、コロナの中において金融システムが実体経済を支えるという重要な役割を果たしたと。また、コロナの騒ぎの中でいろいろ教訓を得たけれども、足元の金融システムというものの安定、スタビリティというものを考えて、中長期的な成長と、これはアフターコロナとかいろいろな表現がありますけれども、そういった成長へ貢献していく、金融システムとして、そういったものにコロナの目先の、簡単に言えばフローの話ばっかりじゃなくて、これから先はストックの話になりますから、そういったことも考えて中長期的な成長への貢献についても議論していくべきであるということを黒田総裁の方から発言をしておられるということです。

【質疑応答】

問)世界経済のセッションの方でお伺いしたいんですが、先ほどコロナの不確実性に警戒しながら世界経済の回復に向けて対応していくというお話をされていましたが、改めてなんですけれども、G20が連携して対応していく必要性について大臣のお考えをお聞かせください。

答)これは1カ国で全部というわけにはなかなかいかない、なぜならその国1カ国で簡単に解決できる、コロナのことに関して低開発国だけで、完全に経済が止まっちゃっているところもありますので、そういったところが動き出すに当たっては間違いなくその国だけで解決できるだけのシステムもないし、資金もないし、またワクチンというものができてきても、自分達でつくっていませんから輸入する、配布されてそれがちゃんと、ワクチンというものがきちんと注射されて、そういったものができ上がるというのはとても1カ国でできるわけではありませんので、きちんとそういったものをみんなで金を出し合って、その部分を埋めて、そういったところにもワクチンが行くようにするというのをサポートするというのをやらなければなりませんから、そういったことをやらないと世界経済は、1カ国だけよくなるというわけにいきませんので、そういった意味ではきちんとした対応ができるようにしなくてはいけないということで、ワクチンというものが低所得国に関してもきちんと配達、配布されるような形をつくらなくてはいけないということでこの話はみんなで大分前から、ワクチンが出たときはどうするという話をしていましたので、今回少なくともその件に関しては皆合意ということになったということです。

問)本日の会議で、イタリアがプライオリティなどで掲げていますけれども、気候変動などに関する議論はあったのかと、あわせてもし日本の方で何か言及している部分があればお聞かせください。

答)今回のことに関して気候変動で主に出た話はなかったと記憶します。気候変動の話はみんなぽろぽろ言ったよ。言ったけど、今言ったような、例えば税金の話、BEPSの話とかSDRの話ということに関しては当然なんですけれども、今のワクチンの話等が主で、気候変動に関しては個々に言われたことはありましたけれども、全体でというような話よりは目先のワクチンでしたね。気候変動はG20の台の上に載っかっていますから、その意味ではありましたよ。

問)2カ国間債務について、債務の状況を明らかにしてほしいということは債務の返済猶予の件についても、また改めてこのたび低所得国にワクチンを行き渡らせるためのSDRについても同じような主張をされていたと認識しております。改めて今後民間も全て出すということが大事だということをおっしゃっていましたけれども、本当に出したか調べる権限はないということでしたが、今後日本としてさらに主張していかなければいけないことはどういうことだと思いますか。

答)お金を国から借りている、借りている国は幾ら借りているかというのは国営銀行等が貸していれば、日本で言えば政策投資銀行が貸しているというのであれば、うちはスリランカに幾ら出していますとかジブチに幾ら出していますとかというようなことをみんなきちんと出してもらうと。そして出したことをみんなでわかった上で、みんなでお金を出し合って、それを借りられるようにする。問題は借りられるような権利を得てその国が借りたら、表に出ていない、裏から貸していたお金、別口で登録していなかったお金をその国が、その低開発国に対して私のところの返済を最初にくれと言われたら、その金は、ほかの国が出し合ったお金がその国の政府を通じて特定な国だけに返済されるというんだったら、我々が出したお金はその国の返済に充てられるということになりかねないでしょう。こういうことをやっている国、はっきり言って中国ですよ。みんな中国とわかってしゃべっているんだけど、中国がいますからね、そこに。G20ですから。そういった意味でみんなわかってしゃべっていますけれども、そういったことになるとみんなとしては、ちょっと待ってくれと。何で中国に返すために私達の金が使われるんだよということになりますから、そういった国はきちんと出してもらおうと。ただ、我々はその国に入って、我々が立入検査するわけにいかないから、それをやれる権利を持っているのは世界銀行とかIMFとかそういった組織になりますから、そういった組織でこれをきちんとやってもらうということでないとIMFに対してSDRというものを新しくといったって、特定の国の返済に充てられたのでは本来の趣旨から外れますからということを申し上げているということです。

問)先日からマーケットが随分荒れていて、特に巨額の財政を出すアメリカを頼ってインフレになるんじゃないかという期待で長期金利が上がって、株が下がるということが起きていますけれども、G20として財政だったり金融緩和のスタンス、実体経済を支えていくというスタンスには影響はないというふうにご認識なんでしょうか。

答)少なくとも今の金利が上がったって、アメリカが1.5%になったという話か。その話に関して今回話題になったことはありません。それからインフレになるからというので引き締めるという話にしたいんだろうけれども、そういったことは全くありませんで、少なくとも今イエレン、アメリカの新しい財務長官として今直ちに財政支援を引き揚げるつもりは全くないということは明言している。前回の個別の電話のときもそうでしたし、その後のG7も今回のG20も同じ話を3回していますから、まずするつもりはないということだと思います。

(以上)