財務総合政策研究所

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女性の活躍に関する研究会
第1回会合
2015年9月7日(月) 13:30〜16:00
於: 財務省4階 南434「国際会議室」

第1回会合

説明『研究会の問題意識』

報告者

前島 優子 財務総合政策研究所総括主任研究官
座長及び委員全員から自己紹介と現状認識
   

議事要旨

(1) 説明『研究会の問題意識』

前島 優子 財務総合政策研究所総括主任研究官

「女性の活躍」は2014年の成長戦略の柱の一つであり、2020年までに、マル1指導的地位に占める女性の割合を少なくとも30%程度にすること、マル2女性の就業率を引き上げること等が数値目標で示された。本年6月には、「子育てと仕事の両立支援」「女性のキャリアアップの促進」「働き方改革」に関し、これまでの取組みの成果や今後の新たな取組みも公表されたところ。指導的地位(国会議員、国家公務員、民間企業の管理職、研究者等)に占める女性の割合は低く、女性の参画を図る方法としてクオーター制等があることが、ポジティブ・アクションとして紹介されている。2015年6月には「すべての女性が輝く社会づくり本部」で策定された「すべての女性が輝く政策パッケージ」の実施状況が公表されている。
「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」では、事業主行動計画において、マル1女性の採用比率、マル2勤続年数男女差、マル3労働時間の状況、マル4女性管理職比率の4つの状況確認をしていくことになった。なお、概ね5年置きに策定される少子化社会対策大綱も2015年3月に策定され、数値目標が示されたところ。最近は、数値目標によって見える化しながら推進していくという流れが定着している。
日本の女性の年齢別労働力率の推移をみると、M字カーブは一見改善しているように見えるが、有配偶の女性では労働力率が依然低い。雇用形態の性別による違いを見ると、女性で年齢が高い層ほど非正規雇用となっている。女性の管理職比率は11%程度で、他国と比べると低い。男女の賃金格差は大きく、大学進学率にも男女差が見られる。男女の賃金格差は、50代に向けて拡大しており、企業を規模別・業種別に分けてもほぼ同様の傾向がある。
共働き世帯自体は多くなっているが、第1子出産後に仕事を辞める割合が6割にも上り、女性のキャリアの断絶が起きている。男性の育児休業取得率は依然低く、30〜40歳代の子育て世代で長時間労働が多いため、男性が家事・育児に関わる時間は多くない。世帯をみると、わずか20年前には「夫婦と未婚の子からなる世帯」が多数を占めていたのが、現在は世帯が多様化している。また、三世代同居率については地域によって状況が異なる。
本研究会では、女性の生き方の多様性や変化に関する知見を深め、財政及び経済に関して中長期的に展望する上で重要な「女性の活躍」に向けた方策を検討する。問題意識として、マル1男女ともに、仕事と育児が両立できること、マル2女性の潜在力の顕在化の2つの柱を掲げ、どのような方策が必要かを検討していく。

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(2) 座長及び委員全員から自己紹介と現状認識

マル1加藤 久和 明治大学政治経済学研究科教授

女性の活躍は、人口減少下での労働力人口の確保や社会の持続可能性確保のための両立支援、少子化対策の観点でも求められており、女性の多様で柔軟な働き方を支援することが必要である。また、グローバル社会での当たり前の認識として、女性の活躍を考えていくことも必要である。
持続可能な経済社会を維持する上で女性の活躍は欠かせない。座長私案だが、実際の政策に資する提言ができればと考えている。その際、内容はエビデンスや分析結果を伴ったものとする。また、女性の活躍は注目されているテーマであることから、できる限り広く発信していきたい。
女性活躍に関する議論として、まず、労働市場における男女格差がある。男女別の高卒及び大卒の賃金プロファイルを比較すると非常に大きな差がある。女性の非正規の割合は56.7%である一方、男性は21.8%に過ぎず、雇用形態の格差が非常に大きい。女性の労働力率の国際比較(25歳から54歳)を見ると、日本は72.2%で諸外国に比べると低い方に位置する。女性の働き方に関し、M字型カーブが最近ややフラット化したのは、非正規の女性が増えたからであり、質的観点からみると改善したといえるかどうかは疑問である。
UNDPのジェンダー不平等指数を見ると、日本の女性の地位は高くはない。また、ジェンダー開発指数で女性の活躍度合いを見ると、日本は79位と非常に低い。このうち、男女の1人当たりGDPを示した項目を見ると、日本の女性は2万2,384ドル、男性は5万1,906ドルとなっており大きな格差がある。世界全体の一人当たりGDPの男女比は、男性を100とすると女性はGDP比で49.0だが、日本は43.1と下回っている。賃金のみならず、様々な所得を含めても、日本の女性の一人当たりのGDPは相当低い結果が出ている。
女性の社会進出と出生率の関係をみると、1970年頃は出生率と労働力率にはネガティブな関係だったが、2000年になるとプラスの関係に変わっており、出生率と女性の労働力率の間の構造的な関係が変わってきている。女性が働きやすい社会を作った国は出生率を高めているという議論もある。OECD30カ国の約30年間のパネルデータを見ると、女性の労働力率が高まると合計特殊出生率との関係ではプラスになる。女性が社会進出するにつれて働きやすいシステムや制度が生まれ、それがさらに出生率を高めていくのではないか。
他方で、RIETIのJIPデータを使った分析を踏まえると、単に女性が社会進出をする量の問題だけではなく、質の問題も考えていかなければならない。さらに、教育や支援のあり方とも絡めて、女性の社会進出が生産性を高めるような構造に変えていく必要があるという問題認識を持っている。

 

マル2安藤 哲也 NPO法人ファザーリング・ジャパン代表理事

男性の育児参加や男性の働き方改革により、女性が活躍し、さらに少子化対策につながるという観点を伝える。2006年にNPO法人ファザーリング・ジャパンを立ち上げ、男性の育児参加を呼びかけている。「イクメン」は増えており、意識は変わっているが、働き方が変わっていない。企業での働き方や意識をどう変えていくかということが課題である。
男性の子育ての悩みや課題を聞くと、仕事が忙しくて育児時間が取れないという声が多い。その結果、子供との愛着形成がままならず、夫婦関係が悪化して家に居場所がなくなる。他方、大黒柱としてしっかりと稼がなければいけないというプレッシャーもあり、家がホームではなくアウェーになっている男性が日本に大量にいる。こうした状況を改善するため、父親であることを楽しむことをはじめとする意識改革を呼びかけている。
父親が育児を楽しむことができる環境が強化されると、父親の意識や行動が変わる。家庭では父子の愛着や夫婦間パートナーシップが醸成され、離婚の減少、DVや子供への虐待の予防、産後の女性の鬱の軽減、地域では子育て拠点の活性化、企業では生産性の向上や優秀な人材の獲得などの効果が期待され、国や自治体が掲げる男女共同参画やワークライフバランスが推進される。その結果、子供が産まれ育ちやすい社会になり、母親の負担が減り女性も力が発揮でき、就業率が向上し、GDPにより寄与するという効果が期待される。
我々が行った政策提言に沿う形で、父親の育児休業の取得を促進する改正育休法が2010年より施行された。2014年4月には改正雇用保険法により、育児休業給付金が67%に引き上げられた。また、少子化社会対策大綱にも男性の配偶者の出産後休暇の取得率目標80%が盛り込まれた。
日本の男性の家事・育児時間は各国と比べて非常に短く、これが女性活躍が進まない原因とリンクしている。夫の家事・育児時間が長いほど第2子以降の出生割合が高くなるというデータもある。男性の意識は変わっても職場の問題が壁になっており、2014年3月からイクボスプロジェクト(注)を実施している。男性の生き方や働き方、価値観が変わっていくと社会は変わっていくと考えている。
 ※イクボス…職場で働く部下やスタッフが男女を問わず、子育て・介護などのバランスに配慮でき、その人のライフだけではなくキャリアも応援しながら人材を育成し、組織の結果も出すマネジメントをする管理職のことを指す。

 

マル3古平 陽子 電通総研主任研究員

何をもって女性の活躍と捉えるかは難しく、「働くこと」だけが女性の活躍ではないと捉えている。しかし、「働く女性が増えていくこと」は重要なことであり、女性がより働け、また働き続けられるためには何が必要かを検討する。その際、生活者の意識と時代背景を踏まえて分析する。
女性を「仕事継続層」、「仕事中断・再開層」、「仕事中止層」の3層に分けると、働くことへの価値観、自立意識、ジェンダー意識等に違いがみられる。働き続ける女性を増やすためには、就職時点から働きかけても遅いのではないかと考えている。
働く女性を取り巻く時代・環境は、大きく3つに分類できる。マル1女性は辞めるのが当たりで男性の育児参加がほぼ見込めなかった時代 マル2両立支援制度が整い始めて、その恩恵を受けられるようになった時代 マル3男性も女性も育児や介護をしながらキャリアアップしていく時代である。マル3は20代を中心とする若い世代が引っ張っていくことになるが、この世代は景気がよい時代も知らず、他世代にはない価値観も持っている。次世代を担う、若い世代が働くことやキャリアをどう捉えているのかを分析することが重要である。
また、結婚や子育て等を前向きに捉えて仕事を辞めている女性も多いことから、再開のあり方をどう考え整備していくのかということ、長期的視点に立ったキャリアパス設計、男性を含む「働き方」改革、正規・非正規といった働く環境の二極化についても重要であり、検討していく。

 

マル4石川 淳 電通総研研究主幹

女性の就業状況を見ると、労働力率でみられるM字カーブは、実数でみるとM字型のへこみは見られない。雇用する企業の側からすれば、各世代をバランスよく雇っている。M字カーブを改善するためには、人口の多い世代を多く雇用するインセンティブが必要となる。
60歳前後の男女の就業状況を比較すると、女性は「家事」を選択する人が多くなるが、男性は「その他」が多くなり、勤労や家事に携わっていない。女性が家庭で働かない男性の面倒を見ることで、労働の可能性を減殺している結果となる。
男女の年収を比較すると、200万円未満の男性の数は多くないが、女性は圧倒的に多い。20代は男女とも200万円をピークとする山型の分布だが、30代以降になると男女で形が大きく変わり、男性は山型を維持したまま徐々に年収が高くなっていくのに対し、女性は100万円未満が最も多くなる形状に変わる。
1985年に男女雇用機会均等法ができて30年以上経つが、未だに寿退職に苦慮する企業の報道が見られる。社員の男女の偏りが解消されておらず、世の中が変っていないことが分かる。
マスコミで話題になっている「下流老人」は、表面化しにくいが実数は多いと考えられる。社会の格差が拡大する中で、女性の活躍を考える際、働くことと老後の安心を併せて考える必要がある。年収が200万円未満という女性が多い状況を踏まえると、将来を見据えて、働くこと、それを継続すること、さらに老後への備えを可能にすることが重要である。

 

マル5本田 由紀 東京大学大学院教育学研究科教授

戦後の日本社会の変化をみると、1960年代の高度成長期には、父は仕事、母は家族、子どもは教育の世界という強固な役割分担のある戦後日本型循環モデルが形成された。しかし、バブル経済の崩壊後に仕事の世界が変容し、家庭に資源を注ぎ込めなくなったことで悪循環が生じ、格差、貧困が増大している。問題が山積している社会全体の中で、女性というものを考えていく必要がある。
女性の活躍に関しては、女性の多様性を踏まえると、どこの層の話をしているのかを常に意識する必要がある。何をもって活躍とみなすのかについては議論があるが、日本の場合は、国際的にみても圧倒的に家庭責任が重く、地位や経済力、発言力が低いことは確かであり、これらを是正することが必要になる。
女性の活躍に関して様々な施策が打たれているが、女性を利用するという観点が強く出ている。女性が出産後の育児負担を負うライフイベントを助けることに政策が偏っているが、それすらも不十分である。性別を越えて互いを尊敬し合い、意見や主張や考え方が異なっていても耳を傾ける姿勢が男女ともに弱い。また、女性の貧困については注目が足りない。
プラチナ構想ネットワークの調査では、女性の社会進出と男性の家庭進出は、家計や家族関係を安定させるとともに、子どもの自立促進や子育ての社会化の増大を通じて次世代育成に良い効果がある。そのためには、女性の職業訓練と中高年男性の意識改革が極めて重要である。また、女性はブラック企業の一掃を強く行政に望んでいる。女性の就労支援も個々の状況に応じたきめ細かなものとする必要がある。
壊れた日本社会の循環モデルを新しく組み直すことが、この社会が生き延びる道だと考える。教育と仕事と家族の間に、一方向的な循環構造ではなく、双方向的な均衡関係、連携関係、バランス関係を作り出していくには、ワークライフバランスが非常に重要であり、その背後にセーフティネットやアクティベーションも必要となる。研究会では、日本人の意識が社会の中でどのような構造になっているのか、それが何によって規定され、どういう影響をもたらしているのかということを計量的に分析する。

 

マル6水落 正明 南山大学総合政策学部総合政策学科准教授

都市と地方における女性の就業の違いを分析するにあたり、総務省の就業構造基本調査を用いて分析を試みる。その際、地域を都道府県単位で分けて分析するのではなく、都市と地方の区分や地域施設までの距離やアクセス情報を基に分けることも有効と考えている。
最終的には、女性就業関連変数を従属変数とし、都道府県や都市、地方を示す変数やその他の変数を独立変数とする回帰分析を検討している。地方ダミーや都道府県ダミーで都市規模をコントロールし、都道府県ダミーと地方ダミーの掛け算(交差項)を用いて、詳細な分析をする予定である。
就業構造基本調査を活用して都道府県別の女性の有業率を見ると、就業と結婚、出産、子育てが重なる25〜34歳、35歳〜44歳でM字型カーブが見られると考えたが、どの都道府県でも二期間で大きな増減はない。ただし、関東(東京、千葉、神奈川)、関西(大阪、京都、兵庫)の大都市圏では35〜44歳で有業率が落ちている。また、長野、岐阜、静岡では、逆に35〜44歳で有業率が上がっている。
また、35〜44歳の都道府県別の都市と地方(30万以上の都市か県庁所在地を都市、それ以外を地方)の有業率を見ると、概ね地方は有業率が高い状況が見られるが、都道府県によって状況が異なっている。
さらに、有業率の都市と地方の差(地方−都市)を見ると、東京や大阪、長野では都市の方が女性の有業率が高い状況が見られる。東北地方は地方の有業率が高い。関東はそれほど差がないと予想したが、栃木は地方の有業率が高い。これは東京や職場へのアクセス、保育所の利用のしやすさなど、様々な要素が影響していると考えられる。

 

マル7奧 愛

財務総合政策研究所主任研究官

和田 誠子

財務総合政策研究所研究員

越前 智亜紀

財務総合政策研究所研究員

国際的な男女間格差に関して日本の位置付けを見ると、「ジェンダー・ギャップ指数」では142か国中104位である一方、北欧諸国が上位を占めている。同指数の比較から日本は政治、経済、教育分野のスコアが低いことが分かる。社会発展の度合いを示す「幸福度調査」では、日本は158か国中46位だが、男女の格差が少ない北欧諸国は幸福度ランキングでも上位を占めている。
国際ランキングから日本の課題を抽出すると、日本は、政治、経済、教育の各分野で女性の参加率が総じて低いということが指摘できる。海外と日本で何が異なるのかを分析するため、政治・経済・教育分野の男女の役割に関する意識調査を分析したところ、ジェンダーに対する意識は欧米諸国とアジア諸国で異なることが分かった。日本は「男性の方が女性よりも良い政治リーダーになれる」、「男性の方が女性よりも良い役員になれる」、「大学教育は女の子よりも男の子にとってより重要」といった質問項目に対し「わからない」と回答する割合が他国に比べて一番多いことが特徴といえる。こうした点を踏まえつつ、日本は女性の活躍に向けてどのように取り組むべきかを考える。
現状を確認すると、国会議員に占める女性の割合、管理職に占める女性の割合、大学型高等教育への進学率のいずれも、日本は海外に比べて女性の割合が非常に低い。また、男女間の賃金格差も北欧諸国と比べて大きいことが分かる。一人あたりのGDPも、男女の格差が少ない北欧諸国よりも日本は低い。
女性の経済活動人口割合をみると、25〜29歳までは日本と北欧諸国は同程度だが、30〜34歳になると日本の女性の経済活動人口は減少する一方、北欧諸国はむしろ上昇しており、大きな違いが見られる。さらに、女性の労働参加率の違いがいつから生じたのかを時系列で分析すると、日本とスウェーデンの女性の労働参加率は1960年末前後では同程度だったが、その後50年で差が拡大したことが分かる。この背景として、スウェーデンでは、1970年代に仕事と家庭の両立が可能となる社会を構築し、男女平等政策を推進したほか、高福祉社会への移行の過程で女性の進出を促進したことが指摘されている。今後、国際比較を通じて「女性にとって何が活躍のインセンティブになるのか」という点を見出していきたい。

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