財務総合政策研究所

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女性の活躍に関する研究会
第4回会合
2016年1月18日(月) 15:00〜17:30
於: 財務省4階 西456「第1会議室」

第4回会合

ゲストスピーカー:「待機児童問題だけじゃない!女性活躍の大いなる壁」

報告者

駒崎 弘樹  認定NPO法人 フローレンス代表理事
説明「成人男女のジェンダー意識の類型と規定要因―潜在クラス分析に基づいて―」

報告者

本田 由紀  東京大学大学院教育学研究科教授
ゲストスピーカー:「「育休世代のジレンマ」を越えて」

報告者

中野 円佳  東京大学大学院博士課程
   

議事要旨

(1) ゲストスピーカー:「待機児童問題だけじゃない!女性活躍の大いなる壁」

駒崎 弘樹  認定NPO法人 フローレンス代表理事

「女性の活躍推進」が成長戦略に取り入れられ注目を浴びる中、待機児童問題は既に大きな課題として取り上げられている。本日は、待機児童問題の先にある今から取り組まなければならない課題として、病児保育と障害児保育を紹介する。

<病児保育>

病児保育とは、子どもが体調不良の時に親に代わって適切にケアと保育を行うことである。子どもが体調不良の際に、会社を休んで看病を行う負担は母親に偏っており、子どもの病気がきっかけで女性の就業継続が困難になるケースは少なくない。病気の子どもを預けられる仕組みがあれば、子育てと仕事の両立が当たり前の社会になるのではないかと思い、11年前に病児保育事業を始めた。
病児保育は保育領域の中で最も取り組みが遅れている。厚労省が約20年前から推進している病児保育は「施設型」であり、約7割〜8割は医療機関併設型で運営されている。しかし、小児科の数が限られる中、医療機関併設型での施設拡大には限界がある。また、「施設型」は人件費や固定費がかかる。国から補助金を受ける場合でも、必要経費に比べて少額な上、価格決定の自由が奪われ、経営が苦しくなることが多い。その結果、事業者が新規参入せず、取り組みが広がっていない。
そこで、補助金に頼らない日本初の「訪問型」「共済型」病児保育事業「NPO法人フローレンス」を立ち上げた。この事業では、子どもが体調不良の時に、保育者が子どもの自宅に訪問し、保護者に代わって保育を行う。「訪問型」だからこそ固定費を抑えられ、多くの人を助けることができるようになった。時間単位の料金設定は高額になるため、自動車保険の仕組みを取り入れ、発病率に応じた月会費を徴収することで安定収入を確保している。
「訪問型」の病児保育は国の政策に取り入れられていないが、先んじて複数の自治体はバウチャー等の仕組みを取り入れ訪問型病児保育の利用を助成している。従来のように施設を補助する仕組みではなく、利用者を助成する仕組みにすれば、利用者が主体的に事業者を選択可能なので、事業者にサービスを向上させるインセンティブが働く。利用者助成の仕組みに変えることで、例えば、数あるベビーシッター会社が、訪問型病児保育の担い手となる可能性は十分にある。やり方次第で病児保育の担い手が拡大する可能性が十分あるにも関わらず、実現できないという、非常にもったいない状況だ。政府は様々な手法を組み合わせながら社会インフラを整えていくべきである。
病児保育を通じて低所得のひとり親家庭の支援という課題に気が付いた。ひとり親家庭は、54%が貧困状態にあると言われている。子どもが病気でも職を失うわけにはいかないため、ひとり親の方々にとって病児保育サービスは不可欠である。フローレンスではこうした方々に対してもサービスを低価格で提供したいと考え、利用料を寄付金で補っている。ひとり親支援は、本来ならば国の税金で対応すべき問題と考えられる。家庭の貧困は子どもの貧困に直結し、幼少期に背負うハンディは、大人になっても引き継がれる。幼少期の段階でギャップを埋めることが重要であることを、政府はもっと認識すべきである。

<障害児保育>

障害児保育とは、障害のある子どもに対する保育ケアのことである。中でも、呼吸器や胃ろうといった医療的デバイスを常に身に付ける必要がある子どもは「医療的ケア児」と呼ばれ、周産期医療の発達によって近年増えている。
医療的ケア児の保育について相談を受け、2012年に東京都下の施設を調べたが、医療的ケア児の長時間預かりが可能な施設は一つも見つからなかった。日本では障害児の母親は就労継続が難しく、大阪での調査によれば、障害児の母親の常勤雇用率は5%という低水準(健常児の家庭の7分の1から8分の1)となっていた。政府は「一億総活躍」や「女性が働き続けられる社会」を目指しているが、障害児の保護者の就労を支えることを目的とした預かり先は日本にはない。
医療的ケア児は医療制度と福祉制度の狭間に位置している。保育園や幼稚園は医療機関でないとの理由で受け入れず、児童発達支援事業所は医療的ケアや長時間預かりをしない。こうした問題を知り、日本で初めて医療的ケアが必要な子どもの長時間保育を実施する施設として「障害児保育園ヘレン」を設立し (2014年9月)、さらに自宅でマン・ツー・マンの保育を行う「障害児訪問保育アニー」を開始した(2015年4月)。
初めての取組であったため、行政との調整は大変であった。「障害児保育園ヘレン」は、現在、児童発達支援事業に位置づけられる障害児の通所施設と子ども子育て支援新制度における居宅訪問型保育の両制度を活用したスキームで運営している。障害児通所施設は教育的な目的で設置されていることから長時間預かることが想定されておらず、滞在時間ではなく訪問回数に応じて補助金が支払われるため、長時間預かるインセンティブが働かない。利用時間を延ばすことで、保護者の就労を支援することも考えられることから、時間に応じた加算を導入すべきである。
医療的ケア児は、能力はあるのに医療デバイスを身に付けているというだけで様々なチャンスを奪われている。私たちの「障害児保育園」で多様なアクティビティを行うことで、発育が促され、医療的ケアが外れ、普通の保育園に転園できた事例もある。医療的ケア児が今後も医療的ケアが必要な状態であり続ける場合と、発達して普通の保育園に通うことができる場合とでは、将来的に生じる医療費等の負担は大きく異なる。医療的ケア児の早期支援は、本人や家族だけでなく、中長期的な社会的負担から見ても重要である。また、医療的ケア児の長時間保育が可能になったことで、母親もフルタイムの仕事を継続でき、家計の経済状態も維持される。労働人口が3分の2になると予測される2050年に向けて、子どもに障害があったとしても、親が働き続けられる環境を作ることは重要だ。
「障害児訪問保育アニー」では、医療的ケアが必要な子どもの自宅でマン・ツー・マンの保育を行う。重度障害児のマン・ツー・マンの保育サービスは子ども子育て支援新制度の中に位置づけられ、国の認可事業として補助金が導入されたところである。訪問保育では、近くの保育園との交流保育も行っている。交流保育によって、医療的ケアが必要な子どものみならず、保育園の子どもも良い刺激を得ることができ、良いモデルができた。今後、地域の保育園がいっそう開かれた場所になることを期待している。
障害児保育に関するさらなる課題として、まず「小学校1年生の壁」がある。小学校では医療的ケアを行わないため、保護者の同伴が求められ母親の就業継続が難しくなる。先生が自宅に来る訪問教育もあるが、都内では週に2、3回しか受けられず、義務教育を十分に受けられない。現在の法律では、訪問看護ができる場所が「居宅」に限定されているが、これを「居宅等」と改正し、看護師が「学校」にも訪問できるようにすることで、解決可能と考える。障害の有無にかかわらず「インクルーシブ(包摂)」な環境を作ることを、積極的に進めていくためにも必要である。なお、訪問看護の充実は、高齢者ケアの問題にまでつながる。2050年の超高齢化社会に立ち向かうためには、いち早くこの問題に取り込むことが重要である。
次に「古い障害類型による弊害」がある。「医療的ケア」は、非常に新しい問題であるために、既存のどの障害のカテゴリーにも含まれていない。例えば、知的障害と身体障害が組み合わされた重症心身障害児は42年前の古い指標を基に定義されており、医療的ケア児を含まないため、適切な補助や支援が受けられない。障害類型が現在の医療の進化を踏まえてアップデートされ、制度の是正が行われれば、制度の狭間で苦しんでいる親子を救うことができる。
さらに、「障害児保育のインフラ不足」がある。保育園の増設は無駄にならない。保育園が定員割れをしても、空いている定員枠で障害児を受け入れることができる。現状、障害児施設と保育施設は異なる制度を基にしており施設基準が異なっているが、縦割りの施設基準を調整することで、柔軟な受け入れが可能になる。

<担い手確保の必要性>

病児保育・障害保育を通じて、保育士等担い手不足を痛感している。都内では保育士の給料が低いため保育士の資格は持っていても保育士として働きたくないという潜在保育士が増え、保育士不足が生じている。保育士の確保には、保育士給与を含めた処遇改善が必要である。
医療的ケア児の保育を行う上で訪問看護は重要だが、看護師不足のため医療的ケアのニーズをカバーしきれていない。親が通常行っているケアについては、保育者やヘルパー、特別支援学校のバスの添乗員も含め、医療的ケアの研修を広く浸透させることで、一定程度の対応が可能になる。ただしこの取り組みには不測の事態に備えて保険をかけるなど、活動をフォローする仕組みも必要である。

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(2) 説明:「成人男女のジェンダー意識の類型と規定要因―潜在クラス分析に基づいて―」

本田 由紀  東京大学大学院教育学研究科教授

<問題意識>

「女性の活躍」が政策的に謳われながらも捗々しく進展しない背景に、男女のジェンダー意識の構造、例えば、男性、女性の中に分断された複数の層の存在や、そのいずれにも通底するジェンダーの前提があるかどうかを明らかにすることが今回の問題意識である。本研究では、潜在クラス分析を用いてジェンダー意識を分析した山口先生の研究(以下、「先行研究」)から、約20年経過した現在について、分析対象を男性及び未婚者にも広げて、ジェンダー意識類型と他の変数との影響関係を探る。
今回の研究では、以下の2点を分析課題としている。
マル1潜在クラス分析を用いて、現代日本の成人男女のジェンダー意識の構造を未既婚別に検討すること。
マル2ジェンダー意識と関連する要因を検討すること。
先行研究では、日本社会学会が10年ごとに実施している「社会階層と社会移動に関する全国調査(SSM調査)」の1995年のデータを使用している。2015年のSSM調査データはまだ公開されていないことから、本研究では、マクロミルが2014年5月にインターネットリサーチをした「『女性の活躍』に関するアンケート」を使用した。先行研究が分析した1995年時点から20年を経た現在を比較し、ざっくりとした変化の把握を試みる。

<分析課題マル1:現代日本の成人男女のジェンダー意識の構造の未既婚別検討について>

「既婚男性」「既婚女性」「未婚男性」「未婚女性」について、それぞれで潜在クラス分析を適用したところ、いずれも3つずつのクラス(類型)に分けることが最も適合性が高かった。

ローマ数字1 既婚男性

クラス1:4割強を占める。伝統的な性別役割分業意識が強いが、ワーク・ライフ・バランス(WLB)は68%が支持している。(「保守・仕事積極」層=保守オヤジ層)
クラス2:3割強を占める。「男性稼ぎ手モデル」を強く否定すると同時に、男性の家事分担も否定し、自分の性別を肯定する度合いが低い。(「リベラル・仕事消極」層=男はつらいよ層)
クラス3:2割強を占める。性別役割分業に否定的だが仕事での活躍志向が強く、3歳児神話(子どもをきちんと育てるためには、子どもが3歳になるまでは母親が家にいた方がいい)を65%、「女性が男性をたてる」ことを56%が肯定する。(「リベラル・仕事積極」層=意識高いバリバリ層)

ローマ数字2 既婚女性

クラス1:5割強でマジョリティを占める。比較的リベラルだが、「仕事での活躍」には消極的。(「リベラル・仕事消極」層=働きたくない穏健派層)
クラス2:4分の1を占める。リベラルで「仕事での活躍」に積極的だが、「女性が男性をたてる」ことを68%が肯定している。(「リベラル・仕事積極」層=世馴れたバリキャリ層)
クラス3:2割弱を占める。きわめて保守的だが、WLBは72%が肯定し、「男性稼ぎ手モデル」はあまり肯定しないが、自分も仕事に積極的ではない。(「保守・仕事消極」層=保守オババ層)
既婚女性について1995年の調査結果と比べると、「リベラル・仕事積極」層(世馴れたバリキャリ)は41%から25%にまで減っている。代わりに増えたのが「リベラル・仕事消極」層(働きたくない穏健派層)で、12%しか存在しなかったのが、現在は55%と大幅に増加しており、仕事への消極性が非常に強くなっていることが分かる。
これが何に由来するかは2015年のSSM調査の分析が必要だが、女性の中で非正規職員が増え、正社員であってもブラック企業が増え、労働市場が過酷化しており、女性が仕事に対してこれ以上活躍できないという気持ちを持つのも当然かと思わせる時代変化が少なからず影響している可能性は否めない。
女性の活躍が掲げられる中で、男女平等という理念的な賛成は増えているが、女性の中で仕事は無理、きつい、これ以上無理、もっとがんばれと言われても、というような思いが高まっているとすれば、非常に忌々しき問題である。

ローマ数字3 未婚男性

クラス1:半数を占める。かなりリベラルだが3歳児神話を61%が肯定している。(「リベラル・仕事積極」層=ものわかりいいけど常識に流され層)
クラス2:半数弱を占める。かなり保守的だが男性稼ぎ手モデルを強く否定しつつ、仕事には積極的。(「保守・仕事積極」=オラオラ層)
クラス3:5%を占める。総じて否定的な回答が多いが、男性の家事役割は強く否定し、仕事には消極的だが「働きたくない」意識が特に強いわけではない。(「リベラル・仕事消極」=鬱屈・無気力層)

ローマ数字4 未婚女性

クラス1:36%を占める。(「リベラル・仕事積極」層=世馴れたバリキャリ層)
クラス2:33%を占める。総じて否定的もしくはリベラル寄りの回答。(「リベラル・仕事消極」層=いろいろめんどくさいけど男が威張っているのもがまんできない層)
クラス3:31%を占める。(「保守・仕事消極」層=保守オババ予備軍層)

<分析課題マル1のまとめ>

未婚男性と未婚女性は「リベラル・仕事積極」層が一番多いが、既婚男性は「保守・仕事積極」が、既婚女性は「リベラル・仕事消極」が一番多くなっている。
既婚女性は「リベラル」層が「仕事消極」層と「仕事積極」層が分かれるという知見は、先行研究と共通するが、同様の点は男性や未婚女性についても見られる。
男性は、「仕事積極」層が「リベラル」層と「保守」層に分かれる。女性は、「仕事消極」層が「リベラル」と「保守」に分かれる。

<分析課題マル2:ジェンダー意識と関連する要因の検討>

「既婚男性」「既婚女性」「未婚男性」「未婚女性」をそれぞれ3つのクラスに分けるものは何かを分析する。

○基本属性に関する分析

「保守」層は年齢がやや高い。
仕事に対する意識と正社員比率・無業比率は一部関連がある。
既婚男性で「保守・仕事積極」層は有子比率がやや高い。
既婚男女で配偶者収入・夫婦合計収入の関連がある。
最終学歴は「リベラル・仕事積極」層に大学以上がやや多い。しかし、未婚女性の場合「リベラル・仕事消極」層で大学以上がやや多く、女性にとって学歴が高いということが、必ずしも仕事を積極的にするように向かっていないことが分かる。

○子ども期に関する分析

「あなたの親は、女性が働くことはよいことだと考えている」との質問に対し、どの集団の「リベラル・仕事積極」層も肯定する度合いが強くなっており、親の影響は強いことが伺える。
既婚男性に関し、「子どもの頃にお手伝いをよくしていた」度合いは「リベラル・仕事積極」層で高く、お手伝いが大事ということが推測できる。

○「能力」に関する分析

「自分の意見をはっきり言える」「ものごとをてきぱき進められる」度合いは、「リベラル・仕事積極」層で高く、「リベラル・仕事消極」層で低い。
「仕事に活かせる強み」を持っている割合は、特に女性の場合、「リベラル・仕事積極」層で高い。仕事に活かせる強みを持っているかどうかは、女性の活躍にとってとても重要であることが確認される。

○職場特性に関する分析

特に未婚男女において、「家庭と仕事の両立に理解のない中高年男性が職場に多い」度合いは「リベラル・仕事積極」層で低い。この家庭と仕事の両立に理解のない中高年男性を「粘土層」と呼んでいるが、「粘土層」が少ない方が、仕事に積極的でリベラルになりやすい。
残業や性別職務分離の度合いは、特に既婚男性の場合に「リベラル・仕事積極」で低い。

○家庭生活に関する分析

既婚男性の中で、家事分担の比重は意識類型と関連しているが少なく、女性は意識類型に関係なく多い。
配偶者の家事分担比率は、既婚男性において「保守・仕事積極」層で高い。
既婚男女の中で「リベラル・仕事積極」層は、家庭を重視している度合いが低い。
既婚女性の中で「リベラル・仕事積極」層は、充実した自分の時間を持てている度合いが低い。

<分析課題マル2のまとめ>

ジェンダー平等で仕事で「活躍」するという観点からは、「リベラル・仕事積極」層に適性がある。この類型は、自分の親がリベラルな意識であり、自分の「能力」を高く評価し、「粘土層」の少ない職場にいる。しかし、既婚男性の中で「リベラル・仕事積極」層は少数派であり、過半数は「女性が男性をたてる」ことを支持し、家事は少なく、家庭を重視する度合いも低い。また、既婚女性の中でも「リベラル・仕事積極」層は4分の1にすぎず、「女性が男性をたてる」ことを7割近くが支持し、家事は多く、充実した自分の時間をもてていない。女性が育児を担うことや「女性が男性をたてる」ことを、未婚男性は半数、未婚女性の3分の1が自明視している。
他方で、「リベラル・仕事消極」層が既婚男性の約3割、既婚女性の過半数、未婚女性の3分の1を占める。特に既婚男性では、男性が家事・育児・介護をやるのは男らしくないといった意識や、「能力」自認の低さなど、総じて消極的な意識がみられる。未婚男性の「リベラル・仕事消極」層は少数派だが、消極的な意識がいっそう著しい。女性でも消極性は同様にみられる。「リベラル・仕事消極」層の全般的消極性をいかに克服するかが重要である。
さらに、「リベラル」か「保守」かに関わらず、男性では「仕事積極」がマジョリティで、逆に女性では「仕事消極」がマジョリティであるということ自体が、明確なジェンダー間の分断であるといえる。

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(3) ゲストスピーカー:「「育休世代のジレンマ」を越えて」

中野 円佳  東京大学大学院博士課程

「育休世代」とは、2000年前後の育休法・均等法改正などを経て、女性の総合職が増え、育休を取ることが「当たり前」になってから総合職正社員として就職した世代を定義している。育休世代が直面する問題(ジレンマ)と、企業と女性がそれをどのように越えようとしているのかを取り上げる。
総合職女性の出産後の経路は、大きく2つの類型に区分できる。1つ目は、男性並みに仕事をするつもりでハードな職場を選んだが、マミートラックでやりがいを失い、退職してしまうケース。2つ目は、それなりに仕事をしたいという姿勢はあったが、どこかの段階で上昇意欲を調整(冷却)し、会社に残るケースである。その結果、企業には、やる気のあった人は辞めてしまい、やる気を調整した人は残るので、管理職などの意思決定層に女性が増えないという問題が生じる(公的領域の問題)。また、家庭においては、家事・育児分担が女性に偏り続けるという問題が生じる(私的領域の問題)。
女性への過剰な配慮や過去の女性職員の実績による判断などにより、育児中の女性の処遇は妊娠前よりも引き下げられてしまうことが多い。出産前の女性まで含めた女性の意欲が冷却し、そこから脱することができないという塩漬けの現象が起こる。女性の処遇引き下げは夫婦の所得格差をより拡大させる。男性が育児も行う場合には、女性以上に不利益を被りやすいため、女性が家事・育児を担い続けることが合理的になってしまう。この背景には長時間労働を前提とする社会があり、結果企業は使いにくい女性よりも男性を雇用しやすいという悪循環が起こる。
先進企業が女性活躍を進めている理由は、人材獲得に対する危機感や、グローバルでの競争、マーケティングの観点からである。後発企業では、なぜ女性活躍を推進するのかということを理解しないまま、女性活躍新法で課せられた目標数値の達成のための数合わせ的な抜擢が行われるだろう。多くの企業では離職率と登用率に男女差が残っている。これが女性管理職の少なさにつながっている。長時間労働を是正し、働き方改革をしていかなければならない。
女性のジレンマへの対処策は大きく2つある。一つは所属している企業を変化させるということである。戦略として、長時間労働をいとわない男性並みに働く戦略、早く帰宅しても生産性を上げる戦略、別の価値を生み出すダイバーシティ戦略などがあるが、それぞれ難点がある。個々の女性が個別の上司と交渉する戦略は、組織全体を変革する動きにつながらない。もう一つは所属している企業を飛び出すということである。最近は中途採用で管理職候補者を探す企業が増え、短時間でも勤務可能な中小企業が増えている分、転職市場は改善しているといえる。クラウドソーシングのような枠組みができたことで、フリーランスや起業もやりやすくなっている。労働市場全体の流動性や柔軟性が必要である。
職場と家庭環境の悪循環を断ち切るためには、今後以下の3つが必要である。マル1なぜ女性活躍推進が必要かという認識を企業に浸透させ、女性の成長機会確保と育児との両立支援をすること、マル2転職市場においては、雇用形態や労働時間で不利益を被らない仕組み作りや労働市場の流動性を図ること、マル3男性の育児参加に対する不利益処遇の禁止と、長時間労働是正に取り組むことである。

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