財務総合政策研究所

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「女性の活躍に関する研究会−多様性を踏まえた検討−」報告書

平成28年4月発表

目次
(役職は平成28年4月現在)

序章 一層の「女性の活躍」に向けて

要旨

全文

  1. 多様な能力を活かす社会への進化
  2. 研究会における報告内容
  3. 研究会における提言
  4. 次世代につなぐ環境作り

前島 優子

(財務総研総務研究部総括主任研究官)

第1章 求められる女性活躍とその課題

要旨

  1. 女性活躍を巡って
  2. 女性活躍の政策対応と意義
  3. 女性の置かれている現状と課題
  4. 労働市場における女性
  5. 女性活躍への支援と少子化対策
  6. まとめと残された課題

加藤 久和

(明治大学政治経済学部教授)

第2章 スウェーデンとオランダの女性をとりまく環境と日本への示唆

要旨

  1. 海外比較から見た日本の女性の現状
  2. スウェーデンにおける女性の活躍
  3. オランダにおける女性の活躍
  4. スウェーデンとオランダから得る日本への示唆

奥 愛

(財務総研総務研究部主任研究官)

和田 誠子

(財務総研総務研究部研究員)

越前 智亜紀

(財務総研総務研究部研究員)

第3章 成人男女のジェンダー意識の類型と規定要因
―潜在クラス分析に基づいて―

要旨

  1. 問題意識
  2. 先行研究
  3. データと方法
  4. 潜在クラス分析の結果
  5. 各潜在クラスの規定要因
  6. まとめ

本田 由紀

(東京大学大学院教育学研究科教授)

林川 友貴

(東京大学大学院)

第4章 「女性」と「働く」の現状と今後
−生活者の意識や時代の変化から考察−

要旨

  1. 「女性」の就業状況と理想のライフコース
  2. 「仕事を継続している女性(継続層)」の現状と今後
  3. 「仕事を中断して再開する女性(中断再開層)」の現状と今後
  4. 「女性」を取り巻く、時代の移り変わり
  5. 「女性」の価値観・意識の変化
  6. 「働く女性」のために加速させるべきこと

古平 陽子

(電通総研主任研究員)

第5章 企業における女性のキャリア形成支援の現状と課題

要旨

  1. 問題の所在
  2. 調査目的、方法等
  3. 企業の取り組み
  4. 考察

横山 重宏

(三菱UFJリサーチ&コンサルティング
経済政策部長 主任研究員)

加藤 真

(三菱UFJリサーチ&コンサルティング
経済政策部  研究員)

第6章 (補論)女性活躍推進で企業・女性に何が起こっているか
―「育休世代のジレンマ」からの脱出戦略―

要旨

  1. 女性活躍推進の波と「育休世代のジレンマ」
  2. 企業の動きと残る課題
  3. 個人の動きと課題
  4. 女性活用失敗と男性長時間労働強化の悪循環の打破へ

中野 円佳

(ジャーナリスト/東京大学大学院教育学研究科博士課程)

第7章 男性に必要な変化−次世代育成のために−

要旨

  1. 子どもが生まれたら、父親の意識(OS)を入れ替える
  2. 育児休暇(育休)を取得した男性に見られる変化
  3. 男性社員の育休取得が増えることによる企業側のメリット
  4. 男性の働き方改革〜ワーク・ハードからワーク・スマートへ
  5. イクボスが増えれば、働き方が変わり、社会が変わる

安藤 哲也

(NPO法人ファザーリング・ジャパン代表理事)

第8章 (特別講演録)
「待機児童問題だけじゃない!女性活躍の大いなる壁」

要旨

  1. 待機児童問題の先にある課題
  2. 病児保育
  3. 障害児保育

駒崎 弘樹

(認定NPO法人フローレンス代表理事)

第9章 都市と地方における女性の就業の違い

要旨

  1. 女性就業の分析視点
  2. データ分析
  3. 女性就業の課題と政策

水落 正明

(南山大学総合政策学部教授)

(研究成果をまとめた出版物が、2016年秋頃出版予定となっております)

 

序章
一層の「女性活躍」に向けて

前島 優子 (財務総研総務研究部総括主任研究官)

【要旨】

女性は活躍の場を広げている。女性の労働人口は増加し続けており、女性は家庭においても家事・育児・介護などの多くを柔軟にこなしている。しかし、政治・経済の意思決定過程への女性の参画率は非常に低い。これは、日本の特徴であり、今後、一層の「女性の活躍」に向けて環境整備を進めることが必要である。女性が活躍できる環境作りは、多様な能力を活かす社会への進化に通じる。

財務省財務総合政策研究所では、2015年9月から2016年1月にかけて、「女性の活躍」をテーマに取り上げ、「女性の活躍に関する研究会―多様性を踏まえた検討―」(座長:明治大学・加藤久和教授)を開催した。研究会では、多様な委員の参加を得て、人々の意識や働く場の状況、保育ニーズの多様性に関する知見を深め、社会・経済の持続性を展望する上で不可欠な「女性が活躍できる環境の整備」について議論を行った。

女性の活躍と男性の家事・育児参画は表裏一体として推進されるべきものであり、女性の一層の活躍のために、性別役割分担にかかる意識改革のほか、働き方と評価の改革、育児環境の充実が必要とされた。本章においては、各章の要旨・提言を踏まえつつ、議論の全体を概観する。

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第1章
求められる女性活躍とその課題

加藤 久和 (明治大学政治経済学部教授)

【要旨】

女性活躍が必要な理由として、人口減少下での労働力人口不足への対応、女性の多様で柔軟な生き方の支援、両立支援策などと関連した社会の持続可能性の確保、グローバル社会への対応などがある。本章では、こうした視点から、女性活躍の必要性や現状、課題などを議論している。

女性活躍は安倍政権下の成長戦略の一環として注目を集めているが、その必要性については男女共同参画社会の実現と併せて以前から議論されてきた。2013年に「日本再興戦略」が策定され政策対応が加速されると、2015年8月には企業の女性活躍を促すために女性活躍推進法が制定されるなど、新たな局面が展開されている。

女性活躍という言葉には多様な意味が含まれるが、本章ではこの言葉を、「政治・経済・社会でのさらなる活躍を促すこと」、「労働市場における量的・質的改善を行うこと」、「少子化対策としても有効な両立支援を促進すること」と捉え検討を行っている。

女性の置かれている現状と課題については、賃金や企業役員の男女格差の視点からこの問題を整理し、さらに国際比較の視点からもこれらの点を論じている。

労働力人口不足が懸念される中、これまで以上に女性の労働供給が期待されるが、女性活躍だけで労働力人口を補うことは難しい上、非正規就業者の増加など労働の質的側面の改善も求められる。M字カーブは解消されつつあるが、その実情は非正規就業の増加であり、正規雇用の増加による労働力率上昇への寄与は小さい。生産性に関しては、女性就業者比率が上昇している業種ほど、全要素生産性上昇率が低いことが観測された。

女性活躍への支援と少子化対策に関しては、OECD諸国のパネルデータ分析から、女性の労働力率の上昇と出生率の改善が同時に進行していることや、ジェンダー開発指数で表される女性活躍の促進が出生率を改善する可能性を持つことが示されている。

女性活躍が求められる背景には、労働力人口不足への対応という量的な側面のみならず、女性が多様で自分にあった生き方を可能とする環境整備の遅れという質的な側面がある。女性を含めた若者への支援を拡充するためには、高齢者向けに偏重する社会支出を変える構造的な改革を行う必要がある。

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第2章
スウェーデンとオランダの女性をとりまく環境と日本への示唆

奥 愛 (財務総研総務研究部主任研究官)
和田 誠子 (財務総研総務研究部研究員)
越前 智亜紀 (財務総研総務研究部研究員)

【要旨】

今でこそ女性の労働参加が進んでいるスウェーデンとオランダも、以前は日本と同程度の労働参加率だった。スウェーデンは1970年代に労働環境や保育環境の整備を進め、男女ともにフルタイムで働き続けることができる社会を構築した。オランダは1990年代に労働時間や雇用形態に関わらず、同等と判断される職務に対して同等の賃金が支給されることを前提に、ライフスタイルに合わせて労働時間選択の自由度を高めることで、労働者が働きやすい社会を構築した。

スウェーデンとオランダで共通している事項は、@労働時間が必要な時に柔軟に調整できること、A雇用が不安定でないこと、B恒常的な残業がないこと、C男性が育児休業を積極的に取得すること、D子どもへのケアに満足がいく体制があることである。これらの5つの項目は、日本でも女性が活躍できるために考慮すべき重要な観点となる。

スウェーデンとオランダがいかに女性が活躍しやすい環境を作っているかは、日本の女性の活躍を検討する上で示唆に富む。女性が活躍できる社会を目指すことは、女性だけではなく男性にとってもより活躍しやすい社会に移り変わるきっかけとなる。

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第3章
成人男女のジェンダー意識の類型と規定要因
―潜在クラス分析に基づいて― 

本田 由紀 (東京大学大学院教育学研究科教授)
林川 友貴 (東京大学大学院)

【要旨】

本章では、潜在クラス分析という統計手法を用いて、成人男女のジェンダー意識の類型を取りだし、各類型にどのような要因が関連しているかを明らかにすることを試みる。配偶の有無により比率は違うものの、男性では〈保守・仕事積極〉、〈リベラル・仕事消極〉、〈リベラル・仕事積極〉、女性では〈保守・仕事消極〉、〈リベラル・仕事消極〉、〈リベラル・仕事積極〉というそれぞれ3つのジェンダー意識類型が見出された。特に有配偶女性では、1995年時点での研究と比較して〈リベラル・仕事消極〉類型が増加していることが注目される。これらの意識類型は、自身の能力や仕事上の「強み」に関する自信、親のジェンダー意識、職場における中高年男性のワークライフバランスへの態度などから影響を受けている。

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第4章
「女性」と「働く」の現状と今後
―生活者の意識や時代の変化から考察― 

古平 陽子 (電通総研主任研究員)

【要旨】

少子高齢化が進む中、女性が活躍できる社会の構築は重要なテーマである。しかし現状は、結婚・出産(第1子)を機にそれぞれ約3割が離職しており、企業内においてきちんとしたキャリア・パスが築けない課題を抱えている。本章では、“女性が働くこと・働き続けること”に関して、何が阻害要因かを明らかにすべく、複数の調査・分析を実施した。

「就業経験のある20-50代女性を対象としたアンケート調査(電通総研「女性×働く」調査)」では、離職することなく仕事を継続していくためには、就業後の環境のみならず、就業する前段階でのキャリア教育、母親以外の多様な女性のライフコースに触れる必要性が明らかになった。

加えて、正規・非正規などの雇用形態により、企業側の出産・育児・介護支援制度の充実度、利用しやすさに大きな乖離があることが確認できた。結婚・出産を機に正規から非正規雇用に転換する女性が多い現状を鑑みると、非正規雇用者を対象とした支援環境の改善も重要である。

「女性の生活意識・価値観データ(1998-2013)を活用したコーホート分析」からは、将来の結婚・出産予備軍である若年層(20-30代)には、他世代よりも、より自分らしさを大切にしたいという価値観を強く持っていることが確認できた。今後、企業や社会は、これら若年層の多様化する価値観をくみ取ったうえで、キャリア・パス構築支援制度を構築していく事が、さらに重要になってくるだろう。

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第5章
企業における女性のキャリア形成支援の現状と課題

横山 重宏 (三菱UFJリサーチ&コンサルティング 経済政策部長 主任研究員)
加藤 真 (三菱UFJリサーチ&コンサルティング 経済政策部 研究員)

【要旨】

本章では、企業における女性活躍推進に向けた取り組みのフロンティアの一端を明らかにすることを目的として、各企業が目指す姿や経営目標に対して女性社員のキャリア形成という観点から行っている取り組み内容を把握し、施策実施上での課題や、具体的にどのような難しさがあるのかを整理した。

具体的には、業種、企業規模、先行文献等を踏まえ、全5社(経営者、人事担当者、ダイバーシティ推進担当者等)にインタビュー調査を実施し、そこで得られた情報を整理した。インタビューをした5社はいずれも、将来の企業の姿として、女性が活躍しているイメージを有しており、そこに向けてアクションを取ってきた、あるいは今後さらに取ろうとしている段階にある企業である。

インタビュー調査の結果を、企業として目指す姿の実現に向けて、これまで取り組んできた内容とそこでの課題、今後の方向性に着目して集約したところ、@復職者のモチベーションを高めるために業務量・業務内容をどのように割り当てるか、A女性の管理職比率引き上げや産休・育休後の復職の常態化を目指して、いかに多様なロールモデルを構築し、その「見える化」を図るか、B営業職等の女性が活躍する職域をどう拡大するか、C結果として女性の活躍推進につながる様な組織全体の改革をいかに進めるか、の4点がポイントとして挙げられた。

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第6章
(補論)女性活躍推進で企業・女性に何が起こっているか
  ―「育休世代のジレンマ」からの脱出戦略―

中野 円佳 (ジャーナリスト/東京大学大学院教育学研究科博士課程)

【要旨】

子育ての時間と仕事のやりがいの両方を得ようとする「育休世代」の総合職女性には育児と家庭の両立支援制度が整ってもなお、離職や意欲の冷却が起こっている。

これに対して、先進企業は人材不足に対応するためやグローバル競争を勝ち抜くために女性活躍を進めており、後発企業も政府の後押しで重い腰を上げ始めている。しかし、数合わせ的な女性の抜擢は、後々の女性活躍に対する反動を引き起こす可能性がある。働き方の問題を解決しなくては、抜本的な離職率や登用率の改善にはつながらない。

一方、女性たち個人の側では自身が昇進することや社内で声を上げることで、所属企業を変えようとする動きが出ている。ただし、制約がある女性が昇進する壁は高く、上司や人事、労働組合も力になってくれることは少ない。ワーキングマザー同士が連帯できない構造もあり、優秀な女性たちは中途採用ニーズなどに応じてむしろ転職市場に出始めている。

女性たちが抱えるジレンマを克服するには、働き方の改革と労働市場の流動性が確保され、改革が実現できた企業に人材が流れるという好循環が社会に波及していく必要がある。

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第7章
男性に必要な変化
―次世代育成のために―

安藤 哲也 (NPO法人ファザーリング・ジャパン代表理事)

【要旨】

昨今、イクメンプロジェクトなど、育児に積極的な男性を増やすための取組みが進んでいる。しかし、男性による育児はまだまだ一般的ではないのが実情であり、社会に普及していく余地がある。「女性活躍」と「男性の育児参画」はセットである。「出生率1.8」「介護離職ゼロ」を達成するためにも、男性中心の組織文化や働き方を抜本的に変えていく必要がある。本章では「父親の役割」と「イクボス」の必要性について述べる。「イクボス」は、多様な働き方を応援し、リーダーとして組織の生産性を高めようと力を尽くせる上司のことである。イクボスが増えれば、社会が変わると考える。

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第8章
(特別講演録)「待機児童問題だけじゃない!女性活躍の大いなる壁」

駒崎 弘樹 (認定NPO法人フローレンス 代表)

【要旨】

女性の活躍推進を支援する上で取り組むべきは、待機児童問題だけではない。待機児童問題の先にある2つの課題、「病児保育」と「障害児保育」について紹介する。

「病児保育」はニーズが高い。また、ひとり親支援として必要不可欠である。しかし、社会的な取り組みが遅れている。「病児保育」を普及させるためには「施設型」にこだわるのではなく、「訪問型」が有効である。施設にではなく、利用者に公的補助を行うことで、利用者の選択の自由やサービス向上のインセンティブが確保される。国が利用者主体の仕組みを推進することで、担い手が拡大する可能性が十分にある。

「障害児保育」も社会的な取り組みが遅れている。特に、医療的デバイスを常に身に付ける必要がある子ども(医療的ケア児)は増加しているが、医療制度と福祉制度の狭間に位置して、対応する制度がない。障害児保育事業を開始したところ、医療的デバイスが必要なお子さんが、多様な刺激によって医療的デバイスを外すことができるようになったという例もある。子どもに障害があったとしても、その親が働き続けられる環境を作ることは非常に重要なことである。

なお、2つの課題に共通して重要なのは「担い手」の確保である。「保育士」については、処遇改善が必要である。医療的ケアの担い手については、自宅以外の学校などでも訪問看護士が対応できるようにすることや研修などの方法で保育者やヘルパーなどが一定の役割を果たせるようにすることが必要となろう。

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第9章
都市と地方における女性の就業の違い

水落 正明 (南山大学総合政策学部教授)

【要旨】

本章は都市と地方の女性の就業状況やそれらを取り巻く環境の違いについて明らかにすることで、女性就業に関する政策的インプリケーションを得ることを目的としている。47都道府県を東京圏(埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県)、関西圏(京都府、大阪府、兵庫県、奈良県)、他都市圏(北海道、宮城県、愛知県、広島県、福岡県)、地方圏(その他の県)の4グループに分け、都道府県別集計データを用いて地域差について検討した。

女性の就業について、都市では正規職として働き続けることが難しく、出産・育児のために非求職になりやすく、三世代同居でも有業率はそれほど高くならないことがわかった。一方、地方では有業率は高いものの、管理的職業に就いている比率は低く、知識・能力に自信がないため非求職になりやすいことがわかった。

女性の就業を取り巻く環境については、都市では三世代同居や保育所定員が少ないものの、特に東京圏では夫の家事・育児時間が多く、育休等の取得率が高く、妻の就業を支えていることがうかがえた。地方においては、製造業や医療・福祉分野での雇用が女性の有業率の高さを支えているほか、性別分業意識に対する賛否は都市とほぼ変わらないこともわかった。

回帰分析の結果からは、都市と地方の有業率の差のうち、これらの環境要因によって他都市圏と地方圏の差は説明された。ただし東京圏と関西圏については、これらの環境要因では説明されない有業率の低さがあることがわかった。政策的には、保育所定員の増加、性別分業意識および女性の待遇(賃金)の改善などが女性有業率の上昇に資すると考えられる。

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