財務総合政策研究所

サイトマップ

持続可能な介護に関する研究会
第6回会合
2015年3月18日(水) 15:00〜17:00
於: 財務省4階 南434「国際会議室」

第6回会合

◆報告1「序 章:介護の持続性の確保に向けて」
「第2章:高齢者ケアの質とあり方に係る国内外の取り組み」

報告者

前島 優子 財務総合政策研究所 総括主任研究官
◆報告2「居宅サービス事業所(訪問介護事業所)ごとの平均的な要介護度「改善・維持」に関する要因分析(仮題)」

報告者

野口 晴子 早稲田大学教授
◆報告3「補論1:介護保険の地域格差分析〜地域格差の背景にある自治体の取り組み〜」

報告者

越前 智亜紀 財務総合政策研究所研究員
◆報告4「補論2:医療・介護の透明性への期待-医療法人監査、介護の質の評価の動向-」

報告者

和田 誠子 財務総合政策研究所研究員
◆報告5「補論3:海外各国の介護制度に関する基礎的情報」

報告者

石本 尚 財務総合政策研究所研究員
   

議事要旨

(1) 報告1−1「序章:介護の持続性の確保に向けて」

報告者:前島 優子 財務総合政策研究所 総括主任研究官

序章は、第一回の研究会でご説明した、今後の介護費用の見通しや2025年までに急速に進む高齢化の状況などといった基礎事項に加え、研究会での議論を踏まえつつ「医療・介護の質の向上が費用抑制と両立しうること」や「自治体の役割の重要性」について述べた。
社会保障と税の一体改革に関しては、地域包括ケアシステムの構築など、医療・介護の充実策に対する実感が得られることが、負担の納得感のために重要である。
自治体においては、今後、データの活用をしながら、地域資源をコーディネートして効果的なマネジメントを行うことが重要となる。
序章の最後では、医療と介護の一体的な改革が長いプロセスを経て意思決定されたものであることも踏まえ、改革の着実な実行の重要性を示した。

ページTOPへ

(2) 報告1−2「第2章:高齢者ケアの質とあり方に係る国内外の取り組み」

報告者:前島 優子 財務総合政策研究所 総括主任研究官

本章では、日本の参考になり得る海外の考え方等を取り上げた。OECDの定義ではLong-term Careは、慢性的な病気や障がいに対する保健・医療・介護等、全てを包括した概念であるため、本章では医療を含むと明確化している。
医療に関する日本の特性は、昨年OECDから公表されたばかりの「医療の質レビュー」も踏まえて紹介した。データの活用について日本の現状は十分ではなく、マイナンバー制度への期待も聞かれるが、データは、収集から戦略的に行われる必要がある。
病床削減の成功例としてよく知られているスウェーデンのエーデル改革を挙げた。近年は、査察員制度を強化し、現場における質のチェックに力を入れてきており、OECD報告で、スウェーデンの医療福祉サービスシステムは引き続き世界最高ランクと評されている。
24時間在宅ケアの実現例として、デンマークを紹介した。デンマークの在宅ケアは訪問看護士が司令塔となっている。訪問看護師の基礎教育はヘルパーやアシスタントと共通していて、ステップアップできる制度となっている。また、在宅ケアに携わる人の数は多く、医師の役割が明確にされ、それ以外での現場の裁量が大きいことが特徴といえる。
医療の情報の非対称性に対する取り組みに関しては、アメリカなどで行われているChoosing Wiselyキャンペーンを取り上げた。情報の非対称性などによって生ずる過剰な医療は、無駄なコストを発生させる上、しばしば人体にとって有害である。標準医療に係る情報は、患者が自らのQOLを高めることを助ける上、コストが過剰になることを防ぐ。日本における国立がん対策情報センターによるがんに関する情報提供の例も示した。
ケアの質の向上とコスト抑制の両立を実現しているアメリカのバンドルドペイメントやACOs(Accountable Care organization)を紹介した。特に、ACOsは、医療の機能を治療にとどめず、住民の健康管理に広げる発想であり、興味深い。費用として想定コストを支払い、使用しなかった分を医療組織で分けていいというインセンティブを付けている。アメリカの報道では、医療費の抑制のみならず質の向上も見られると評価されている。
ICF(生活機能分類)は、10年以上前にWHOで採択されたものだが、日本での浸透は十分ではないと思い紹介している。健康維持は個々人の問題だが、社会環境も健康状態に影響を与える。この概念は、社会環境を形成している1人1人に一層普及されるべきである。
介護の質の向上のための評価が一層進展されるべきである。日本では介護の質の向上に関する統一的コントロール方法として報酬が機能しているが、虐待等の問題には現場のチェックが効果的である。介護のように供給が十分でない場合には、選別が起きたり質が低下するリスクが高まることに留意しなければならない。
介護の質の評価のヒントとなるツールとしてinterRAI方式を挙げた。30か国以上から多くの研究者が集まって作成されたケアプラン作成のためのアセスメントツールで、質の評価やアウトカム指標としても活用可能となっている。
国際長寿センターの調査によると、日本は看取りに関する国民的コンセンサスがないため、終末期の場所や人工栄養補給などに関する迷いが大きいとされる。介護施設や自宅が看取りの場として選択できるような態勢について検討をする必要があるが、2007年に策定された「終末期医療の決定プロセスに関するガイドライン」の普及を推進している状況である。
認知症については、日本では2015年1月に新オレンジプランが作成されたところである。昨年日本で開催された認知症サミット・後継イベントでは、認知症が予防できるものであることや、早期に適切に在宅ケアが入ることでコスト減少とQOLの向上が可能であることが紹介された。
日本の強みであるロボット技術が介護における自立支援に活用されている。技術開発に当事者が参加し、効果計測まで実施する方法がとられる場合には、PDCAサイクルを回すことになり、費用対効果の向上も見込まれる。技術開発だけでなく、介護の施策に関しても当事者の視点を取り入れることは重要である。就労以外でも、技術開発や政策提言、地域づくりで、今後増加する高齢者の社会参加が可能であろう。
厳しい財政の下、急速に進む高齢化に対応するためには、海外での医療・介護に関する優れた知見を活用し、改革ができる限り効果的に進められる必要がある。医療に関しては、1人1人に国内外の優れた知見が正確に分かりやすく周知されれば、10年後の健康状態に差が生じることが考えられる。介護については、自立支援や社会参加の重要性、地域包括ケアシステムに対する更なる理解が必要である。健康維持や安心できる介護環境の整備は社会全体の問題であり、人生の最後まで納得できる選択を行うためにも、良質な情報が1人1人に行きわたることが重要となる。
2020年の東京パラリンピックは、あらゆる人にとって「活動」や「参加」を当然のこととして実現する高い意識を共有するよい機会になる。
今後は、健康へのリスクを高める要因でもある高齢者の「孤立」が社会の大きな課題となってこよう。「孤立」防止に関しては、どのような状態にある人にも参加の機会が与えられ、ICT等のテクノロジーや民間の発想や活力を活かした多様な方策が一層推進されるべきであろう。

ページTOPへ

(3) 報告2「居宅サービス事業所(訪問介護事業所)ごとの平均的な要介護度「改善・維持」に関する要因分析(仮題)」

報告者:野口 晴子 早稲田大学教授

2000年の公的介護保険制度の導入に伴い、居宅サービス市場はある程度市場化されたが、施設ケアの市場には営利目的の法人の参入が少ない。また、現在の介護保険制度は要介護度が重度化するほど支給を受けられるため、要介護度を維持・改善するインセンティブが働きにくいという指摘がある。このようなインセンティブは実際に生じているのか、生じている場合何が要因となっているのかについて分析を行う。
分析にあたっては厚生労働省の「介護サービス施設・事業所調査」を使用した。同調査には、施設調査と居宅サービス調査があり、利用者をランダムに抜いて、事業所と利用者のデータがマージできる。利用者調査から、利用者個票から1年前と現在の要介護度の比較が可能となっている。介護保険施設には、介護老人福祉施設、介護老人保健施設、介護療養型医療施設の3つがあり、各施設における利用者の要介護度変化について分析を行う予定だ。
居宅サービス事業所も、利用者個票があるので同様の分析を行う予定である。居宅サービス市場には2000年以降、利益目的のサービス事業所が入っているので、経営主体別に要介護度の維持・改善の比較を検証する。
平均値周りの結果だけを見ると、居宅サービスで営利企業と非営利企業を比べた場合、営利企業で要介護度の維持・改善が起こっている可能性がある。介護施設については、公立と非営利法人がほとんどだが、平均値周りの分析では、公立に比べて、非営利の社会福祉法人で要介護度を維持・改善する確立が高いことが、統計学上一定程度の優位性があった。実際に、性別、年齢、要介護度になった要因、受けている医療に関する情報をコントロールすると、その優位性がどうなるかといった検証も行う予定。

ページTOPへ

(4) 報告3「補論1:介護保険の地域格差分析〜地域格差の背景にある自治体の取り組み〜」

報告者:越前 智亜紀 財務総合政策研究所研究員

補論1では、全国的にも要介護認定率(以下、「認定率」という)が低い自治体A市に着目し、隣接する自治体B市と比較した。
A市とB市は、2014年時点の「高齢化率」「高齢独居世帯率」「後期高齢者割合」が等しいにも関わらず、A市の認定率はB市よりも6%も低かった。A市は全ての要介護度でB市よりも認定率が低く、中でも要支援段階の認定率が非常に低い。認定率は県平均とB市が年々上昇している中、A市は低下傾向にある。隣接市でありながら認定率に違いが生じている理由を体制面と事業面で比較し分析した。
体制面では「市長の意識の高さ」「情報の開示・共有」という点にA市の特徴がある。A市では介護保険制度が発足した2000年から、当時の市長が予防の重要性を示し、市民や事業者に対して自立支援の理念を浸透させてきた。また、予防事業や地域密着型サービスを全国に先駆けて取り組んでおり、介護予防に対する方針が現在の市長に至るまで受け継がれている。
A市は市町村介護予防強化推進事業のモデル市区町村に指定されているため、B市よりも取り組みが広く情報公開されている。さらに、医療・介護の専門家が一堂に会するコミュニティケア会議を定期的に開催しており、サービス全体の質の向上だけではなく、提供側のレベルアップにつなげている。
事業面については、予防プログラムのデータを分析し、A市とB市の実施回数や参加人数の状況を比較した。介護予防の取り組みを子細に調べると、実施個所や回数、一人当たりサービスの利用回数等はA市の方が圧倒的に多いことが分かった。
要介護度別にケアプランに何種類のサービスを利用しているかを調査すると、A市では、要支援1の段階で2種類以上のサービスを受けている割合が高く、要支援段階での介護度の上昇を抑えるための支援が厚いことが分かった。
介護予防の普及啓発事業の実施状況では、介護予防教室の開催や参加延べ人数がA市の方が多く、さらにA市ではB市では行われていない講演会や相談会等を開催していることが分かった。一見すると、同様の予防プログラムを実施しているように見えるが、取り組み状況は大きく異なっている。
その他のA市では、行政が交通手段(高齢者福祉センターの無料送迎バス等)を提供することによって、提供する介護予防サービスを実際に住民に活用してもらうための工夫が行われている。
A市の無料送迎バスに係る費用は、市町村特別給付費として介護保険料に加算されるので保険料の上昇につながる。しかし、介護予防サービスが広く活用され、要支援・要介護状態を改善・維持することができれば介護保険給付総額の抑制につながり、結果として、介護保険料の上昇を抑えている可能性がある。実際、A市とB市の介護保険料月額は同程度であり、介護予防が要支援要介護状態の改善・維持に寄与し、介護保険給付総額が抑制されている可能性が示されている。
両市の比較から介護認定率の格差の背景には、介護に対する市長の意識の高さ、方針の明確さ、体制面と事業面での規模や量の違いがあり、結果として認定率の格差に結びついている可能性がある。なお、当事例は、厳しい財政状況を反映して要介護認定率が低い事例には当たらない。

ページTOPへ

(5) 報告4「補論2:医療・介護の透明性への期待-医療法人監査、介護の質の評価の動向-」

報告者:和田 誠子 財務総合政策研究所研究員

補論2では、公益性が高く、公的負担が大きい医療・介護分野について、説明責任や透明性向上が必要との問題意識から、最近の議論をまとめた。
医療に関しては、現在、医療法人の経営透明性について、財務諸表等の外部監査の義務化の検討がなされているところであり、一定規模以上の医療法人を対象として外部監査が義務化される見込みとなっている。
介護に関しては、介護サービス情報の公表、自治体による指導監査の義務、福祉サービスの第三者評価の3つを紹介しつつ、中でも、OECD諸国でも介護の質確保のために強化されている第三者評価について、日本での導入経緯や受審の現状、課題について述べた。
第三者評価の受審率は、東京都は高いが地方では低いという地域差が生じている。評価機関、評価基準等に関する課題も多い。第三者評価の促進のため、ガイドラインが見直されたり、評価実施の効率化に向けての方策が模索されるなどしている。

ページTOPへ

(6) 報告5「補論3:海外各国の介護制度に関する基礎的情報」

報告者:石本 尚 財務総合政策研究所研究員

補論3では、ドイツ、オランダ、スウェーデン、デンマークの介護制度や給付対象等について、人口や人口密度、面積等々の基本的な属性とともにまとめている。
各国ともにコストに配慮しつつ、自立的な生活を支援するために、いかに介護サービスを提供するかといった点について、様々な経緯を積み重ねながら取り組んでいる。日本では今後、これらの国以上に高齢化が進むことが見込まれ、それに伴って社会保障にかかわる公的な支出の増大が見込まれる。こうした将来を見据え、海外のサービス内容や提供体制、負担に関しての考え方を知ることは重要である。

ページTOPへ